第4回  「インキュベーションマネージャー もう一つの仕事」 | インキュベーションマザー 北條夏旭 『Mother's Note-マザーズノート-』

第4回  「インキュベーションマネージャー もう一つの仕事」

 本来インキュベーターとは、卵を孵化する器械の事です、それを例えて、起業家を支援する施設のことをインキュベーと施設と呼んでいます。私達のインキュベーションマネージャー(IM)の仕事は、ビジネスの卵を孵化(ビジネスチームを誕生させる)する為にサポートをする人という意味です。その後は、雛から立派な親鳥になるために、餌のとり方(マーケティング)を伝授したり、仲間を紹介したり(アライアンス)栄養補給(投資)体力強化(人材紹介・教育)等、その都度、状況に応じて行っていきます。私は、当社の役員に就任するまで、創業経営者として数十年の時を過ごしておりました。数々の辛酸を舐めて、世の中には敵と鬼と嘘つきが、多く存在していると思っていたものです。今は、「私が起業するときに何を思っていたか、どんな失敗をしたか、毎日どんな思いで過ごしたか」を思い返しながら、起業家を目指す方々に、世間は厳しい事、しかし、自分の努力と考え方で如何様にも変化することを、いろいろな角度から示唆し、自分で気付いて頂ける様にナビゲートしています。何でも答えを出してしまう事は、簡単ですが、「私がやるのではなく、この企業は、この彼がやること」と思い返しながら、場合によっては、辛辣な表現で接する事もあります。
インターウォーズメソッドの中には、あらゆる業界の様々な立場の方々と唐突に(これは仕掛けです)意見交換してもらうオープンなカリキュラムも入っています。起業を試みる人の中には、恥も掻いたり、発見や気付や、悔し涙で眠れない人もいるようです。それでも、保護されたインキュベーターのシナリオの中ですら、萎れてしまう方は、いずれにしろ企業内でリーダーになる事も、独立も、起業も無理です。(だからと言って、どうしょうもないということでは、ありません、誤解なきように)
 会社を創ることは、登記をすれば、誰にでもできます。しかし、本当の経営者になる為には社会的な責任を背負う気構えと最低限の法人としての知識、そしてなによりも自分に嘘をつかない強い意志が必要です。いざ始めると、言葉で言うと簡単な事が、中々実行できなくなっていくものです。生身の人間が、社員の人生を左右する企業の決定権を持つわけですから、常日頃から、社員の顔やその家族、関連各位の事を考えると、利益の確保を優先していかざるを得ません。しかも、自分の掲げた理念やビジョンをそう簡単に変えることなく、逃げ場の無い立場で、最大限のリスクヘッジも考えて判断をするのは、本当に辛く勇気のいるものです。また、リスクを避けたくて、つまらない逃げを打つことから落とし穴にはまる事があっても誰も責められません。そんな緊張感が、一年365日、24時間つきまとう仕事、それが経営者です。代表の立場になって、自覚した時から、素敵な顔になっていく人もいれば、だんだん、貧相な顔つきになっていく人もいらっしゃるのは、この辛さを「よし!」と受け止めて、覚悟した人と、不安と不満だらけで毎日を過ごされている方との違いだと思います。IMの本当の仕事は、この芯の部分を気付いて頂ける事です、ビジネスは机上で考えるだけではなく、考えたことをやり始めてから創り上げていくものです、しかしその創り上げるときに一番必要な物は、リーダーの資質です。立派な事業計画書をいくら創っても、実行するメンバーに意思がなければ、事業は成り立ちません。時に嫌われても、この意思を確立する仕事、それがIMの、もう一つの仕事です。




2010-03インターウォーズ株式会社
常務取締役
Incubation Mother
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