インキュベーションマザー 北條夏旭 『Mother's Note-マザーズノート-』 -31ページ目

第66回  「株式会社とは」

 年明けからお堅いテーマかもしれないが、こんな時代だからこそ、改めて株式会社の経営とは何かを思い起こしてみた。
 そもそも、株式会社とは、目的を持った仕事を、「仲間」とするために、「株券を発行して」お金を集め「株券に対して利益を渡し価値を高める」仕組みをいう。
 その、株主と仲間に選ばれた代表取締役の仕事は、少ない情報からでも、論理的に物事を考えて意思決定し、目標を決め方向性を指示し、社業の発展と社員の幸せに貢献する事である。
 そして、その経営手腕は、どこで判断されるかというと、


・ROE(return on equity)=株主資本利益率
 株主の資本を使ってどれだけ、税引き後利益を上げたか。


・ROI(return on investment)=投資収益率
 投資した資本を使ってどれだけ、税引き後利益を上げたか。


・ROA(return on assets)=総資産利益率
 総資産を盛り込んだ投下資本に対してどれだけ、税引き後利益をあげたか。

・EVA(economic value added)
 投資家が期待する配当などをどれだけ創造しているか。


 つまり、経済的な付加価値をどれだけ創造しているかが経営力のモノサシになる。実に素っ気無い言い方だが、それが株式会社という組織を組むという事だ。


 ところが、会社は機械で動くものでも数字で動くものでもなく、その収益をもたらす源になるのは全て人的資源による。結果、経営者に求められるのは、その人的資源を効率よく活用できる手腕ということになる。この人的資源活用が一番、本当に難しい。
 経営者の悩みを聞くと、殆どがここにある。全てと言っても過言ではない。


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 社業の不振や不始末は、自分の責任であると理解している経営者も、生身の人間であるために、社員との相性によって解決する力が違う。また、自分を慕ってくれる可愛い部下でも、望む能力が無いと判断すれば、厳しい対応もせざるを得ない。なにしろ経営者は、株主に対して利益を還元するのが仕事であり、その利益は半永久的に続くように仕組み化しなければならない。


 ところが、なんの努力もせずに、いや、したとしても、相性も仕事の能力も期待以上のメンバーに恵まれる経営者は、よほどの幸運、いや強運、奇跡に近いといえる程希少である。なので、経営者の悩み、課題は『人』に関わる事になる。


 また、経営者が、会社の目標を決め方向性を指示し、人材を適材適所に配置し、経済的付加価値を創造する目標を達成する為には、あらゆる判断の基準となる『真実の情報』が必要だ。優れた経営者は、真実の情報を、誰よりも早く自分の物に出来る人である。
 そういう経営者の仕事を理解し、その企業の課題、経営陣との相性、会社の風土に合う、貴重な人材のリクルーティングをしていくのが、我々のインキュベーションの特徴でもある人材紹介という仕事だ。その人物如何で会社が劇的に変動するので、まさしく真剣勝負、生半可な気持ちではいられない。


 正月から身内の自慢話で申し訳ないが、インターウォーズには、こういう緊張感と責任のある仕事を愛し、どんな時も、どんな人にも真剣に仕事をしているメンバーばかりである。


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 なかでも、取締役の片原は、入社以来8年に亘り、一時もぶれることなく、インターウォーズの信頼を大切にし、自分の仕事に責任を持ち、常に企業と相談者の方に最善を尽くしている。
 彼は、クライアントの事を徹底的に、自分の会社のように考える。時には経営者と激論を交わす。本気で考えるので、表面的な話では済まないのである。もともと経理・財務に強い上に、現場の本当の声を聞いているので、本音の話になっていくのだ。なにしろ、クライアントや相談者に関連するリサーチは、入社以来欠かした事が無い。


