前回記事で。
「家で、一人でできる演技の訓練は……無いことは無いんだけども……」
ということをお話ししました。👇
まぁ、早い話が。
まずはとにかく、共演者との「演技のキャッチボール」を楽しむことから始めましょう。
ということなんですが。
まず。
いきなり、一人で演技の練習を始めてしまうと、
「自分はうまくやれているだろうか?」
という、「自分を見る目」が育ってしまいます。
これは「ジャッジ」と言って。
感情や衝動、本能的な反応を殺す、「思考脳」の働きを強めてしまうんです。
つまり。
思考を使うことで、俳優には絶対的に必要な「心」を閉ざしてしまうんですね。
ちなみに。
思考は、大脳の「新皮質」という部分。
心(感情、本能)は、「旧皮質」という部分が司っていて。
実際に、科学的にも心理学的にも、「思考が心を閉ざしてしまう」ということは分かっています。
「なぜバイオリンは音が鳴るか?」…それを知らないバイオリニストは、いない。
▲「思考」という扉は、その奥にある「心」を閉じ込めてしまう。
これ、逆に言えば。
相手にムカついて感情的になりそうな時って、「一度冷静になって考える」ことで、感情を抑えますよね?
思考と感情(心)って、こういう関係にあります。
そして。
「うまくやれているだろうか?」という、自分を見るジャッジの目は。
すなわち、「自意識」と呼ばれるもので。
この「うまくやれているだろうか?」という思考の先には、「うまくやれなかったら、どうしよう」という、緊張へとつながる回路が待っています……!!
「うまくできてるかな?」
「うまくやらなくては」
「うまくやれなかったら、どうしよう」
そうした「思考」が、俳優にとっての大きな障害になるんですね。
俳優の訓練に必要なことは、思考による「自意識」を排除していくことなのです。
▲ちなみに、「緊張」にも2種類あります。
「必要な緊張」と、「過度な緊張」。
例えばジェンガを引き抜く時には、目的を達成するために「必要な緊張」状態が起こります。
この場合、人の意識は、自意識ではなく、「対象(外の世界)」に向いています(この場合は、ジェンガですね)。
この緊張は、夢中になる、熱中する、といった、ポジティブな感覚を伴います。
一方で、「過度な緊張」は、「うまくやらなくてはいけない」といった義務感や、思考によるジャッジから起こります。
こちらの場合は、意識が「自分(内側)」に向いています。自意識ですね。
この緊張状態は、不快感を伴います。
だから、まず必要なのは。
「自分がうまくできているかなんてことは、関係ない!!」
と思える環境に身を置くこと。
相手役との、演技のキャッチボール。
実際に、ボールの投げ合いっこを想像していただけるとわかりやすいのですが。
誰かと楽しくキャッチボールをしている時って。
相手から、繰り返しボールが飛んでくるので、自分が「うまくやれているか」なんて、考えたり、反省している暇がありませんよね。
例えば、メソッド演技法(マイズナー・テクニック)の基礎訓練「レペテーション」のような、思考を排除した「相手との素早いコミュニケーション」などは、こうした「ジャッジしない(ノンジャッジ)」という楽器を育てます。
……そんなわけで。
いきなり「家で一人で…」をやってしまうと、どんどん「ジャッジ」「自意識」を育ててしまう、という危険を孕んでいるのです。
それと。
前回記事の最後に、「好きな映画や舞台を観るなど、夢中になれることをやってください」ということもお伝えしました。
俳優の商売道具は「心」です。
ちょっと極端なお話をしてしまうと。
映画「スーパーマン」でその名を知らしめた、クリストファー・リーヴという俳優さんは、落馬の事故で首から下が麻痺してしまってからも、映画に出演して、演技を続けました。
▲映画「スーパーマン」の、クリストファー・リーヴさん。
▲首から下が麻痺しても、名作映画「日の名残り」や、ヒッチコック原作のテレビ映画版「裏窓」に出演していました。
でも、いかに五体満足であっても。
心が無くなったら、演技はできないんです。
そして。
少なくとも、今、このブログを読んでいる方で、
心が無い人はいません。
その「商売道具」を育てるには、とにかく、心が動くものに触れること。
映画や舞台、音楽などで、常に心を柔軟に動かしておくことが大切です。
「柔軟に」という意味では、スポーツ選手やダンサーの、ストレッチに近いかもしれませんね。
そうして。
心・感情・感性・創造性……
そういったものを、常に常に、アクティブにしておくことが大事なんです。
心を動かし、感情を動かし。
感性と、創造性を育てる。
一見、めちゃくちゃ難しい問題に感じますけれど。
実は、その方法は簡単!!
先ほどお伝えした、映画、演劇、音楽などを含め……
「夢中になれること」をやる時間を持つことです!!
人は、夢中になっている時。
ワクワクしたり、楽しくなったり、時にはうまく行かなくて、悔しい思いをしたり。
常に、心が動いています。
「無我夢中」という言葉があるように。
夢中になっている時は、「無我」、つまり、我を忘れています。
自分を見る「自意識、ジャッジ」の目は無くなり、自分を忘れているということです。
つまり。
大脳新皮質の「思考」が鎮まって、心を動かす「アーティスト脳」が発動する。
これが、俳優の商売道具を育てます。
1日、30分だけでもいいです。
自分の好きなことに没頭する時間を作って、アーティスト脳を鍛えましょうね。
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