インキュベーションマザー 北條夏旭 『Mother's Note-マザーズノート-』 -43ページ目
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第4回  「インキュベーションマネージャー もう一つの仕事」

 本来インキュベーターとは、卵を孵化する器械の事です、それを例えて、起業家を支援する施設のことをインキュベーと施設と呼んでいます。私達のインキュベーションマネージャー(IM)の仕事は、ビジネスの卵を孵化(ビジネスチームを誕生させる)する為にサポートをする人という意味です。その後は、雛から立派な親鳥になるために、餌のとり方(マーケティング)を伝授したり、仲間を紹介したり(アライアンス)栄養補給(投資)体力強化(人材紹介・教育)等、その都度、状況に応じて行っていきます。私は、当社の役員に就任するまで、創業経営者として数十年の時を過ごしておりました。数々の辛酸を舐めて、世の中には敵と鬼と嘘つきが、多く存在していると思っていたものです。今は、「私が起業するときに何を思っていたか、どんな失敗をしたか、毎日どんな思いで過ごしたか」を思い返しながら、起業家を目指す方々に、世間は厳しい事、しかし、自分の努力と考え方で如何様にも変化することを、いろいろな角度から示唆し、自分で気付いて頂ける様にナビゲートしています。何でも答えを出してしまう事は、簡単ですが、「私がやるのではなく、この企業は、この彼がやること」と思い返しながら、場合によっては、辛辣な表現で接する事もあります。
インターウォーズメソッドの中には、あらゆる業界の様々な立場の方々と唐突に(これは仕掛けです)意見交換してもらうオープンなカリキュラムも入っています。起業を試みる人の中には、恥も掻いたり、発見や気付や、悔し涙で眠れない人もいるようです。それでも、保護されたインキュベーターのシナリオの中ですら、萎れてしまう方は、いずれにしろ企業内でリーダーになる事も、独立も、起業も無理です。(だからと言って、どうしょうもないということでは、ありません、誤解なきように)
 会社を創ることは、登記をすれば、誰にでもできます。しかし、本当の経営者になる為には社会的な責任を背負う気構えと最低限の法人としての知識、そしてなによりも自分に嘘をつかない強い意志が必要です。いざ始めると、言葉で言うと簡単な事が、中々実行できなくなっていくものです。生身の人間が、社員の人生を左右する企業の決定権を持つわけですから、常日頃から、社員の顔やその家族、関連各位の事を考えると、利益の確保を優先していかざるを得ません。しかも、自分の掲げた理念やビジョンをそう簡単に変えることなく、逃げ場の無い立場で、最大限のリスクヘッジも考えて判断をするのは、本当に辛く勇気のいるものです。また、リスクを避けたくて、つまらない逃げを打つことから落とし穴にはまる事があっても誰も責められません。そんな緊張感が、一年365日、24時間つきまとう仕事、それが経営者です。代表の立場になって、自覚した時から、素敵な顔になっていく人もいれば、だんだん、貧相な顔つきになっていく人もいらっしゃるのは、この辛さを「よし!」と受け止めて、覚悟した人と、不安と不満だらけで毎日を過ごされている方との違いだと思います。IMの本当の仕事は、この芯の部分を気付いて頂ける事です、ビジネスは机上で考えるだけではなく、考えたことをやり始めてから創り上げていくものです、しかしその創り上げるときに一番必要な物は、リーダーの資質です。立派な事業計画書をいくら創っても、実行するメンバーに意思がなければ、事業は成り立ちません。時に嫌われても、この意思を確立する仕事、それがIMの、もう一つの仕事です。




2010-03インターウォーズ株式会社
常務取締役
Incubation Mother
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第3回  「新規事業サポーター」

