インキュベーター社長日記 | インターウォーズ株式会社 吉井信隆のブログ -25ページ目

第178回 「イノベーション時代の経営者像」

 経営者には、創業オーナー経営者と雇用された経営者がいます。創業オーナー経営者は、株式の多くを所有し、主要なすべての意思決定を行います。
 雇用された経営者は、資本と経営の分離により、自社株のシェアは所有せず、経営の意思決定を行う専門経営者です。
 創業オーナー経営者は、創業時から、何から何まですべて自分でやらざるを得ないので、結果的に会社の全機能に精通します。
 雇用経営者の場合は、1つの所属部門に配属され、専門化された道を歩み、出世に価値をおいた調整型の社長になるので、経営全般を知る機会が少なくなります。創業者の姿を踏襲したコピー型経営スタイルになりがちです。

 創業オーナー経営者の多くは、個人のお金で会社を立ち上げ、個人保証を銀行に求められます。その後、個人と会社が一体となり、会社の痛みも喜びもすべて自己のものとなります。
 創業オーナー経営者は、会社の現状の痛みや危機意識を誰よりも持ち、「不確実な明日に向かって今、何をなすべきか」を考え、自らの全存在を賭けた決断をします。結果、これが戦略的意思決定の本質となります。


 「戦略的」とは、与えられた問題に対して解決を図るという「戦術的」アプローチではありません。自ら問題を創り出し立ち向かう事に、本質があります。

 持ち回りの雇用経営者の会社では、時々担当責任者任せで経営バランスが崩れ、不幸を招いてしまうケースがあります。環境変化に対応し、常に変化、進化し続けるために、経営者が交代する事に意味、価値があるという認識が足りないのかもしれません。

 しかし、その意味、価値を認識させる事例が起こりました。
 今年1月に、世界の写真フィルムのトップカンパニーだったイーストマンコダックが、経営破綻しました。一方、同業のライバル企業だった富士フイルムホールディングスの創業オーナー経営者ではない会長古森重隆氏が、業態変換で事業を存続発展させた手腕が世界から注目されています。
 古森氏は、社長就任後、フィルム産業がなくなることを予測し、会社の経営資源を棚卸し、次世代の経営の収益源を徹底的に考え、その中から取り組む事業を「医薬と化粧品」に絞り、事業インキュベーションを実行し、会社を生き延びさせました。
 古森氏は、雇用経営者でありながらも、「戦略的意思決定」を行う創業精神を持った経営者であると言えます。
 変革の時代の今、出世を求め仕事を管理する調整型サラリーマン経営者でない、創業型経営者が求められています。

吉井信隆のブログ-サイン

第177回 「成長の余地」

 当社がスタートした1995年、厳しい経済情勢の中、産学官が一体となってベンチャー企業を創生しようと、中小企業創造法が施行されました。
 行政が、ベンチャー企業・中小企業全体の底上げ政策から、「出る杭をもっと伸ばす」方向に転換した節目の年です。
 その後、多くのネットベンチャーが生まれ、年間200社近い会社が上場しました。
 そして、2000年のネットバブルをはさんで、制度改正の多くがこの時期に行われました。残念ながら10年間の時限立法で、2005年に施行中止となり、その後、リーマンショックによる世界金融危機、東日本大震災と原発事故危機に遭遇し、さらに時の政権運営が世界動向を先取りした変革を行うことなく、産業の競争力が失われ、多くの企業が岐路に立っています。


 最近、経営者や幹部が頻繁にアジア各国に出かけている話をよく聞きます。中には、シンガポールや香港、オーストラリアに移住している人達も出てきました。リーマン以降、「人材の海外への移動」が始まっています。それぞれの経営者には、考えがあっての決断と行動だと思います。しかし、明日を生きるには、これまで信じられていた不動産・国・円が崩れた日本社会から、海外に移住することなのでしょうか?


