第254回 「新年新心」
新しい元号に変わる、歴史表記転換の年を迎えました。
今から30年前、平成がスタートした年の日本経済は頂上にいました。世界の時価総額ランキング上位50社中、日本企業が32社でした。現在、トヨタ1社のみとなっています。今では信じられませんが、九州と中国のGDPが同じ規模でした。現在、中国は日本の2.5倍に成長しています。デジタルの進化によって、第四次産業革命が始動し、業界の垣根が無くなり世界経済の景色は大きく変わりました。
この30年、株価や名目賃金は世界で見ると約2倍に成長しています。日本は、ここ数年は成長していますが、30年前から見ると低迷しています。
平成30年、日本のIPOは91社となり、資金調達額は過去10年の最高水準で2100億円、12月19日に上場したソフトバンクを含むと、2兆8000億円を市場から調達しています。そして、大手企業とスタートアップの提携や、企業内起業も増大し、特にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の動きは、目を見はるものがあります。業種も多様化し、現在の第四次産業革命は、異業種のテクノロジーや異なる顧客群との垂直の組み合わせによって、これまでにないイノベーションを生み出しています。大企業とスタートアップとの連携によるオープンイノベーションは、一時的なブームではなく産業構造の進化による必然的な事象となって来ました。
世界は今、政治も経済も不安定な状況にあり、前例のない変化が起こり、これまでの延長では存続できない時代です。
過日、AIで著名な東大の松尾准教授から、「世界の大手ネット企業には6000人のAI人材がいる。日本の産業界や研究機関には3500人のAI人材がおり、AIの分野では世界をリードできるポジションにいる」と、聞きました。松尾塾では、上場したグノシーを始め、パークシャテクノロジーといった多くのAI起業家が集い、産業と人工知能の繋がりが活発化しています。
実用ステージでは、ファナックを始めとする生産メーカーや、アルゴリズムによってマッチングを高めているリクルートやアトラエがAIを活用した成果を出しています。
本年度も、変化と湧き出すエネルギーを味方にして、「一人ひとりが人生のCEOとして生きる社会」の実現に向けて、人と企業に成長機会を提供してゆきたいと思います。
この一年が、健康で心豊かな一年でありますように。本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2019年 元旦
第253回 「異業種交流会501会長就任から」
「異業種交流会東京501」の会長に就任し、一年が過ぎました。会の指針として、「新たな事業の発見」「刺激と学び」「出逢いの機会」を掲げ、TBM山﨑敦義社長・Huber.紀陸武史社長・Sakaseru小尾龍太郎社長・GLOBAL EDUCATIONAL PARTNERSモントゴメリー道緒社長・ナイトレイ石川豊社長・ママスクエア藤代聡社長・ピースオブケイク加藤貞顕社長・epoc佐藤信之社長・Green Earth Institute伊原智人社長・iYell窪田光洋社長といったスタートアップ起業家の皆さんから、「起業に至る道筋、そして、これから」といった内容で、熱意溢れる講演をいただきました。おかげ様で、多くのゲストも交え、刺激的かつ視座が高まる場となりました。
今年の日本の株式市場は、新規上場企業数が105社となり、昨年度より8社増の予定です。今年新規上場した企業の中でも、特に注目されたのはユコーンといわれたメルカリで、公開時時価総額は7,000億円を超え話題となりました。また12月19日には、ソフトバンクの大型上場が予定され、市場から2兆6,000億~3兆円の資金を調達する見通しです。現在の日本の株式時価総額は、630兆円程となっています。
世界では、GAFAの時価総額が3.42兆ドル(9月時点)となり、アマゾンの時価総額が1兆ドル(約110兆円)を超え、アリババは「独身の日」一日で、過去最高の取扱高3.5兆円、宅配件数10億件を記録しました。ITの特定の企業群が、デジタル大陸を拡大させ巨大な経済圏を創り出しています。
一方、ここにきて世界のマネーを吸引してきたアップルを始めとする主要IT7社の時価総額が、ピーク時から160兆円減少する(11月22日時点)など、先々の不安が広がっています。
今年は、100年に一度といわれたリーマンシックから10年が経ちました。デジタル・ディスラプションが起こり、AIによる産業革命が始動し、業界の垣根がなくなってきました。10月4日、トヨタとソフトバンクによる、自動運転移動サービスの戦略的提携が大きな話題となりました。今、あらゆるマーケットが劇的に変わる世界が到来し、ビジネスの機会が拡がっています。
