第98回 「街と企業のインキュベート」
2006年、香港でカウントダウンの基で、新たな年を迎えた。
8年前、中国への変換前に訪れた際と比べ、街の景観や人々の自信に満ちた表情の変化に驚きを感じた。
今から百年程前、中国のプレジデント李が、「イギリスに99年間、香港の利用権を渡し、その後、中国に返還する」をコミットした。
香港をイギリスの支配下の基で創造すると、決断した結果、世界を代表する都市に発展した。
当時、世界をリードしているイギリスに、一旦、街を預け、インキュベートしてゆこうと判断した李将軍は、今の企業社会の、企業内起業に通じると思えた。
過日、プラスのオーナー経営者今泉さんから、次の話を聞いた、
現在、グループ経営によって、売上2300億、250億を超える経常利益を生み出した主な稼ぎ頭は、アスクルだ。
アスクルが生まれた背景は、業界のNO1ガリバー企業コクヨが存在しており、コクヨの絶対的な強みは、全国3万店の代理店によって流通支配をしていることにあった。
ここを真似しようと、全国に販売代理店を設け、追従したが、失敗した。
そのことによって、NO2は、絶対にNO1の真似をしても敵わないことを知り、そこで、顧客に徹底的に向き合い、満足を提供する為に、「競合と違う山に登ろう」と考えた。
メーカーから、お客様に届く流通経路のダブリをなくし、一週間近くかかり納品されていた商品を、「明日来る」(アスクル)仕組みを創り、徹底して安く、何処の商品も扱うようにした。
他社の真似をやめて、差別化に徹しし、ひたすらお客様の満足を追い求めた結果、今のビジネスモデルが、生まれた。
その後、第二のアスクルとも言われるビズネットを始め、次々と企業内起業にチャレンジをしている。
今泉さんは、「ニュービジネスとは、誰でもわかる、認知されている商品を、新たなサービスで提供することであり、新規事業会社を形にするには、起業家を社外に出し、しかるべきコンサルタントを着け、自立させてゆくことにある。」と、オーナーの目線から、実践に基づいた内容だった。
一時の花火のような輝きでなく、力強く成長発展してゆく「都市」や、「企業」を、創造した偉人達には、永い時間軸で理念を持った人間像だと思う。
第97回 「新年初心」
「初心」・・とは、何かを起こすときの決意と言われている。
私は、とても美しく新鮮な心のあり方でもあると思っている。
2006年にあたり、創業期、人と企業のインキュベーターを志した、「初心」を思い起してみた。
昨年は、株価15,000台となり、日本を代表する企業の三菱商事、キャノン、トヨタ自動社にいたっては、上場以来の最高値を更新している。
個人消費も良くなり、日本経済は現時点においては、好環境に位置している。株式公開企業も一昨年から170社を超え、2005年の12月は20社台となった。
一方、米国のグーグルの時価総額は、なんと現時点で15兆となっている。
世界的な規模で経済は、サイバー社会を背景に、これまでないハイスピードで激変している。かつて、経済学者のアルビンとフラー氏が、第三の波と表現した時代の渦中に、今、私達はいる。
こういった渦中で、昨年、公開し注目されているクリエイトレストランツ、ユージン、オールアバウトをはじめ、話題となっている企業群の顔ぶれを見ていると共通の傾向がある。
企業内起業によって、創生され成長してきたベンチャー企業が増大していることだ。
過去、ヤフーがソフトバンクから、アスクルはプラスから、フャナックは富士通から生まれた。
今日の日本を代表する企業の多くが、現存の企業の経営資源を活かし、創生され大きく成長し今日に至っている。
カーブアウトというインキュベーションの手法が、注目されている。
企業の中に眠っている人材やアイディア、技術、ビジネス構想を一旦外に出し、エグゼクティブサーチなどをはじめ、外部の様々な協力を得て、育成していく方法論だ。
