DONALD FAGEN  「SUNKEN CONDOS」       2012
 
 前作「モーフ・ザ・キャット」からもう6年なんですよね。
「SUNKEN CONDOS」という意味不明なタイトル、
調べてみると「コンドス」は「コンドミニアム」、
つまり「沈んでしまったマンション」、ますます混乱(笑)
 
 
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 たしかにジャケを開くと、水没した部屋に女性が。
 
 なぜかダンやフェイゲンのソロを聴く度に、心地良い快感を得るのです。(笑)
一筋縄ではいかない音作りや雰囲気...。
最初はちょっと戸惑っちゃうんだけど、聴けば聴くほど快感に。
 
 そんな中で意外だったのが「Weather In My Head」、
マジメにマイナー・ブルーズを展開しちゃってます。
歌詞に出てくる「Mr.Gore」はクリントン政権のゴア副大統領のこと?
そう言えばゴア氏は地球温暖化に警鐘を鳴らしてたけど、
温暖化が進み、海面がどんどん上昇し、マンションが沈んじゃった?
 
 そしてもう一つ意外だったのが「Out Of The Ghetto」、
なんでもアイザック・ヘイズのカヴァーらしいんだけど
どうも曲の並びから言うと、ちょっと違和感あるんですよ。
でも最後の控えめなヴァイオリンがなお一層意外性を感じさせます。
 
 あと、「Planet D'rhonda」でギター弾いてるカート・ローゼンウィンケル、
まったくノー・マークでした。70年生れのジャズ・ギタリストらしいんだけど、
間奏のソロ、今までのフェイゲンの作品にはないジャジーなギターです。
 
 買ってからもう何十回も聴いたけど、とにかく聴けば聴くほど味が出る
「スルメ」のようなアルバムですよ。
元ちとせ 「ハイヌミカゼ」     2002
 
 『元ちとせのファースト・アルバム
ヒット・シングル「ワダツミの木」「君ヲ想フ」を含む全10曲。』
 
 
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 やっぱり「ワダツミの木」と「君ヲ想フ」でしょう。
管が入った「ワダツミの木」の物語性、
山崎まさよしのマルチ・プレイをバックに唄う「ひかる・かいがら」、
3オクターブを自在に歌い上げる「君ヲ想フ」、
ディープ・フォレストのエリック・ムーケが作曲した「凛とする」、
南国奄美出身のちとせちゃんが北国の摂氏零度の世界を唄った曲です。
このメジャー・デビュー・アルバムが先か、
ディープ・フォレストに参加したのが先か、覚えていませんが、
世界的なディープ・フォレストからお声がかかったのは
同じ日本人として、ちょっと鼻高々!でしたね。(笑)
BERT JANSCH  「TOY BALLOON」      1998
 
 弾き語りとバンド・プレイが混在するアルバムですが、
ハーモニカも加わるブルージーなバンド・サウンドの「All I Got」、
ペダル・スティールが入ったちょっとカントリー風味の「Toy Balloon」、
そして、またまたブルーズ大会の「Hey Doc」、
いきなりスライド・ギターの音色に導かれるカントリー・ロック調の
「Sweet Talking Lady」など、トラッド路線から逸脱しそうな楽曲も
なかなかイカシテますよ。
 
 
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 ミュージシャン達にも信俸者の多いバートは、もはやカリスマ的な存在であり、
バートらしいギターのアタックの強さが出た「Born And Bred In Old Ireland」
あたりを聴くと、バート健在なり!と当時は再確認させられたアルバムでした。
 
 サックスやキーボードが前面に出たAOR調の「How It All Came Down」も
なかなか面白いですよ。
THE GUESS WHO 
「LIVE AT THE PARAMOUNT」 
1972
 
 ゲス・フーは中学生の頃、ラジオでよく聴きました。
彼らのヒット曲といえば、まず一番有名なのが「アメリカン・ウーマン」でしょう。
70年にビルボードで1位に輝いています。
その次はやっぱり「ノー・タイム」でしょうか。これは69年で5位。
あとは「ジーズ・アイズ」(69年6位)「ラフィング」(69年10位)、
そしてワタシの好きな「シェア・ザ・ランド」(70年10位)、
「ハンド・ミー・ダウン・ワールド」(70年17位)、
ま、このあたりまでが彼らの黄金期でしょう。
 
 
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 さて、このライヴ・アルバムの時点ではすでにギタリストのランディ・バックマンは
脱退しており、上記のヒット曲でいうと、70年の「アメリカン・ウーマン」までしか
在籍しておらず、以降の「シェア・ザ・ランド」や「ハンド・ミー・ダウン・ワールド」は
グレッグ・レスキューとカート・ウィンターがギターということです。
その後もグレッグ・レスキューの替りにドン・マクドゥガルが入ったり、
70年の中盤にはドメニク・トロイアーノ(後にジェイムズ・ギャングに移籍)も
ギターを弾いたりしています。
 
