日本ファミリーオフィス協会の今年のテーマは「ファミリービジネス」
ファミリーオフィスの顧客のほとんどは、日本でも欧米でも「ファミリービジネス」のオーナーだ。それだけ超富裕層に占める「ファミリービジネス」の率は高い。日本では9割以上だ。となると、ファミリーオフィスの必要条件の第一は「ファミリービジネスを知ること」になる。
既にファミリービジネスは世界的にもビジネススクールでの大きな研究テーマになりつつある。高名な経営学者のチャンドラーが、科学的経営の時代にはファミリービジネス(同族で世襲の経営会社)はなくなると予想したものの、実際にはファミリービジネスはますます伸びているという「不思議」があるからだ。確かに直感的には不思議である。
日本でも最近ようやくファミリービジネス学会ができた。これとは別に「ファミリービジネスネットワークジャパン」というスイスに本部を置く研究会の日本支部のようなものもあり、日本でもこの「不思議」を研究する人は何人か出てきた。しかし、それも「老舗」の研究だったり、「ファミリービジネス」という枠組みで研究している人はほとんどいないのが現状だ。
たまたま今年は正月から、強い「ファミリービジネス」の代表と思われてきた岡山の「林原」の経営破綻という大きな事件があった。また旧知の方が経済産業省で「ファミリービジネス」の担当審議官になったり、慶応の青井教授がファミリービジネスの研究も行っていたりと、偶然のことが重なったので、これは今年こそ「ファミリービジネス研究」をする絶好の機会だと考えている。
その場合のポイントは当初は二つを考えている。①ファミリービジネスの実態の広報、②ファミリービジネスの強さの原因究明、である。特に①に関して、日本ではまだまだ「ファミリービジネス(同族企業)は一族だけが儲けて従業員は搾取されている」ようなイメージを持たれている。また、逆に「ファミリービジネスは中小が多いので潰れそうな企業が多い」という暗いイメージも払拭されていない。
何といっても日本企業の9割以上が「ファミリービジネス」なので、これなしに日本経済は語れない。日本一の企業「トヨタ」もファミリービジネスだ。さすがにここの研究が手薄というのは、まずいだろう。
ファミリービジネスと表裏の密接な関係にあるファミリーオフィスとしては、「顧客を知る」という意味でもファミリービジネスの深い理解は必要不可欠だ。今年は基本に帰ってこの基本的なポイントを突っ込んでやりたい。
田原総一郎氏も勘違いー近江商人の「三方よし」の世間よしの意味
田原総一郎さんが先日の日経コラムで触れていたが、近江商人の「三方よし」とは、なかなか奥が深い言葉だ。「自分よし、相手よし」は商売である以上当然だが、問題は「世間よし」だ。これを私は長年、「社会貢献」のことだと解釈し、さすがは近江商人だと思っていた。田原氏もそう解釈されているようだ。
商人として有名なのは近江商人と甲州商人だ。よく甲州商人の歩いた後にはぺんぺん草も生えない、などというが、近江商人はそうでないと私などは長年勘違いしていた。ところが、何年か前に近江商人の代表、伊藤忠兵衛の直系の方から、近江商人だろうが何商人だろうが本質は金儲けで何にも変わらないということを伺ったのだ。
要は、近江商人も社会貢献など考えてもいなかったということだ。ではなぜ「世間よし」と言ったのか。これは、とかく批判されがちな金儲けという行為を正当化するための一手段だったという。「世間よし」の例としては、例えば、江戸の周辺で米が不作で、大阪の米を全て江戸に持っていって売ったほうが儲かる状況がある。近江商人はこのときに3割くらいは地元に残したというのだ。これが「世間よし」だ。
つまり、100%金儲けだけではないよ。地元のことも考えているよ、ということだ。しかしこれは、継続的にそこで商売をするには当然必要なことで、商売のノウハウのような話だ。決して「世間よし」などといえることではないと思われる。しかし、そこが近江商人の優れたところで、このキャッチフレーズによって近江商人の社会的地位は上がったと思われる。
商人は金儲けだけというのは、あまりに当たり前で話にもならないが、そこをカモフラージュした近江商人の「知恵」こそ評価されるべきだと個人的には考えている。
自民党の石破茂政調会長から聞くー日本の財政、少子化は限界を超えている
9日の夜はグローバル・タスクフォースという団体主催の研究会で、講師が自民党石破政調会長だった。場所も自民党本部でいつもとは違った雰囲気で開催された。この研究会で以前講師をしたことがあり、それ以来、朝の研究会に時々出ている。
政治家は話に慣れているのでだいたいが飽きない話をする。ただし、官僚のように守備範囲が決まっていないので、どうしても突っ込んだ話は自分の得意範囲以外は難しい。この日のテーマは産業構造の転換だったので石破政調会長にはやや範囲外だったかもしれない。
話の中で気になったことが一点あった。よくある「個人資産1400兆円」の話だ。日本は1000兆円の借金があるが、この個人資産があるので大丈夫だとよく言われる。しかし果たしてそうか?