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 仲間に入ると決めてくれた時、「インターウォーズで仕事をするなら、日本一のヘッドハンターを目指しますよ。昔から、経営者に興味がありましたから。経営者の考え一つで会社は激変しますし、いい会社は存続して欲しいです。それに、やる気のある人との出逢いは楽しいと思います。結果、日本の経済成長の役に立てたら嬉しいですよね。」と、少し照れながらも語ってくれた。
 でも、彼は本気だった。どんな人とも、どんな事があっても、真剣に真摯に向き合ってきた事で、今や多くの経営者の相談相手となり、多くの次期経営者と繋がっている。


 インターウォーズも、彼のようなもう一人の経営者がいた事で、人材紹介をコアにしたインキュベーションという事業が確立したと思っている。
 インターウォーズが存続し、彼のような本気のインキュベーターが増える事で、創業時に目指した、雇用創造を促し、日本の経済成長に貢献していけると信じている。




2010-03インターウォーズ株式会社
常務取締役
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第65回  「売る気」 

 夏も終わりの頃、「千に一つかもしれない、でも、千に一つでも一つはあるよ。何もしなければ、0じゃない」と、解りやすく的をついた言葉を知人から貰った。以来、何かにつけ、臆病で面倒くさがり屋の私が、行動を起こす時の励みにしている。そして最近、それを垣間見る事ができた。


 ある日の夕方、何故か小腹がすく微妙な時間帯に、「北條さん!驚きました。お菓子を売りに来た方がいるのです」と、普段は人一倍冷静な女史が、多少高揚しながら、チラシと現物を持ってきた。「とても気になったので買ってしまいました。おもしろい会社です」という。少し調べてみると、確かに販売企画をする会社が、老舗のスイーツを拡販するサポートをしているようだった。やってくれるなぁ。と嬉しい思いで一杯になった。


 ああだ、こうだと、言う前に、現物を持って外商に来ているという根性に、逞しさと、頼もしさを感じ、ビジネスの本質を思い出させてくれた事に感謝した。
 一昔前は、行商を断るのも仕事の一つであったほど、多くの行商人がオフィスに訪れていたが、最近は、どこのビルもセキュリティーが充実してきているので、入館すら難しいところが多い。
 そんな環境下にも関わらず、具体的に行動したこの営業マンは、宣伝効果だけでなく、売り上げるという結果を持って帰っていった。「売る気」の勝利だと思った。
 最近は、商売も手法が変化し、お店に行くというよりも、自宅や会社に届くという通販が主流であるが、その分競争率も高くなっている。このお菓子営業マンの目的も通販への導入だった。


 その競争激化の通販業界で、徹底した「売る気」で、千に一つを千に百、二百に変える達人を知っている。無名の商品でも、瞬く間に売上げをあげる仕組みを持つ、上場した通販業支援企業の創業者で、現在は、その多くの経験をもとに、日本の良い物をインキュベートする事業会社を立上げられた、株式会社Jスタイルの小村社長だ。


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 小村氏は、商品の特性を見つける独特の感性と、販促に関する豊富なアイディアを始め、サポート、フォローに対する徹底した管理力が卓越されていることもあって、どんな商品のご相談をしても、的確なアドバイスを頂ける。また、その事業が成長するにあたって必ず訪れる、経営にかかわる成長痛の回避の仕方までフォローしてくださる。自然体ながらも、ポイントをついたヒヤリングをもとに、あらゆる状況を分析し課題を見抜いていく小村社長を見ていると、その会社に出勤された事があるのではないかと錯覚する程である。


 先日も、ある調味料の会社のWEBでの販売方法のご相談に乗って頂いたのだが、そこの会社の近況や、社長の人生観等を、いつものように親しみやすい雰囲気でお話しを聞かれた後、「うーん、この商品の特性はね…目的が…であるなら、ここに集中した方がいいですよ。何故なら…」と、その販売戦略、戦術までをすらっとアドバイスいただいた。それまでの議論とまったくの逆説だったが、とても解りやすく、かつリスクも無く、その会社の現況と特性を見事に合致させたアドバイスだった。小村社長の凄さに、改めて敬意を表した。


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 商売は、商品の良さはもちろん、売れる場所やタイミングや買われる理由が、必要なのである。小村社長も、千に一つを千に百、二百に変える為には、相当な経験と研究をされたそうだ。
 商品開発力はあるが、販売の方法を模索されている企業の方は、小村社長率いるJスタイルに、ご相談される事をお勧めしたい。