 失われた20年といわれますが、IBMを始めとするメインコンピューター、パソコン全盛の、相当の知識と資金が起業に必要だった時代から、インターネット、携帯端末の活用により、簡単にアイディアを実現できる時代になりました。
 1997年設立の楽天の取扱高が一兆円を超え、株式時価総額一兆円を超えています。
 アスクルはヤフーのグループに入り、新たな通販サイト「ヤスクル」を、10月にスタートさせる予定です。


 不良債権にケリをつけた日本の三大銀行が、いつの間にか世界の上位10位以内に入っています。ロンドンの投資ファンドが運営する目利きの投資家達が、最も注目している国の一つが、日本だといいます。ユニチャームや、久光製薬を始め、高い技術力を持つ企業群は業績を上げ、この20年間で株価は10倍を超えています。
 日本は、少子高齢化に突入、人口が減り市場も縮小していますが、「内なるグローバル化、アジア市場」を見据え、金融国日本の潜在的資産を、ハイスピードで激変している主役企業や企業内起業へ投入していけば、日本の成長シナリオは描けて来るはずです。

吉井信隆のブログ-サイン






第176回 「チャレンジとアイデア」

 「一夜若く楽しい人々と高楼夜宴の後、家に帰って暁に覚め、起坐して独り茶を啜り、しらじらと明くなるうちに、ふと"暁"をさとると訓むことに感嘆した。しかもさとるはまた了るでもあり、了はおわるでもある。なるほど、何だかこの頃ようやく、人生というものが、しらじらと、夜の明けるようにわかってきた気がするが、それがいつの間にかわが人生の了りでもあるか――凝然として感じ入った。
しかし我々は、かつて始まりらしい始まりを持ったことがあっただろうか。私は今日、やっと始まりらしい始めを持つことができたと思う」


 この言葉は、陽明学の権威として、政界や多くの財界人の指南役といわれた、安岡正篤師の77歳の喜寿会での、挨拶の結びの言葉です。77歳の安岡正篤師の「今日から始める」というチャレンジ魂に触れ、この場にいた人達は勇気づけられて背中を押され、新たな事業が産まれたといいます。


 ここ数年、企業の繁栄の在り方が変わりました。今の時代、企業の競合は「変化」です。変化とは、価値の変化、進化であり、この変化に向けてのチャレンジが、企業の存続を決めます。


 新しい事業へのチャレンジの起点は、「アイデア」にあります。いつもの顔ぶれ同士が、同じ場所で、会議で議論していても、良いアイデアが出てくることは少ないものです。
 アイデアが生まれるのは、多くは「異質の二つのアイテムが組み合わされた時」です。魅力的で新鮮な「組み合わせ」は、一箇所に集まっているのではなく、偏在していることが多いものです。


 アイデアを生む発想力は、様々な業界の人々が一同に出逢い、議論し、それぞれの記憶を徹底的に「検索」し、適したものを意識の表面に浮かび上がらせる力にあります。その力は、鍛え磨き続けないと出てきませんが、脳が悲鳴を上げるまで考え抜いて、人との交わりや現場から、ふっと泡が上がってくるように、アイデアの核が浮き上がってくることがあります。


 1985年以降、ビル・ゲイツが世界を大きく変えました。
 アイデアとの運命の出会いの前提条件は、「飢え」です!ハングリーでないとアイデアの核が浮き上がってきても、気づかないまま、すれ違って終わってしまうのかもしれません。
 デジタル・グローバル社会で、偏在するアイテムを「組み合わせて」価値あるアイデアを見つけたいものです。

吉井信隆のブログ-サイン

第175回 「インド」

 12億人の民を有し、目覚ましい発展を遂げている混頓の国、インドに行って来ました。
 5000年の歴史を誇り、一時期イギリスの植民地におかれ、1947年に独立した歴史を持つインドは、年率8%前後の経済成長が続き、2050年には、世界第2位の経済大国になると予測されています。


 初日に訪ねたデリーの空気は、どんより霞み、排気ガスやゴミと石炭の匂いが充満し、道路や交通システムインフラが未整備の中、バイクと車の騒音は、耳が痛くなる程でした。
 喧騒と貧困、富裕とIT、多様な宗教、言語、文化がひしめき合う首都デリーの街は、牛や犬が悠然と闊歩し、その隣にインテリジェンスビルが林立する、様々な顔を持つカオスの街でした。