1400兆円は「負債」は引いていない。ローンなどの負債は600兆円もあると言われる。そうなると純資産は800兆円で、この時点で債務超過だ。しかも資産の中で不動産や株などは現時点でかなり毀損しているという説もある。
こうなると、確かに日本の財政は待ったなしだ。しかし、役人にも全く危機感はない。相変わらずの無駄使い、天下り確保のための財団つくりに精を出している。考えるのは自分のことだけだ。そこを抑えるのは政治家の役目だが、期待した民主党の仕分けは結局、狡猾な官僚によって焼け太りも指摘されている。
韓国のように一度国が破綻しなければ皆が気づかない国民なのかもしれない。でも安易な消費税増税もいけない。何とも困った国になったが、個人は自分で防衛するしかない。
岡本ホテルー何と被害額は二百数十億円
岡本ホテルといえば、前はテレビでの宣伝も行っていた。熱海にいくとバスも走っている。しかし、最初にここのやりかたを見た時に愕然とした。それは7年前だったと思う。
何しろ、100万円「預ければ」数回の宿泊券がもらえ、3年後には100万全額戻るというものだ。それだったら、会社は「どうやって儲けるの」という話だ。まずは無料の体験宿泊に誘い、その夜に契約させるという手法だ。まあしかし、こんな簡単な詐欺にまともな人だったら騙されるはずもないと思っていた。
ところが、なかなか岡本ホテルはつぶれず、ようやく昨日幹部逮捕となった。私が知ってから7年だが、ここの営業はもっと前からしていたはずだ。それにしても数千人がこんな簡単な詐欺に引っかかったことになる。日本の「教育」とは何なのか、改めて暗澹とした気持ちになる。
この岡本ホテルの手法は「ポンジ・スキーム」という詐欺の基本形だ。つまり、常識ではありえないいい条件で最初の客を集め、その配当や返還金はその後に入ってくる客の主資金から出すという自転車操業だ。だから新規客が少なくなるとたちどころに破綻するのだ。岡本ホテルが10年くらいもったということは、この10年間は新規の客がかなりの数いたことを物語る。おそろしい話だ。
日本の学校では「お金は卑しいもの」ということで、お金のことは教えない。でも詐欺の基本を教えることは生きていくうえで、非常に重要なことである。一度詐欺にかかると、なかなか元の生活に戻るのは難しいのだ。ある意味、学校の勉強より重要な話だ。
もちろん欧米でも複雑な詐欺手法に引っかかる人はいる。しかし、こんな簡単な詐欺は欧米ではありえないだろう。二度とこういう詐欺事件が起きないことを祈るばかりだ。でも、まだ表面化しない大規模詐欺もいくつかある。少なくとも数年以内に表ざたにはなるだろうが。
有名高校から直接アメリカの有名大学に進学者増えるー筑波大付属駒場高校の例
日本で一番難しい高校(偏差値が高いという意味で)は筑波大付属駒場高校(筑駒)だ。ここの卒業生は囲碁関係、霞ヶ関関係で知り合いが多いが、先日ある卒業生と話をしたら、この高校も最近は「世界に通用する人材」の育成に力を注いでいるという。卒業後に東大ではなく直接アメリカの有名大学にいく人が増えているそうだ。
昔、MIT日本同窓会の会長から、筑駒からよく優秀な学生が学部に入っているという話を聞いたことがある。ところがここ数年、日本の若者が内向きになってきたせいか、留学生が少なくなったとよく指摘されてきた。そこで、昨年からエールクラブでもハーバードクラブでも積極的に優秀な学生の勧誘のため、大学の入学担当者を呼んで日本で説明会を開いたりしている。
昨年はエールに7人、ハーバードに4人の学部合格者を出した。これは今までになかったことだ。今年の結果はまだ聞いていないが、そろそろ合格者を囲む会が開かれるはずだ。昨年も会ったが合格者はそれぞれ独自なものを「持っている」。灘高のマジシャンは天才的な男で、エールとハーバード両方に合格し、エールに行ったが、普通ではない雰囲気だった。
今年もどういうユニークな学生がいるか楽しみではあるが、なかなか日本社会はこういう「異能」の人を活かしきれないようだ。その結果、頭脳流出というもったいないことになっている。日本に帰ってくるつもりだったら、むしろ東大でも行った方がいいということになってしまい、また内向きに戻ってしまう。
