「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
」の梅田望夫氏と、脳科学者で有名な茂木健一郎氏の2人が今起こっているWebの進化と、その進化に対応できていない日本の制度・現場とそしてその先にある進化について対談しているのをまとめた本。
今起こっている進化などについては「ウェブ進化論」や「グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)
」、「Web2.0でビジネスが変わる [ソフトバンク新書]
」などその他の書籍のほうが詳しく書かれていますが、この本で強烈に書いていることは、こういった変化に対応できていない日本の制度とか日本人そのものの考え方への批判・警鐘です。
内容に関しては厳しいなぁと感じるところもあるんですが、単に批判をしているだけでなく、その未来に起きる事を2人が掘り下げて考えて、はっきりとしたビジョンを持って、じゃあそういった未来になるのであれば、今のこういう制度とか人の考えはおかしいという事になるよねと逆説的に話し合っているので納得はできます。
梅田さんの本はいくつか読ませてもらいましたが、文章から気迫が伝わってくるというか、半ば狂気じみたものさえ感じる部分がありますが、この本や梅田さんのBlogにもよく書かれている「好きを貫くこと」というのをこの人は実践しているんだなぁと感じるところでもあります。
朝から晩まで何か一つのことに熱中してそれを365日繰り返す。
多分それと同じことのように熱中して「言い続けて」いるんだろうなと。
ただ、少し段階をすっ飛ばしすぎていて嫌悪感を覚えるときもあったりするのですがね。
Webの世界は素晴らしい素晴らしいと繰り返し伝えようとしていて、それは実際に私も感じるところはあるんですが、自分はもう少し現実路線というか「リアルの世界」ありきなの比率が高いため、そこでの起こる変化が、どれくらい「リアルの世界」に跳ね返ってくるのかがわかりづらい。
その部分が、あまり触れられていないような気がしていて。
確かにインターネットというものが、人々の潜在能力を引き上げてクローズアップされなかった個の力にスポットを当ててくれるのかもしれませんが、それがその人のリアルにどう結びついていくのか。
「リアルな世界」ありきであれば、必ずそこへ戻ってこなければなりません。
「あちら側の世界」だけでクローズしても意味がありませんから。
自分なりに考えていることとして、今はまだ「あちら側の世界」の反響だけで、リアルな世界へのリターンしてくれるパターンとして少ないのかもしれませんね。
リターンは、お金でも名声でも友達でも、何でもかまいませんが、よっぽどのことを起こさない限りリアルな世界にも劇的な変化をもたらすことができません。
そのギャップを感じる人が多い。
もしかした個の考え方自体が、この本で書かれている日本的な考えに該当するのかもしれませんが。
中途半端なことをしても中途半端なものしか返ってこない。これは感ずるところ。
そうはならずにとことんやりこむこと。
何をやりこむか?そのためのやりたいことを見つけること。
そういったことはこの本でも触れられているところです。
未来は素晴らしいとはっきりと感じ、それに向かってまい進していく姿は確かに素晴らしい。
私はかなり楽天的なほうで、未来は素晴らしいと思っているよりは未来はどうにかなるだろうと感じているんですが、この考えの違いである能動的か、受動的かで大きく自分の未来も変わってくるもの。
この本が万人に当てはまることではないことは確かですが、Webの可能性と自分の中に感じている可能性(それはまだ小さなものでも)が結びつけて感じることができる人にはお勧めかもしれません。
未来のビジョンをはっきり持つ事。
本書の2人のようにフューチャリストとして宣言するのであれば、それがまず第一歩なのかもしれませんね。
蛇足ですが・・・。
前回書いた、「東大のこと、教えます 」の巻末で、梅田望夫氏と東京大学総長の小宮山宏氏の対談が掲載されています。
内容としてはフューチャリスト宣言に含まれるものですが、どんな人に対しても同じ事を答えているところを見ると、ぶれないビジョンをはっきりと持っているんだなぁと感じます。