昨年2月に続き今年も東京都美術館での「近代建築と市民の会」の講演会のため、北風の吹く寒い朝早く上野公園まで出かけた。
今回は、市営地下鉄日吉駅から地下鉄三田線、目黒乗り換え山手線という初めてのルートで上野駅へ。
土曜日朝10時の上野公園。
駅前で出迎えてくれる日本のレトロモダンの建築家前川國男(1905-1986)の代表的な作品の東京文化会館(1961年)もこんなに早い時間に見ると建物の感じが随分違う。
特徴ある庇は神奈川県立青少年センターの庇によく似ている。
向かいにある前川國男の師匠ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館(1959年)もまだ人は少ない。
さらに奥にある今日の目的地の東京都美術館へ進む。
今回のテーマが「長谷川逸子と妹島和世〜女性建築家、二人が切り拓いた建築とは何か」という、今まで取り上げられなかったテーマだし、個人的に気に入っている妹島和世氏(1956年日立市生まれ)と、不躾ながら今まで不勉強で全く知らなかった長谷川逸子氏(1940年焼津市生まれ)という、戦中と戦後の私に近い世代に興味があったので、年初に事前申込みして楽しみにしていた講演会だ。
講演者の小川格氏は、長谷川さんと同い年で私の10歳上だったが、非常に分かりやすくユーモア溢れた講演だった。
会場に来た200人近い聴講者の半数は建築士や建築関係者で、女性も半数近かった。
ハンドアウトは、いつものように非常にシンプルで分かりやすいこの二枚。
因みに、講師の学生時代、200人の建築科で女性はたった3人(1.5%)だったそうだが、今日本にいる約35万人の一級建築士のうち女性は13%位の5万人になったとはいえ、まだまだ少ないそうだ。それ故今回のテーマには講師の意気込みが感じられた。
そして、今回講師が有名な女性建築家の中から選んだ2名の代表的な作品が紹介された。
長谷川逸子作品:
①湘南台文化センター(1989年)
磯崎新が委員長を務めた提案コンペでは、設計者の負担を軽減して若手の登竜門とする目的で提出図面をA1四枚にしたそうで、当時無名だった長谷川氏のこの作品が選ばれた。
建物の70%が地下式、子供のための建築、大小ドーム、プラネタリュームガランドウ、原っぱ、建築はソフトvs丹下のハード
②新潟市民芸術文化センター(1998年)
工事中に30回のワークショップ、三百人の応募者から選ばれた五十人のスタッフ養成、気候を考慮した二重ガラス・コンピューター制御のブラインド、共通ロビー、コンサートホールは年間90%稼働率。
続いて、
妹島和世作品:
①金沢21世紀美術館(2004年)※SANAA設計作品
直径130m、分散した展示室の躯体壁が屋根を支持、円周視界を妨げない細い柱、明るく開放的、無料ゾーン/有料ゾーン
※SANAA (Sejima and Nishizawa and Associates)
そして、いよいよ、私が訪れたことのある好きな建物の登場。
②JR日立駅(2011年)
太平洋が見える駅舎、通学で利用する高校生へのプレゼント、ガラスの窓が世界一美しい建物
③すみだ北斎美術館(2016年)
ピカピカ、割り切り方が勇ましい、北斎との共通性に乏しい
小川講師の総括として;
🔹二人の共通点
- 明るい建築(ガラスの多用)
- 細く薄い部材の活用(鉄、アルミなど)による軽快さ
- 開放的で近づきやすい
- モニュメンタルなものを目指さない
- 重厚さを避けるためコンクリート、石、タイルなどの使用が少ない
🔸目指す方法
重厚なモニュメンタルな建築→軽快でより着衣に近い建築
上から与える建築→市民に寄り添う建築
最後の活発な質疑応答の後、セミナーは約2時間で終了。
東京都美術館も前川國男の設計による1975年建造の名作。
直線的な建物のアクセント的な球形のオブジェ。
その後、ロンドン時代からの友人で根岸から自転車で駆けつけてくれた友人と久しぶりに上野駅のイングリッシュパブでランチ。
話題は、定年退職後したためた俳句をまとめて去年出版した句集とその後のフランス語訳出版の進行状況。
以前のブログでも紹介させていただきましたが、彼の句集を是非ご一読いただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
懐かしい昔話に花が咲かせた後、学習のおまけのスケッチのため上野公園へ引き返す。
上野動物園は開園150周年で改装中かな?
ゲートの庇は、東京文化会館と同じ前川國男風。
今日のスケッチの場所はこのゲートを入れてみることにした。
土曜日にしては、列は少ないな。
帰りは、いつもとは逆の公園の北側にある広大な寛永寺の第二霊園経由で、東にスカイツリーを見ながら。
寛永寺は、西の京の鬼門を守る比叡山に倣って江戸の鬼門(北東)に寛永2(1625)年に徳川家によって創建され、創建当時は今の上野公園のほぼ全域(30万坪)という広大な境内だったそうで、東の比叡山という意味に山号を付けて東叡山寛永寺と呼ばれている。
この門は、重要文化財の厳有院霊廟勅額門(延宝9[1689]年)
JRの線路沿いの丘道を上野駅方向へ。
国立博物館地球館の裏手には、日本で最初の人工衛星おおすみを打ち上げたウルトラマンカラーのロケット発車台が。
御徒町のガード下は、インバウンドで溢れていたので、新橋まで戻って、お馴染みのガード下へ。
生憎立ち席カウンター、窓横、階段横も満員なので、電気ストーブと膝掛けを貰ってしばらくは空き待ち。
冷えた定番スーパードライは一段と冷えて美味かった(笑)
Super Dry(5%)
Asahi Beer
いつものカウンターに案内されて飲んだ二杯目のネーミングで選んだ悠悠閑閑はまるで湯湯燗燗に思えた(笑)
Yuyukankan
Hop Kotan Brewing Brown Ale(5%)
NO STUDY, NO BEER!
NO BEER, NO LIFE!!
《追記》
湘南台文化センターは、当然去年のセミナーで買ったこの本にも載っていた。(予習不足)
次回からこの本は必携だ。
ついついこれも、
《追々記》
今年創建400年の寛永寺についての記事(家庭画報2月号より)