先日スタートした、「3ヶ月ワークショップ:ベーシック クラス」では。
演技の基本にして、そのすべてとも言える「コミュニケーション」の土台、「見る、聞く」という、いわば「演技の入り口」から、丁寧に進めました。
「見る、聞く」。
それ以外にも、「探す」「数える」といったことを、「本当に実行」していただくエクササイズを実施。
……さて。
それらに共通しているものは、すべて「対象」です。
見る対象。
聞く対象。
探す対象。
相手役を「見る、聞く」。
500円玉を「探す」。
スタジオにあるライトの数を「数える」。
そのすべてに、「対象」が存在しています。
そして。
コミュニケーションにも、対象が不可欠です。
▲対象=「向かうべき目標」がなければ、何もできません。
数年前、僕が、テレビドラマ「アイムホーム」に出演させていただいた時のこと。
主演は、木村拓哉さん。
僕は、主人公・家路(いえじ)の勤める会社に訪れ、テレビ出演を依頼する、テレビ局のディレクター役でした。
1日目に、まずは会社の中で、木村さん演じる家路に出演交渉をするシーンを撮り。
そして、撮影2日目。
主人公・家路が、テレビ出演の依頼を受け、渋々やってきたテレビ局の場面。
まもなく、生放送の番組が始まろうとしてるというシーンです。
そこに。
AD役の若い俳優さんがいらしていました。
そのADのセリフ。
「◯◯さん、入りま〜す!」
……テレビ局でタレントさんがスタジオに入る時に、ADさんが声がけする、アレです。
AD「◯◯さん、入りま〜す!」
スタッフ達「よろしくお願いしま〜す!」
タレントさん「あぁ、よろしくね〜」
まぁ、そんな感じのセリフのやり取りが交わされる場面だったのですが。
テストで一度、全員でそのシーンを演じた時。
カットがかかると。
木村拓哉さんが、そのAD役の若い俳優さんに声をかけました。
そして、こんなことをおっしゃいました。
「……その、『入りま〜す』ってセリフね。
今のは、ただ大きい声で言ってるだけで、誰に言ってるのかがちょっと分からなかったな。
誰に伝えてるのかを考えてみるといいよ〜。」
なんと。
木村さんが直々に、若い俳優さんにアドバイスをされてました!!
これは、本当に凄いことだと思いました。
別に、そのAD役の方の演技、側から見ていても、決してすごく下手だったわけではないと思うんです。
でも、木村さんは。
より良いものを作るために、細かいところにまで気を配って。
妥協せず、ブラッシュアップをかけていたんですね。
その、作品全体を良くしていこうという姿に、感動すら覚えました……。
そんな、木村拓哉さん。
さらに凄いのは。
もう一度、テストでそのシーンを全員が演じた時。
カットがかかると、もう一度そのAD役の俳優さんのところへ向かい、
親指を「グー!」と立てて、
「OKだったよ」のウィンク!!
ちゃんと、アフターフォローも忘れません。
……というか、なんてカッコいいフォロー!!!!
▲コレ!!!!
若くて、まだ無名の俳優さんが、現場で木村さんに何か言われたら。
たとえそれが前向きなアドバイスであっても、萎縮しちゃいますよね。
そんな、彼の気持ちをきちんと分かっていて、丁寧にフォローしてあげる。
こうした、若い俳優さんへの気遣いからも。
木村さんの、人を大切に思う気持ち、作品を大切に思う気持ちが伝わりますよね……。
……この、木村さんのアドバイス。
つまり「対象」と「コミュニケーション」のことをおっしゃられていたんですね。
あれだけ有名なタレントさんであり、俳優の方ともなると。
なんとなく、基礎とかそんなことはもう気にされてないような印象を持たれるかもしれませんが。
とんでもない!!
僕は目の前で、木村拓哉さんが「演技の基礎」のアドバイスをするのを、目撃したのです。
演技には、習得すべき基礎が、きちんとあります。
ただ「それっぽく」雰囲気だけで演じては、いけません。
ADっぽく、ただ大きな声を出すことが演技なのではなく。
対象に向かって、自分の役割をしっかり実行すること。
それが演技なのだ、ということです。
▲ほんとに、超絶カッコいい人でした……。
同時に。
木村拓哉さんは、作品全体をより良くするために、このアドバイスをしていました。
つまり。
俳優は、個人個人が好き勝手にやっていればいい、ということではない。
俳優もスタッフも、「作品」という一つの船に乗った船員同士。
目標を共有し、そこに向かって進んでいくチームなのだ、ということ。
主役だろうと、脇役だろうと。
全員が一つとなっての、チームプレー。
それこそが、俳優のしごとなのだと。
木村さんは、その一番大切なことを、本当に体現されていらっしゃいました。
こうした、演技を基礎から学びたい方。
チームプレーで作品を作りたい方。
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2/11〜3/29 開催予定、
春の特別クラス
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