 「売る気」で、商品を見つめる事が出来る人とお話をすると、昨今の不景気ネタに左右されずに明日への希望と新たな力が沸いてくる。




2010-03インターウォーズ株式会社
常務取締役
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第64回  「子供の教育」 

 子供の教育で、一番心がけて欲しいのは、子供の持っている可能性を潰さない事。将来その才能によって素敵な生活をしてくれたら、育てた方も育てられた方も互いに幸せである。
そんな事を、幼児活動研究会の山下社長とお会いしてから思っている。


 幼児活動研究会は、教育に対する強烈な理念を持った会社である。
以前から興味を持っていたので、先月、メンバーの企業訪問に同行した際、玄関に入るなり社員の皆さんから『いらっしゃいませ!』という明るい声の出迎えに会った。社内用のスリッパに履き替えるので(これが後で驚く)、綺麗好きな会社なのだと思いながら会議室へ。お部屋に慣れた頃に、いかにも教育者という風貌の社長と、聡明で快活な部長がにこやかに入ってこられ、事業の成り立ちから、未来の展望までお話し頂いた。


 創業36年、ひたすら幼児の教育に携わってこられた事実が、深い愛情と信念の賜物である事がよく理解できた。幼稚園へ体育の講師を派遣する業務から、次第に要望が増え、今では幼稚園経営のコンサルタントもされている。近年では、コンサルタントだけでなく、自社で幼稚園経営も始め、その幼稚園のDVDを拝見し、正直、驚愕した。


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 可愛らしい園児達の運動会の様子が流れてきたので、微笑みながら癒されながら拝見しているうちに、だんだんと脅威を感じてきた。気がつくと、10数名の子供達が、どの子も同じように、自然体で高レベルの体操を楽しそうにしている。「うん?」と思っていると、なんと全ての動作が音楽に合わせて振り付けされ見事なダンスになっていた。
その後、一人ひとりが将来の展望を語る場面を拝見し、幼稚園である事を忘れる。
そして、卒園式。園児達は、自分で書いた作文を読み上げ、両親への感謝を表現し、自分で書いたお絵かきを超えた絵を進呈する。


 歌は、童謡唱歌を高く澄んだ声で歌い、見事なハーモニーを奏でて、あれ?幼稚園児だったのよね?小学校の卒業式じゃないよね?と、見終わった瞬間。「天才教育ですか?」とつい声を出してしまった。社長は優しく、「まさか、私達は当たり前の事をしているのです。皆子供はこのくらいの事は出来ます。駄目な子など一人もいないのです」とおっしゃった。


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 本当に驚いた。「ここの子供達の遊びはね、勉強なんですよ。」とも…。
そうはいっても、子供の可能性を潰さないように、自然体で創り上げたノウハウがあるのだと勝手に納得しながらの帰り際、お掃除の仕方を見せて頂いた。蛍光灯の上部から、トイレの床に至るまで、ぴかぴかで美しい。「これを毎日行なっていますので、弊社に合わない方はこれでお辞めになっていかれますね」と冗談交じりで、しかし、本質を捉えた言葉を頂いた。


 更に、玄関でスリッパから靴に履き替える際、来た時よりも気のせいか靴が綺麗なので「?」と思っていると、社員の方が率先してお客様の靴も綺麗にしてくださっていると聞き、なにもかも徹底されている社風に、圧倒された。そして、こういう日常の全てに幼児活動研究会の原点があるということも確信した。


 教育に興味のある多くの方に幼児活動を知って頂きたいとのご要望に応えて、宣伝マンとなって、いろいろな方にお話しているので、この言葉が頭から離れなくなっている。


『子供は、皆、無限の可能性を持っている。駄目な子なんかいない。』


何度聞いても、言っても感動する。


 本当は、皆、同じように思っているはずなのだが、経済的な理由や、様々な環境、物理的な事情で、理想的な事は出来ないと諦めてもいる。

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だが、どのような状況でも、子供の可能性を潰さないように、大人は努力するべきだと思う。小さな心遣いからでも、可能性を伸ばそうと思っている心を伝える事はできるはずだ。
そして、子供の教育だけに関わらず、人に何かを伝授する側は、常に誠心誠意で人に尽くし、物を大切にして、気持ちよく日々の生活を行なっている姿勢を見せなければならない。
そこから、教育は始まっているのだという事も、幼児活動研究会の訪問で教えて頂いた。