それでも最近はベネッセが「ルートH(HはHarvardのHだと思われる)」という組織をつくり、留学情報もかなり入るようになった。もちろん、日本の同窓会もお手伝いはするのだが、日本での面接機関であることもあり、なかなか情報提供も難しい面がある。
ともかく、有名高校が外向きの姿勢を示しているのは非常にいいことであり、これは開成、麻布などでも同様だと聞いている。教育水準はまだまだ日本の大学は世界の一流大学に伍していくところまで行っていないので、若者には海外の世界一流の教授、学生と接して刺激を受けて欲しいものだ。サッカー、野球などは既にそうなっているのだから。
愛知は予想通りだが都知事選は?-東国原氏は都知事の資質があるか
愛知知事選と市長選は予想通りの結果になった。午後8時の投票終了と同時に当確が出ていた。これは全くの想定内とはいえ、4月の都知事選は予想もつかない。
その中で早くも東国原前宮崎県知事が都知事選への出馬を表明した。既に永田町のマンションの一室を借りているという。宮崎県知事としては一定の成果を挙げた人と思われるが、果たして東京都知事としての資質があるものかどうかは疑問だ。
中途半端な辞め方をして、誰もが、実は宮崎県知事は単なるステップアップの足場でしかなかったと思っているだろう。しかも後継は自治省出身の役人である。これでは従来型で、宮崎がよくなるわけもない。それを東国原氏は一番よく知っているはずだ。反役人で知事になった人だからだ。
しょせん、お笑い芸人だからといえばそれまでだが、こと首都の知事となるとそうも言っていられない。我々東京都民はかつての東京、大阪での苦い経験を反省しなければならない。そうノック、青島現象だ。結果的に二人とも仕事ができず不幸な辞め方をし た。そのつけは本人ではなく、東京都民が負わねばならない。
民主党、自民党で誰が立候補するか分からないが、単なる芸人でパフォーマンスがうまいだけで、東京をよくしようとも思っていない人を選んだら、その負債は選挙民に返ってくるのだ。
伊藤滋教授に大相撲改革ができるかーもともと都市工学の専門家
また大相撲の不祥事で、特別委員会座長として伊藤滋教授がマスコミに登場している。なぜこの方が大相撲?という疑問を昔から持っていた。都市工学の専門家だからだ。
もう15年ほど前になるが、経団連で首都機能移転を担当していたことがあり、その時に学界の専門家として伊藤教授から頻繁にお話しを伺った。今ではもう首都機能移転などと誰も言わないが、バブルの頃は政治家も役人も本気で考えていたのだ。
伊藤教授は国土庁が推奨していた那須とか岐阜とか言わずに、日本の地理的中心たる名古屋駅周辺のビルを役所の事務所として活用するという案だった。それが一番安上がりという理由からだった。そもそも今のままで支障がないので首都機能移転の話もなくなったが、当時、名古屋の既存のビルを利用するという意見は伊藤教授のオリジナルなものだった。
しかし、産業界がこの事業に賛成していた一つの理由は、多大な建築受注が得られるからで、政治家はもちろん多大な利権が入ると考えていたからだ。既存のビルを使うという発想は個人的には素晴らしいと思っていたが、周囲の思惑とは異なる意見だった。
今回、伊藤教授への期待は「大相撲改革」である。今日までのところ、むしろ最小限の処分で済まそうと思われるような発言をしている。既得権益に関係のない学者の立場から、今回も筋論を展開してほしいものだ。
「八百長」の語源ー相撲ではなく囲碁
今や日本全国「八百長」一色だ。でも一部マスコミでは、もともと八百長なる言葉は相撲からきているので、本家本元だ、などといういい加減な報道もある。若干ややこしいが、もともとは囲碁でわざと負けることが「八百長」なのだ。
明治時代に八百屋の長兵衛(略して八百長)という男がいて、囲碁の達人だった。お客さんに力士の伊勢の海がいて、いつも二人で碁を打っていた。実力は長兵衛の方が上だったが、商売上のことがあり、いつもわざと負けていたのだ。そこで故意に負けることを「八百長」というようになった。
