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ジュネーブ・ファミリーオフィス会議報告③-ファミリービジネスのイメージが悪いのは日本だけ

今回ジュネーブの国際会議に出席したもう一つの目的は、欧州での「ファミリービジネス」の位置づけを確認することだった。今回もアメリカからの参加者もいたが、彼らにはファミリービジネスのことを聞かなかった。というのは前回クアラルンプールの会議で、ニューヨークのファミリーオフィスの社長から「あなたはファミリービジネスのイメージが「悪い」と言ったが「いい」の言い間違いではないか」と冗談ぽく言われたのだ。それほど、アメリカ人にとっては日本でのファミリービジネスの評判の悪さは理解できないようだ。


結論からいうと、欧州でもアメリカと全く同様、「ファミリービジネスは責任ある経営をしてくれるのでよい製品もつくるし、業績もいいし、尊敬もしている」とのことだった。見事に同じだったが、ユニークな意見としてはあるフランス人の言った言葉、「ファミリービジネスは基本的に尊敬されているが、中にはジュネーブに隠し口座を持って脱税しようとして捕まる人がいる。こういう人は金の亡者として軽蔑されている」とのことだ。しかしこれは「脱税」が悪いのであって、ファミリービジネスが悪いわけではない。


問題は、なぜ日本だけでファミリービジネスの評判が悪いかだ。これはいくつかの理由が考えられているが、最大のものは日本人特有の「嫉妬心」だろう。欧米人も同族企業の2代目、3代目に対する嫉妬心はあるが、「自分も努力すればそれ以上になれる。そうなった方がえらい」という回答だ。そうなると、日本では起業家に対する評価が低いことも関連してくる。


もし、日本のファミリービジネスのイメージの悪さが日本人特有の嫉妬心に起因するとなると、これは変えるのは大変だ。あるいは無理にイメージを変える必要はなく、実際にファミリービジネスがいい経営形態だということが分かれば自然にイメージは変わるという研究家もいる。日本でもトヨタ、サントリー、武田といったファミリービジネスの代表はいずれも業績がよく強い経営をしている。


となると、問題は「広報体制」か。3年前から明治大学ビジネススクールに初めて「ファミリービジネス」というそのものの名前のついた講座ができた。その後は、他の大学でもここまでダイレクトではないが、ファミリービジネスを扱う講座ができている。こういう草の根からの活動が重要だと今は考えている。




ジュネーブ・ファミリーオフィス会議報告②-国際会議で誰と話すか

最近2回のファミリーオフィス関係の国際会議で、会議後のコーヒーブレークや食事会で「誰と話すか」「誰から情報を得るか」が大きな問題だった。誰も知り合いはいないし、こちらは10年間も英語を話していない。いきなり話しかけても煙たがれるだけだろう。何か「とっかかり」が必要だった。


昔だったら、例えばバブルのころは、日本の興味がある人とか日本にいたことがある人、などたくさんいたので「とっかかり」はあった。しかし、今はこういう人は本当に少ない。日本に興味がある人そのものが少ないのだ。困った結果、参加者でハーバード、エールの卒業生を見つけて(幸い講演者は資料の中に略歴がある。自分もある)話しかけた。


さすがにスムーズにいろいろな話になって、夜は飲みに誘われたりもした。そこを起点に、「こういう人はいないか」とか言っていろいろな人を紹介してもらうのだ。アメリカに留学してから20年以上経って、この経験や経歴が活かされた瞬間だ。この話は留学した後輩やこれから留学を考えている若者に話していこうと思う。


帰国後はお互いメールでやりとりだが、どんどん人のネットワークが広がる。欧米社会が紹介主義、学歴社会であることを改めて感じている(それに比較すると、日本はコネ社会でも学歴社会でもない)。彼らは日本人ほど簡単に人を信じることができないので、こういうことを大事にしているのだろう。


