インキュベーター社長日記 | インターウォーズ株式会社 吉井信隆のブログ -14ページ目

第229回 「第四次産業革命の第二の幕開けは、働き方革命」

2016年は、世界同時株続落とマイナス金利導入でスタートし、産業構造の変化のスピードが速まった年でした。

 

経済の歴史は、蒸気機関の出現がもたらした第一次産業革命から、電気エネルギー大量生産の第二次産業革命、コンピューターによる第三次産業革命をたどり、1995年から世界が繋がったインターネット化は、産業史に残る文明レベルの第四次産業革命の時代となりました。

この間で誕生したグーグルを始め、アマゾン、アリババ、フェイスブックは、世界の人々のライフスタイルを変えました。

 

7月25日、「ソフトバンクが、英国の半導体設計ARMを3.3兆円で買収」するニュースは大きな話題を呼びました。日本企業のM&A案件として、過去最大です。

孫社長には、IoTによってあらゆる身近なモノやコトがインターネットにつながり、産業の構造が変わる景色が見えるのだと思います。ARMを中核に更なる飛躍を狙い、サウジアラビア政府系と共に巨額な投資ファンドを立ち上げ、「テクノロジー分野のバークシャー・ハサウェイを目指す」勝負に出ました。

 

昨年4月に発売されたApple Watchは、最も注目されるIoTの実例です。

心拍センサーや加速度センサーを搭載し、健康状態や位置情報の取得や、iPhoneとの通信によって音楽再生・電話・Siriなど様々な機能を簡単に使えます。

iPhoneがスマートフォン市場を創造し、人々のライフスタイルを変えました。

フォルクスワーゲンが車載器とApple Watchの連携を発表したように、様々なモノとの連携がApple Watchの可能性を拡げています。

IoTやAIやビッグデータの潮流は、第四次産業革命の第二の幕開けとなってきました。

 

また、IoT、ビッグデータ、AIの進展により、既存の労働領域が数百万人規模で失われると予測されています。日本では少子高齢化に伴い、労働人口が減少し深刻な人手不足が懸念されています。

長崎ハウステンボスのホテルで、ロボットによる接客が注目されていますが、人材採用に苦戦している業界や企業では、こういったIoTやAIを活用し人手不足を補う動きが出てきました。

また、徳島の神山町サテライトオフィスによるワークスタイルや、リクルートマーケティングパートナーズが、幸せな働き方を模索し、全従業員が何処でも仕事ができる「リモートワーク」に取り組み始めました。

こういったワークスタイルは、働き方革命時代の幕開けの予兆なのかもしれません。

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第228回 「夕張」

過日、10年前に破綻した夕張市を訪ねました。この季節の北海道の夕張は、爽やかな風が流れていましたが、道路は荒れ人影がありませんでした。

かつて炭鉱の街として栄え12万人の人々が暮らした夕張市の人口は、今や9000人になっています。

 

夕張市が破綻した時、353億円もの赤字を18年間で返す計画は、税収入8億円の自治体が、どんな緊縮財政をしても「不可能」といわれました。しかし、計画通り95億円を返しています。

これまで、財政破綻した自治体は数多くありましたが、1975年以降、10年を超えて借金を返し続けた自治体はありません。

 

35歳の市長の鈴木さんは、東京都庁から夕張市に派遣され、都庁を退職後、2011年夕張市長に当選し6年目を迎えました。

自らの年収を7割カット(年収300万円台)し、「支出は、命にかかわること以外は、すべて削る」と宣言して、緊縮財政に厳しく取り組んできました。

結果、260人いた市職員を半分以下の約100人に減らし、市議会議員数を18人から9人に、報酬は40%カット、市民には税や、公共の施設利用料を50%引き上げ、水道料金は1.7倍負担にして、借金を返し続けています。

 

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前例のない規模の借金返済は称賛に値することです。しかし、先々に夢が持てない若者達を中心に市外へ流出し、人口が3割減少しました。移動できない高齢者が残り、財政削減の副作用に苦しみ、町の存続にかかわる状況に陥っています。

しかし、屋台村で出逢った夫妻と酒を飲みながら、「水道料金を安くして欲しい、財政負担を軽くしてほしい」という声を聞くことはありませんでした。

 