 本盤のハイライトはやっぱり後半の「ハンド・ミー・ダウン・ワールド」~
「アメリカン・ウーマン」~「シェア・ザ・ランド」~「ノー・タイム」と
続く流れでしょう。中学生の頃、バートン・カミングスのヴォーカルが
ちょっと黒人ぽくて、暑苦しい...と言った友人もいましたが。
 
 例の長~い導入部(5分半ほどある)に続きイントロのギターのカッティングが
始まるや否や、オーディエンスも沸きに沸きます。
バートンのヴォーカルも最高潮で、この時代のバートンやジョン・フォガティあたりは
暑苦しいけど、やっぱり好きですなぁ。
 
 重~い感じの「シェア・ザ・ランド」、メロもマイナーからメジャーに変わり
ハーモニーもなかなかキマッテル。エンディングのゴスペルぽいところもいい!
そしてステージのエンディングは「ノー・タイム」、
このキャッチーなリフは一度聴いたら忘れられませんねぇ。
 
 このゲス・フーのように中学生の頃、ラジオで流れる曲をノートに書いて
自分なりのチャートを組みたてていた、あの頃の純真無垢な(?)少年時代が
懐かしいですねぇ。皆さんもそんな思い出あるんじゃないですか?
南佳孝 「スケッチブック」     2013
 
 『南佳孝デビュー40周年記念作は、リオの人気ピアノ・トリオとのコラボ。
ブラジルのグルーヴ満載の新作2曲を含む意欲作。
「モンロー・ウォーク」、「スローなブギにしてくれ」の
ブラジル新録ヴァージョンも収録!!』
 
 
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 6月19日にリリースされた新作です。
「恋のスケッチブック」「マエストロ」の新曲が2曲、
カヴァーは10ccの「I'm Not In Love」、クラシックⅣの「Spooky」、
ドン・マクリーンの「Vincent」の3曲、
ボッサからは「Sem Compromisso」、「おいしい水」、「Berimbau」の3曲、
セルフカヴァーは「モンロー・ウォーク」「スロ・ブギ」の2曲です。
 
 全曲リオ・レコーディングで、フェルナンド・メルリーノ(p)、
ゼ・ルイス(b)、ハファエル・バラーダ(ds)のピアノ・トリオがバック。
 
 新録の「恋のスケッチブック」は、ピアノ・トリオのバッキングがお洒落で、
ラストの「夢から覚めても 恋する気持ちだけは 無くしたくないさ 生きてる限り」
という詩が最高! エンディングの佳孝さんのアコギ・ソロもいいですねぇ。
 
 もうひとつの新録「マエストロ」、自分の愛器(ギター?)を
愛する人に例えて歌った唄で、フェルナンドのピアノがうまくマッチしています。
 
 セルフ・カヴァーの2曲は今までにもいろんな形でカヴァーしてますが、
ここでの「スロ・ブギ」は佳孝さん自身が「ワイア・ブラシでこの曲を歌うとは
思いませんでした。」と述べておられるように、ジャジーな仕上がりになってます。
まさに「大人のムード」ですね。
 
 欧米のいろんなミュージシャンが「50周年」を迎えたりしてますが、
気が付いたら佳孝さんも、もう40周年なんですよね。
デビュー・アルバムから時系列に聴いていくと、
「ニュー・ミュージック」と呼ばれた時代から、今日まで、
自分のスタイルを貫き通し、近年ではブラジリアン・テイストも取り入れ、
「南ワールド」を展開してくれてます。
 
THE KINKS  「PRESERVATION ACT 2」       1974
 
 『「第1幕」の半年後に発表された、
レイ・デイヴィス入魂の大作ロック・オペラ完結編。』
 
 
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 田舎の町で繰り広げられる地上げ屋と正義の味方の対決を描いた
「ロック・オペラ」、という触れ込みになってます。
内容はようわからんけど、音だけ聴いても素晴らしい!
 アナウンスに導かれたオープニングの「対決のきざし」のハードさ加減、
デイヴのスライド・ギターや女性コーラスが印象的なブギ
「この世はすべて金しだい」、
トラッドの香りを少しだけ散りばめた「国家の羊飼」は
どことなくフェアポート・コンヴェンションを想わせるし、
お約束通り「愛は何処に」「愛さえはかなく」のような美メロも用意されてます。(笑)
 
 フィナーレとなる「サルヴェイション・ロード」はかなり陽気な曲なので、
物語はハッピーエンドで完結したんでしょうね。
BLOOD, SWEAT & TEARS  「B,S & T 4」       1971
 