また、彼らは自分のアピールがうまい。またノブレス・オブリージュ(エリートの責務)の意識が強い。ともに、日本だったら「あいつはちょっと学歴があるだけで生意気だ」とほとんどの人から思われてしまうことだ。上をたたく日本と上を伸ばす欧米の大きな違いだ。


だから、夜の個人的な飲み会では結構きついことを言われた。お前もハーバーディアン(ハーバードの学位を取った卒業生のこと)だったら、こういうことをやるべきだ、日本をこうやって変えていくべきだ、という話だ。オバマのようなことを言う人間が多いのだが、私からは、日本は徐々に変わっていくと思うが、人々の嫉妬心が強い国なのであまり目立つのはよくない、という説明をする。そうすると、???となるのだ。


この嫉妬心の関係から、次回は「ファミリービジネス」について聞いたことをまとめる。





ジュネーブ・ファミリーオフィス会議報告①-「本当」と「ウソ」のファミリーオフィス

6月初旬にジュネーブでファミリーオフィスの国際会議によばれ参加した。4月のクアラルンプールの国際会議はAPACの会合だったので、参加者はアメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポール、香港からで、欧州は少なかった。今回は欧州ファミリーオフィス事情を探るために出席した。


参加者と様々な場で懇談をしたが、あるイギリスのファミリーオフィス代表が面白いことを言った。「この中で「本当」のファミリーオフィスは少ない」ということだ。確かに参加者はファンドの代表だったり、不動産ファンドの代表だったりと、「ファミリーオフィス」のイメージとはほど遠い人もいた。彼らの共通点は「超富裕層を顧客にしている(したい)」人の集まりということだ。


先のAPAC会合でも、いろいろな人が「ファミリーオフィス」を名乗っていた。しかし、今回の会合で確信したのが、世界のファミリーオフィスの「数」はこういった「自称ファミリーオフィス」を含んだ数ということだ。一般的にはファミリーオフィスの「数」はアメリカで5000、世界全体で7000と「言われる」。要は予想数であり、誰も実態はつかめていない。


随分多いというのが私の直感だが、この数には相当数「ファンドを売るだけ」の会社も含まれている。「本当の」つまり、超富裕層のニーズをワンストップで受ける」ようなファミリーオフィスの数は半数以下であることは間違いない。日本でも自称ファミリーオフィスは数十件はあるが、本当のものは数件であるのが実態だ。


世界も似たような現状があるだろう。私が知る限りファミリーオフィスの「協会」は世界で当日本ファミリーオフィス協会だけだ。今回の会合でも相当驚かれた。だから各国の実態をさぐる術もない。そもそもファミリーオフィスは「自然発生的」なものであり、政府が定義してつくったり、政府の規制や登録の下にあるものでもない。またそうなってはいけないものだ。


だから、国によってファミリーオフィスの定義が違ってもいいし、いろいろなファミリーオフィスができるのは自然の流れだが、「共通点は超富裕層を顧客にすること」ではちょっと節操もない。この分野は民間の自由な活動の一分野なので、デファクトでスタンダードができるべきだと考えている。幸い、各国でリーディングファミリーオフィスはあるので、彼らと一度「ファミリーオフィスの定義」について議論しようと考えている。

浜田宏一教授からプレゼンの極意を学ぶーこの人は「教育者」だった

浜田教授とも知り合って24年の付き合いになるが、永年、政権の経済政策がけしからんとか、政治家がけしからんとか、日銀がけしからんという話しかしていなかった。大学教授というよりも政治家に近い人だと考えていた。今も内閣官房参与なので、政治向きの人だ。ところが、意外にも学者、教育者の一面を見ることになった。


私が来週、ジュネーブの国際会議に出るので、昨日その話をしたところ、「英語でのスピーチの仕方」を講義し出したのだ。今回はショートスピーチになったのだが、そのやり方。あるいは今回、事務局との連絡の途中、パネラーの話もあり、相当ビビッタ話をした。パネルディスカッションは恐怖で、途中、話の流れが読めなくなりいきなり自分に当てられたらどうしよう、、、などと不安になるものだ。


