日本ファミリーオフィス協会 -10ページ目

いよいよ慶應でファミリービジネスの講座が開始ー後期からビジネススクールで

4月になってシラバスも出そろったことから公表するが、今年から慶應大学院ビジネススクール(

KBS、於日吉)で「ファミリービジネス」の講座を始めることになった。昨年から慶應塾長になった伊藤公平教授と相談した結果だが、ファミリービジネスの本家本元たる慶應で今までこの分野に特化した講座がないのは非常に不思議だった。

 

個人的には2011年の明治ビジネススクールでの、大学としては初のファミリービジネス講座開設(担当教授は青井倫一研究科長)から明治で講義をしてきたが、2016年に青井教授が亡くなった後に明治ではファミリービジネスをビジネススクールの柱として、現在22もの講座がある(世界最多である!)。

 

その後、2018年に東大経済学研究科の柳川範之教授と寄附講座を2年間やったが、このコロナ禍で対面授業ができなくなり中断。ともかく、本丸の慶應で講座をつくることに注力した昨年1年だった。この成立には、慶應ビジネススクール元校長で、現在、ファミリービジネス学会会長の奥村昭博先生に全面的にお世話になった。

 

もちろん、私一人では心もとないので、しばらくは奥村先生にご出席頂き、都度ご指導頂くことになっている。東大での2年間の講座でも、奥村先生に毎回ご出席をお願いし、ご指導頂いた。当然のことだが、慶應ビジネススクールのことは全てご存じなので、授業の中味はもちろん学事的なこともご指導頂けるのが有難い。

 

慶應の評議員のメンバーを見ても大半が「ファミリービジネスのオーナー」である。有名なファミリービジネスのオーナーのほとんどが慶應卒といっても過言ではない(トヨタ、サントリー等々)。東大講座でも2年間ともお世話になった星野リゾート星野さんなど、慶應卒の方々の英知を結集した魅力的な講座にしたい。

 

 

ネイサン・チェンの金メダルを祝うーエール大学の現役の学生とは!

今日は日本中が注目していた男子フィギア決勝があった。日本人も2,3位を占めたが、ネイサン・チェンとの差は素人から見ても大きかったように感じた。このネイサン・チェンは現役のエール大学の学生と聞いて驚いたものだ。

 

私はうっかりしていたが、昨年末のエール大学からのメールで初めてこのことを知った。他の人は当然かなり前から知っていた有名な話のようだ。昨日、エール大学日本同窓会の元会長の伊藤公一さんにこのことを聞いたら、伊藤さんがエール大学の関係者から聞いた話として、チェンは学業も優秀で人間的にも優れ、大学の寮の中でも皆から尊敬されている存在だという。何となく分かる話だ。

 

伊藤さんとも話したが、アメリカにはこういう人物がよくいるのだ。日本語でいうと「文武両道」というやつだ。エール大学経済学大学院にいたときに、授業でも鋭い質問をするガタイのいい男がいた。クラスの人気者で、周囲の人に聞くと、高校時代にアメフトで全米NO1になったアメリカでは誰でも知っているような有名人だという。全ての点で「かなわない」と思ったものだ。小型ネイサン・チェンだ。他の有名アスリートではタイガー・ウッズもスタンフォードを卒業しているらしい。

 

翻って日本の大学スポーツを見てみると、完全に勉強とスポーツが分離しているように感じる。大学駅伝でも大学ラクビーでも、結局強い所は高校で実績を残した人を多く入れた大学だ。スポーツ推薦枠がないか少ない大学は弱いという、あまり面白くない結果になっている。これではやる前に結果は見えている。

 

日本でも戦前はまさに「文武両道」の人はたくさんいた印象がある。私の出身高校も文武両道と質実剛健をかかげ、戦前は甲子園に出て東大に入った人間がたくさんいたという話を聞いた。そのころの東大も六大学野球で必ずしも最下位ではなかったようだ。

 

何とも残念な日本の状況だが、最近の日米の差を見せつけられた今日のオリンピックフィギアではあった。

 

 

 

 

 

 

 

ハーバード日本同窓会でエズラ・ボーゲル教授追悼講演会ーアメリカ時代の恩人

一昨日は帝国ホテルでボーゲル教授の追悼講演会があった。このコロナ禍でどうなるか心配であったが、無事に実行でき(実行委員長:林芳正外務大臣)、200名近くが集まったのには驚いた。息子のスティーブ・ボーゲルに30年ぶりに会えると期待したが、ズーム参加だった。

 

思えば、この方には2度の機会にわたり大変お世話になった。一度目は1991年にハーバード東アジア科大学院に留学した時で、授業を取らせて頂いた。なぜか毎回「日本の経団連から来ているアイヤマさんに聞いてみよう」とか言って、難しい質問を浴びせられ、たいてい恥をかいていた。

