第244回 「世紀のイノベーター佐々木正さん」
1月31日、電子立国日本の礎を築いた偉人であり、私が敬愛する佐々木正さんが、102歳で天寿を全うされました。
20年程前、佐々木さんに技術開発の相談をしていた時、弁当を食べながら「これからの時代は、車の塗料から太陽光のエネルギーを取り入れて走る車を造ったらおもしろい。僕はまだ80歳を過ぎたばかり。ベンチャーを起業しようと思っている」と、未来を見据え語っていた顔が忘れられません。
そして、「あなたの仕事は、これからの日本にとって大切な仕事だ」とエールと勇気をいただきました。
その後、何度かお会いさせていただき多くの事を学びました。中でも「解らなければ聞けばいい。聞かれたら自分の解ることは何でも教える。無いなら借りればいい。あるものは与えるべき。一人でできることなど知れている。技術は皆で共に創る『共創の精神』が肝心だ。成功している企業には共通して、共創の精神がある。一社単独でやっていても限りがある」といった言葉に刺激を受けました。
私が語るまでもありませんが、佐々木さんは電卓の生みの親であり、液晶や太陽電池などの開発に関わり半導体産業の礎を築いた世紀のイノベーターです。スティーブ・ジョブズや孫正義さんに影響を与えたといわれています。
ソフトバンクの孫さんの「大恩人」として知られているので、そのことを佐々木さんに尋ねると、「孫君は、もういいといっているのに、今もお金を送ってくる。」との言葉が返ってきました。孫さんが、一代で6兆円を超えるスケールのグローバル企業グループを創り上げた理由の一端を垣間見た気がしました。
人との出逢いが、人生を根底から変えることがあります。
アップルを追われたジョブズが、佐々木さんに会うために来日し、「次に何をするか」と相談した際、ソニーの大賀さんを紹介され、その後iPod、iTunes、iPhoneが誕生するストーリーが生まれました。
「人との『共創』によって『思いをかたち』にしてゆく道筋は、永遠に変わらない」
佐々木さん、勇気・希望・教訓をありがとうございました。 合掌。
第243回 「AI時代の幕開け」
年明け、多くの経営者の方々から「AIを取り入れ、イノベーションを起こしたい。AIへの対応を検討していく」との話を聞きました。
過日、フランスにいる娘が帰省して、「フランスの生活は、電気代は安く、様々なものを共有でき、無駄なものを買わなくて済む」と話していました。
欧州では、AIやIoTの進化によって、提供者と利用者がダイレクトに結びつき、様々な世界が一つに纏まりつつあるようです。協働型コモンズによってコストが限りなく下がり、企業の提供するモノやサービスの収益構造を変え、業界の垣根を越えた経済圏が進行し始めています。
日本でAIの進化が、具体的にどんな所で、どのくらいのインパクトが生じ、それぞれの企業にとって、どんな脅威をもたらすのかはまだ解りません。「相当の仕事が無くなる」という予想をはじめ、様々な悲観的な見方から楽観的な未来の姿まで、多くの論者が語っています。
10年後の風景を誰も見ることはできませんが、異業種からの参入によって産業の垣根がなくなることは確実視されています。これまで存在しなかった競合が、急増しています。
人工知能との共存時代を迎え、「AIコミュニケーション」は、企業にとって不可欠なテーマとなりました。
生物や植物は、繁殖力が環境のキャパシティを超えると自然淘汰が起こります。それと同じように、限られた環境マーケットの中で生き残るのは、環境に適応し変化した企業です。進化し存続している企業は変化を予想した企業ではなく、変化に対応できた企業です。
AIを俯瞰してイメージしてみると「圧倒的な記憶力、分析力が強みの道具」に見立てることができます。この道具を使って、環境に適応していく創造力と、経営資源・技術・ノウハウとを掛け合わせると、新しい価値が見えてきます。AIの出現は脅威ではなく、デジタル社会でのビジネス機会です。
これまで解決できなかった「顧客の不」に対し、自社の強みを活かすベンチャー企業や大学と組んで更に磨きをかけ、人工知能という道具をうまく組み合わせて新しい価値を創り、未来を切り拓いていくことが企業の道筋になって来ました。
第242回 「新年新心」
昨年は、26年ぶりの株高となり、AI(人工知能)を始め、ITの進歩は止まらず、様々な分野でディスラプション(創造的破壊)を実感し始めた年となりました。
今年は、明治元年から満150年に当たり、来年は「平成」の年号が変わる節目の年です。
明治維新以降の日本経済の発展は、世界史上の奇跡と賞賛されました。明治維新は、黒船来航から、欧米列強の経済的・軍事的進出に対し、抵抗する攘夷運動が起源です。
人は、目に見えない緩やかな変化には鈍感ですが、急激なインパクトには敏感です。アマゾンの驚異的な拡大は、様々な業界に破壊的なインパクトを与えています。人々のライフスタイルを変え、時価総額数十兆円を超える企業群の多くは、デジタル上のガリバー企業です。サービス産業には違いありませんが、スーパーや百貨店と違って、目に見えない企業です。アマゾンも、アリババも、グーグルも、立派な店舗は持っていません。顧客との接点は店舗ではなく、ポータルと呼ばれるパソコンやスマホ画面です。日本企業は、1995年頃から到来したIT社会での絶好のビジネス機会を捉えきれず、失われた20年といわれています。