夕張だけでなく現在の地方は、中央からの助成金や、ふるさと納税に依存し、国の財政難と連動して疲弊し、若者は流出し高齢化が進み、加速度的に活力を失っています。

 

これからの夕張は、「財政再建」だけではなく、地域再生に向けてのインキュベーションが必要です。

夕張と言えば、夕張メロンが有名ですが、大自然や炭鉱時代から培ってきた歴史、文化があります。夕張が活力を取り戻すには、夕張の資源を活用して、新しい産業や事業を創生し、雇用を拡大してゆく起業家の存在が不可欠です。

 

IT社会の到来によって、境目のないデジタル大陸が生まれました。すべてのものがインターネットにつながり、情報の蓄積や活用により、何処にいても仕事ができる時代です。

 

一人の起業家の誕生が、その地域を担う事業となって、未来を変えることがあります。

夕張の地に、起業家が誕生し、新たな街を創る地方創生のデファクトスタンダードモデルになることに、微力ながら協力してゆきたいと思います。

 

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第227回 「韮崎大村美術館」

過日、山梨県韮崎市の八ヶ岳を望む丘に建つ韮崎大村美術館を訪ねました。
この美術館は、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生が、故郷に私費5億円を投じて建設し、市に寄贈し館長を務めている女性芸術家だけの作品を集めた美術館です。

 

大村先生は、45年に渡り微生物が生む天然有機化合物を研究し、これまで480種を超える新規化合物を発見し、26件もの医薬品の商品化に成功しています。中でも、感染症などの予防・撲滅・創薬「イベルメクチン」を米国の製薬メーカーのメルク社と開発し、アフリカおよび中南米などで感染の危機にさらされていた2億人を失明から救い人々の生命に多大な貢献をされた偉人です。

 

また、企業との連携による製品開発の事例は、世界のヘルスR&Dの中で最も成功した産官学連携TLOとして、高く評価されています。

 

「イベルメクチン」の商品化にあたり、大村先生と北里研究所とメルク社による特許のライセンス契約交渉で、メルク社から『オオムラが発見した放線菌の菌株を3億円で買いたい』と提案を受けた際、(北里研究所の理事会は提案を受けようとしたようですが)大村先生はこれを拒否し、継続ライセンス契約に至り、メルク社側から北里側に支払われた金額は、現在200億円を超えたとのことです。

 

また、大村先生は科学の研究の枠だけにとどまることなく、北里研究所の経営再建や、女子美術大学への支援や、韮崎大村美術館の建設、北里研究所メディカルセンター病院の建設、学校法人開智学園の運営などの幅広い功績を上げている異色な経営者でもあります。

 

韮崎大村美術館には、女子美術大学の名誉理事長も務める大村先生が生涯収集した作品が、館内に数多く展示されています。女子学生をはじめとした芸術家の作品は個性的で型に嵌まらず躍動感があり、大村先生の感性の世界観が広がり、芸術の世界でも「伯楽」を感じました。

 

帰りに、隣接する日帰り温泉施設「白山温泉」(大村先生が自費で掘削・建設)に入浴しましたが、ここにも数々の素晴らしい絵画が至る所に飾られており、身も心も癒される温泉美術館でした。

 

大村智先生の言葉
「科学と芸術はともに《創造》と《想像》の両方が不可欠であり、その融合が人類の未来を好ましい方向へ導く」

 

 

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第226回 「起業立国のカギ」

世界の祭典RIOオリンピックを終え、いよいよ東京オリンピックに向け胸膨らませる矢先、来年の日本の成長率予測が0.1%と発表されました。

IMFによると、先進国は来年の平均成長率が1.8%、新興国では4.1%から4.6%と予想しています。日本だけ取り残され、マイナス金利国債を発行し、ゼロ成長社会となっています。

2014年に格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本の債務格付けをAa3からA1に1ノッチ格下げしました。なんと、G7先進7カ国のなかではBaa2をつけているイタリアに次いで低く、韓国、ベルギーより低い評価をされています。

 

