今日のこの1枚 ムーディー・ブルース/セヴンス・ソジャーン
季節外れのポカポカが続いています。ということで、今日はわたしは休み!朝からのんびり、いつものように音楽鑑賞ですが、ふとどういうわけか、この作品が聴きたい!!となって、最初に迷わずチョイスしたのが、ムーディ・ブルースの1972年の「 Seventh Sojourn 」!このムーディー・ブルースと言うバンド、みなさまは御承知でしょうか。まあ、わたしなんか話にならないベテランロックファンの方には当たり前のバンドでしょうが、そんなに細かくわからないという方だと、また、めんどくさそうな名前が出てきたなと思われるかもしれません。でも現代にいたるまで活躍する、ロックファンだったら間違いなく要チェックのバンドで、初期の時代にはプログレと言われていたバンドです。プログレと言っても、イエスだピンク・フロイドだの全盛期に降ってわいたような、二番煎じバンドではなくて・・・、このムーディー・ブルースの凄いところは、かなり初期にそういうサウンドを奏でた、本当に老舗のグループなのだ。彼らの最初のプログレ的作品は「 Days Of Future Passed」という作品で、作品内容にトータルコンセプトを持たせ、オーケストラと共演するという、まさにプログレ的壮大な作品ですが、それをなんと1967年という、他のバンドがサイケだヒッピーだ言っている早い時期に発表していることです。わたしは残念ながらまだこの世に生まれていないので、当時の空気は知りませんが、プログレのトップで第一弾みたいに思われている??キング・クリムゾンのファーストが1969年発表ですから、どれだけ時代の先を行っていたのかがわかるというものだ。とはいうものの、この最初期の作品の音は、まだどこか60年代ビートバンドの雰囲気を引きずっているような感じがします。この後も名盤と言われる「童夢」なんかを発表したりして、わたしもかなり彼らのアルバムを所持しこれらも聴いていますが、やはりダントツに曲も音もいいと思うのが、第一期最終作品となるこの「セブンス・ソジャーン」で、彼らの最強の名盤だと思う。誰かのワンマンではなく、メンバーが公平に作品を提供していて、どれもいいです。静かですが、ムードたっぷりに聴かせる、いかにもブリティッシュ・フォーク的なメロディーのFor My Lady英国トラッド好きにはたまらない感じでしょう。特にこのアルバムはどの曲も聴きこめる、通り過ぎる駄作がないいい作品で、おまけに面倒くさい組曲とかアドリブ合戦もなく、そんなに気合を入れなくていいところもいい。そして、この作品のラストを飾るのが、壮大に盛り上がる I'm Just a Singer (In a Rock and Roll Band) /ロックンロールシンガーです。シンセのオーケストレーションやブラス、フロントメンバーたちの厚いコーラスで派手に盛り上がりますが、アレンジをシンプルにしたら、70年代のストーンズがやってもおかしくない、彼らには珍しい70年代風ロックンロールナンバー。それにしても、「失われた世界」「新しい地平線」「神秘な世界へ」と歌ってきた、なんか神の視点から世界を見下ろすような、大仰なテーマを掲げるプログレの彼らが、最後をこんなロックンロールシンガーという歌で締めくくるのは、不思議に面白い。以前これについて、とあるブロガーの方が、「結局オレタチ、ただのロックシンガーだもんね、チャンチャン」というオチ・・・なんて書かれていて、わたしもそういう、今までのプログレはウソだよ~ん的なことなのかと真に受けていました。しかし歌詞の訳詞を見ると、そんな「今まではウソだよ~ん!」的な歌ではなく、「自分はただのロックシンガーだけれど、この破滅に向かう世界で、それぞれの世界を結びつける存在」的な、それまでのテーマをロックシンガーとして総括したような、割と感動的な曲です。というか、いろんなああだこうだは置いておいても、この曲自体が、彼らの中で一番の名曲と言っていいくらい、いい曲だとわたしは思います。このムーディー・ブルース、後に再始動して、80年代になっても産業ロック的になりますが、英米で大ヒットを飛ばし続けるという、昔懐かしきだけでは終わらないバンドになります。ただ、わたしは個人的に、彼らは80年代以降の商業ヒットより、こうした古い曲の方が魅力的だと感じる。とまあ、プログレとしてはさほど一般にも名が通っているとは言えないかもしれませんが、この作品は大物バンドにも劣らない良質な作品なので、彼らの作品のどれをまず選ぶかとなれば、わたしは迷いなくこれをお勧めします。