個人的読書 -2ページ目

闇の喇叭

闇の喇叭 (ミステリーYA!)/有栖川 有栖

¥1,575
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「闇の喇叭」
有栖川有栖・著
理論社・出版

『歴史改変もの+トリック重視本格派ミステリ』

 理論社から、YA(ヤングアダルト向け)に出ている
ミステリーYAシリーズに有栖川さん登場です。
 歴史改変ものっぽい設定に惹かれて読んでみました。

 第二次世界大戦の結末の若干の誤差により、
ソ連によって、南北に分割され統治されている日本
が舞台です。
 徴兵制があり、全体主義国家に近い状況で探偵小説から探偵家業まで
禁止されています。
 そんな中、殺人事件が起こるのですが、、、。
 徴兵制で、男性は完全に管理記録化されているはずなのに
記録にない死体や、探偵業が、禁止されているとか、
一応設定が生かされていて、面白いのですが、、、
作品の根本的なところで、あまり歴史改変の面白さが生かされていないような、、。
 有栖川さん得意の練りに練られたトリックは素晴らしいのですが、
設定とあまり合致していないような気がします。
 ミステリの面白さと歴史改変ものの面白さがあまり両立しなかった気がします。

ミステリーYAシリーズ

カカオ80%の夏


カワセミの森で


エイレーネーの瞳

名作アニメの風景50

名作アニメの風景50 -誰もが知っているあの物語の舞台へ-/著者不明

¥1,890
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「名作アニメの風景50」
ピエブックス・出版

『聖地巡礼の世界版』

 アニメの美術の聖地巡礼が一時期流行っていましたが、
その世界版ですね、、。

 主旨上、世界名作劇場の作品が多いですが、
宮崎さんのジブリ関連など、
 あと、エヴァンゲリオンなんかも、扱われています。
ちなみに、エヴァは、箱根近辺です。
 ちょっと訪れるには、旅費が大変ところばかりなので
助かります。

銀狼王

銀狼王/熊谷 達也

¥1,470
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「銀狼王」
熊谷 達也・著
集英社・出版

『狩るものと狩られるものの戦い』

 熊谷達也さんは、
日本の大自然を舞台にした、狩りをテーマにした冒険小説を書いていることは、
ずーっと知っていたのですが、
このたび、ようやく読めました。

 日本にも絶滅したニホンオオカミという狼がいたことは、
知られていますが、北海道にも、それを一回り大きくした
狼が明治期あたりまでいたそうです。
 その狼と猟師との戦いを描いた小説です。
まず、設定が、よいです。
 猟師の二瓶は、戊辰戦争で負けた側仙台藩白石片倉家の藩お抱えの猟師。
 敗軍になることで、北海道へ開拓者として強制移住させられています。
このあたりで歴史好きさんは、少し"萌え"です。
 このハードボイルドチックな設定の下、初冬の北海道を舞台に
伝説の銀狼の狩りに出かけます。
 大自然との戦いが、冒険小説の基本だと前書きましたが、
本書も、自然描写を含めて、とても戦いというか、明治期の狩人の一挙手一頭足が
シリアスに描かれます。
 そして劇中でも二瓶が言っているのですが、狩りとは、
狩られるもの狩るものの頭脳戦なのです。
 また、ハードにだけ書いているわけでなく、
二瓶が劇中(冒頭アイヌの人とは話しますが)
唯一の話し相手、猟犬との会話もどこかほんわかしていて、面白い。
人間そんなに張り詰めていては、もちません。
 ラスト、終盤は、予想通りの銀狼との死闘となるのですが、
 シートン動物記の「狼王ロボ」なんかとまた違った感覚で変に擬人化せず、
狼を捕らえていてこれもまた、よいです。

 日本の冒険小説は、どうしても海外のめちゃくち面白いのと
比較してしまって、なんか点が辛くなっちゃうのですが、
本書は、分量からいって小粒な感じはしますが、大満足でした。
 冒険小説が成立しなくなったといわれる、現在、
現代物も書いてほしいです。

書店POP術 グッドセラー死闘篇

書店ポップ術 グッドセラー死闘篇/梅原 潤一

¥1,890
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「書店POP術 グッドセラー死闘篇」
梅原潤一・著
試論社・出版

『どんなPOPを書けば売れるのか』

 前に、この著者の書いたPOPを集めた「書店POP術」という本が出ましたが、
その第二段です。
 書店で平積みの本の上で針金でぴんこぴんこ動いている
宣伝文句を書いた小さなポスター(かな?)POP。
 それに奨められて購入し、読んでみてあたりだと、
うれしくなってその本屋に通い続けてしまいます。
 主に、エンタメ小説のPOPが中心なのですが、梅原さんによれば、
タイトルにあるとおり、より選んだグッドセラーの本でも
売り上げはあまり芳しくないとのこと。
 どうすれば、一体本が売れるのか。
 素晴らしいPOPの中から、一書店員の叫びが聞こえてくるようです。
 と、本書そんなに暗い内容でもないのですが、
梅原さんが、選んだブックレクビューとしても、本書使えます。

 梅原さんの好みは、荻原浩や、奥田英朗がお好みの様、、。
 自分が面白いとおもった本を薦めているだけでもうれしくなりますね。
 これだけ熱心な書店員を近所にもっている本読みさんは、幸せものです。


「書店POP術 グッドセラーはこうして生まれる」の記事へ

廃墟に乞う

廃墟に乞う/佐々木 譲
¥1,680
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「廃墟に乞う」
佐々木譲・著
文藝春秋・出版


