ジャワ・パンナコッタの雑記帳

ジャワ・パンナコッタの雑記帳

音楽(主にJazz)、書籍(主に歴史)、旅行などの感想を書きます。
2011年2月から約2年間、イギリスのリーズで派遣研究員として勉強したました。
イギリス生活のことや、旅行で訪れて撮りためた写真などを少しずつアップしていこうと思ってます。

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リーズから北西に車で小一時間ほど、バスだとX85番か34番で1時間15~30分ほどの場所にある街。

また、リーズからイルクリー行きのローカル電車もあって、大体1時間に1本の運航で所要時間は30分ほど。

 

 

街の大きさはOtleyよりも大きく、街の中心を国道のA65号が通っていることもあり、古い宿場町なんだと思う。

街の中心部から北に行った川沿いには公園があり、また、南東側の山の上にはIlkley Moor Cow and Calf Rockがある。

ここは2つの大きな岩があって、遠くから見ると2頭の親子牛のように見えることからその名がつけられたイルクリーのランドマーク。ヨークシャームーアの散策が気楽に楽しめる。傍のPub、Cow and Calfも地元で評判の店なのだが、私は利用したことがない。

街中には何といってもYorkshireのカフェ&スイーツの名店、Betty'sの店舗がある。Yorkにある店舗が有名だが、

あちらは観光客でいつも混んでいるので、こちらの方が利用しやすい。

 

 

イルクリームーアから見下ろすイルクリーの街

 

リーズから北西に車で30分ほど、バスだとX84番、X85番もしくは34番で小1時間ほどの場所にある小さな街。

 

ヨークシャーディルズの入り口にあたる場所にある小さいながらもとても美しい街。

これと言って特記すべきものは無いのかもしれないが、川沿いの公園で鳥に餌をあげたり、遊具で子供を遊ばせたり、日曜日にフリーマーケットや骨董市が開かれていたり、5月にはOtley Showという街を挙げてのお祭りがあったりと中々に楽しめて、夫婦共々大好きになった街。

イギリスはやはり田舎が最高です。

 

なお、リーズからOtleyに向かう国道A660のOtley直前の長い下り坂で見られる景色は中々良くて、こちらもお勧め。

 

 

Otleyの景色

 

Otley Showの様子

 

ウエストヨークシャー州の州都。

都市人口は約750万人でロンドン、バーミンガムに次ぐイギリス第3~5位(グラスゴー、リバプールとほとんど変わらず、この3都市の順位は毎年のように変わる)

 

北に羊の酪農地帯を抱え、周辺でとれる石炭、エア川やリーズ‐リバプール運河の水運に恵まれたことから、産業革命期に大きく発展したイギリス中部の商業都市。近年は長く不況に苦しみ、市内の治安も相当悪かった模様。かのロンドン地下鉄爆破事件の犯人のアジトもリーズにあったことは有名。その後、警察も治安改善に相当力を入れたせいか治安も落ち着き(ただ、空き巣は多い)、2000年代になって経済も上向いたこともあり、現在はイギリス中部の金融・商業の中核都市として栄えている。

 

また、リーズはリーズ大学やリーズメトロポリタン大学など複数の大学があり若者の街としても知られている。さらに、産業革命時代に不足した労働力を当時の植民地からの移民(特にインド・パキスタン系)に頼ったことや、ちょっと前までの移民促進政策の影響で、市内はとても国際色豊か。中華マーケットやムスリム向けの食品店も多くある。

 

ロンドンからはキングスクロス駅から頻繁に電車が出ており、リーズ駅までの所要時間は約2時間半。

駅の北側にはリーズ美術館やタウンホームや市庁舎が、北東側は商業地が広がっていてカークゲート市場やヴィクトリアクォーター、コーンエクスチェンジなどの歴史的建造物も多い。南側には王立武器防具博物館ロイヤル・アーマリーズがある。

 

ちなみにリーズは街中もちょっとした郊外も少し黒い石で作られた家が多い。私も初めて訪れたときには何と小汚い家が多い街だと思ったのですが、これはこの地域で取れる石の色に由来するそうです(コッツウォルズの蜂蜜色の石が有名ですが、それと同じでこの辺は偶々、取れる石が黒かっただけです。)

 

 

と書きながら、まぁ、あまり日本では知名度のない街。観光でわざわざ訪れることはほとんどないのではないでしょうか?

