イタリアに来てからというもの、苗字で呼ばれる機会がめっきり減った。日本人同士でもみんな私のことを”いずみさん”と呼ぶし、イタリア人の友達からはIzzu (なぜかz二つ)と言われることが多い。
ちなみに今までつけられたあだ名で結構気に入っているのは”いずみん”・・・ある大阪のお友達が言い出した。(だからもちろんアクセントはいにある)
それに慣れてしまったし、元もと苗字よりも名前の方が自分らしいと思っているのでなんの違和感もない。
ただ、たまにやはり日本から来た学生さんで短期滞在の方や初対面の場合には苗字で呼ばれることもある。それはそれでいいし、私には”こうしてほしい”と言う希望はないのでなんでもいいのである。
で。
先日ある日本在住の方とメッセンジャーでやりとりしていた時のこと。この方は最近日本でイタリア語を習うためイタリア人の先生を見つけたが、その先生とLei(敬語)で話したらいいか、Tu(フランクな言い方)で話したらいいか、と言うご相談があった。
イタリア語でLeiの形と言うのはいわゆる敬語ではあるが、日本の敬語の感覚とはちょっと違う。簡単に言うとLeiの形は尊敬を表すと言うよりは、”相手と(いい意味でも悪い意味でも悪い意味でも)距離を置く”場合に使う表現であり、一度その人とLeiではなくtuで話しましょう、と決めたらその後にまたLeiに戻ることはない。
(日本語の尊敬表現はその点とても複雑である)
だから、語学教師と生徒と言う間柄では普通はTuで話すのが一般的だが、今回彼女が見つけた先生は70代くらいで、今までの経歴もたいそう立派な人だったから、どうしたらいいのか迷っているということであった。
私は”基本的にはTuで話すが、気になるようなら一度先生に聞いてから、「ci diamo del tu 」と言う返事があればTuで話せばいいのではないか”、とアドバイスをした。
(ちなみに、イタリア語で相手に対してはLeiだが向こうからだけTuということは殆どない。)
ただ、この先生、一つだけリクエストをされたそうだ。
それは、
「Tuで話して構わないが、苗字で呼んでください」と言うものであった。つまり、例えばMaria Rossi さんだったらRossiさんと呼べと言うことだ。
イタリア語でTu表現の時には名前の前にSignoraという敬称はつけないが、流石に日本語で苗字呼び捨てはないだろうから”さん”はつけるだろう・・・
それにしてもどうして彼女が苗字にこだわるかと言うと、”私は日本にもう5年も住んでいるのだから日本人と同じように扱ってほしい、私だけ名前にさんづけはやめてほしい”という理由だったそうだ。
面白いなあ、と思った。
外国人として生きる時に気になる点て色々あるんだな、と勉強になる。
ちなみに、イタリア人同士が苗字で呼び合うのは普通子供の頃からの友達(つまり学友で、先生から苗字で呼ばれていた時の名残)が多い。面白いのだと、私の友達の夫婦は学生時代に知り合った人と結婚したのだが、こちらは夫婦別姓なので相変わらず相手の苗字(のあだ名)で呼んでいる、というほのぼのするエピソードもある。
これからは私も日本では外国人を苗字+さんで呼ぼうかな。