浜田教授もアメリカに行った当初はパネルディスカッションは嫌だったそうだ。日本人は英語でのパネルは誰でも嫌だろう。しかし、ある時から得意になったそうだ。あるいは、個人的に嫌なのは質疑応答だが、これにもコツがあるという。意外な話だったが次から試してみようと思う。


それ以上に浜田教授のすごみは自分自身の「プレゼン」だ。さすがにアメリカで苦労してきただけあって、自分を「どう見せるか」には常に気を配っている。外見からは考えられないが、すごいエンターテナーだ。これはエールのトービン教授から指導を受けたらしい。トービン教授も「トービンのQ」だけではなかったのだ。


私も日本的な「謙譲の美徳」に惑わされて、ハーバード卒によくいる「ハーバードでは成績がよかった」などということを「売り」にする人間を軽蔑もしてきた。しかし、そういう人間の本が売れるのを見ると「日本も変わった」と感じる。浜田教授もベストセラーになった本で「ノーベル賞」とかすごい単語を出していたが、

国際的にはそういうプレゼンが「常識」でもある。


国際会議では、スピーカー各人の略歴が必ず印刷されるので、ハーバード修士やエール修士というのはやはり効く。参加者で何人かそういう欧米人、あるいはアジア人もいるので、夜は飲みに誘われたりする。私がこういう経歴を謙譲の美徳で「隠して」いたら、そもそも国際会議にすら呼ばれなかっただろう。土光敏夫も「もはや謙譲の美徳の時代ではない」と30年以上前に言っていたそうだが、自分自身も国際化、グローバル化しなければならないと浜田教授から教えられた感じだ。

浜田宏一教授の先輩と囲碁ー経団連囲碁同好会でお世話になった方

世の中とは狭いもので、浜田教授の著書を読んでいて思いがけず知り合いの名前を目にすることもある。経団連の囲碁同好会でお世話になったダイドーリミィテド元社長の羽鳥さんがその人だ。羽鳥さんとは10年以上前にいろいろとお話をさせて頂いたが、まさかこの方が東大の舘龍一郎先生のゼミで浜田教授の先輩だとは知らなかった。


浜田教授のお手配で、今週は10年ぶりで羽鳥さんにお目にかかれた。羽鳥さんは舘ゼミの一期生だそうだ。舘先生といえば、エール大経済の大先輩であり、金融学者の大御所だ。舘・浜田の「金融」は古典的な名著で、その校正を白川前日銀総裁がしたことは有名な話だ。


舘先生が亡くなられたときに浜田教授が日経に寄稿していたが、舘先生は本当に気骨のある人で浜田教授に「御用学者だけにはなるなよ」と言われたそうだ。浜田教授が内閣官房参与になった後でも、財務省を向こうに回して「消費増税反対」を言っているのも舘先生の影響だろう。正しいと思うことは誰を敵にしても言い続けなければならないというのが舘先生の遺言だ、と浜田教授は解釈している。


羽鳥さんとは、個人的なお付合いはないが、大学卒業後は当時人気のあった繊維業界に進まれた。昭和20年代は成績のいい学生は繊維にいった時代だった。その精鋭の中でトップになられた方なので相当な人物だと昔から思っていた。社業のかたわら、囲碁と写真の研究もプロ並みにされていたようで、できる人間は違うものだと驚嘆したものだ。


浜田教授と話をしていると、私のニューヨークのアメリカ人の知人と親しかったり、驚くことが多い。現在、某出版社からの人材の本が山場で連日お会いすることが多いが、分刻みのスケジュールの中で「碁会所に行った」そうなので、このあたりも政治家のハマコーに似ていると苦笑している。