 

二度目は2002年にハーバードの客員研究員として滞在した時だ。この時代はボーゲル教授も引退状態で、ハーバードのそばにあるご自宅で何度かお話させて頂いた。その時に色紙に書いていただいたフレーズは「Japan as NO1???」だった。ちょうどその頃、あまり注目はされなかったがボーゲル教授は「Japan as NO1?」という著作を出された。

 

ボーゲル教授がよく私に言っていたのは、日本人の多くが勘違いしている「AS」の意味だ。ボーゲル教授は決してJapan「IS」 NO1とは言っていない。やはりNO1はアメリカだ。日本にも5種競技や10種競技で一番になる部分があって(治安の良さなど)、そのことを書いただけなのだ。

 

この日本人の勘違いが、バブル崩壊に続く失われた30年を招いた一因になったかもしれない。そこは全くボーゲル教授の意図したところではないが、いずれにせよ、アメリカでも知日派の教授が少なくなった今日、日本にとっても大事な人を失った感はある。

 

 

なぜハーバードは世界一なのに常に進化し続けるのか?ー日本人として素朴な疑問

先日、名古屋商科大の栗本理事長と懇談した時に、「ハーバードは世界一にも関わらず常に新機軸を考え実行しているのはなぜか」という話があった。その時は時間も限られていたため、これについては自分の経験を話さなかった。

 

私も当然、そういう疑問を持っていた。日本人なら誰でもそう思う。ところが、意外にもアメリカ人は「当然」と考えているようだ。なぜか?それはアメリカ国内でも「ハーバードのライバルが複数いて、常に転落の危機がある」という一言に尽きる。

 

日本だと東大を頂点とするピラミッド構造が明治以来続いているので、東大のライバルはいないが、アメリカだとハーバードのライバルは少なくとも10校くらいはある。私がハーバードの東アジア科大学院に留学していた時に、よく学科長と雑談したが、ある時腰が抜けるほど驚いたことがある。

 

学科長が言うには、「今はこの学科も全米一のランキングで、定員30名に対して300名ほどの応募者がいるが、これが定員割れになったら自分は首になる。毎日そういう危機感を持って仕事をしている」と言ったのだ。最初はジョークだと思って笑ったが、真剣勝負の話だった。

 

確かに冷静に考えると、少なくともエール大やプリンストン大、シカゴ大、スタンフォード大やUCバークレーなど、東アジア研究で同格のところはこの他にもある。現状に胡坐をかいていると、あっという間に越されて、学科長ではないが、定員割れなんてこともあり得ない話ではない。

 

ハーバードのビジネススクールでも事情は同じで、既に最近のランキングではスタンフォードやケロッグの後塵を拝していることも多い。新機軸をどんどん打っていくのは至極当然の話だ。常にレベルの高い競争のもとに、どこの大学も緊張感を持って運営をしていることが、アメリカの大学のランキングの高さにつながっているのは間違いない。

 

 

 

 

大学こそ「ファミリービジネス」経営が有効ー名古屋商科大のケース

今回の日大の理事長の横領事件は、何かゴーン事件と同じような後味の悪い思いがした。そう、これこそ、経営学でいう、無責任なサラリーマン社長(理事長)のエージェンシー問題なのだ。会社や大学がどうなろうとも自分には関係なく、自分の懐さえ潤えばそれでいい。自分の任期が終われば後は野となれ山となれ、だ。

 

ところが、当然オーナー社長だったら、こんなことは言っていられない。下手をすれば個人補償などをしていて、一文無しになってしまう。必死で組織のことを長期的に考えざるを得ない。まさに命がけで経営をしなければならないのだ。その一例を大学経営者に見た。

 

名古屋商科大の栗本理事長とは、昔からの知りあいだが、先週丸ビルの中にある同校の東京校でお会いし、初めて学校の戦略について伺った。栗本理事長は三代目で、ビジネススクールの国際認証を三つも取るという、国内ビジネススクールで唯一のことをやってのけた。ビジネススクールではルーツ校の慶應や早稲田、明治などにも先行している。

 

栗本理事長は、ビジネススクールで新機軸を打ち出すとともに、ケースセンターの買収やボーディングスクールの新設も行っているというから、すごいスピードだ。これも名古屋商科大が「同族経営=ファミリービジネス」だからだ。トップのリーダーシップですぐに大きな変革が可能だ。

 

ところが、伝統校だと「教授会」などの手続きや前例にもとづく複雑なルールがあり、新機軸を若手が打ち出してもそれが大学、学部の方針になることは難しい。しかもこの「伝統」はすぐには変わらない。となると、大学こそ「二世、三世」には活躍の場が大きいのではないか。もちろん、ベンチャーで大学をつくることもありうるが、できるまでに相当な労力がかかる。地盤のある後継者が「後継ぎベンチャー」を行うのがベストかも知れない。