 B,S&Tのアルバムで好きなのは「2」「3」「4」で、
ここまででB,S&Tは終り!!
つまりワタシにとってD.C.トーマスがBSTなんですよ。
 
 
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 過去にもローラ・ニーロやキャロル・キング、ジェイムス・テイラー、
トラフィック、サティなどいろんなカヴァーを見事なアレンジで演奏してましたが、
本作ではアル・クーパーの「John The Baptist」、
ドゥービーズでお馴染みのドジャーズ=ホランド作「Take Me In Your Arms」などを
取り上げています。
 
 アル・クーパーが脱退し、D.C.トーマスが加わってから、
アルバム毎にD.C.トーマスの存在感が大きくなってきましたが、
そんなD.C.トーマスも本作をリリース後、遂に脱退します。
 
 当時、ブラス・ロックと言えば、シカゴやチェイス、イフ、そして
エレクトリック・フラッグなんかもブラス・ロックと言えるのではないでしょうか。
そんなブームの中で、ちょっと小太りのハゲおやじがヴォーカルのBS&Tは
ヴィジュアル的にもちょっと地味で、一歩引けをとってたんでしょうね。
でもこのD.C.トーマスが大好きなんですよ、ワタシは。
 
 ブラス隊とユニゾンでスキャットする「Go Down Gamblin'」は
珍しくギターを大々的にフィーチャーしているし、
ヴォーカルは吠えてるし...で、カッコええ。
そして「Take Me In Your Arms」での吠え方はD.C.トーマスにしか
できない吠え方ですよ。
NEIL YOUNG  「LE NOISE」       2010
 
 『ロック・シーンのゴッドファーザー、ニール・ヤングが
ダニエル・ラノワをプロデューサーに迎えた傑作』
 
 
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 ま、ニール氏は、何をしでかしても不思議じゃないけどね...。
 
 タイトル通り、「ノイジー」なサウンドです。
「ノイジー」といってもうるさいノイズではなく、
たしかに轟音ギターは登場するけど、ヴォーカルに音響的な処理をしたり、
まさに「ダニエル・ラノワ効果」ですね。
 
 「Sign Of Love」あたりはクレイジー・ホースからバックのメンバーを
取り去ったような、まさにニール・サウンドそのもの。
ニールのギター1本だけなのに音響処理のおかげで、不思議な響き。
エレキ・ギターを使ったサウンドは、もちろん処理しやすいんだけど、
アコギで展開される「Love And War」「Peaceful Valley Boulevard」は
何のギミックもなく、安心して聴けますよ。
 
 若い頃を振り返って、今は妻や子供に感謝の意を捧げる「Hitchhiker」、
こりゃ、最高!ですねぇ。
SERENA SPEDICATO 
「MY WAITS - TOM WAITS SONGBOOK」 
2012
 
 納品まで1ヶ月ちょっとかかりました。伊盤です。
 
 
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 さて、トム・ウェイツの曲だけでアルバムを作ったアーティストは
サウスサイド・ジョニージョン・ハモンド、ギャヴィン・ブライアーズ、
女性ではホリー・コールスカーレット・ヨハンスンあたりが有名です。
そしてこのイタリアン・シンガー、セリーナ・スペディカートのソングブック。
 
 彼女のヴォーカルを支えるのは、
ピアノ&バンドネオン、ギター、ベース、ドラムスといったクァルテット。
1曲目の「Please Call Me Baby」からバンドネオンのイントロが
めっちゃ和みますよ。
 どのカヴァーも素直な唄い方で、
トムの超だみ声の「Tom Traubert's Blues」さえも
あっさりと唄いのけてしまう様は、ホント、小気味良いですな。
YO-YO MA  「SOUL OF THE TANGO」        1997
 
 ヨーヨー・マのピアソラ作品集。
 
 
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 タンゴをクラシックからアプローチした、という感じ。
ヨーヨー・マのチェロは優雅に鳴り響きます。
でも、往年のピアソラのバンド(キンテート)はもっと情熱的だった、
こう何かほとばしるような熱いモノがありましたよね。
 
 あの有名な「リベルタンゴ」にイージー・リスニング的な処理を施すと、
こんな感じになるんでしょうね。非常に聴き易く、CMにも使われたようです。
 
 アサド兄弟のギターとヨーヨー・マのチェロが絡み合う「タンゴ組曲」は
どこか艶っぽくて好きですよ。2台のギターとチェロだけの
緩急使い分けた展開は、なかなかスリリングでもあります。
 
 ピアソラ自身のバンドネオンの音源(1987年)にチェロを被せたモノも
1曲だけありますが、ネストル・マルコーニのバンドネオンとのデュオ「カフェ1930」も
ヨーヨー・マのチェロは、ある時は悲しげに響き、またある時は力強く唄い、
変化のある演奏でした。でもちょっとお行儀良すぎるのかな?