私は何だかんだで2年間住んだので、思い出深い街ではありますが・・・。

 

リーズ美術館およびタウンホール

 

リーズ市庁舎

 

市庁舎前の広場は、サッカーなどのスポーツイベントの際にはパブリックビューイングの会場になり、12月には大規模なクリスマスマーケットが開かれるなど、市民の憩いの場所になっている。

 

市庁舎前広場でのクリスマスマーケットの様子

 

 

商店街の様子

 

※ これは、2011年2月から2013年1月までリーズで暮らした際の経験をもとに書いてます。ご了承ください。

コメントその⑥

 

Ornette Coleman/Virgin Beauty/1988

 

Virgin Beauty Virgin Beauty
1,600円
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突然ですがジャズ大喜利。Prime Time Bandとかけて、美味しいアルトの音色と解きます。その心はVirgin Beauty一択です。Ornette Colemanはその経歴から、音楽スタイルを中心に語られることが多い。かくいう私も彼のPrime Time Bandの音楽が大好きなのだが、しかし一方で彼の最大の魅力はアルトサックスの音色だと思う。こんなに美味しい音色のアルトを奏でる人はそうそういない。で、そんなOrnetteの美味しいアルトがとことん味わえるアルバムときたら、やっぱりこのアルバムでしょう。

 

 

 

 

正直、Patはあまり好きなタイプの音楽家ではない。が、こアルバムだけは別。変幻自在なサウンドタペストリーが、ノンストップで72分間繰り広げられる。柔らかく耳障りは良いのだけれど、しっかりとした芯のある音楽。このアルバムを聴くと、なんだかんだ言ってPatは大したアーティストだと思う。嫌いなんだけど、やっぱり好きという、私的困ったアルバムの筆頭がこれ。

 

 


Rasshan Rorand Kirk/The Return of the 5000 Pound Man/1975

 

 

邦題、「才ローランド・カークの復活」。Rasshan Rorand Kirkは、ありとあらゆるブラックミュージックを一回飲み込んで咀嚼して、その全てを消化して唯一無二の独自の音世界を確立した天才。ローランド・カークの音楽を聴いて何も感じなかったら、その人はブラックミュージックに縁のない人だったと諦めるしかない。とまで言っておきながら、最晩年のこの辺のアルバムとなると、Kirkはブラックミュージックという狭いカテゴリーすら凌駕して、ポピュラーミュージック全般までも飲み込んで咀嚼して、その全てを消化して唯一無二の音世界を確立し切っている。このアルバムを聴いて何も感じなかったら、その人は音楽という娯楽そのものに縁が無かったと諦めるしかないと、酔った勢いで言い切ってしまおう。

 

 


Sun Ra/Disco 3000/1978

 

 

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8,150円
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Sun Raで一枚となると、この辺になるかなと思う。一曲目のぶっ飛んだ世界を一通り終えて、2曲目以降をしっかりと聴きこんでみると、意外にもごくフツーの伝統にのっとったJazzが繰り広げられていたりもする。自称、土星人のくせに。そういう、ハッタリ一発勝負ぷりがいかにもSan Raらしいという一枚(2枚組だけど)。

 

 


Tokyo Zawinul Bach/a8v(on the Earth)/2004

 

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1,800円
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コンピューターで非人間的に作られたサウンドがあって、それにどう立ち向かうのか。AIだなんだと取りだたされている昨今、人間とは、電脳とはという問題に世界的にも最初期に、真っ向から立ち向かったのがこのバンドだと、私は認識している。ただ、いまやすっかりマニア間のブームも過ぎ去って、ほとんど語られることもなく、中古CDは悲しい位の値段で売買されている。あの当時のTokyo Zawinul Bachは誰が何と言おうと時代の最先だった。そこのところ、きちんと評価するべき存在だと、声を大にして言いたい。

コメントその⑤

 

Kurt Rosenwinkel/Caipi/2017

 