 

しかも、こういう新興勢力が出てくると、伝統校もうかうかしていられない。箱根駅伝のようなものだ。それによって伝統校のビジネススクールでも変革が進めば、日本の大学の国際ランキングが上がるという効果も期待できるかもしれない。

 

 

 

ノーベル賞の真鍋叔郎氏ー日本の大学に残らなかった理由

今年のノーベル賞で唯一の「日本人」である真鍋さん。もともと日本人であることは間違いないのだが、心は明らかにアメリカ人だ。私も1990年からの米国留学中は「地球温暖化」を論文テーマにしていたので、真鍋叔郎という名前は知っていた。実際にお会いしたのは1997年に真鍋さんが海洋科学研究センター(JAMSTEC)に来てからだ。

 

その時に既に真鍋さんは、「日本の大学では特に若手は雑用が多すぎてとても研究はできない」と言われていた。確かにそうだろう。文部科学省の監督下にある以上、様々な文書や報告書を書かなければならない。夏休みも短い。「これではとても成果など出せない」と感じて渡米したそうだ。

 

アメリカに行ってみると、年配の教授から「若いうちは雑用などせず、研究に没頭せよ」と言われ、「ここは天国だ」と思ったそうだ。アメリカの大学では夏休みも4か月あるので、集中して研究できるのも大きい。このことは日本からアメリカの大学に行った教授が異口同音に言うことだ。

 

「日本人」のノーベル賞受賞者の多くがアメリカで成果を挙げたことを鑑みると、さすがに日本の大学も真剣に考え、改革をすべきだと思うが、文科省も大学当局も何も変わらない。むしろ、「今年も日本人がノーベル賞を取った。日本もなかなかだ」で終わってしまう。

 

真鍋さんの日本の大学への真摯なメッセージも、「変わった天才の戯言」として無視されそうだ。

 

 

 

麻生太郎氏の「2メートル以内の法則」とは?ー実はいい人

我々は政治家と直接話しをする機会が少ないので、多くはマスコミを通した報道で知ることになる。その点、麻生太郎さんはかなり誤解されていることは間違いない。我々の印象としては、上から目線でヤクザのような恰好をしている、ということくらいだ。

 

ところが、麻生さんをよく知る人から話を聞くと、実物は全く違うようだ。以前、経産省と外務省の高官で麻生さんに仕えた人から聞いたが、知る人ぞ知る「麻生太郎の2メートル以内の法則」というものがあるらしい。つまり、麻生さんから2メートル以内にいる人は皆麻生ファンということだ。ところが2メートル以上遠くなるとファンは少なくなる。

 

確かに私の知る限り、官僚、政治家、あるいは麻生さんのいとこの人から聞いても「太郎ちゃんはいい人」ということになる。一般的には信じがたいが、近くの人が皆同じことを言っているので、多分そうなのだろう。人間の評価は難しいものだ。

 

こういう例から考えると、政治家の本当の姿は我々一般人には分からない。ところが、こんな中で2週間後には投票しなければならない。私も選挙区の候補の誰とも話したことすらない。間接民主制は仕方がないこととはいえ、投票で「いい人」を選ぶのは至難の業だ。

霞が関にも立派な官僚はいるー例外的な二人

最近、また頻繁に霞が関官僚の不祥事が報道されるようになったが、こういう報道を見ると、我々は「官僚というものはこういうことをする人種だ」と思ってしまう。しかし、私が多くの官僚と付き合ってきた中で、企業にタカッたりする人間はさすがに少数派だ。10人に一人もいないだろう。またそういう人間は話題になっているので、他の人に聞けばすぐ分かる(意外に教えてくれるものだ)。

 

霞が関のキャリアは数千名いるが、私が知り限りでも2名ほど非常に尊敬できる人がいる(数的には少なすぎるが)。もちろんタカリなどは論外で、総理や大臣に忖度することもなく、それでいて出世もしたという稀有な方々だ。

 

一人は元財務相財務官の篠原尚之さんだ。高校の先輩で昔からよくお話をさせて頂いている。最近も当協会の話をして、理事にご就任いただいた。私が「篠原さんだったらいろいろな企業の顧問の依頼もあるでしょう。なぜやらないのですか」と聞くと、やはりそういう依頼は財務省との橋渡しを先方は期待していると思うので、そういうことをしてお金をもらうのはどうか、ということだった。こういうことを言える官僚はほとんどいない。

 

