島根県立美術館 のコレクション展示はフランス近代絵画浮世絵 と来て、
続く展示室は焼き物 でありました。まずは解説の引用を。

出雲焼とは、松江市内にある布志名焼と楽山焼、二つの窯の総称です。布志名焼の土屋窯・永原窯、楽山焼は松江藩7代藩主・松平不昧の頃より、御用窯として藩主のお好み物を制作してきました。

この説明の中に出てくる松江藩主の松平不昧とは、ちょいと前にEテレ「日曜美術館」で
「茶の湯で国を治めた男~大名茶人 松平不昧~」なんつうふうに取り上げられたのを見るまで
ちいとも知らない御仁であったのですが、焼き物や茶道具の目利きであって
自ら全国名品カタログのような書物を作ってしまった不昧は慕われたお殿様だったようですね。

ちと観光パンフレットから人となりを引用してみるとしましょう。

松江藩松平家七代藩主治郷(1751-1818)は、不昧と号した大名茶人で、今も「不昧公」の名で親しまれています。禅学を修め、茶道諸流派を学び、大名茶の流れの中で独自の茶風を創りました。茶道具の収集や研究も行い、その成果を書物に著すなど、後の茶道研究にも影響を与えています。陶工などの美術工芸や銘菓などの食文化の育成にも取り組み、松江の芸術文化の礎を築きました。

今年2018年は松平不昧の没後200年に当たることから、
「不昧公200年祭」として茶会やら展覧会やらが開催されることになっていると
「Fumaiko 200th anniversary Guide book」(まあ、観光パンフの類いですが)に

紹介がありましたですよ。


「不昧公200年祭」ガイドブック

まあ、ただのお茶道楽だったなればここまで持ち上げられることもなかろうと思うところながら、
不昧が振興した美術工芸や菓子作りが松江の特産として藩内を潤すようなことにもなり、
一目置かれるお殿様になった。ですから不昧が広く大衆にも根付かせたお茶の文化は
今に至るも松江には息づいているということにもなるようで。


と、焼き物の方に話を戻せば、

これまたEテレ「趣味どきっ!私の好きな民藝」の6回目に島根の焼き物が

取り上げられておりましたですな。番組では出西窯や湯町窯などを訪ねていました。

不昧公が奨励した焼き物作りの伝統がやがて柳宗悦らの民藝運動 を通じて、

性に溢れた窯が県内に点在する状況にもつながったのでありましょうね。


私の好きな民藝 (趣味どきっ!)

ところで、島根県立美術館での焼き物展示は明治から大正にかけての出雲焼の変遷とのこと。

ようするに明治維新で藩御用達の窯という優遇された状況がなくなったあと

昭和の民藝運動で再興が図られるまでの雌伏の期間とも言えましょうか。


布志名焼は海外輸出に着目し、楽山焼は日用陶器に活路を見出したようすですが、

ここでの展示を見る限り(と、写真が皆無なのはご容赦願うとして)では

普段遣いを愛でるには美術館よりも街なかの民芸店だったりするのかもですね。


今回はそうしたお店や窯そのものを訪ねてまわる余裕はありませんでしたけれど、

また機会があったら訪ねてみたいものだと思うのでありました。