国際会議で日本のファミリーオフィス、ファミリービジネスを紹介する機会が増える

4月の初めにクアラルンプールのAPAC投資サミットで講演をし、その後、帰朝報告をした。その席に来ていただいた元ソニー社長の安藤さんから、「一度外国で話をすると、そういう日本人は少ないのでまた依頼が来る」という話をされたが、本当にその通りになった。さすがに安藤さんは世界のことを知っていると脱帽したが、すぐに2社から会議の参加依頼や講演依頼があった。


取り急ぎ、6月初頭のジュネーブでの「ファミリーオフィス・プライベートウェルスマネージメントフォーラム」に参加して日本のファミリーオフィスの状況を説明することになった。その後は毎月のように世界のどこかでファミリーオフィスや超富裕層関係の国際会議があることがわかったので、調整吟味して、なるべく参加するつもりだ。


それにしても不思議なのは、国際会議でスピーチをする日本人が本当に少ないことだ。金融関係の会議ならば、日本に金融関係者は数百万人いるはずだ。その中には、外資系金融で働く人も相当数にのぼる。彼らは国際会議に出張で「参加」するだけの人が多い。これはもったいない。


4月の国際会議に出て分かったのは、情報を取るには「自分も相手に情報を提供しないと」彼らも情報をくれないという当たり前のことだ。高い参加費を払って(数十万であることが多い)何も本当の情報を得ずに帰っていくならば、日本人は本当に「お客さん」だ。会社が払う金だったらいいというのでは、日本人はますます国際場裏ではなめられてしまう。昔の企業派遣の留学でアメリカでゴルフをして帰る日本人のようだ。


確かに、国際的に日本経済の相対的地位が落ちているのは事実だ。しかし、日本は「世界第二位の超富裕層大国」であることも、また事実。この分野では、まだまだ欧米、アジアの人々は日本の情報を欲しがっている。私の下手な英語にも皆、真剣に聞き入ったり質問をしてきたりした。その時にこちらからも各国のファミリービジネスに対するイメージを聞き、大変貴重な情報を得た。


私の知り合いでも、「ダボス会議」に出ただけで国際人、グローバルエリートになれた気になっている人がいる。現地で何をしてきたか聞くと、いろいろな会議に出て話を聞いていたという。しかし、これでは誰にも相手にされないし、有益な情報も得られない。中国人やインド人などは下手な英語であってもどんどん話しかけている。私もこれにならって大いに下手な英語で暴れてきたい。







APAC会合の模様を「ファミリーオフィス実践研究会」で報告ーソニー元社長も参加

昨日は、キャピタル・アセット・プランニングの北山社長の主宰する「ファミリーオフィス実践研究会」の第7回会合で、先日のAPAC投資サミットの内容を報告した。20名程度の少人数研究会だが、ソニー元社長の安藤国威氏(現:ソニー生命名誉会長)が参加され、驚いた。安藤さんには経団連時代に何度かお目にかかっている。


安藤さんはソニー「VAIO」を推進された方として有名だが、いくら有能な経営者でも時代の波には勝てない。ITバブル崩壊には世界中の誰も逆らうことができなかった。しかし、ソニーの盛田さんが考え出したもう一つの柱「ソニー生命」で大活躍され、生保レディーに代表される日本の保険業界を抜本的に変えたのはこの方だ。


2000年代の初めのころ、よく「最近の生保は保険のおばさんではなく、パソコンを持った保険の「おじさん」が売りにくる」とサラリーマンが飲み屋で話していたのを聞いた。それまでは日本の保険の売り方は「GNP」と言われる「義理、人情、プレゼント」だった。これが非合理なことは誰の目にも明らかだった。


ソニーの盛田さんがなぜここに目をつけたのか不明だが、盛田さんの意向を受け生保事業を推進したのが安藤さんだ。ソニー生命の知り合いも多いが、「他業種」からの転職組が多い」のが特徴だ。生保業界出身だと、頭では分かっていても、ついつい「GNP」時代のクセがでてしまうからだろう。