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1,944円
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気鋭のジャズギタリスト、Kurt Rosebwinkelが10年の月日をかけて完成させたアルバム。このアルバムの魅力を文章で表現するのは、私には非常に難しい。音楽が難解なわけではない。ただ、ブラジルのミナス地方の音楽にインスパイヤーされた影響が色濃く、演奏の多くは彼自身の多重録音によって構成されているなど、ジャズっぽくない点も多い。このアルバムの一曲をラジオで偶々耳にしたとしたら、私はそれをジャズとは認識しないと思う。一方で、アルバムを通して聴くと、「あぁ、これはジャズだよね。」と明確に思う。少なくとも、数多の天才による成果を重ね、他の音楽を取り込みつつ、時代の変化にも合わせて柔軟にその姿を変えて来たジャズという音楽の現在位置の一つがここには確実にあって、それを読み解くことがジャズの今を解読することに繋がるのだと思う。

 

 

 

Maria Schneider/The Tompson Fields/2015

 

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3,499円
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Maria Schaneiderは自分の具体的に経験した景色と感情の動きを音にして、自分のグループ全体を使って表現するタイプの音楽家。そういう点では、本質的な部分は意外とチャールズ・ミンガスに非常に近い。ただし、表現する感情のベクトルは、ミンガスとは完全に真逆。その世界に影も憤りもなく、軽やかでしなやか。そんな彼女の音楽の特性は、彼女の故郷をメインテーマにしたこのアルバムでも如何なく発揮されている。穏やかで派手さはないが、実は多彩で豊かなカントリーの景色に相応しいオーガニックな音楽。

 

 

 

Miles Davis/Prelude in Tokyo 1975/2/7-bootleg(Agharta-Pangea)/1975

 

1969年から始まるMiles Davisの挑戦は1975年に一つのピークに達する。その1975年の1月末から2月に行われた来日公演は、公式にはAghartaとPangeaという2枚のアルバム(2月1日大阪公演、昼の部および夜の部)で聴くことができるし、他の講演もほとんどをBootlegで聴くことができる。Prelude in Tokyo 1975/2/7もそのウチの一枚。バンド全体の調子もとても良く、目まぐるしく表情を変えるこの時期のMilesの音楽が堪能できる。しかし、ここで展開されているのは、もうこの一寸先には虚無しかないギリギリのところで成立している本当に物凄い音楽で、天使が血反吐を吐きながら地獄の底で歌う悪魔の音楽とでも言おうか。長いキャリアの中で数々の新たなジャズのスタイルを生み出し、数多のフォロアーを作ったMilesだが、この音楽だけは誰も真似ができなかった。この演奏の半年後、燃え尽きたMilesは約6年間の沈黙に入る。

 

(追伸)公式アルバムのAghartaとPangea(以下、アガパン)と他のbootlegを聴き比べて明らかなのは、アガパンは各曲が通常講演の2倍の長さで演奏されているということ。おそらくMilesは、2月1日の昼の部、夜の部の2公演をアルバム化のために録音すると決まった時点で、編集した上で一枚のアルバムにすつことを前提に演奏したのではないか。しかし演奏は編集されることなくそのままライブアルバムとして発売されてしまった。発売後にAghartaを聴いたMilesはミックスダウンに不満を表明したという話があるが、それは音のバランスの問題ではなくて、編集されてないことに対する不満だったのではないかと思う。ただ面白いのは、そんなアガパンはそれが故に個々のソロは普段よりも掘り下げられていて、それが魅力になっていること。

 

アガルタ アガルタ
2,269円
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Pangaea Pangaea
2,061円
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Miles Davis/Doo-bop/1992

 

 

Miles Davisのアルバムも晩年のものになると、たとえ往時の力強さはなくなる。しかしながら、彼のトランペットの音を一つ聴くだけで「あぁ~、いいなぁ~」と反応してしまう。惚れたものの弱みである。ただし、このアルバムの価値を彼の最後のアルバムということ以上に高めているのは、1992年の時点でヒップホップの要素を取り込み、ラッパーとの共同作業でアルバムを作成したという事実。辛辣なことを言ってしまえば、現代ジャズの旗頭として盛んに宣伝されているRobert GlasperのBlack Radio(およびBlack Radio2)でさえ、このアルバムが示した世界観から一歩も外に踏み出せてない。長くジャズの帝王として君臨したMilesが最後に残したジャズの黙示禄。

 

 


Nils Petter Molvaer/NP3/2002

 