2019年は新しい年号がスタートする転換の年ですが、「産業構造を変えていく起業家たちが集う異業種交流会東京501」に向けて、次年度も盛り上げていきたいと思います。異業種交流会501に、来年度もご期待ください。どうぞ、よろしくお願いします。
第252回 「アマゾンの収益」
過日、アマゾンジャパンの経営陣から刺激的な話を聞いたので、以下に紹介します。
「アマゾンの利益の多くは、AWSから生み出されている。AWS(Amazon Web Service)とは、アマゾンが提供するクラウドサービス。もともとは自社のために作ったITシステムで、それを外部に提供したシステムだ。AWSは、売上高の約10%を占め、利益率は約25%の高収益事業で、アマゾンの利益の多くは、実はAWSが稼いでいる。これまで、マイクロソフトやグーグルと、クラウドサービスで数十回を超えて値下げ競争を繰り返し、現在では世界シェアナンバーワンのクラウドサービス企業になった。先日、時価総額が1兆ドル(約110兆円)を超えたが、株式市場は、ここも評価してくれたと思う。アップルの時価総額を超えるのは、時間の問題だろう。創業経営者のジェフ・ベゾスは、ビル・ゲイツを抜き2018年時点で1120億ドルの資産を持つ世界最大の資産家になった。
アマゾンの現場経営は、精緻で綿密な戦略を考えず、思いついたらとにかくやってみて、ダメだったら撤退する。商機を逃さず、思いついたことを圧倒的なスピードでビジネスモデルに落とし込む組織力がある。自分達だけではすべてを網羅した品揃えができないので、AWSの外販でシェアナンバーワンになったシステムリソースを活かし、出店者を募り場所貸しする仕組みを見出し、圧倒的な商品を揃えるプラットホームを作り上げた。
現在、アメリカの会員数は8500万人、全世帯の68%がプライム会員となり、毎年20%の成長を続け年間売上20兆円を超えた。
日本においても、会員数が4000万人を超えた。楽天を抜き、年間売上2兆円が見えてきた。(昨年頃から、我が家のマンションのごみ置き場の段ボールは、半分以上がアマゾンのロゴ。)日本の年間3900円の「アマゾンプライム」会員費は、アメリカの1万3000円に比べかなり安く、使わないと損をする価格設定になっている。オンラインストア事業は利益より、シェアに傾注している。
アマゾンは上場以来、株の配当を一度も行わず投資に回し、倉庫数も、データセンター数も、ダントツのNo.1になった。他社が追従できないところに来たと思う。小売りIT企業で、地球最大の会社になり、リアルでも圧倒的No.1を目指している。」
1995年創業以来、書籍の販売からスタートしたアマゾンは圧倒的な規模で巨大化し、世界を席巻しています。最近では、AIスマートスピーカー、スマホ決済など、我々の生活の奥深くに入り込み、購買履歴等のビックデータを持つ企業グループになりました。データの世紀を迎えた今、アマゾンはどこまで、我々の生活を変えるのでしょうか。
第251回 「社長交代」
今年に入り、すでに上場企業の社長が310人も変わっています。上場企業全体の10%近い社長が変わったことになります。業績不振による交代や、不祥事からの引責、若返りのための事業承継、M&Aなど、様々な社長交代の要因があります。
社長交代は、経営者にとって最も難しく最大の仕事といわれます。吉野家の安部会長が、社長交代について、次の様に語っています。
「早い段階から『リーダー育成と社長交代』に取り組んだ。それでも難儀した。吉野家の社長に就任し債務を全額返済してから、創業者が創り出した『うまい、やすい、はやい』というバリューを承継していくには、次世代リーダーを発掘し育成することだと考えた。10ヵ年計画に、新規事業やM&Aを積極的に盛り込み、『リーダー育成のための場を提供する』方法を採った。吉野家以外の事業を増やし、そのトップにリーダー候補を派遣してマネジメント全般の力を養わせた。社長に適しているかどうかは、場を提供してやらせて結果を見ないと、わからない。ペーパーテストや面接では、リーダーの適性は測れないものだ。
22年間社長を務め、後継者に譲るまでに随分と時間がかかった。『場を提供する』方法は間違っていなかったが、『評価するポイント』に見落としがあった。管理能力=マネジメント能力だと思い込んでいた。組織の現状を客観的に把握し、問題を解決してカイゼンすることができる人は頭脳明晰で、組織の中でも『優秀だ』と重宝される。しかし、多くの幹部候補に『場を提供する』育成を続けるうち、管理能力は経営者の『必要条件』だが、『十分条件』ではないことに気がついた。十分条件とは、カイゼンではなく、大きな改革ができること。つまり、現在とは異なる未来のビジョンを描けて、その達成のためにリスクを取れることだ。この能力は、管理能力とは全く別のものだ。管理能力の高い優秀な人間ほど、客観的に現状を分析してその延長線上でものを考えるので、リスクを取ろうとしない場合が多い。地続きでなく、大きくジャンプするビジョンを描ける人間は、かなり特殊だ。そういう少数の人間こそが、変化の激しい時代のリーダーにふさわしい。そう気づくのに、10年、10人、10億以上、かかった。