 現地で目に留まったのは、中間層と富裕層の大学生の確保に向け、ハーバードビジネススクールを始め、世界の有力な多くの大学が開校していることでした。(因みに、現在アメリカに留学している留学生は、10万人を超えています)


 中国に比べて圧倒的に勝っているのは、経営能力に優れた人材とよく聞きます。
 有能な人材が数多く欧米に渡り、フォーチュン 500 社に入るアメリカ企業では、副社長クラス以上にインド人がいない会社はほとんどないといわれている程、世界各国で活躍しているとのことです。
 昨今は、インドの経済成長に伴い、帰国すれば豊かな暮らしができることがインセンティブとなり、各国で活躍していた有能な人材が、タタ・グループを始めとする財閥企業にU ターン転職する事例が増大しています。


 インドは英語圏であり、言葉での優位性を持ち、国民性から製造業の労働者よりも、数学や論理力に優れたプログラマー向きの人材が多く育っています。
 デジタルグローバル時代に入り、ソフトウェア産業や医療産業、知的産業の重要性が高まり、海外からの外注先として脚光を浴び、現在はインドのGDPの50%を占めるまで成長しています。
 インフォシス、サティアム、IICM、タタといったソフトウェア企業の大手は NASDAQ やニューヨーク証券取引所に上場し、インド国内ではストックオプションを得たエンジニアたちが次々と豪邸を購入していると聞きました。


 インド市場は生産拠点としてだけではなく、中間層は巨大消費市場としても世界中の企業を魅了し、欧米企業のみならず韓国企業や中国企業までもが進出競争に参戦しています。


 今年は『日印友好60周年』の年にあたり、インド首相や多くのインド財界人も来日する予定とのこと。政治不安を始め、様々な課題はありますが、日本企業のインドへの進出機運が高まることを期待したいものです。

吉井信隆のブログ-サイン

第174回 「脅威の危機の中に」

「企業繁栄の方程式」が変わり、業界や企業間での新旧交代が、激しくなってきました。


10年前、日本企業の稼ぎ頭は、トヨタを筆頭にメーカー企業が大半でした。


現在は、NTTドコモを始め、通信や商社、SNSネット会社といった新興企業で成り立っています。


10年前とは産業地図が様変わりしています。


ソニー、パナソニック、シャープといったメーカーが、2011年決算で数千億の赤字を出し、危機的な状況に陥っています。


ソニー、パナソニック、シャープの赤字の要因は、デジタルグローバル社会で、新興国も先進国と同じレベルの品質で商品が作れることから、価格競争力を失い、新興国にシェアを奪われた結果です。


今期ZOZOTOWNのスタートトゥデイが、前年対比で37%アップ、63億の利益を出しましたが、上場新興企業群の平均伸び率は、前年比で30%を超え、雇用を拡大しています。


日本では、起業して設立5年で85%の会社が無くなり、存続できる企業は10年で6.3%、20年で0.3%のみです。


今後、デジタル・グローバル化によって変化スピードが増し、事業生命が短くなって行くと思います。


 この4月、リクルートでは、47歳の新社長に変わり、大胆な改革が行われ新体制でスタートしました。


激変する企業や人のニーズによって、マーケットは変貌し、各事業部が、ハイスピードで意志決定できる自立した組織でなければ、環境適応できなくなります。


経営陣が各事業の意思決定をしていると、変化スピードの速い時代に追いつかなくなります。


リクルートは各事業部が自立し、事業部長達が社長として経営を担うことによって、存続する事業ポートフォリオを考えたのだと思います。


100年存続する企業は、「脅威と感じるほどの危機的事態の中に、隠れた発展の機会がある」と捉え、チャレンジし続けたリーダー達のDNAが承継されています。


目の前のP/Lと安定を求め、何もしない企業は、必ず衰退してゆきます。


 20年前、インターネット革命が起こり、産業の地図を変えました。


今、新たなソーシャルネットワーキングサービスの革命によって、新大陸が訪れています。


顔が見え人々が繋るSNSが、世界を変容させ、既存事業にとって、脅威といえる危機的事態を迎えています。


世の中の変化をコントロールすることはできませんが、その先端に立つことはできます!


吉井信隆のブログ-サイン