懇親の場で安藤さんからは、「日本人で英語のスピーチを受ける人は少ないので、一度やったら今後はいろいろなところから要請があるだろう。それも逃げずに体当たりするのがあなたのためになる」という励ましのお言葉を頂いた。日本語の講演に比べ英語のスピーチは、おそらく10倍近くの準備時間が必要になる。だから皆、受けないのだろうが、留学した者の社会的責務としてやらねばいけないことだろう。


また、昨日も話して多くの参加者の賛同を得たのだが、「外国に出ていろいろな国の人と話さないと日本の現状はわからない」のも事実だ。今回の国際会議で様々な情報を得て、改めて「日本の危機」を実感した。こういう場は大事にしたい。

「アジア太平洋投資サミット」の模様ー④ファミリービジネスのイメージが悪いのは日本だけ

投資サミットでの私の講演のもう一つの柱は「ファミリービジネス」。特に、日本のファミリービジネスが非常に国内でイメージが悪く、ファミリー企業は自らがファミリービジネス(同族企業)であることを「隠す」と説明したら、「嘘だろう」という声が上がった。


また、講演後も廊下でニューヨークのファミリーオフィスの人から冗談ぽく、「おまえは先ほど「BAD IMAGE」といったように聞こえたが、グッドイメージの言い間違いではないのか」と言われた。それほど、日本以外の国々の人にとって、ファミリービジネスの印象はいいのだ。


私の講演の中では、日本人は他人を気にする民族であり(農耕民族)、嫉妬心が強い。マスコミもそれに乗ってファミリービジネスの二代目が問題を起こすと必要以上に大きく取り上げるという問題を指摘した。たまたま、司会がティムという昔イギリスBBCでワールドニュースを読んでいたマスコミ人だったので、チィムにそのあたりのイギリスの事情を聞いた。


ティムは、イギリス人も超富裕層、二代目のバカ息子について嫉妬心はあるものの、「自分は自分、人は人」ということで、マスコミは二代目の不祥事を取り立てて多きく扱うようなことはないし、国民もそんな報道を望まない(視聴率が上がらない)という。まっとうだ。


東南アジア諸国はどうか。彼らはファミリービジネスを「当たり前」のものとして捉えている。会社はファミリービジネスから始まり、それが大きくなって国家的な財閥企業になっていくことが多いからだ。シンガポールなどは国自体がファミリービジネスだとも言われる。イメージがいい悪い、以前の問題なのだ。


となると「日本特殊論」の復活だ。長年、アメリカにいるエール大浜田宏一教授が、日本は世界で採られている当たり前の経済政策をすれば復活できる。当たり前のことをすればいい、といってインフレターゲット論を主張していたのもうなずける。この浜田流アベノミクスが今のところは成功していると言っていい。


今回のサミットでは、結果的に「日本の特殊性」が浮き彫りになってしまった。超富裕層が投資をしないのも日本の特徴なら、それに関連して、相続税を上げて最高税率55%にするなどという国もない。相続税を下げる、あるいはゼロにするというのが国際的な趨勢だ。そうしないと誰も投資や経済活動をしなくなってしまう。「日本の問題」がますます重圧となり、日本に対する危機感を強くした3日間だった。この経験はいろいろな形でフィードバックしたい。



「アジア太平洋投資サミット」の模様ー③日本の超富裕層はなぜ投資をしないのか

ファミリーオフィスの発祥の地はアメリカだ。今のアメリカのファミリーオフィスは「いかなる投資先が有利か」を探す、投資銀行のような業務が中心だ。それでは、香港、シンガポールのファミリーオフィスはどうか。やはり「投資」なのである。彼らから「日本のファミリーオフィスはどういう投資先を選んでいるか」と何度も聞かれたが、あまり投資はしていないよ、というと大きく首をかしげるのである。