企業の中では、可能性ある人材やアイディアが塩漬けになってしまうことを避け、外に出して、100%の子会社でなく提携先会社やアントレプレナーの資本も入れ、本社の意向に、時には「NO」といえる体制を創ることが起業の成功の第一歩となるからだ。
経済は、「気」で成り立っている。
セブンイレブンが親会社のヨーカ堂の売上や利益を超え、グループ変革を展開している原動力になっている。
本気の企業グループ内起業家が、公開市場の新たな「主役」となり、2006年を、照らす予兆を感じる。
第96回 「不退転の決意」
11月5日、国内初の男子プロバスケットリーグ「bjリーグ」が、東京、仙台、大阪で開幕した。
東京の有明コロシアム会場では、試合中DJが音楽を流し、MCはマイクを離さず、タイムアウトにはチアリーダーが登場し、観客と一体化したアメリカのNBAを彷彿させる華やかな開幕であった。
今から5年前、「ファンを喜ばせるバスケがしたい」と、元全日本監督から相談を受けた。
日本にプロのバスケットリーグを創りたいとの夢溢れる事業構想の話に、心動かされた。市場は500万人のバスケ愛好者人口を有し、世界では4億5千万人いるといわれており、アメリカのNBAを頂点に50ヶ国の国ですでにプロリーグが運営されている。
日本では、プロ化されることなくここまできただけに、様々な障害が予想され、難易度の高い事業構想だ。
新たな事業を成功に導くには、市場を始め様々な要素が求められる。
そして、その成功要因は、何よりもその事業開発を牽引する「人材(起業家)」にかかっている。
私はインキュベーションに取り組む際、信頼できる起業家(アントレプレナー)がいないかぎり決断はしない。
多くの企業で、企業内新規事業が成功しない要因として、暗黙の「社命」のような形で事業推進者に押し付けた結果、その人材にも、その家族にとっても、そしてその企業にとって決して良い結果をもたらさない。
新規事業に取り組むということは、そのリーダーに「不退転の決意」が求められ、とりあえず取り組んでみて、小さな困難に直面しただけで、駄目でしたでは済まされない。
己の人生と命を賭ける、「覚悟」と「気概」がなければ、新事業開発は成功しない。
企業において、よく「新規事業計画」と言う言葉が使われる。新しい事業とは計画通りいかないものであり、何が起こるか解からない事件との遭遇の連続が、新規事業開発である。
だから何を信じて、投資を含め、支援するかの決断は、起業人に賭けることが最大の要素となる。
バスケプロリーグを立ち上げる前のある日、元全日本監督と、二人でじっくり話す機会があった。
「私は、全てを失ってもやりたい」と静かな語り口で、決意に満ちた言葉を聴いた。
道は拓け、プロリーグはできると感じた瞬間であった。
その後、日本協会JBLから、離れての立ち上げとなり、様々な問題解決の連続であったが、11月5日 東京、仙台、大阪で日本初のリーグが、華々しく開幕した。
新規事業の成功の大きな要素は、誰がやるか、そして、そこに誰が集うかにある。
社会の役に立つ事業であれば、夢は叶う。
これを機に、日本のスポーツエンターティメントビジネスの幕開けになればと願っている。
第95回 「未来の風音」
それぞれの会社には、流れる風がある。
最近では新たな風音が、それぞれの会社のリズムによって奏でられている。
近年は、アナログ世代のデスクの上にもパソコンが置かれ、社内外のやり取りがPC上で対応されている。好むと好まざるとデジタル情報化社会のうねりの中で私達は、存在している。
これまでの経済の歴史を振り返ると、大変革が起きる背景に、必ず新しいインフラ大陸が発見されている。(水路、道路、鉄道、電線、電話、インターネット)
新たな市場が広がっていくことによって、これまでの常識が覆され、富の構造や主役企業が変わり、人の考え方も大きく変わる。
デジタル情報大陸が出現し、新興の巨額時価総額を確保した企業が、旧態企業を飲み込み始め、最近、新聞の第一面を賑わしている。
