インキュベーションマザー 北條夏旭 『Mother's Note-マザーズノート-』 -42ページ目

第10回  「エグゼクティブフリーター氏に頂いた言葉」

 インターウォーズには、吉井の古巣である、株式会社リクルート出身の方々が、社内にもブレーンさんにも、大勢いらっしゃいます。
 先日、インターウォーズのインキュベーションを、外部から見た目で、メンバーにお話して頂く機会を設けました。その時のゲストも、元リクルートで、今は、【エグゼクティブフリーター】の道下氏です。彼は、フリーターという言葉を流行らせた方で、リクルートの新規事業開発の雄として有名です。そして現在もエグゼクティブフリーターの名に相応しく、いろいろな分野で御活躍中です、いつも穏やかで、聡明で、前向きで、思いやりの深い素晴らしい方です。
 「インターウォーズの10年という歳月が生み出したものは、ゆるぎない信用と、なによりも社会の期待です、その期待に答えるべき組織、意識を持って頂きたい」というところから、道下氏のお話は始まりました。確かに、いつのまにか、お客様の数も増え、また、御相談の内容も、秘密、機密事項の多い、社会的責任も重い仕事が増えています。期待値の高さを受けて、一つ一つの案件に気を引き締めて、取り組んでいかなければと、決意を新に致しました。その後、言葉遊びでは無いのですが、という前置きの後、おもしろい話を頂きました。【インキュベーター】は、孵化器という意味はもちろんですが、もう一つ「細菌培養」の意味もあるそうです。
 道下氏曰く、「新規事業は、特に、歴史の長い企業は、安定感の風が流れていて社中の方々は、いつのまにか、綺麗な(守られた)空気の中での生活に慣れ、外気に当てられていないので、虚弱体質になっていく傾向があります、そこへ、培養された「細菌」、インキュベーションマネージャーが参入することで、新しいDNAを持つ、細胞に生まれ変わる(打たれ強くなる)」という事だそうです。しかし、何故、私達が「細菌」か、というと、他社には無い、DNAがあるからだと思います。なにしろ、弊社には競合会社がありません。理由は、とても日々面倒で、超、長期回収モデルだからです、その上、それぞれの利害関係者の我侭と屁理屈と自己弁護が蔓延する仕事を、こんなに辛抱強く継続できる会社は、【インターウォーズ】以外になかったからだと思います。通常の経営者は自社の事業を成長させることに注力しますが、私達の思いは、経営者創造なので、経営者育成に注力を注ぎます。経営魂を開花させるのに、教科書はありません、机上で経営は不可能です、「今、ここ」の課題に取り組み利益を創出する能力を養う方法は、現場と共に歩みながら、体と頭の汗を掻いて、心を捉えて、解決させるしかないのです。
 その経験を経た「菌君」達が、純正培養されたメンバーと一緒に行動することにより、新規事業の開発が、より効率よく、前向きに進むという事になるのです。このような、イメージを改めて教えて頂き、メンバーに、仕事を預ける楽しみが増えました。これからも、顧客の大きな期待に応えるべく、「強固な細菌培養」に勤しみます。
改めて、気付かせて頂いた、「エグゼクティブフリーター」道下氏に、「大感謝」です!