私のプレゼンでも、日本の超富裕層のニーズは「お金を増やすこと」ではなく、「家族の問題を解決すること」というと、アジアの超富裕層も家族の問題が深刻だという回答だ。しかし、それではお金がもらえないので投資をさせて手数料をもらうというのがアジアのファミリーオフィスのビジネスモデルだ。プライベートバンキングに非常に近い。


また、日本は相続税の最高税率が来年から55%になるよ、というと、それはクレージーだ。それでは投資で資産を増やしても税金で持っていかれるため、誰も投資をしないのではないか、というのが第一声だった。確かにそこが大きいのだろう。私の顧客にも、お金を増やしても税金で持っていかれるだけと言われる方は多い。


この税制の問題が一番大きいかもしれないが、それ以外にも日本の伝統的な超富裕層は保守的で、儲けて目立とうなどとは決して考えない。それは一時的な金持ち=成金の世界であり、持続的なお金持ちはそんなことはしない。そういう説明をすると、香港でもそういう超富裕層はそれなりの数いるようだ。


したがって、今回の各国のファミリーオフィスの方々のプレゼンは、「戦略的な投資」とか「効率的な投資っスキーム」、「有望な不動産投資」などの内容が多かった。私の内容など、まさに特殊、唯一の世界で、浮いていた。しかし、彼らは休み時間にやたら営業をしてくる。日本の金持ちはオーストラリアの不動産に興味はないか、とか、アフリカでいい投資物件があるぞ、というのをニコニコしながら言ってくるのである。


まあ、彼らも超プロなので、実際の顧客に対してはそんな感じでアグレッシブに勧めたりはしないのだろうが、ニューヨークやロンドンのファミリーオフィスの代表がインド人のインテリだったり、インド人のアグレッシブさが成功しているのだろうか。一方で彼らも、万国共通の超富裕層の悩みである相続や事業承継、子弟教育といった「家族の問題」までは手が回らないという悩みもあった。また、それをやっていかにお金をもらえるだろうかという悩みも当然あった。


共通点、相違点もいろいろあるが、それぞれの国の事情に合わせて皆、ファミリーオフィスを経営しているという実態が分かった会議でもあった。

「アジア太平洋投資サミット」の模様ー②驚くべきジャパンパッシングの現状

今回のサミットはクアラルンプールのヒルトンホテルで行われたが、基本的に三日間、参加者は寝食をともにすることになる。会議の合間にコーヒーブレークや食事時間があり、参加者同士でいろいろな話をするのが楽しみなのだ。それでも、こういう「超富裕層ビジネス」をしている人だけの集まりでも日本の注目度の低下には驚く。


もちろん、日本は世界第二位の超富裕層大国なので皆、日本に「関心」はある。私の話にも多くの方々がご参加頂いた。しかし、一方、日本は「投資先」としてはもはや魅力がないというのが参加者の共通認識だ。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、いずれの参加者も同じ意見だった。


世界にはもっと発展して、もっと有望なマーケットはいくらでもある。今更、日本とは、、、という感じだった。但し、彼らが日本に「関心」があるのは、言うまでもなく日本には超富裕層が多いからだ。しかし、これも日本の伝統的なお金持ちは投資をしないことを彼らは何となく知っている(完全ではないが)。


未だに、外資系金融が日本に参入し、撤退を繰り返しているのも日本のお金持ちの「事情」が分からないからだと思う。日本のお金持ちのマネーを当てにして日本支社をつくるものの、うまくいかず撤退する外資系(それも世界最大級の)が後を絶たないのも、彼らが日本に事情に疎いのが原因だ。


それでもプロ集団なので、だいだいの事情は分かっていて、私に「確認」してきたのが先週の会合での印象だ。欧米人にとってアジアとは香港、シンガポールであり、もはや日本ではないことに改めて痛感させられた三日間でもあった。残念だ。