早いもので夏休みはもう終わり、先週月曜から秋学期の授業を教えています。メキシコの夏は暑いのだから、もっと夏休み長くすればいいのにとは思いますが、言っても仕方のないことではあります。
夏休みの間にいろいろ旅行したいなと思っていたのですが、結局仕事ばかりでどこにも行けませんでした。ただそのおかげで、滞っていた本の翻訳も片付き、いくつか研究助成にも応募でき、論文の原稿も複数完成してジャーナルに投稿できたりはしたので、なかなか生産的な夏ではありました。冬休みは日本に帰国するので、今度こそゆっくりしたいなと思っています。
今学期は春に教えていたGeopolitics and Technological Changes×2でいいとのことで、授業準備に割く時間が格段に減るので、去年に比べるとだいぶ余裕があるように感じています。その証拠に、一年目は学期中に新しい論文を読むということがほとんどできなかったのですが、今は一日に1、2本は精読できるような状態です。インプットとアウトプットの両方に励みたいです。とはいえ、自分の昔からの弱点は体力のなさで、100分の授業を1回教えたらもうぐったりで、10時間ぐらい寝ないと回復しません(笑)それが週4なので、個人的にはなかなかしんどいです。もちろんもっと重い授業負担の中やっていらっしゃる先生方も多いと思うので恵まれている方だとは自覚します。ただ、今は2年目ということで授業負担を少し軽くしてもらってる状態なので、これから増えるかと思うと個人的にはなかなか辛いものがあります。論文出版や研究助成獲得を通じて、「研究に集中させてもらえればこれぐらいの業績は出すので、他は大目に見てください」と交渉できるようにするのが短期的な目標です。
最近一つ嬉しかったことは、自己引用以外で初めて自分の論文が引用されたことです(Wayne et al. 2024)。しかもAmerican Journal of Political Science(AJPS)という政治学のトップ・ジャーナルから出た論文に引用されたので、喜ぶもひとしおです。外交におけるcostly signalの解釈や信念の更新が個人と集団の場合で違うことを示したサーベイ実験の結果を報告しています。あんまり見たことないような実験のデザインをしていて、方法論的にも勉強になる論文だなぁという印象です。
最近の傾向として、(サーベイ)実験で政治学のトップ・ジャーナルに載せようと思ったら、実験デザインで工夫してあっと言わせるか、金に物を言わせて複数国で大きめのサンプルを採ってデータで殴るかしないと難しくなっていると感じます。例えば、今度American Political Science Review(APSR)から"The Generalizability of IR Experiments Beyond the U.S."という論文が出版されるそうなのですが(Bassan-Nygate et al. 2024.プレプリント版はこちら)、観衆費用(Tomz 2007)を含む国際関係論の主要実験4つを7か国(アメリカ、ブラジル、ドイツ、インド、イスラエル、日本、ナイジェリア)で再現するというものです。もともとの実験はアメリカで行われているのですが、どの国でもだいたい結果が再現されているとのことで、一か国での実験でも一般可能性については楽観的になってもいいんじゃないかという趣旨です。各国3000人、合計21000人を対象に調査しているので、なかなか手間とお金がかかっています。このぐらいやらないとAPSRやAJPSには載らないんだなぁと思い知らされています。コスパよく出版できる方法も考えると同時に、ホームラン級の研究助成も当てにいかないといけないと思っています。研究者業も楽じゃないです。
とはいえ、こういった一線級の研究を目の当たりにすると刺激になることは間違いないですね。これからも挑戦し続けていきたいと思ってます。
Bassan-Nygate, L., Renshon, J., Weeks, J.L., & Weiss, C.M. (2024). The Generalizability of IR Experiments beyond the US.
Tomz, M. (2007). Domestic audience costs in international relations: An experimental approach. International Organization, 61(4), 821-840.
Wayne, Carly, et al. "Diplomacy by committee: Assessing resolve and costly signals in group settings." American Journal of Political Science (2024).
夏休みの間にいろいろ旅行したいなと思っていたのですが、結局仕事ばかりでどこにも行けませんでした。ただそのおかげで、滞っていた本の翻訳も片付き、いくつか研究助成にも応募でき、論文の原稿も複数完成してジャーナルに投稿できたりはしたので、なかなか生産的な夏ではありました。冬休みは日本に帰国するので、今度こそゆっくりしたいなと思っています。
今学期は春に教えていたGeopolitics and Technological Changes×2でいいとのことで、授業準備に割く時間が格段に減るので、去年に比べるとだいぶ余裕があるように感じています。その証拠に、一年目は学期中に新しい論文を読むということがほとんどできなかったのですが、今は一日に1、2本は精読できるような状態です。インプットとアウトプットの両方に励みたいです。とはいえ、自分の昔からの弱点は体力のなさで、100分の授業を1回教えたらもうぐったりで、10時間ぐらい寝ないと回復しません(笑)それが週4なので、個人的にはなかなかしんどいです。もちろんもっと重い授業負担の中やっていらっしゃる先生方も多いと思うので恵まれている方だとは自覚します。ただ、今は2年目ということで授業負担を少し軽くしてもらってる状態なので、これから増えるかと思うと個人的にはなかなか辛いものがあります。論文出版や研究助成獲得を通じて、「研究に集中させてもらえればこれぐらいの業績は出すので、他は大目に見てください」と交渉できるようにするのが短期的な目標です。
最近一つ嬉しかったことは、自己引用以外で初めて自分の論文が引用されたことです(Wayne et al. 2024)。しかもAmerican Journal of Political Science(AJPS)という政治学のトップ・ジャーナルから出た論文に引用されたので、喜ぶもひとしおです。外交におけるcostly signalの解釈や信念の更新が個人と集団の場合で違うことを示したサーベイ実験の結果を報告しています。あんまり見たことないような実験のデザインをしていて、方法論的にも勉強になる論文だなぁという印象です。
最近の傾向として、(サーベイ)実験で政治学のトップ・ジャーナルに載せようと思ったら、実験デザインで工夫してあっと言わせるか、金に物を言わせて複数国で大きめのサンプルを採ってデータで殴るかしないと難しくなっていると感じます。例えば、今度American Political Science Review(APSR)から"The Generalizability of IR Experiments Beyond the U.S."という論文が出版されるそうなのですが(Bassan-Nygate et al. 2024.プレプリント版はこちら)、観衆費用(Tomz 2007)を含む国際関係論の主要実験4つを7か国(アメリカ、ブラジル、ドイツ、インド、イスラエル、日本、ナイジェリア)で再現するというものです。もともとの実験はアメリカで行われているのですが、どの国でもだいたい結果が再現されているとのことで、一か国での実験でも一般可能性については楽観的になってもいいんじゃないかという趣旨です。各国3000人、合計21000人を対象に調査しているので、なかなか手間とお金がかかっています。このぐらいやらないとAPSRやAJPSには載らないんだなぁと思い知らされています。コスパよく出版できる方法も考えると同時に、ホームラン級の研究助成も当てにいかないといけないと思っています。研究者業も楽じゃないです。
とはいえ、こういった一線級の研究を目の当たりにすると刺激になることは間違いないですね。これからも挑戦し続けていきたいと思ってます。
Bassan-Nygate, L., Renshon, J., Weeks, J.L., & Weiss, C.M. (2024). The Generalizability of IR Experiments beyond the US.
Tomz, M. (2007). Domestic audience costs in international relations: An experimental approach. International Organization, 61(4), 821-840.
Wayne, Carly, et al. "Diplomacy by committee: Assessing resolve and costly signals in group settings." American Journal of Political Science (2024).