久しぶりに映画館に出向きました。

といっても、「シネマ歌舞伎 」を見るためだったのですけれど。

公開中の演目は「神明恵和合取組~め組の喧嘩」 でありました。


シネマ歌舞伎「め組の喧嘩」


歌舞伎のタイトルもパッと見では判読不能の文字列であることがままありまして、

「神明恵和合取組」も「かみのめぐみわごうのとりくみ」とは判じ難いですなあ。

ただ「神明恵」を「かみのめぐみ」と読ませるわけですが、

この「神明」は芝神明、現在の芝大神宮のことですね。


ここで相撲興業が行われたことで「取組」となるわけで。

また「恵」は「め組」に通じてもいる。


とまれ、この芝神明とめ組の喧嘩 に関しては、

前に浜松町界隈をぶらりとした折に触れたことがありますけれど、

芝居ともなるとずいぶん脚色してあるのだなと思うところです。


芝居小屋の木戸銭を払う、払わないを発端に勢いで生じた火消しと力士の大乱闘、

これが歌舞伎の方の話になりますと、芝居小屋の場面は芝居小屋の主が

小屋の前での乱闘は何とか堪忍しておくんなさいと頼み込み、

傍に迷惑かけられないと両者が一旦は鉾をおさめる。


ところが、日を改めて武器を持って再集合となってきますと、

ほとんどヤクザの出入りでもあるような。

大利根河原で繰り広げられた笹川繁蔵一家と飯岡助五郎一家の血闘 のようなもので。


考えてみると先の幡随院長兵衛 での町奴ではありませんが、

江戸初期から江戸末期へと時代が移り変わって、侠客にもいわゆる博徒もいれば、

そうでないものもいる中で火消しのかしらなども侠客に類することになりましょうかね。

「弱きを助け、強きを挫く」という点において。


ところで、この火消し「め組」のかしらが辰五郎という名だものですから、

後世の者からするとついつい新門辰五郎 を思い出してしまうところかと。


別人だは見終わってから知りましたが、芝居の導入、お茶屋でのひと悶着を

ぐぐっとこらえた辰五郎でしたが、その後に夜陰に紛れて意趣返しを企むあたり、

「らしくないのぉ…」と思ってはいたのですよ。


とまあ、周辺部分の話題ばかりですが、この歌舞伎の本筋の方に戻れば

火消しと相撲取りの集団大喧嘩がクライマックスで派手な演目とは思いますが、

ちと筋立てが浅いような気がしてしまいました。


ですので、この映画版の見所はといいますと、この作品が上演された2012年の12月に急逝した

主演の中村勘三郎を偲ぶということにもなりましょうか。


自らが立ち上げた平成中村座という舞台でもあり、

また双方手打ちの幕切れに三社の神輿(?)が乱入するというサプライズもあって

(勘三郎自身、これは聞いてなかったてな表情でしたなあ)

華々しいこの公演がいかにも手向けの花のように思えるからでもありますよ。

これはこれで、記録として意味があると言えるかもしれませんです。


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