もう一人は、元厚生労働省医務技監の鈴木康裕さんだ。昔、経団連のバイオの仕事でお世話になって、医学的な見地からいろいろとご教示いただいた。その後、没交渉だったが、鈴木さんは昨年、安倍総理から6月中にコロナ治療薬を承認するように、という無理難題を突き付けられた。

 

これに対して、通常の忖度官僚だったら「分かりました」となるのだが、さすがに鈴木さんは国民の健康を考えて総理の指示に従わなかった。しかしその結果、解任だ。ご本人も悩んだと思うが、この選択は正解だっただろう。もし安倍さんの言うことを聞いていたら今頃、薬害が起きていた可能性もある。

 

他にも立派は官僚は数多くいると信じたいが、やはり、退官後は企業の顧問を数十やって数億円の年収があると威張りたいような官僚が多いことも事実だ。数十年働いて、企業にタカルことを威張る、自慢することを是とするような風土があるとすれば、ここは抜本的に変えていかないと霞が関の未来はないと感じる。自分たちの給与は我々の血税からきていることを忘れられては困るのだ(少なすぎるという問題はあるものの)。

よい世襲とわるい世襲ー政治家と企業家とは状況は全く異なる

いよいよ秋には衆議院選挙があり、自民党の公認が話題になっている。その話題の中心は「世襲」だ。能力のある息子への世襲なら問題ないと思うが、他に仕事がないから政治家に、という人が実際には多い気がする。問題はそれでも何とか政治家としてやっていけてしまうことだ。

国会で発言する必要もないし、政策について勉強する必要もない。地元の祭りなどに出ていれば次回も安泰だ。これこそ「悪い世襲」だ。

 

ところが同じ世襲でも企業の場合は全く異なる。能力のない息子に任せるとその企業は簡単に「潰れて」しまうからだ。結果は相当シビアに出る。だから、親も会社が大事なので息子に世襲をさせたくてもできないケースは多い。そもそも「ボンクラ息子」に世襲させるという選択肢がないのだ。

 

世間では一般的に「世襲」に反対だ。とくにマスコミがひどい。政治家と企業家を同じ基準で考えているが、能力のない政治家への世襲はもっと厳しくして然るべきだろう。企業家の方はケースバーケースで考える必要はあるが、そもそも「自己責任」の世界になるので、結果がよかったらいい世襲で悪かったら悪い世襲になる。非常にクリアだ。

 

企業の場合はオーナー社長はビジネスの「厳しさ」を知っているので、日々、息子を厳しく鍛える傾向にある。息子でも実力がなければ社員を社長にすることも多い。そうしないと会社が潰れるからだ。

それに対して政治家の方はどうか?一般的には政治の世界の「ゆるさ」を知っているので、息子は放置していることが多い。本人も地元に帰ったり時間的に忙しいこともある。これではいい二世はなかなか生まれてこない。今の自民党に菅さんの後の人材がいないことも、このことと無縁ではないだろう。

 

幸い「悪い世襲」の方は我々の投票行動ですぐに変えることができるので、次の選挙では主権者としての権利を行使したらどうかと思う。

 

 

 

 

慶應の新塾長に伊藤公平氏ーお父さんには30年来ご指導頂く

今年になってから一番驚いたのは、慶應の新塾長に伊藤公平さんが就任したことだろう。慶應関係では、長年の知り合いの菅沼安紀子医師が「連合三田会」の会長になったことを知って相当驚いたが、この比ではなかった。父君の公一氏はエール大学日本同窓会の元会長で、私が経団連から独立して以来、大変にお世話になっている。

 

少人数の私の結婚式にご出席頂いたのを初め、日本ファミリーオフィス協会の勉強会でもアメリカの教育についてご講演頂いた。私が聞いた限りでは、公一氏が講演をしたのは他にないと思われる。逆に一昨年は「こういう話で講演をしろ」と言われ、否応もなく、私が学生の前で留学の意義について話をするはめになったこともある。

 

このように厳しめの人なので、子育てにも成功したのではないか。各マスコミで既報のように、慶應幼稚舎出身で、高校の時にはアメリカ留学もし、カリフォルニア大バークレー校で量子力学の博士号を取った、理工学部では珍しい国際派だ。

 

理工学部長の時には、学生が留学しやすくするために4学期制を理工学部で導入するなどの改革もしている。慶應はSFCができた90年代には様々な改革で注目を集めたが、その後は大きな改革がない。偏差値では早稲田に差をつけているようだが、早稲田は改革を進めているので何もしなければ抜かれるのは時間の問題だろう。

 

もちろん全学的にこのあたりは皆認識しているところなので、今回、若い改革派の公平氏が塾長に選ばれたと推察する。実際には、大学は「変えたくない」勢力が企業以上に強いところなので、抵抗勢力に負けずに、最大任期8年でいろいろな成果を出してほしい。