確かに、囲碁の世界では大会を除いては「わざと負ける」ということは多い。昔、私が慶應囲碁部に入ったときに、30年くらい先輩の方と打って「わざと負けた」時に、「八百長をするな」とこっぴどく怒られたことがある。遊びの囲碁でも八百長をするときには、相手にわからないようにしないとひどい目に合うのだ。
ましてや、職業としての相撲で八百長をやってバレたとなると、これはタダでは済まないだろう。今までは「口頭」だったので証拠もなくグレーだったが、文明が進むにつれ、携帯という文明の利器に足をすくわれた格好だ。パンドラの箱が開けられた以上、相撲協会も腹をくくる時が来たのだろう。
久々に見た斉藤健さんー菅総理に大相撲の八百長疑惑を質問
今日はテレビの国会中継で自民党の斉藤健さんを久々に見た。この人は通産省からハーバードのケネディスクールに来ていた。卒業は同期でジョゼフ・ナイの授業で一緒だった。何回かの挑戦で議員になった。役人というよりも、俳優的な容姿で驚いた記憶がある。
斉藤さんも何をするために国会議員になったのか詳しくは知らないが、今日は大相撲の八百長問題を質問していた。こんな質問をするために議員になったのではないだろうが、まだ一回生なので自民党の中では下積みなのだろう。これから何か大きな仕事をしてほしいものだ。確か、アメリカにいるときには大きなことがしたいと言っていたような気がする。
そういえば、新年にハーバード同窓の経済産業省の中尾泰久さん(国際経済課長)と雑談していたときに、1991年にロースクールを卒業(オバマと同期)した中に、河野さんという東国原さんの後釜として宮崎県知事になった人がいるそうだ。この人には会ったことはないが、同じ時期にハーバードで学んだ仲間で政治家になった人も多い。
先日のハーバードクラブで1995年くらいに卒業した人と話をしたら、これ以降の卒業生は政治家になるとか起業するとかいう人はほとんどいないそうだ。1991年から92年卒業組には、三木谷(楽天)、堀(グロービス)、南場さん(DeNA)などの起業家もいる。この時期は職場派遣の最盛期で、数が多かったことも一因だろう。
何はともあれ、同じ時期に同じ釜の飯を食べた人には、大いに社会をよくする方向で活躍してほしいものだ。
「ファミリービジネス」のオーナーは誰に相談するかーファミリーオフィスが必要
昨日の慶応青井教授との懇談でもう一つ重要なポイントがあった。何かと悩みの多いファミリービジネスオーナーだが、その悩みを「誰に相談するか」だ。現在のところ、銀行、税理士、弁護士などに相談しているようだが、彼らは「自分の儲けられるところ」しかやらないので縦割りになってしまい、横串が入らないという。
そもそも、既存の組織や専門家ではできないので、約100年前にアメリカでできたのが「ファミリーオフィス」だ。それぞれ縦割りの専門家を束ねて「横串を刺す」人が必要なのだ。この人に悩みを言えば、各分野の専門家に相談してくれて満足できる回答を持ってきてくれる人―これがファミリーオフィスだ。
確かに、忙しい企業オーナーにとっては、現状の自分の悩みを各専門家のところに行って説明する時間はない。だから、弊社のお客様でも、私が最初面談したときには多くの問題がそのままになっていた。この問題群を私が引き取って、それぞれの専門家と相談して何とか満足できるレベルの回答をスピーディに持っていくのである。
これが「ファミリーオフィス」の最大のメリットで、日本社会では馴染みの薄い「横割り」ビジネスである。これが日本でも普及すれば、明治以来、全てを縦割りでやってきた日本社会への大きなインパクトになる。まさに「草の根」からの改革である。
政府や経済界も言っている「横割り」社会の実現は、お題目を唱えているだけではいつまでたっても進まない。まずはデファクトで、実例で示さないと何も変わらない。そのモデルケースの一つになるのがファミリーオフィスなのだ。