 企業内新規事業は、新しい事を始めるというだけで、既に知識不足という障害に出会います。まして、カルチャーの違う世界(例えば、メーカーから小売、物販から飲食、箱物事業からソフト産業)への参入となると、それこそ、生半可な気持ちでは、事業もその人の人格も潰されてしまいます。ところが、会社を大きく変えるかもしれない「宝」を発掘する為の、検証業務にも関わらず、新規事業担当者に本来の業務と兼務させている企業が多く、その担当者は、個人の時間を費やして奮闘、努力をしている光景をよく見かけます。(最も、それ位の、気概がある方でなければ、新規事業の成功は遠い道のりに、なってしまいます。) 一番困るのは、やる気の担当者が、新しい考えや、仕組みを取り入れようとした時、社内の規制や、古い慣習に邪魔をされて、計画が遅滞してしまうというジレンマに陥る事です。組織に帰属している以上、組織の秩序や、ルールを重んじなければなりませんが、新規事業の根幹は、現状破壊からの始まりであり、見知らぬことへの挑戦です。その過程で、新しいルールや仕組み造りが必要になってきますが、失敗が無いとは言えません。失敗を恐れては何もできないという思いもありつつ、組織内で動く以上、失敗は避けなければならないという、通常業務以上の緊張感が溢れる使命という訳です。


 その状況を理解して、使命も一緒に背負っているのが、当社のインキュベーションマネージャーです。目的に向かって、いろいろな課題を解決する事に全身全霊をつくしながらも、あくまでも、バックアップに徹する仕事です。「口先だけのコンサルタントではなく、僕は現場を一緒にやりたい!」と言って参加した当社のインキュベーションマネージャーHさんは、戦略立案から、現場で起こっている細かい出来事のソリューションまで、汗を流し率先して動いています。最近の主な業務である製造業から小売事業への参入という新規事業のインキュベーションを、我が事として、真剣に取り組む彼の姿勢に、その企業のメンバーの意識が、「俺がやらなきゃ誰がやる!」といった姿に変革し、この事業の第1段階はクリアしたという確信が湧いています。店舗の開店時、喜びも苦しみも共にしたメンバー達が、明るい笑顔でお客様を迎えしている姿が、とても輝いて見えました。


 私たちのミッションは、新規事業を推進するリーダーが、事業成功する為に応援していくことです。一つの流れが出来るビジネスモデルを創るまでが、インキュベーションマネージャーの真髄ですから、事業運営組織が固まると、自分の出番は少なくなる寂しさもあると思います。しかし、彼には、新たな新規事業構築の依頼が待ち受けています。次の依頼は、テーマ設定からのスタートですから、また違った苦労と喜びに出会う事でしょう。私達のインキュベーション支援は、同じ解決策・手法にはなりません。インターウォーズのインキュベーションサービスは、その会社の目的、期間、予算によって解決策、支援策を提案して創るものだからです。但し、どこの企業も、新規事業に関する期待度や、緊張感は同じです。彼には、また、新しい企業と、時間と情熱を共有し、「俺がやる!」意識を事業担当者に浸透して、定めた目標に導いて欲しいと思います。




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常務取締役
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第2回  「インキュベーションマネージャー」 

 インターウォーズは、社内に在中しているメンバーと週の半分程度社内にいるメンバーと、完全に独立した事務所をもっている外部ブレーンのスペシャリストでインキュベーション(ビジネスサポート)を行っています。総勢で30人強になります。


 起業は、登記することではなく、会社として存続させる機能が整う事をいいます。つまり、収益構造が明確化されていて、代表者とそれを支えるメンバーがいて、仕事をする場所があり、そして、なによりも社会に求められる商品が揃っている事です。
 私達、マネージャーの仕事は、起業家や、企業内起業家に対して、この機能の再検証と課題の確認作業をしながら、起業家に自信とやる気と適度な緊張を持たせるサポートをします。簡単に自力で起業してしまう方も大勢いらっしゃるのですが、無手勝流の起業は自分よりも周囲に迷惑がかかっている事が、多いですね。世の中は、知らないでいい事は、沢山ありますが、知っておくことで、他人に迷惑をかけないですむ事は、もっともっと沢山あるように思います。知りすぎて、腰が引けてしまう方は、いずれにしろ起業しても無理なので、得られる知識は機会があれば起業する前に、勉強しておいて貰いたい、そんな思いで、サポートをしています。