NP3 NP3
2,400円
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北欧のトランぺッターNils Petter Molvaerの音楽はアルバム毎に少しずつ変化しているのだが、基本はジャズとエレクトロニカを融合させたかのような独特のビートと揺らぎの中、徹頭徹尾クールにペットの音を重ねるスタイル。先に75年時のマイルスの演奏は誰も真似が出来ず、フォロアーは生み出さなかったと書いたが、75年頃のマイルスの音楽を本質的な部分で消化しつつ、自らの音楽として発展させ得た唯一の例外がMolvaerかもしれない。そんな彼のアルバムの中で、クールネスを最も感じるのがこのアルバム。まるで妖刀のような冷たさと切れ味が聴きどころ。

 

コメントその④

 

Harbie Hancock/Directstep/1978

 

Directstep Directstep
900円
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Harbie Hancockの音楽には色気がある。が、70年代のHeadhuntersの公式アルバムは、ちょっと色気が勝ちすぎていてジャズとして聴くには今一つスリルに乏しい。一方で、この時期のBootleg(例えば、1974年10月16日のKansasでの演奏)を聴くとよりリズムが強調されていて、かなりスリリングな演奏の応酬が繰り広げられているので、要はスタジオアルバムが作られ過ぎているということなのだと思う。が、来日ツアー中にダイレクトカッットという直接レコードに溝を掘る方法で録音されたこのアルバムはどちらとも違う。やり直しの利かない緊張感、アルバム化前提の抑制感、一発撮り故の作りこまれない自然さなどが相まって、Harbieの色気とジャズのスリルが絶妙なバランスで楽しめる。

 

 

 

Joe Zawinul/My People/1996

 

My People My People
7,882円
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このアルバム辺りからJoe Zawinulの最後の黄金時代が始まった気がする。世界中の腕利きの、多くは無名だったミュージシャンを集めて繰り広げられる、どこか懐かしい、でもそれまで何処にも存在しなかった最高にヒューマンな音楽。私は特に冒頭から4曲目、”You Want Some tea,Grandpa?”までの流れが大好きで、この4曲目を聴いていると、何故か子供のころに一日中友達と遊び疲れて家路につく際に眺めた夕日を思い出す。

 

 

 

Kamasi Washington/Harmony Of Difference/2017

 

 

2015年にいきなり3枚組のCDでデビューした今を時めくサックス奏者、Kamasi Washingtonの2作目。これは前作とうって変わってトータル32分のミニアルバム。最初に3~4分の小曲5曲でモチーフが提示され、最後の6曲目でそれが複雑に組み合わされた13分半の組曲が演奏される。彼の音楽は70年代のスピリチュアルジャズとの関連で語られていることも多いが、音楽が圧倒的にポジティブな点はむしろRassahan Roland Kirkに近い。聴き終わった時に「あぁ~、幸せ」と心から思えるアルバムは多くはないが、これは何度聞いてもそう思わせてくれる一枚。

 

 

Keith Jarrett/The Survivors's Suite/1976

 

残氓 残氓
 
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あくまでも演奏や演奏姿勢からの想像ではあるが、ジャズ界一のロマンチスト&ナルシストKeith Jarrett。Standardsの演奏(特に初期)やピアノソロのアルバムも多くの名盤があるが、これらのアルバムで聴けるKeithはあくまでも彼の一面に過ぎない。特に70年の前半の彼は、民族音楽みたいなフリーみたいな演奏もするし、Electric時代のMilesのバンドでオルガン弾いてのたうち回っているし、とってもヤバイ奴だった。そんなヤバイKeithが作曲と演奏の両面で持てる才の全てを注ぎ込んだ作品。全部通して聴いた時のカタストロフィがたまらない。

 

 


Kip Hanrahan/Beautiful Scars/2008

 

 

己の才覚だけを頼りに、粋がって世の流れに逆らって、人知れず暗闇に刃を突き立て続けたミュージシャンというのが、私のKip Hanrahanに対するイメージ。そんな彼も歳を取り、ふと、闘い続けてきた自分をちょっとだけ、本当に少しだけ肯定してやりたい気持ちになった瞬間に作り上げた作品。それがこのアルバム。タイトルは「美しき傷跡」。このアルバムを初めて聴いた時、その憤りと安らぎの綯交ぜになった唯一無二の音楽に心底感動すると同時に思った。これが彼の生涯の最高傑作となるのではないかと。2018年にも彼は新譜を出しているが、残念ながらその予感は今現在、的中してしまっている。

コメントその③


Duke Ellington/The Afro Eurasian Eclipse/1971

 