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第9回  「カメラの守護神」

 社長室の壁面に、ずらりと並ぶライカカメラを背中に、次から次へとアイディアにとんだ楽しいお話を聞かせて頂けるヨドバシカメラの藤沢社長。シャープでピントがあった感性と、人心を瞬間に止めるトークは、カメラの守護神に教えを頂いているような不思議な気持ちになります。 これまでの永いおつきあいの中で、折に触れ、時代の寵児と呼ばれる方々をお連れして情報交換をしているせいもあってか、吉井と話されている時には、とても楽しそうで、本音の話はもちろん、新しい閃きや、独特のしゃれが入った含蓄のある言葉をお会いするたびに伺います。
 それにしても、淀橋の上に建っていた、一軒のカメラ屋さんが、30年の間に7000億強の売上規模の企業となったその「芯」は何だったのでしょうか。
 朝は、だいこんおろしがあればいいとおっしゃるくらい、必要以上の贅沢はせず、趣味はカメラ(だと思うのです)と炭焼き、そして愛犬を連れての早朝の散歩を楽しまれておられます。でも、話を伺っていると何より仕事が一番の楽しみだとの思いが伝わってきます。売場の変更等、現場に関しては、どんな早朝でも、藤沢社長は必ず見えていると、関連の人々は感心しています。創業時から、CMコピー、CMソング、はてはビルデザインまで、御自分で発想されてきました。その気合も半端なものではありません。全てが御自身の表現です。お客様の求めていることを常に察知し、現場でそれに答えてきたスーパー経営者の経営姿勢は、お会いするたびに、感銘を受けます。そして、今日のような激変の時代、スーパー創業者の事業承継には、「芯の確認」が最も必要だという事も確信してしまいます。いつの時代にも通じる、芯の部分の判断基準は家訓ではない、経営理念をあらわす「芯」の伝承が、会社を存続させることに繋がるのだと思うのです。
 藤沢社長のモットーは、(私なりの勝手な理解)しゃれ好きなので、「いきあたり、ばったり」とか「とりあえず」とか、笑顔でおっしゃるのですが、やはり、根本は、前向きな、チャレンジ精神であるように思います。
 もちろん、チャレンジする前に御自身の目で見て、納得されるまで、あらゆる確認をされ、結論を出されます、後は、ぶれることが無く、その後のスピードは見事です。
 過日も、突然思い立って、欧州へ海外旅行に出かけられたそうです。「えー!お一人だったのですか!何かあったらどうするのですか」「いやー、ツアーだよ、ひょいといけるよ」「でも、お一人であちこち、街を歩かれたじゃないですか」「まあ、身振り手振りで、なんとかなるものだよ」「でも、何かあったら」「そん時は、そん時だね」という具合です。それでも、商売のヒントを掴んでいらした御様子で、とても、ご満足そうでした。
 御顔は、いつもつやつやで、身軽でお若く、頼もしい限りです。 この秋、秋葉原に、巨大なヨドバシ店ビルがオープンしますが、ますます、「お客様の欲しいものをより安く、早く届ける」事に全力投球であらゆる事に、チャレンジされていかれるのでしょう。帰る際に「そうだ、人生はいきあたり、ばったりだ!しかし、バッタリ倒れちゃいかん!」と、優しい笑顔で、送って頂けました。


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第8回  「雪国のアントレプレナー」

 過日、「北條さん、いやぁーーお久し振りですぅ。今、東京駅なんで、ちょっと寄りまーす!!」「是非に!顔見たいです!!」といったテンポの会話の後、来社され20分で次のアポイント先に疾風のように行かれた、新潟県松之山村ベンチャー企業のリュウド社長長澤さん。20分足らずの時間でしたが「会っている時間は関係ないなぁ~」と、改めて実感する方なのです。
 長澤さんとの出会いは、今から5年程前のことになります。新潟県主催の、ベンチャー育成のセミナーで講演した吉井の出島理論に共感され、自らが、新規事業立ち上げの責任者として、当社の出島スペースに、(社長なのに)新潟の松之山から東京に単身赴任されました。そして、弊社の出島インキュベーションスペースを東京事務所とし、多くの新規事業のチャレンジをされました。リュウド社は、アプリケーションツールやソフトウェアの開発を行う企業です。技術開発も絡んでくるので、簡単に新規事業は進まない事業体ですが、長澤さんは、持ち前のバイタリティーと明るさで、開発に取り組んでおられました。長澤さんは、海外でのビジネス経験からくるのかもしれませんが、考え方がとても、グローバルです。彼にとって、4メートル雪がつもる新潟県松之山も、東京や大阪のネオンの都会も、中国の大きな工場しかない後進地域も、経済の先端をいく、ニューヨークも、技術の宝庫のヨーロッパも、すべて点でしかなく、ノートPCを片手に、どこにでも「居れる」方なのです。出島スペースの頃、誰よりも早く出社し、大好きな珈琲を煎れて、新聞をゆっくり読む時間を楽しんでいる姿がとても懐かしく思い出されます。
 新規の事業開発が一段落した頃、災害に遭われ、松之山の本社が半壊によって移転されました。そして、昨年、真夏に大きな水害に見舞われた後、更に、あの新潟大地震の被害にあわれたのです。本社には、ひびが入り、社員の方のご実家や、御親戚は未だ、避難所で生活なさっているということです。しかし、そのような状況の中にもかかわらず、業績は安定しており、今期も黒字だとの御報告でした。長澤さんに、災害後の普及時にお電話をした際、明るい声で「生きてマース。命があるから大丈夫デース!」と、そして、来社した際、悲惨な話に困惑している私に「大丈夫です、命があるから」と爽やかに話され私の方が、勇気を貰いました。
 リュウド社は、70以上のアイディアから、新潟の山奥で出来るビジネスを絞り、多くの失敗の末、ようやく完成したモデルで成功された企業です。その間の苦労たるや、筆舌に尽くしがたかったはずですが、きっと「命があるから」の思考で、多くの困難を明るく乗り切られてこられたのだと私には思えました。
 優しい(人気グループGRAYのテルに似ているのです)風貌にも関わらず、明るく新潟の方言を素敵に使いこなす長澤さんが、時々国の壁を越え、各国の友人達と流暢な英語で楽しそうに笑いながら語っているシーンに触れると、これからの時代のベンチャーを感じる思いが致します。
 「命があるから」とさらりと言い放った「雪国の起業家」長澤さんの言葉は、何処の国でも、いつの時代もアントレプレナー達が、語る共通のスピリッツのように私には思えました。 そして、そういったスピリッツを持った彼の開発する商品は、PCを打つ人に優しいキーボードや、携帯メールを打ちやすくする、ポケットサイズのキーボードだったり、携帯で遠隔操作できる防犯機能システムといった、常に、人の身になった優しい商品ばかりです。 
 「命ある限り」、人に優しい、いい物を創り続ける長澤さんの開発した商品が、いつかきっと、街中いたるところで、目にする日も近いと信じています。


