第239回 「梁山泊とオープンイノベーション」
過日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長の増田さんが来社した際、「インターウォーズは、梁山泊みたいだね!」と、云われました。
梁山泊(りょうざんぱく)とは、中国の山東省済寧市梁山県に存在した沼沢で、明の頃、梁山泊に集う様々な個性溢れる108人のアウトローたちを主人公とする小説『水滸伝』が生まれ、梁山泊を有名にしました。
日本では「梁山泊」は、元気のいい豪傑や起業家の巣窟を意味する代名詞のように使われ、明治初期、大隈重信の私邸に伊藤博文らをはじめとする若手政治家が集まり「築地梁山泊」と呼ばれ、ここから多くの政治家たちが輩出されました。
当社は創業期から、スタートアップ起業家を支援する為に、社内のフロアーに出島インキュベーションルームと称し、起業家の集う場を設け、多くの起業家をバックアップしてきました。
9月12日、出島に集う異業種の皆さんと情報交流会を行い、熱気の溢れる場となりました。
新たな商品やビジネスが生まれる時、必ず人との出逢いがあります。インターネットによる、情報のやり取りや検索は便利になりましたが、フェイス・トゥ・フェイスによる議論でなければ、ケミストリー(化学反応)が生まれないものです。
人と人が繋がり、輪が拡がると、目的に応じてどの人や企業がキーとなるのかが見えて来ます。インパーソナル対パーソナルという次元をなし、進化しながらオープンイノベーションが起こってきます。
これまで、出島でのコミュニティやイントレプレナー塾で、業界の異なる人が集い議論することで混沌が生まれ、イノベーションが起こることを知りました。
今でも、シリコンバレーで革新的なビジネスが創生されイノベーションが起こっているのは、こういった多種多様な業種の人たちの集う場があるからだと思います。
IoTやAIやビッグデータの進化による産業革命の今、至る所にビジネス機会の窓が開いています。スタートアップ起業家の皆さんには、ネット社会だからこそ、自ら異分野の意欲ある人達が集う場に出向き、肌でイノベーションの空気を感じ取りながら、未来の扉を開いて欲しく思います。
第238回 「共有社会」
今年の夏休み、アムステルダムから来日している方から、「オランダでは、宿泊施設や車を始め、オフィス、学校といった様々なものを共有して利用している。日本は、シェアして使うサービスが少ないね?」と訊ねられました。
この方によると、アムステルダムでは使っていない部屋や車をシェアするカーシェアリングなどを提供しており、これからもできるモノは、なんでも周りの人に提供していきたいとのこと。自分も様々なものを活用していて、日々の生活スタイルが変り、とても心豊かになったと笑顔で話してくれました。
アムステルダムは、「スマートシティ」プロジェクトに取り組んでおり、先端技術を活用して、社会・生活インフラを効率化・高度化(スマート化)することを目指している都市で、「shareNL」という機関が主導し、モノや、空間、スキル、移動など、シェアされた仕組みが出来ているとのことです。
5月に訪ねたサンフランシスコやシリコンバレーでも、スマートフォンを使いAirbnbで部屋に泊まり、Google mapとUberで日々を快適にローコストで過ごしました。改めて各地にこういったシェアする新たな世界が勢いを増し拡がっていることを実感しました。
今、体感しているケースは一例にすぎず、これから更に進化するIoTは、提供者と利用者を結びつけて、一つの国や社会を大家族にまとめ、近い将来、日本でも全国でモノをシェアできるようになり、とくに若いインターネット世代の生活の質を一変させるのかもしれません。
IoTやAIの拡がりは、これまでの資本主義市場と共有型経済のハイブリッド経済へと移行する黎明期なのだと思います。
協働型コモンズによってコストを限りなくゼロに近づけることによって、既存の企業の提供するモノやサービスの収益構造を変え、産業の垣根を越えた新たな共有型経済が出現しています。
日本は江戸時代、庶民は集合住宅の「長屋」に住み、井戸やトイレ、ゴミ捨て場などを共有して暮らしていました。土鍋や皿や鉢などの食器の貸し借りや、食材や料理の御裾分けが、日常的に行われていたそうです。
長屋の住民たちは、生活必需品のシェアだけでなく、子どもが生まれるとみんなで世話をして、地域社会で育児を行っていました。
ここ数年、日本で増加しているシェアハウスには、江戸時代のこういった精神や生活スタイルに通じる共通点が多く、現代の暮らしに復活した背景には、本来、日本にこういった生活文化があったからこそ、受け入れやすかったのだと思います。
日本の生活者の文化資源を活かし、協働によるオールジャパンで新しい社会を実現していきたいものです。
第237回 「4億人のスタートアップ起業家」
今、世界では、史上空前の4億人ものスタートアップ起業家が生まれ競い合っています。