Afro Eurasian Eclipse Afro Eurasian Eclipse
1,400円
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  1969年以降のアルバムから30枚というこのルール。Duke Ellingtonの晩年のアルバムがリストに入れられる事に気づいた時には、ファミコンゲームで裏技を見つけた時のような、してやったりの気分になった。Charlie Parker以降のモダンジャズも大きな流れでいうと、とにかく演った者勝ちの個人技の世界ではなくて、即興演奏も含めたトータルとしてのサウンドの質がより重視されるようになってきている。そんな中で、決して色あせない独特のサウンドを提示し続けたEllingtonの存在は近年益々大きくなっていると思う。これは、そんな彼の晩年の、アフリカ、中近東から東アジアまでをテーマにしたアルバム。冒頭の「全世界がオリエンタル化しつつある」とのEllingtonの語りは、世界中に拡散し、各所の音楽を取り組みながら発展している現在のジャズシーンを既に予見している。


Fela kuti/Kalakuta Show/1976

 

 

 自らの音楽をアフロビートと名付け活動したナイジェリアの”黒い大統領”Fela Kutiの一枚。彼は政権批判を繰り返して何度も投獄されたり、バンドメンバーのコーラスの女性27人と結婚したり、とにかくバイタリティーにあふれた人だったのだと思う。彼の音楽の魅力はその粗削りなパワーだが、同時に、同じ黒人特有のリズム感ではあっても、所謂アメリカのジャズやファンクとは異なる点が面白い。いずれにせよ、彼の音楽は70年代から始まるジャズの拡散のアフリカでの成果の一つと言える。加えて、彼のナイジェリアでの(音楽に限らない)活動とそれを支えた支持層の存在は、アメリカのヒッピームーブメントや中国の文化大革命とも深いところで連動し、大衆の出現という当時の世界的な社会現象の一つとしてもとらえることが出来そうな気がする。


Gato Barbieri/Chapter Three:Viva Emiliano Zapata/1974

 

 

 60年代はフリー派のサックス奏者として活動していたが、70年代には突如としてラテン色の濃いジャズを演奏するようになったアルゼンチン人。この時期の彼の音楽を評して「その新宿歌舞伎町的世界感は、ストリップショーの伴奏そのものの」と言ったジャズ評論家(中山康樹氏)がいたが、正に言いえて妙。ただ、このアルバムはそれよりもちょっと洗練されていて、「火曜サスペンス劇場のエンディングテーマ的サウンド」といったところだと思う。まぁ、散々な言われようではあるけれど、ハマると癖になる中毒性は確実にあって、かく言う私も嫌いでない。

 

 

Gil Evans/Priestess/1977

 

Priestess Priestess
 
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 Gil Evansも70年代はJimi Hendrixに傾倒するなど、60過ぎのじいさんとは思えないほど(失礼!)、それまで以上に元気でアグレッシブであった。これはそんな時期の彼のオーケストラの代表作。Gil Evansのアルバムの魅力は、彼のアレンジした重層的な音の重なりをバックにして、ソリストが本当に気持ちよさそうに熱い演奏するところなのだが、このアルバムは特にそれが際立っていてマジで最高。”音の魔術師”というあだ名と小難しそうなイメージでGilのアルバムを敬遠している人がいたら、それは絶対に人生損している。このアルバムを聴いてその先入観を取り払うべき。

 

Henri Texier/Remparts D'Argile/2000

 

Remparts D’argile Remparts D’argile
6,982円
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  フランスジャズ界の重鎮ベーシストHenri Texierが1990年代~2000年代にLabel Bleuレーベルに残した諸作はどれも名作揃いで、当時の僕は彼の新譜が出るのを日々、楽しみにしていた。これはそんな当時に出た一枚で、息子でアルトサックスのSebastien TexierとドラムのTony Rabesonのトリオによる演奏。特に音に微妙な強弱の揺らぎを付けながら疾走するSebastienのアルトはここでも絶好調で、一時期、滅茶苦茶はまった。なお、2018年にリリースされたSand Womanも良いアルバムで、Henri Texier健在なりの感を強く持った。

コメントその②

Cecil Taylor/Silent Tongues/1974

 