アベノミクスの目標の一つに、日本が再成長するには「起業立国」になることだと掲げられました。しかし、残念ながら進んでいません。

起業家の創生には、起業家へのリスクマネー投資と、大企業との連携がカギとなります。

リスクマネー投資は、年間VC投資額が1400億円と増えました。しかし、米国の年間VC投資額約6兆円と比較するとあまりにも少額です。

2008年のリーマン・ショック以降、投資が下回っていましたが、大手企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が増大しています。

 

米国の大手企業の多くは、ベンチャー企業をM&Aし、グループ内に取り入れ企業グループを成長させていきます。

ベンチャーキャピタルのベンチャー投資のEXITの90%は、IPOではなく大手企業への売却で成り立っています。大企業のM&A投資金が、VCを経由してベンチャーに循環する仕組みが出来上がっています。

日本は残念ながら、米国のような循環の仕組みが成り立っていませんが、CVCの設立が増大し、VC との連携により、ここ数年ベンチャー企業への投資額が拡大しています。

また、大学の知財を事業化するための資金提供を行うGAP(ギャップ)ファンドのスキームが、大学系VCファンドに活用され始めています。

 

これまで、大学の研究技術を事業化するのはリスクが高く、VC投資には至らないケースが大半でした。GAPファンドとは、試作開発段階で市場可能性を確認する資金です。

 

こういったスキームによって、TLOベンチャーの誕生が、年間100社を超え始めてきました。

一方、当社で2009年にスタートした「イントレプレナー塾」から、900名を超える卒塾生が出ています。プラス・ジョインテックスカンパニーの社内起業家が立ち上げた、介護・福祉施設向け通販カタログ「スマート介護」を始め、注目を集める多くの事業が立ち上がっています。

 

日本の経営者の多くは、2020年東京オリンピック以降、ゼロ成長社会が更に深刻な事態を招くと危機感を高めています。

「起業立国日本」の実現には、大手企業の「ベンチャーM&A」と「企業内起業」が活性化のカギとなります。オールジャパンで取り組み盛り上げていきたいものです。

 

 

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第225回「出島・でこ会」

過日、2016年度の「でこ会」を行いました。
「でこ会」とは、インターウォーズの出島インキュベーションルームに参画している人たちの交流会の通称です。

「出島インキュベーション」とは、長崎の出島から命名した、起業家を支援するために当社が提供しているインキュベーションサービスの名称です。異文化の人々が、長崎の出島に集い交流することによって、コーヒー・ビール・じゃがいも・キャベツ・トマト・ボタン・ピアノ・バドミントンなどが誕生し、日本に大きな影響を与えました。

新たな商品やビジネスが生まれる時、必ず人との出逢いがあります。ハーバードビジネススクールで提唱されている、自社の経営資源と他との連携によるオープンイノベーションの概念があります。
最近、大学で研究開発した技術ライセンスの活用や、外との連携によって共同開発している企業が増えています。
ディー・エヌ・エー(DeNA)は、ベンチャー企業のZMPと連携した「自動運転ロボットタクシー」や、フランスのEasyMile社と提携し電気無人運転バスを使った交通サービス「Robot Shuttle」のリリースが話題となりました。
こういったベンチャーと大手企業の連携の実例は、今後増えてくると予測されます。

近年、ベンチャー集積地の渋谷や六本木が変わりつつあります。
フィンテックは大手町や丸の内、医薬関連は日本橋、インターネットは五反田といった街に新興企業が集っていますが、同じ業界の企業が同じエリアに集積していると、イノベーションが起きにくくなると思います。
同業種の人達が集うと、競合なのでマーケティングやコスト思考に偏ります。
イノベーションには混沌とした出会いが必要であり、業務領域によって地域が別れるのではなく、ベンチャーキャピタルを始め、多様なナレッジを持つ人材が生態系を形成する森のように集まっていることが重要です。
今でも、シリコンバレーやボストンの周辺エリアで革新的なビジネスが生まれイノベーションが起こっているのは、多種多様な業種の人たちが存在しているからです。

混沌とした文化の交わりの「出島」からイノベーションが起こったように、当社の「でこ会」を通じて様々な業種の人たちが出逢い、新たなビジネスが創生される機会をこれからも創り出してゆきたいと思います。

 


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