被告国の認否さえ無しの答弁書/調整済みの次回期日を取消すと東京地裁から連絡/金沢へ移送するか否か | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

被告国の認否さえ無しの答弁書/
 東京地裁の調整済みの次回期日を取り消すと裁判所から連絡/
  金沢地裁へ移送するか否かの争い
   (医学部大学等事件199)


 前回記事でご紹介した、金沢大学発の大量のフィッシングメールの公式HP掲載は、初期はトップページではなくニュースに入って見る形になっていたそうですが(読者の方が教えて下さいました)、その後、トップページに掲載したようです。
https://www.kanazawa-u.ac.jp/news/72249

1、被告国の認否さえ無しの答弁書(東京地裁)

 国、金沢大学、山崎学長、堀研究科長など金沢大学構成員が被告の東京地裁の裁判は、8月に初回の口頭弁論が行われましたが、
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12508180098.html
被告国の答弁書は、次の通り(ノーカットで3ページ)、認否さえないものでした。




 8月の初回弁論で、今月(10月)31日の次回期日(もちろん双方が出席できる日時を調整済み)までに認否などを出すことになっていました。

2、10/9に、東京地裁から、10/31の期日を取り消すと連絡

 ところが、先週水曜(10/9)に、東京地裁から私の訴訟代理人弁護士へ、10月31日の期日は中止する、という連絡が入りました。

 次に述べる通り、被告側が初回弁論前に、金沢地裁への移送を申し立てて争いになっているのですが、移送するか否かが確定していない段階で、調整済みの期日の3週間以上前に、その期日を取り消すと連絡して来たのです。

3、被告側は8月の初回弁論前に金沢地裁への移送を申立て、原告小川は反論

(1)民事訴訟法第17条の、移送理由の規定

 民事訴訟法第17条は、次の理由がある場合に限って、移送を認めるとしています。

●訴訟の著しい遅滞を避けるため
●当事者間の衡平を図るため


(2)被告側は8月の初回弁論前に金沢地裁への移送を申立てた

 被告側は、8月の初回弁論より前に、東京地裁への出頭が困難で訴訟が著しく遅滞するなどとして、金沢地裁への移送を申立てました。

(3)それに対して原告小川は、次の資料なども付して初回期日前に反論

 堀被告(医薬保健学総合研究科長・第3解剖教授)など代理人の被告側弁護士が、金沢地裁の事件で、実際にはファックスで着いていた訴訟書類を、「着いてない」と法廷で主張して進行が止まったため、原告小川が即日その法律事務所に警察官と立ち入って事件性の有無を確認したところ、やっと「書類は着いていた」と認めたことなどを、次のブログ記事を証拠資料として付して述べました。

●本ブログ2017.12.19
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12337651179.html

 また、被告らが多忙だという主張に対して、学長や理事(現在の学長)、副課長(後に入試課長に)などが、例年行なっていた科研費審査委員表彰式(当時は金沢大学全学から1年に0名から1名受賞していた)を、原告小川が受賞した時(1回目の受賞時。後に2回目の受賞)は、授賞式を取り止めようと策動して何度も調整していたほど、幹部でも時間の余裕があることなどを、次の録音および反訳を証拠資料として付して述べました。
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12393547913.html

(4)今月(10月)1日、高裁決定例2つなどを追加資料として提出

 今月(10月)1日、高裁決定例2つなどを追加資料として提出し、「第1」でその内容などを述べて、「第2」でそれと本件とを比較した文書を、裁判所に提出しました。

 その8日後の10月9日に、10月31日の期日を取り消すとの連絡が裁判所から来たのです。

 以下に、その「第1」の、高裁決定例の2つの紹介などから引用します(「LEX」は、判決例や裁判所決定例のデータベースです)。

<提出書類の「第1」より引用ここから>

第1、移送の判断基準等を示した決定例

1、大阪高裁平成10年(ラ)第359号(平成10年11月11日決定)

  (資料8はその全文、LEX文献番号28040916)

 大阪地裁から東京地裁へ移送するという原決定を取消し、移送を却下した例である。内容の一部を以下に示す。

(1)訴訟の著しい遅滞〜人証調べについて(資料8の第3頁下〜第5頁上)

   人証の殆どが東京ないしその近郊に居住しているため、大阪地裁で審理を行うと期日調整や人証の出頭の確保等に多大な困難が伴い、東京地裁で審理した場合と比べて訴訟の著しい遅滞が生じる、との相手方らの主張について、次のように判示している。

   第1回口頭弁論期日が開かれ、訴状、答弁書、抗告人の準備書面が陳述されただけの段階であり、反論の詳細は不明であって、この時点で本件訴訟の争点を正確に把握することはできず、それ故、この時点でどのような証拠調べが必要かを論じてみても、それは所詮不確実な予測にすぎないのであって、著しい遅滞の有無を判断すること自体に無理があり、争点整理が進行して審理にある程度の見通しがついた時点で、その必要があれば改めて検討すれば足りる。
   人証の取り調べのためには、大阪地裁よりは東京地裁のほうが便宜であるといえるかもしれないが、東京大阪間の距離及び今日における発達した交通事情に照らすと、同裁判所での人証調べにそれほどの支障があるとは考えられないし、テレビ会議システム等を用いた尋問等を活用する方法もあり、大阪地裁で人証調べを行っても、東京地裁と比べて著しく遅延するということはできない。