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2,740円
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 泣く子も黙るフリージャズの鬼才ピアニストCecil Taylorのソロアルバム。彼の名盤は時代をまたぎ色々あるが、一方でそのスタイルは徹頭徹尾一貫している。だから、どれも大差ないという言い方も出来なくもない。その中でソロピアノで聴きやすく、内容も優れているものを選ぶとこのアルバム辺りになるのではないか(Gardenと最後まで迷った)。この辺を聴いて、彼のピアノの素早い音塊の連なりの中に、侘(わび)・寂(さび)や雅(みやび)を感じることができたら合格。Cecil Taylorの音楽の快楽から抜け出せなり、その”大差ない”音楽の中から実は多彩な表情やパッセージの違いを見出さんと数多のアルバムを聴き漁る事になるに違いない。



Charlie Haden/Dream Keeper/1991

 

 

 彼のベースにはボ~ンという音一発で”あぁ良いなぁ~”と思ってしまう魔力がある。加えてその音楽性はけっこう広い。しかし、Hadenのリーダーとしての特徴は叙事詩的アルバムで最も発揮される。その代表例がLeberation Music Orchestraだが、その4枚(ライブを入れたら5枚)のアルバムの中で私が最も好きなのは、恐らく最もマイナーなこれ。アルバム全体を通して繰り広げられるドラマチックな展開がHadenらしい。歴史本を読む際のBGMとしても、妙にマッチしてテンションが上がる。




Chick Corea/Return to Forever/1972

 

 

 このアルバムが出た当時、世に与えた最大の衝撃はこの音楽の持つ軽やかさと叙景性だったのだろう。それは今の耳で聴いても分に魅力的だし、Pat MethenyやMaria Schneider Orchestra達もここで提示された音楽の系譜に連なると言える。ただ、このアルバムを唯一無二ものにしているのは、陽と陰、フリーを含む伝統的なジャズとラテン要素、歌声やフルートの軽さとタイトなベースとドラムスの重さ、といった異なる要素のせめぎ合いのスリルと絶妙なバランス。これ以降のChickのアルバムでそれがここまでのレベルで実現されたものは無い(と言い切ってしまおう)。まさに、時代が作り上げた名盤だったのだろう。

 

Don Cherry/Organic Music Society/1972

 

 

 ジャズは自由な音楽だというけれど、Don Cherryほど軽やかに自由を体現し、しかも最高にクールだったミュージシャンはいないと思う。このアルバムは、2枚組というボリュームやジャケットの構図にMiles DavisのBitches Brewの影響を感じなくも無いのだが、そこはDon Cherry。ここで聴けるのは、肩肘ぬいた、地球上の何処かにありそうで何処にも無い民族音楽のような、最高にヒューマンで、でもなんだか泣けてくる音楽。長く幻の名盤であったが、数年前に初CD化された。その時の歓喜も今となっては良い思い出。

 

 


Don Ellis/Live In India/1978

 

Live in India Live in India
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  70年代のジャズの面白さは、ジャズの表現を広げるべく本当に幅広く数多くの個性的な試みがなされ、そこで提示された要素が再結合するかのように現在のジャズシーンに繋がっている点。例えば、Don Ellis。訳の分からない変拍子のリズムで最高にスイングするジャズオーケストラを率いた”変拍子の鬼”。彼の存在がなければ、現在のジャズシーンで変拍子がここまで当たり前にはなっていなかった!ような気もしないでもない。オーケストラの演奏(例えば Don Ellis at Fillmore)も良いのだが、ここではあえて晩年のスモールコンボでのアルバムをチョイス。このアルバムを聴けば、彼はトランぺッターとしても相当な腕前を持っていたことがよく解る。切れるべきところで切れない流麗な唯一無二のソロ。もっと正当に評価されるべき存在だと思う。

以下、各アルバムに関するコメント(その①)

 

Archie Shepp/Attica Blues/1972

 


 ジャズ、ブルース、ファンクといった黒人音楽をゴッタ煮にしつつ、1971年のアッティカ暴動に対するSheppの強烈なプロテストを表現したコンセプトアルバム。1曲目のAtteica Bluesから最後まで一気に聞かせるが、特に最後のQuiet Dawnで聴かせる7歳の少女の無垢な歌声はこのアルバムの完成度の高さを象徴している。



Avishai Cohen/Gently Disturbed/2008

 

Gently Disturbed Gently Disturbed
1,048円
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 イスラエル出身のユダヤ人ベーシストAvishai Cohenがリーダーのピアノトリオ作品。ダークな曲想の旋律と独特のリズムに乗った3者の絡み合いが魅力。Avishai CohenのこのアルバムとFrom Darknessは、Keith Jarrettのstandars以降の数多あるジャズピアノトリオ作品の中で最高のものだと思う。