世界は今、これまでにないスタートアップ起業家が生まれ競い合っています。米国では、スタートアップ起業家への投資額は7兆円を超え、中国においては10兆円を超える勢いで、起業率は20%になっています。
日本企業の内部留保金が前年より28兆円増え406兆円となり、過去最高を更新したとの公表がありました。 日本の持続的成長に向けて、企業内起業へ積極的投資による「スタートアップ2018年」の醸成に取り組んでいきたいと思います。
本年もどうぞ宜しくお願いします。
第241回 「異業種交流会東京501の会長就任にあたり」
この9月、異業種交流会東京501の会長に就任いたしました。
2001年3月から顧問として関わってきましたが、前会長の池田さんより任を引継ぎ、東京の会長に就任するに至りました。
「異業種交流会501会」とは、明治維新の頃、日本を代表する500社の会社設立に関わったとされる経済人「渋沢栄一」の業績を一社でも超え、地域社会から活力あふれる日本を築いていこうという主旨に賛同した起業家や経営幹部の集う交流組織です。
この会は新潟からスタートし、東京・郡山合わせて現在127法人260会員の組織になっています。経営のあり方を学ぶ研鑽の場であり、DeNA創業者の南場さんを始め、これまで200名を超える起業家の皆様をお招きし、毎月一回「起業」をテーマに講演いただいております。交流を深める刺激的な場となって17年目を迎え、今日に至っています。
日本は今、スタートアップ起業が好転し、2016年は過去最高の2000億を超える資金調達をしています。今年も高水準で推移し、大企業のオープンイノベーションによるベンチャー投資も広がっています。日本は、起業家精神旺盛なホンダやソニーといった多くのベンチャーの勃興によって、世界で類の無いスケールと速さで豊かな国になりました。
しかし、現在の日本の起業率は5%で、先進国では最下位です。欧米では10%を超え、米国のVCへの投資額は7兆円というスケールで、日本の80倍の規模です。中国での起業率は20%で、4兆~5兆円が投資されています。現在、世界の時価総額ベスト10に入っているのは、1990年代シリコンバレーで誕生したアップルやアマゾンをはじめとする企業群と、中国のアリババとテンセントといった新しい産業を興した企業です。世界では産業構造の大きな転換期の中で、新旧交代の新陳代謝が起こっています。
過日、日本能率協会から、国内企業の7割を超える企業が現在の主要事業の5年後の見通しがつかないとのリリースがありました。ITの急速な進展などによる、今の世の中で起こっている大きな経営環境変化の実態をよく理解し、危機感を持つ経営者が多い実態が示されました。
産業構造が大きく変わるインダストリー4.0を迎え、すべてのものがインターネットにつながり、情報の蓄積活用のAI・ビッグデータ・IoT・シェアリングエコノミー・エネルギー革命・バイオ・ロボティクス・健康・スポーツ・農業・観光と生活・社会のあらゆる側面を劇的に塗り替えていく新たな世界が到来してきました。
日本経済の新たな産業構造を変えていく担い手となる、起業家精神溢れるチャレンジャーが集う「異業種交流会東京501」に力を尽くす所存です。
第240回 「ニッポン新事業創出大賞 サラダボウル」
10月5日、戦国最強と呼ばれた名将武田信玄の膝元山梨県甲府にて、日本ニュービジネス協議会連合会による「新事業創出全国フォーラム」が開催され、全国から800名の方が集い「第12回ニッポン新事業創出大賞」の表彰式が華々しく行われました。
今回、アントレプレナー部門で最優秀賞/独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長賞に選ばれた企業は、大規模な施設でシステム管理によるトマトの栽培事業を行う株式会社サラダボウルでした。
サラダボウルは、農業先進国のオランダをベンチマークし、独自の施設設計、生産工程マネージメント、商品マーケティング、週休二日制・賞与を取り入れた報酬制度、人材育成モデルを確立し、産業ノウハウを取り入れ作業を見える化した農業ベンチャーです。
創業した田中社長は、トマトの生産から、加工・販売まで一気通貫によって農業の6次産業化を見事に創り上げた起業家で、現在は、兵庫県加西市にて3haのトマト栽培を中心に、農業生産法人5社、ベトナム現地生産法人1社、6次加工販売会社1社を運営し、グループで約300名の雇用を創り出し、さらに多くの人々を迎えたいと語っていました。
国内の食品スーパーを顧客に、マーケット戦略を立て、特定品種の独占栽培で、品種の能力を最大限発揮できるような独自の大規模施設による見事なビジネスモデルを創り上げています。
ビジネスモデルの強さの本質は、場所によって変わることのない普遍的な価値を生み出す仕組みにあります。今後、岩手、宮城、山梨にさらに3箇所の圃場を計画しており、これまでにない農業の産業化の可能性を感じました。
日本の食料自給率は、1960年には79%ありました。半世紀ほどの間で半減し、主要先進国の中でも最低の水準にあります。
今後、サラダボウルのような付加価値の高い農業ベンチャーの誕生によって、農業の産業化を進めることで自給率を高め、食糧危機に直面しても対応できる日本を創り上げていきたいものです。