 私も、これだけ長い期間、起業家ばかり、それも、一人起業家から数万人の社員を抱える創業経営者まで多くの方とお会いしてきたので、起業家に関する目線には自信があります。不思議なもので、成功の基準はありまして、出島に入られる方の特性でどういう会社になるか、どういう経営者になるか、瞬間で想像がつきます。個人的には、その事業の規模や利益よりも、そこに関わる方たちの人としての幸せを願うものですから、無理な要望を託されている企業内新規事業リーダーの方とお話をする時は一番心が痛みます。それでもなんとか、会社も、そのリーダーも幸せ(使命を果たす)になれるように、その方の許容範囲で精一杯サポートします。また、我々インキュベーターへ託される基本使命は、なによりもスピード。なるはやで事業検証をし、起業支援、成長支援をそれぞれの案件に応じてスピーディーに対応することです。そういう事もあり、案件は常時複数で、事業部のメンバーは、いくつかの案件を同時に抱えます。しかもメンバーが同じ会社の担当をしている時は本当に少なく、机が隣でも、まったく違う業種のまったく違う分野のサポートをしています。そうはいっても、必然的に同時進行で新しい情報が飛び交うので、相乗効果がでることが多いですね。例えば、人材の情報や、新しいマーケティングツールとか、物件の情報とか、買収案件とか、新しいシステムの情報とかですね。もちろん、話題のお店や案件(事業モデル)の情報は、積極的に交換してます。
なにより、感性や、意欲は見たもの、聞いた事からしか生まれません。興味を持たせることも、起業家育成に大切な事です。そしていろいろな事を議論しつつも、自分の事業モデルを再検証して自信を持って巣立って頂く、そういう毎日です。




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常務取締役
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第1回  「シリコンバレーのマザー」 

 サンフランシスコのサンノゼで、インキュベーションマザーと云われているバーバラ・ハーレーさんにお会いしました。彼女の口から語られるインキュベーションの真髄に、今までインターウォーズが試行錯誤しながら、貫いてきた信念が、インキュベーションプログラムの中に確立されていた事に気付き、じわじわと喜びが伝わってきました。
 起業家に対する目線や、ビジネスの根幹に対するアドバイス論も熟練のマザーが語る言語は、流暢で美しく、世界のインキュベーション施設のあり方や、インキュベーションマネージャーのやるべき仕事等、改めて、認識することができました。また、バーバラさんが、インキュベーション(起業創業の為の施設、起業家育成、新規事業支援)マザーと言われている意味を理解しつつも、バーバラさんとお話しているうちに、これまで、葛藤の連続でしたが、私たちの方法が、「最も起業に導く近道」であるという事と、世界でも数少ない、本物のインキュベーターとしての弊社の存在価値(レゾンデートル)を感じることができた事は、私の仕事人生の中でも最大の収穫といえるかもしれません。


 私たちが、インキュベーションという支援事業を始めたのは、9年程前になります。そのころ、施設提供に重点をおくべきなのか、サービス業中心なのか知恵を絞るコンサルタントなのか、そのバランスが実に微妙で、BOSSや仲間と激論の毎日でした。インキュベーターとしての最大の要素が施設という認識が強いこともあったせいもあるかもしれませんが、そのバランスは、最近まで、常にどこか、悩ましいものがありました。しかし、お話しを続けるうちに、急に目の前が明るくなりました。
 弊社は【民間】で【事業】として、【インキュベーション支援事業】を行っている会社であるということを、改めて実感したのです。私達の様な、ベンチャーキャピタルの要素も、究極の人材のめききである、ヘッドハンターの目線も、現場をはった商売人の根性も、戦略コンサルタントとしての実績も、起業家魂も持ち合わせたインキュベーションマネージャーは、そう多くはいない! 弊社のマネージャー達は、常にクライアントとウィンウィンの関係であることが前提で、支援をしなければなりません。先生でも指導者でもなく、ともに、知恵と汗を搾リ、クライアントが成功しないと自分たちのフィーにならないというぎりぎりのところで、課題解決の日々を過ごしています。弊社のマネージャー達は、いつかドラマにしたいほど、突発の事件の連続に朝、昼、夜、夜中を問わず、デスクの上だけの解決策ではなく、現場の支援に至るまで、休む事無く、戦ってます。
インターウォーズの思いに共感して、こういった人材が増えることで、
日本は、もっともっと元気になる!
バーバラさんとの出会いは、そんな信念を改めて植えつけて頂きました。




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