管理能力が高いリーダーは、順境ではいい結果を出すが、局面転換ができない。自分の理解を超えることが起きたり、現状の延長線上で出せない答えを求められたりするからだ。
そういう時、リスクの重さを知りながら、あえて挑戦できる人間は、覚悟した『魂』がある。やってやろうという気持ち、大きなチャレンジに対して不安と同時にわくわくする気持ちを持てる人間。そういうリーダーでないと、現代のような不確実性の高い時代に、企業を成長させるビジョンを描くことはできない。
人間は変化を好まない生き物なので、リスクテイクできる人というのはそもそも少ない。単なる蛮勇で考えなしにリスクを取るイケイケドンドンなタイプではなく、リスクの何たるかを知ったうえであえてリスクを取ることができる人は、ほんの一握りで、5%もいないのではないか。
管理能力は後天的に学習し、身に付けることができるが、リスクテイクする能力は、かなり先天的要素が作用する気がする。河村社長は、完璧な人間だった訳ではなく、失敗もあったが、与えられた場において誰よりも挑戦し、努力し、今がある。
『こいつはリスクを取れる人間だ』そう思ったら、ぜひその人物を貴重な人財とみなし、挑戦できる場を与えてあげて欲しい。そして、傍から見て危なっかしくても、失敗するのが見えていても、事業の根幹を揺るがすほどのことでなければ、じっと我慢して口を出さないで見守ってやってほしい。
彼・彼女はきっと自分の力で、痛みも失敗も血肉にして成長していく。リーダーとなる人間に教えることがあるとしたら、ただ1つ。決断の軸に『志』を確立することだ。浮利を追わず、メディアや同業他社の言動に振り回されず、『われわれが目指すべき道』を邁進すること。『誰のため、何のため』の使命感に順ずる心が、リーダーの器を大きくし、さらに次のリーダーの伝承へとつながっていく...」
経営者には、事業を創造し軌道に乗せていく起業家タイプ、事業を育て中興の祖といわれる経営者タイプ、そして、再生を得意とするプロのターンアラウンド経営者がいます。志を持って、リスクを恐れずチャレンジしてゆくリーダーが、今、求められています。
第250回 「世界一を目指す起業家粟田さん」
過日、丸亀製麺で有名なトリドールの粟田さんと飲みながら、奥さんと二人で始めた創業の頃の話などを伺いました。現在一番の繁盛店はハワイのワイキキ店だそうです。以前、ワイキキのお店を訪ねた時には、40人を超える欧米人が列をなしていました。大きな釜で目の前でうどんを茹であげ、日本語で対応する仕組みは日本と同じ風景でしたが、並んでいる間にパフォーマンスが見られるのがあちらでは物珍しく、魅力だと話題になっていました。海外では常識のチップも必要なく、かけうどん1杯4ドルと圧倒的なコストパフォーマンスで、エビ天、アスパラ天、かぼちゃ天などのトッピングや、フライドチキンにケチャップをかけて、美味しそうに食べている人達で賑わっていました。
粟田さんは子供の頃に父親を亡くし、生計を立てるために始めた学生時代のアルバイトがきっかけで飲食に惹かれたとのことでした。「豊かになりたい」と奥さんと共に焼鳥店を開業し、その後立ち上げた「丸亀製麺」は爆発的な人気が出て、外食チェーン史上最速で500店舗を達成しました。現在1,575店となり、売上高は1000億を超え、株式時価総額も1000億を超える日本の外食事業を代表する企業に成長しています。
世界中の人々が集うグルメの激戦地で大行列をつくる米国ワイキキ店を皮切りに、タイ、中国、ロシア、台湾、韓国、インドネシアなどに出店し、現在海外では530店となっています。
和食は世界から注目される産業ですが、手頃な価格で、オープンキッチンで目の前の「臨場感」「できたて」「手づくり」が味わえる日本の食文化を活かしたビジネスモデルは、世界のお客さまから高い評価を得ています。
1970年代、ケンタッキーやマクドナルドなどのアメリカのフードビジネスが世界を席巻しました。それから40数年。日本でも様々な外食企業が誕生し、多くの企業が世界進出を試みていますが、世界の人々から愛されている企業は誕生していません。
「世界に誇れるおもてなしの心をもって、あらゆる国の文化、地域性を尊重した業態を展開し、日本発の外食のリーディングカンパニーを目指します」と、語っている粟田さんの志が実現するよう、応援していきたいと思います。