新たな市場は、目に見えない世界で存在しているだけに、未来を見つめる眼力が必要だ。
かつて、一世を風靡したポラロイドカメラは、デジタルカメラの出現によって、まさに全ての写真がインスタントとなり、2001年に倒産した。
これからの企業を牽引してゆくには、未来を見抜く力と、そこで通じるビジネスモデルの構想、そして、それを創出する人間集団の力が求められる。
最近、当社で起業準備をしている学生達から、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サイト)を通じての、新しいマーケティングのあり方を考えさせられた。
SNSは、2003年に米国でインターネット上に出現した、知り合い系と呼ばれる「社交、人脈創り」のサービスのことであるが、GREE(グリー)やmixi(ミクシィ)などが、会員数200万人に膨れ上がり、「縁」が、目に見える知り合いのコミュニティとして拡がりを見せている。
新たな動きは、既存のマスメディアによるマスマーケティングの効果が衰退し始めている中で、新たなマーケティングの重要な仕組みの一つとして、ますます成長してくると思える。
デジタル情報大陸時代の今、既存企業の未来は、固定概念のない感性を持ったメンバー心を解放し仕事を楽しんで取り組めるような組織マネージメントの出来た会社が、時代を創っていく。
未来への心地良い風音が、今、貴方の周りに流れているだろうか。
第94回 「セクシーな生き方」
毎月一回、新潟に出かけるようになって6年目を迎えた。新潟を、アントレプレナーが輩出されるインキュベーション起点にしようとの思いからである。最近、何かと話題の多い新潟だが、中越震災に遭われた旅館の女将にお会いする機会があった。被害状況を伺っていると心痛む思いがしたが、一言も愚痴を言わず背筋を凛と伸ばして、生きていこうとしている姿勢に爽やかな感動を覚えた。70歳になる女将から、先祖代々受け継がれた家訓の話を聞かせていただいた。先代から「嘘をつかないこと。カッコをつけないこと。愚痴を言わないこと。いつも明るく笑顔で接すること。」ということを、毎日お経のように唱えられ学んだとのことであった。「笑顔は、社員に希望を与え、笑顔に人が集う。嘘は、人の信頼を失う。見栄は、自分を苦しくし、人間を小さくしてしまう。愚痴を言うと、心が萎え、人が離れてゆく。ということなんですよ!」と優しく語りかけられた。
その後、町興しを考えている人たちを紹介いただき、地域に根ざして頑張っている人達にお会いさせていただいた。カネも学歴も英語もPCも離れた世界にいる人達は、メチャクチャ生き生きと輝いて、一人残らず格好よかった。初対面にも関わらず、仮設のバラックの住まいに招かれ、郷土料理を振る舞っていただいた。皆さん、桁違いに優しくて温かった。彼等は、外国語のような方言で、堂々と自らを語り、人の話を体ごと受け止める。そして、周囲の目に支配されず、自分の心に聞いてすべてを決め、「意思決定」し、意見を言う姿に、「人間経営力」を感じた。
最近、急成長してきた新興ベンチャーが、突然失速するケースが目立つ。収益の源泉だった事業モデルの競争力の低下や、小手先の戦術で伸ばそうとした結果、環境変化に対応出来ない経営体質が、露呈している姿を見ていると寂しくなる。
何のために起業をし、誰のために頑張っているのか?「本来のあり方、生き方」を、見失っているような気がする。地域に根ざし、自分に嘘をつかず、見栄をはらず、人を愛して愚直に生きている新潟でお会いした方々のように、桁違いな優しさを持つ事ができると、失速しだした企業の経営者の笑顔が本物の笑顔に変わり、本当にセクシーな生き方ができるのだと思う。
私の周りには、極度の緊張感に耐える力と桁違いの優しさを併せ持っている人間力のある経営者の方々がいる。彼らに共通しているのは、見栄を張らずに愚痴を言わず、思ったことを諦めず表現する。そして、人を幸せにするセクシーな笑顔を持っている。