Brigitte Fontaine/Comme A La Radio/1970

 

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 シャンソン歌手のBrigitte Fontaineが前衛派ジャズ集団Art Ensemble of Chicagoと作り上げた奇跡。呟くようなFontaineの歌声の背後で響くArt Ensemble of Chicagoの不安定な(でも完全にコントロールされた)ハーモニー。優れたアートは空間を捻じ曲げる力を持っていると思うが、このアルバムは当にそれ。音楽をかけた瞬間に目の前の日常が非日常になってしまう。とにかく必聴の大名盤。



Build An Ark/Peace With Every Step/2004

 


 9.11の衝撃を受けてLAで結成されたグループのデビューアルバム。70年代のスピリチュアルジャズに連なるLove&Peaceの音世界とメッセージ。70年代的音楽の復権という点で、Kamashi Washingtonを始めとする最近のLAのジャズシーンにも、この辺の人たちの影響が強く及んでいると思う。



Cassandra Wilson/New Moon Daughter/1995

 

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 Cassandraほどその歌から深いブルースを感じさせるジャズボーカリストはいないと思う。そしてこのアルバムでは、特にBrandon Rossのギターが効いている。この2人の絡み合いを聴いていると、声量、音域、音数、テクニック、そういったものは音楽の感動とは直接関係なく、むしろそれらをそぎ落とした先に、豊かで幽玄な音世界があることを教えてくれる。Brandon Rossに惹かれたら、彼のリーダーアルバム(CostumeやPuppet)も聴いてみてほしい。

ミュージックマガジンの9月号に50年のジャスベストアルバムという特集があった。

 

 

これはミュージックマガジン誌創刊50周年を記念したもので、各方面の音楽評論家に1969年以降のジャスアルバムからベスト30を選別してもらい、それを集計してベスト100を選定しようというもの。

奇しくも1969年はジャスにとって非常にエポックメーキングな年で、所謂世間一般の人がイメージするようなジャズの様式はそれ以前に確立され尽くす一方で、ロックの台頭と相まってジャスが急速に時代から取り残されつつある中、多くのミュージシャンが新たなアイデンティティを模索し、提示し始めた年でもある。そんな訳で、長年ジャスを聴き続けて来た身として、そのリストは大変興味深かった。

で、記事を存分に楽しんだ後で、じゃあ僕がベスト30 を選定したらどんなリストになるんだろう?と、誰に頼まれても無いのに、勝手にトコトン悩んで、以下のように選出した。ただし、順位は無く、単にアーティスト名のABC順。順番なんて、付けられませんがな。

 

Archie Shepp/Attica Blues/1972
Avishai Cohen/Gently Disturbed/2008
Brigitte Fontaine/Comme A La Radio/1970
Build An Ark/Peace With Every Step/2004
Cassandra Wilson/New Moon Daughter/1995
Cecil Taylor/Silent Tongues/1974
Charlie Haden/Dream Keeper/1991
Chick Corea/Return to Forever/1972
Don Cherry/Organic Music Society/1972
Don Ellis/Live In India/1978
Duke Ellington/The Afro Eurasian Eclipse/1971
Fela kuti/Kalakuta Show/1976
Gato Barbieri/Chapter Three:Viva Emiliano Zapata/1974
Gil Evans/Priestess/1977
Henri Texier/Remparts D'Argile/2000
Harbie Hancock/Directstep/1978
Joe Zawinul/My People/1996
Kamasi Washington/Harmony Of Difference/2017
Keith Jarrett/The Survivors's Suite/1976
Kip Hanrahan/Beautiful Scars/2008
Kurt Rosenwinkel/Caipi/2017
Maria Schneider/The Tompson Fields/2015
Miles Davis/Prelude in Tokyo 1975/2/7-bootleg(Agharta-Pangea)/1975
Miles Davis/Doo-bop/1992
Nils Petter Molvaer/NP3/2002
Ornette Coleman/Virgin Beauty/1988
Pat Metheny/The Way Up/2005
Rasshan Rorand Kirk/The Return of the 5000 Pound Man/1975
Sun Ra/Disco 3000/1978
Tokyo Zawinul Bach/a8v(on the Earth)/2004