1995年~2006年、戦後最大のスタートアップ企業が創生された時代がありました。グーグル、アマゾン、アップル、アリババ、テンセントをはじめとする新興企業が、それぞれの国や人々に大きな富をもたらしています。世界をリードするグローバル企業はこの時代に生まれています。
日本においても、この頃、多くのベンチャーが誕生しました。しかし、時代の寵児として注目され、時価総額7900億になったライブドアのホリエモンこと堀江社長や、村上ファンドの村上社長が逮捕され株式市場が大混乱に陥り、新興ベンチャー全体のイメージの悪化と共に、ベンチャー企業は力を失いました。
2000年には203社が上場しましたが、2009年に19社まで落ち込み、ベンチャー情報誌まで廃刊に追い込まれる事態になってしまいました。
保守派の大手企業の重鎮たちは、Tシャツ姿のベンチャー起業家を冷ややかな態度で受け入れず、戦後最大のスタートアップ企業に水を差し続け、起業家が激減しました。
この頃、日本の株式の時価総額は、550兆円前後でした。現在、ほとんど変わっていません。一方、米国ではほぼ同様の時価総額が5倍に成長し、2500兆円を超えています。世界の時価総額は76兆ドル(8500兆円)となり、アップルやアマゾンといったIT企業が国を牽引し、2008年の金融危機前の75兆ドルを上回っています。
また、米国のスタートアップ起業家への投資額は7兆円を超え、多くの起業家が誕生しています。
一方、日本では2000億円程ですが、その半数はシリコンバレーの起業家達への投資といわれています。
ライブドア事件から、11年が経ちました。この間、米国も中国も新興企業の成長が国の成長を牽引してきました。アップルの時価総額80兆円、グーグル70兆円、中国アリババ40兆円、テンセント35兆円(7月時点)となっています。
現在の世界の時価総額の上位企業の大半は、新たな技術革新スタートアップ企業で、古い企業は存在していません。
日本においては、トヨタ、NTTといった企業群が変わらずに上位に名を連ねています。
今年3月14日、サンフランシスコで世界一のスタートアップ企業を決める「Startup World Cup 2017」で、世界14カ国を勝ち抜いたスタートアップ起業家との優勝争いの結果、日本代表のユニファ株式会社が優勝しました。
ユニファは、優勝投資資金1億円を得ると同時に、著名な投資家など世界の大手企業との繋がりを得て、世界進出への足掛かりを掴むことができました。 世界から日本のスタートアップ企業がさらに注目を浴びる追い風となることが期待され、ここ10年間、世界の最下位にいた日本のスタートアップ市場に、勇気を与えた嬉しい出来事でした。
7月27日、当社の銀座オフィスで、世界の代表と競い合い勝ち抜いたユニファの土岐社長から、東京501会にて講演いただきました。
これからの世の中を変える予兆を感じたスケールの素晴らしい内容でした。
世界大戦で壊滅的な打撃を受けた日本は、起業家精神旺盛な多くのスタートアップ企業の勃興によって、世界で類の無いスケールと速さで、豊かな国になりました。1995年から訪れた絶好のスタートアップ起業機会を逃し、起業家精神は薄れ、日本の開業率は最下位に落ち、失われた20年といわれ世界一の債務国になっています。
日本が活力を取り戻してゆくには、世界に通じる起業家が一人でも多く誕生し、新しい産業を興していくことにあります。
今回の「Startup World Cup 2017」で、ユニファが優勝したことで起業国家への火種が拡がり、一人でも多くの人に起業家精神が芽生え、起業家とそこに加わる人たちが増大することを期待したいと思います。
第236回 「メンバーズ」
2017年4月21日、株式会社メンバーズが、 東証一部に上場しました。
インターネットの黎明期、メンバーズを創業した剣持社長と出会いました。
縁あって社外取締役と監査役に就任して以来、約15年に渡り経営に携わって参りました。この間、インターネット業界は激変し、栄枯盛衰ベンチャー企業の新旧交代の時代でした。
2006年11月、メンバーズはセントレックス市場に上場し、2008年に史上最大の負債総額64兆円でリーマン・ブラザーズが倒産したことに端を発した世界的金融危機、リーマン・ショックの影響を受け、売上が低迷し大変厳しい状況の頃、社外取締役の任にありました。
更にこの年、IT 業界の寵児として君臨し7900億の時価総額だったライブドアのホリエモンこと堀江社長が逮捕され、株式市場が大混乱に陥りました。
インターネット業界の、日本列島を揺るがす大事件が勃発した年でもあります。
こういった混乱の渦中、メンバーズは虎の門から五反田に本社オフィスを移転する意思決定をし、剣持社長のリーダーシップのもと、社員と一丸となって、ビジネスモデルを変革し「世界一のWeb運用会社」を目指す方針を立てました。
更に、「大手企業を顧客に、売り上げ拡大をする」戦略を描き、「社員の幸せと社会貢献を同時に実現する」MEMBERS WAYをひたすら愚直に追い求め、今年4月、138人の新入社員を迎え、757名の規模の会社に成長しました。