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第63回  「塞翁(さいおう)が馬」

 塞翁が馬」とは、中国に伝わる古い諺で、塞翁さんのところの馬にまつわる禍福を例えて、人生は、吉凶・禍福の予測はできない、何か事が起きたときに一喜一憂せず、常に冷静に考えて精進する事が大事だという教えです。


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 概略ですが、塞翁さんの馬は逃げてしまったと思いきや、なんと良馬を引き連れて戻ってきた、得したものだと羨ましがられたが、その馬に乗った息子が大怪我をしてしまい同情される。ところが、怪我が原因で戦争に行かずにすみ、長生きして幸せに暮らしたというお話しです。
 大事なところは、その間の禍福に対して、塞翁さんが動じる事は無かったという事です。


 もう何度も、こんな話ばかりしていますが、人生は、もう戻らない「今」の時間を重ねています。そして、私たちは、1秒先ですら、何が起こるかわからないのが現実です。


 毎年夏になると、戦争という名の殺戮の悲惨さを再確認しますが、近年9月というと、ニューヨークのあの信じがたい光景を思い出します。そして、昨年のあの巨大組織のリーマンが破綻するという衝撃も。天災だけでなく、作為的な人災によっても、多くの人が一同に不幸に見舞われる事を実感する月となりました。
 もちろん、人の不幸は、不慮による事故もあります。大病や難病も突然やってきます。ちっぽけな人間に取って、あらゆる災いは抗いようがありません。ただし、どんな時にも「人間万事塞翁が馬」という言葉を思い出して欲しいと思います、人は考え方で、今、目の前の景色が変わります。泣いても笑っても、悔いても怒っても、全て自分の貴重な時間なのですから、できるだけ穏やかに、少しでも楽しく前向きに過ごして欲しいものです。だからこそ、事が起きたときには「塞翁が馬」なのです。


 この、言葉の意味を身近に感じる事ができたのは、株式会社ぱどの倉橋社長のおかげです。


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 倉橋社長は、社内で異端児とされていたのですが、逆に個性を見出され企業内起業家となり、上場までされました。発行部数でも最多を誇る日本型フリーペーパーの祖です。
 しかも、その上場に際して、もっとも大事な商談の前に交通事故にあわれ、頭に大怪我をされました、それでも、めげずに包帯を巻いた状態で出かけた事で熱意が通じ、難しいとされた話を早くまとめる事ができたというエピソードもお持ちです。


 ただ、いくら「塞翁が馬」といっても、現実は、好転的でかつ冷静な考えをもとに地道な努力をしなければ変化も進化もありません。
 近々では、デルコンピューターの広告塔として選抜され、『ぱど』と、倉橋社長がかなりのメディアで露出されるという話を聞きました。
 このご時勢、色々なところで広告費も節約を強いられているはずですが、こういう幸運に恵まれるのも、天性の才の現われと思わざるを得ません。


 最近は、ネットや携帯で情報をとるのが常識の時代になりました。フリーペーパーという情報産業も厳しい局面を迎えている事は事実です。しかし、ものは考えようです。ぱどは、そのIT技術と、「ぱど」の誇る営業力を生かした新たな事業モデルを開発されました。
「ぱど」の発行するポイント【ぱどぽ】という新サービスです。
 地元密着型で加盟するお店のポイントを貯めて好きなサービスに変更できるという優れものです。簡単にアクセスできることもあり、とても使いやすそうです。それに、隣近所何処でも使えるのは消費者目線に則っています。今は神奈川地区限定ですが、全国的なサービスに繋がっていく予定ですので、私の生活空間にも、より早く浸透して頂きたいと思っています。