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第6回  「CSS社長、加納諭さんと共に・・」

 「あれから、足掛け5年?早いものね」「良かったわね、いい物にめぐり合えて」「君らしい、素敵なデザインだね」、師走の初め、銀座の夜景を楽しめるレストランで、親子のように、話を弾ませていたのは、カーテンの縫製を軸とする株式会社CSSの加納社長と、代表の吉井、そして私、北條。
 スマートで、好青年の加納さんとの出会いは、今から5年前、ITバブルの真っ最中、吉井が講師を勤めた銀行主催のITビジネスの勉強会。ITを駆使したビジネスをしなければとの焦りと危機感で、多くの企業経営者がIT講座に出向き、新規事業を画策していた頃です。アメリカで環境デザインに従事していた彼は、デザイナーとしての夢を一旦おいて、カーテンの縫製工場では、日本で指折りの技術を持つ会社の2代目として、「覚悟」をされた時だったように思います。この出会いから、数ヵ月後、縫製工場としての受注ビジネスだけでなく、仕掛けるビジネスも手掛ける一歩として、小売業にチャレンジする事になりました。まずは、家具店の一部を活用してスタートしましたが、現在は、直営店舗は船橋の「ららぽーと」店に絞り、ローマンシェードカーテンの縫製受注拡大とサザビーブランドとの提携による、店舗展開を行っています。サザビーさんとの仕事を通じて、加納社長のデザイナーとしての欲求が深まったのか、オリジナル商品の開発に力をいれられました。各方面にアンテナを伸ばし、終にソフトで芯の強い彼らしい、本物の『麻』に、はるか遠くの、ヨーロッパで遭遇しました。『麻』は、日本でも、よく知られていますが、世界には、もっと、沢山の種類があるそうです、その中でも、風合いも良く価格も適正な、『LINAS』という歴史を持つブランドに出会ったのです。このブランドとの提携を期にSHOP名も「LINAS」(リナス)にしました。その他の国内外の『麻』も抱負に取り扱う事もできるので、おそらく、日本で一番の麻の種類とコーディネートが出来る専門SHOPになると思います。綿がとれない、北欧では、麻を上手に生活に取り入れているので、加工技術も優れているそうです。私もリナスの麻を使い始めたら、麻への見識が変わりました。
 加納さんとの会話の中に「インターウォーズさんは、いつもいろいろな機会を創ってくれます、それは僕にとって大変、有難いのです」といってくださった事は、『事業機会の窓』を社名にしている私達にとって最高の賛辞でした。私達が、起業家に、より多くの情報と出会いの場を提供する事を使命としているのは、企業の成長には、正しい情報と信頼のおける人との「タイムリーな出会い」が重要だと考えているからです。人は、出会い方によって不本意な差別も、間違った区別もされてしまいます、私達は、最初の出会いに対して、細心の注意を払ってご紹介します。その事を理解し、信頼し続けてくださってる事を改めて実感する事ができました。
 会話の中に、5年の間にしっかりマーケットに向き合った自信と、実感を感じました。苦労を全て前向きに自分の養分と変えていく姿勢は素晴らしいと改めて思いながら、加納社長の優しくて、芯が強い個性を生かした「新しい、実用的でおしゃれなファブリックブランド」の成功に向かって、私たちの力を益々、発揮しなければと新な決意で飲んだ、ワインの味は格別なものでした。