今年の4月21日、メンバーズが東証一部に上場し、証券取引所の上場セレモニーの場に私も立ち会うことができ、大変嬉しい出来事でした。
長きに渡りメンバーズの社外取締役を務めてきましたが、この節目に退任することになりました。
メンバーズは、「マーケティングを変え、心豊かな社会を創る」という理念を掲げ、社会にますます影響を与え、成長していく会社だと確信しています。
世界No.1のWeb運用サービスの確立を目指し、デジタルマーケティング支援を通じ、社会の課題を解決してゆくCSV経営に取り組むメンバーズを、今後もご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
第233回 「シリコンバレー」
GWにサンフランシスコ・シリコンバレーに、行ってきました。
名称の起源は、半導体(原料silicon)メーカーが集まる場所と渓谷(valley)という地形に由来しています。
現在ではIT企業の一大拠点となり、AppleやGoogleといった世界の時価総額ランキングの上位企業が誕生したエリアの総称となっています。
世界一の時価総額90兆円のApple、それに次ぐAlphabet(Google)やFacebook社に行きましたが、創業者の思想がキャンパスやオフィスに投影され、街を巻き込む圧倒的なスケールに刺激を受けました。
ヒューレットパッカードのガレージが発祥とされるシリコンバレーは、スタンフォード大学を中心に優れた「研究」、豊富な「資金投資」、そして何よりも世界中から「起業家」が集い、「ビジネス機会」が創造される風土とエコシステムが織りなしています。
Google創業者セルゲイ・ブリンは旧ソ連、yahoo創業者のジェリー・ヤンは台湾、Tesla Motors会長のイーロンマスクは南アフリカ出身であり、多国籍国家の英知が集まる場所であることを改めて感じました。
現地の起業家専用のシェアハウス(Startup embassy)には、スペイン、メキシコ、オーストラリア、トルコなど世界中から夢を持った起業家が集まり、昼夜問わず語らう場がありました。私が日本のインキュベーターであることを伝えると、自己紹介の会話を寸断して、すぐさま「私のサービスは、可能性があるか?」と意見を求められました。
2000年前半にはインキュベーション施設が次々に設けられ、世界を驚かす事業アイディアを育てようという風土や仕組みが加速しました。
そのうちの一つであるPlug and Play tech Centerに、訪問しました。
2006年に開設し、35億ドルのファンドを持ち、350程のスタートアップ支援をしています。
年間100以上ものイベント開催によりネットワーク形成の機会が豊富にあります。視察団も毎日のように訪れており、非常にOPENで人の出入りが自由になっています。
昨今の傾向に反し、特にセキュリティ対策がないOPENな点が際立っていました。投資を受けた企業は壁に貼られ、表彰される仕組みになっています。注目される点は、出資を受けた企業、IPOした企業と同様にバイアウトした企業も称賛されている点であり、3年程度でExitするケースが多いとのことでした。
過去のインキュベーション施設は、箱型のワーキングスペースをとりあえず創る傾向があったように見受けられましたが、ここでは以前より、投資家に向けたピッチイベント、起業家と投資家の交流イベントが盛んにおこなわれています。
近年では、短期間のアクセラレーションプログラムでプロダクトを創りこみする合宿形式が成功しています。
人材交流の中から自然発生的に人を採用するケースも多いようですが、これからはインキュベーション施設と共にインキュベーターによる人材マッチング機能がより重要視されると思いました。
今回の渡米では、スマートフォンで、Airbnbで空き部屋に泊まり、Google mapとUberで見知らぬ土地でも効率的に移動することが出来ました。
Facebookで現地の起業家と連絡を取り合い、新たな繋がりが生まれました。
改めて確認してみると、これらのサービスの大半が、驚いたことにこのSilicon Valleyで生まれ育った企業でした。
また、Silicon Valleyの中心にあるスタンフォード大学は、世界で2番目に大きい広大なキャンパスで、一日では周りきれないスケールの大きさに圧倒されました。
ナイキ創始者のフィリップ・ナイト、HP創始者のヒューレットとパッカード、Google創始者のセルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ、yahoo創始者のジェリー・ヤン、デビッド・ファイロ、GAP創始者のドリス・フィッシャーなど、数多くの起業家を輩出しています。
大学と産業、VC、インキュベーターの共創によって大きなイノベーションを起こし続けるSilicon Valleyのように、日本型TLOを始めとする産学の起業エコシステムを強化し、より多くの起業創出に寄与していきたいと思いました。



