(2)訴訟の著しい遅滞〜期日調整について(資料8の第5頁上〜中)

   争点整理や証拠調べの期日調整に手間取る。特に相手方らの訴訟代理人グループが3グループに別れており、2グループの訴訟代理人は東京に事務所があるので、大阪地裁で審理すると期日調整が難航する、との相手方らの主張について、次のように判示している。

   電話、ファックス等の通信や交通手段の発達した現在において、東京、大阪の両裁判所間で、期日調整に大きな差が生じることはない。しかも、東京に事務所のある2グループはそれぞれ複数の訴訟代理人があり、その間で役割分担することが期待できるし、また相手方2名の訴訟代理人は大阪に事務所を有している。それのみならず、争点整理や証拠調べに関して新設された民訴法の各種手続きを活用することによって訴訟進行を促進することが可能である。従って、大阪地裁で審理することによって訴訟が著しく遅滞するとはいえない。

(3)当事者間の衡平について(資料8の第5頁中〜第6頁中)

   大阪地裁で審理を行うと、時間、労力、費用の点で相手方らの負担が著しく増大する。特に本件と同種訴訟が全国の裁判所に提起されることになると応訴することすら困難になる、との相手方らの主張について、次のように判示している。

   隔地者間の訴訟について複数の管轄裁判所が認められる場合には、その裁判所で審理を行うとしても出頭の難易、費用負担の面で多かれ少なかれ当事者の一方に有利で他方に不利な状況が生じる。相手方らは各自の分担によって費用負担は相当節減できるはずであり、大阪地裁で審理することで相手方らの負担が著しく増大するともいえない。また、相手方らの方が、抗告人と比べて、格段に資力の点で劣っているとか、移動が困難な健康状態にあるともいえない。これらより、大阪地裁で行うことで相手方らの負担が増大するとしても、その不利益は当事者間の衝平を図るという観点からしても、東京地裁へあえて移送する必要がある程度のものとは認められない。
   そもそも、相手方らは、全国的規模で営業活動を展開して利益を得てきた大会社とその取締役であるから、これに関する訴訟が全国の裁判所で提起されることになっても、やむを得ないところがあり、その応訴の負担を受忍するほかない。

2、札幌高裁平成27年(ラ)第114号(平成27年8月31日決定)
  (資料9はその抜粋(第1〜5頁)、LEX文献番号25541186)

 札幌地裁から東京地裁へ移送するという原決定を取消して移送を却下した例であり、判示内容の一部を以下に示す。

(1)民事訴訟法17条は例外的に移送を許容するもので厳格に解釈適用が必要
  (資料9の第4頁上〜中)

   民事訴訟法17条は、当事者間の衝平等の要件を満たしてはじめて例外的に移送を許容する規定であるから、厳格に解釈適用されなければならない。
  国民は権利実現の為に管轄のある裁判所に訴訟を提起することができ、これは裁判を受ける国民の憲法上の権利である。訴えが複数の管轄要件を満たす場合に、いずれの裁判所を利用するかについての選択は、専属管轄制度などを除き、基本的には司法制度の利用主体である国民がなすことである。したがって、裁判所が強権的に決めるべきことではなく、適法な訴えを裁判所の思惑に基づいて回避したり、裁判所の都合によって審理を他の裁判所に転嫁したりすることなどできるはずもない。

(2)「当事者間の衝平を図る」の意味(この件では、個人 対 大会社等)
  (資料9の第4頁中〜下)

  原決定は、相手方らの関係者の尋問の必要性を移送の根拠として挙げているが、「当事者間の衝平を図る」とは、経済的格差を是正する方向での実質的衝平であるにも関わらず、原決定は証人の人数という形式的基準によって衝平を図ろうとするものである。

(3)電話会議、テレビ会議等の活用で負担が軽減でき、著しく遅滞しない
  (資料9の第2頁下)

  音声通話、書面、映像等の送受信による準備手続があり(4名であっても、1箇所に集合するなど工夫して音声通話は利用可能)、当事者の出頭の負担は軽減されているし、計画審理をしあらかじめ複数の期日を定めること等によって遅滞を避けることが可能であるから、札幌地裁で審理した場合に著しく遅滞すると認められない。

(4)経済的負担について
  (資料9の第2頁下)

  札幌の抗告人代理人が東京地裁へ出頭するための抗告人の経済的負担に比べて、被抗告人らの代理人が札幌地裁へ出頭することの負担が格別に重いとは認めがたい。

3、判断基準、及び、傍聴人の出頭容易さを理由に挙げた決定例

 上記1及び2と同様に判断した決定例は多く、上記1及び2は基準と言って過言ではない。
  これらの他に、「傍聴人が出頭しやすい場所」を理由に挙げて移送の可否を判断した抗告審決定例も存する(大阪高等裁判所平成24年(ラ)第1286号、LEX文献番号25500790)。

<提出書類の「第1」より引用ここまで>

 この後の「第2」で、これらの基準と比べて本件はどうかを述べています。