 「人間万事塞翁が馬」ですが、捉え方一つで、事業も「塞翁が馬」ではないでしょうか。




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第62回  「それ、恕(じょ)か」 

 人を包むとはこういう事なのだと改めて教えて頂いた方がいる。
 「堀場製作所 最高顧問 堀場雅夫氏」である。


 過日、吉井が京都の堀場氏のところに伺うという話を聞きつけ、ありったけの理由をつけまくり、なんとかお供をさせて頂いた。大変興味のある方だったので、この機を逃したくなかったからだ。
 多くのテレビ番組で紹介されていらしたし、ユニークな題名の著書を拝見させていただいて、なんて、大らかな方だろう、なんて、素直に表現される方なのだ、こんな方とお話しをすると自分も豊かな気持ちになって幸せな気分になるだろうと勝手な想像をしていた。
 現実は、想像を超えていた。


 京都駅から一目散で堀場製作所につき、丁寧なご案内でエレベーターに向かうと、正面のドア一杯に書かれた社是「おもしろおかしく」(自筆)に遭遇。感動しながら応接室へ、弊社の応接室とコンセプトが似ている事に驚き、喜んでいるとついに、堀場さま登場。
 ともかく大きい。大きく感じるといったほうが正解かもしれないが、実に逞しい。声も、会話も若々しい。握手して頂いた大きな手もほっくりとして暖かい。
 「やはりなぁ」と浸っていると冷えたシャンパンが出てきた。「嘘!」と心の声がした。
 堀場さま「飲める?」私「もちろんです!もちろんですともぉ!!」


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 なんだかわからないけど、得した気分で飲んでいると、とても自然な流れでお料理が運ばれてきた。日本酒も頂きながらの会話は、初めての人間を打ち解けさせる絶妙な話術で、かつ話の種が豊富でつきることがない。本音もさらりと出されるし、年下を上から見下ろす感など微塵もなく、にこやかに真剣に話を聞いてくださる。吉井が、堀場さんのお話しを皆に聞かせたいので、東京で講演をして欲しいと御願いすると快く引き受けてくださった。


 堀場氏といえば、学生起業家の草分けでもあり、企業内起業の推奨者でもある。 これからも、起業家や、企業内起業家を育成する事を使命としているインターウォーズに取って心強い味方だ。
 帰りに記念写真を撮ろうとカメラを構えていたら、「お嬢さんも」とおっしゃるので、秘書のお嬢さんを探していたら、「お嬢さん」とは私の事だった。酔いが回っている上に、天まで舞い上がってしまい、実に危なげな顔で写真に映ってしまったのが唯一の無念である。
 突然の御連絡でお邪魔した私達に、心のこもったおもてなしを頂き、お腹も気持ちもたっぷり満足させて頂いて帰路についた。


 孔子の教えで「それ、恕(じょ)か」という有名な節がある。


子貢問いて曰わく、「一言にして以って身を終うるまでこれを行うべき者ありや」。子曰わく、「それ恕か」。


 人が生涯通じてなすべき事を一言で言って欲しいと要望した無邪気な弟子に対して、心の広い孔子が『それは、思いやりだよ』と教えてくださったというお話しだ。


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 思いやりというのは、実際のところ、とても深い。思いやる為には、自らの心を律し、高潔でなければできない。思いやりを表現することも難しい。ましてや、必ずや相手に通じるものではない。つまり、見返りを求めての思いやりはありえないのである。我欲の中に思いやりなど存在しない。一言で言って欲しいという弟子の気持ちもよくわかるし、そのおかげで私も孔子の教えを少しばかり理解できたつもりになるので有りがたいのだが、人の生涯でなすべき事は細かくいえばきりがないのである。


 出来れば思いやりを分解して、それを実行して、将来、堀場氏のように心おおらかに人生を謳歌し、多くの方に慕われる人物になって頂きたい。


 私も、自身の幸せの為にも「日々、恕」で毎日を過ごしていくつもりだ。つい「恕」が「怒」となって落胆される可能性も大ではあるけど。




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