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第5回  「藤田 田さん」

 お会いできたのは、ほんの数回でしたが、その度にいろいろな感動を頂きました。中でも、特に印象に残っているのは、お台場のフードコートでの藤田さんの後姿です。何故、藤田さんとお台場に?というと、弊社が支援しているファストフードのビジネスに対して、大変御興味を持たれたからです。藤田さんは、次から次へと夢を持たれて実行されてきた方なので、マクドナルドのビジネスの最前線を引かれても、また、次の事を夢見ていらしたのだと思います。
 秘書の方と吉井と楽しそうに、歩いて見えられたのですが、椅子に座られるより先に、気になる店舗の視察から、じっくり1件、1件、ゆっくりと一周され、そして試食会!セットで490円という価格に眼を細めて、「値段がいいね、そうこれでなくては駄目だ、日本の食事は高すぎる、もっともっと安くて旨い物が、できるんや。だいたい国の規制が・・・・」キチンと残さず、召し上がりながら、いろいろな仕入れ方法や、販売の戦略を語られた。そうか、この方は、多くの人に、よりおいしく、沢山食べて貰いたいと本気で考えた。こんなに、廃棄する食品が増える程、食べ物があふれる国になれると思ってなかったのかもしれない。終戦のドタバタを生き抜き、ここまで、成功していく過程で、様々な事があったのに違いないのです、お腹一杯食べれずにいる人をどれだけ見て来たか。そして、どれだけの会社、どれだけの国の規制と戦ってこられた事か。それでも、ずーっと、この米国の食べ物を、日本の人においしく安く、食べてもらう為にあらゆる努力をされてきたのだと思います。その事を髣髴させるエピソードと共に、いろいろなアイディアや、商品への評価を頂きました。
 お見送りをする際に、改めて少し足の御不自由を感じました。「もうよう、歩かんようになったんで、ばあさんと店を周れなくなったらからやめた!」とおっしゃいました。最後にじっくりと、マクドナルドのカウンターからサイン看板をみられて、気がつかれた事を熱心に吉井に説明されながら、ゆっくりとゆっくりと帰っていかれました。その姿に胸が熱くなりつつ、どんな時でも前向きに小さな事から課題の本質を見つけて解決していこうとする、ひたむきな姿に「経営者の真髄」をみた気が致しました。
 吉井は、気の置けない仲だったから言えたのかもしれませんが、数年前、これからのマクドナルドの方向性や経営の考え方に対してかなり痛烈な意見を申し上げるという緊張感漂う場面に遭遇してしまいました、しかし、藤田さんは、言葉を荒げることもなく、年下の吉井の言う事を噛み締めて聞いてくださり、むしろ、いろいろご相談を頂くようになりました。その時も、相手の気持ちを汲み取り、自分の体裁より、本気で会社を想う、本物の経営者だと思ったのですが、またもや、お台場のフードコートで本物を見せて頂いた気がしました。その姿をみて数ヵ月後、聞きたくなかった訃報が届きました。とても残念ですが、藤田さんの側近だった方々の心に、しっかりと藤田さんがいらっしゃるのを感じると、大物は、血をつくるのだと実感します。このDNAを受け継いだ、日本マクドナルド大学卒業生の方々に、更なる御活躍を期待しつつ、一人でも多くの起業家に、藤田さんのように、どんな事からも、本質を見抜く、本物の経営者になって頂きたいと思います。




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