『直木賞受賞作』


 最近、警察小説をよく書いている佐々木譲さん、
本書でめでたく直木賞受賞です。


 道警のしかも道警本部の元捜査一課の刑事で、現在休職中の
仙道を主人公にした連作短編集です。
 仙道は、なにやら重大な事件を経て現在療養中です。
 この事件については、ぽつぽつ片鱗が語られるのですが、
全容ははっきりしません。
 多分最終回できっちり描かれるのではないでしょうか?。
登場人物が警察に通報する前、また、事件に関係したときに
コンサルティングとして仙道に相談をもちかけすべて話ははじまります。
 今までいろんな警察小説を書いてきた佐々木さんにとっては、
こんなアプローチもできますよ、、といった風です。

 どの事件も、昨今の北海道のドメスティックな現状を取り入れて
書かれていて広い北海道を旅しながら、読んでいるみたいです。
 派手さはないけれど、それだけリアルな短編集です。
 まぁ、どことなく渋めのHB調ではあるのだけれど、ミステリというよりは、
中間小説に近い感じです。
後、少し、暗めかな?。
 人情話っぽい、泣きのミステリじゃないでしょうか、、。

 しかし、相変わらずですが、抑えた筆致といいますか、
作家の無意識の部分というか、クセで暴走する部分が
まったく見られない完璧な文体ですね。
 伝達することを完全に伝達する以上でも以下でもない文体です。


 直木賞受賞についてですが、
プロの作家としての職人技は堪能できますが、
面白さは、はっきり言って受賞作ってほどじゃないですね。
 佐々木作品でも、もっと面白い作品があります。
まぁ、功労賞というか、職業作家として受賞レベルで
ここ最近書いているということでの受賞だと思います。
 直木賞は、最近頓に思うのですが、読み手サイドからすると
あげるのが、一、二年遅いです。
あくまでも、出版サイドで出している賞だと感じます。
 今だと、読み手から一番近いのは、「本屋大賞」ですね。


「暴雪圏」の記事へ

「うたう警官」の記事へ

「制服捜査」の記事へ

道徳という名の少年

道徳という名の少年/桜庭 一樹

¥1,365
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「道徳という名の少年」
桜庭一樹・著
角川書店・出版

『貌(かんばせ)の美しいものたちによる背徳』

 妙にリアルで美しいイラストときれいな装丁でまるで絵本のようです。
 町一番の美しい娘たちとその末裔を何世代かにわたり描いた連作集。
絵本のようと書きましたが、
 内容も、ありえないようでいてちょっとリアル、そして少しいや、かなり残酷。
そう夢をそのまま描いた話や、童話のようです。
 ちょっとエロティックなところも含めて、大人の童話みたいな感じです。
 この作品群は、掲載誌を見ると主旨も含めて相当バラバラなんですが、
そこは、作家の構成力、単行本としてまとまった一つの作品になっています。
どんな風に加筆してまとめなおしたのか、興味あります。

 作品の内容的なテーマとしては、美貌を持った青年、少女が背徳を
しつくすといったもので、桜庭さんが、以前「少女七竈、、、」や、「私の男」で
描いたテーマをよりティピカルにカリカチュア化しています。
 どうやら、桜庭さんがリアルさとか制限なく描くときの
主要なテーマになるつつあると思いました。

「私の男」の記事へ

「少女には向かない職業」の記事へ

「少女七竃と七人の可愛そうな大人」の記事へ

「書店はタイムマシーン 桜庭一樹読書日記」の記事へ

「桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ。」の記事へ

「お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記桜庭一樹読書日記」の記事へ

宵山万華鏡

宵山万華鏡/森見 登美彦

¥1,365
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「宵山万華鏡」
森見登美彦・著
集英社・出版

『森見ワールド、端から端まで』

 京都のごくありふれた通りや、
日常に妄想をたっぷり詰め込んだ作品を書く森見さんですが、
今回は、京都の三大祭の一つ祇園祭りの宵山がその舞台。

 この宵山での一夜の出来事を複数の登場人物によって描いた
連作集で、出来事としては一つでも、描き方に変化やアングルが
つけられていて面白い。
まさに、祭りの一夜の出来事が万華鏡のように
幾重にも重なり描き出されていきます。
 あ、、これ、あのときの、、と一遍を読んでいても
本書内の他の作品を読み返すこと必至です。
(また、同じ出来事でも若干の変化がつけてありそれを発見するのも楽しい)

 もうたくさんの作品を描いてきた森見さん。
 もうすでにいろんな作風があり、同じ妄想系の森見ワールドでも、
楽しい系の「夜は短し、、」から、ちょっぴり怖い「きつねのはなし」まで
端から端まで存在するのですが、
本書は、その妄想系すべてを網羅した感じです。
 楽しい系もあれば、ちょっと不気味で怖い作品もある。
 
 初期の男汁満開の作品群から比べると、ご本人が大学生(当時は院生)
から社会人に成長してきたように作品もどこか洗練されてきた気がします。


「太陽の塔」の記事へ

「きつねのはなし」の記事へ

「夜は短し歩けよ乙女」の記事へ



神州纐纈城

神州纐纈城 (河出文庫)/国枝 史郎

¥840
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「神州纐纈城」
国枝史郎・著
河出書房新社・出版

『とにかく、圧倒されます』

 北上次郎さんって、話だけ聞いていると本と競馬だけのちょっと
天然系の人みたいですが、
「冒険小説論」
冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)/北上 次郎

(双葉社から、文庫化されています)
っていうすごい本を書いています。
ちょっと前の本なので、最近の作品(90年代以降)をフォローされていないので
すこしあれですが、古今東西の冒険小説を選書するというか、
チョイスするには、もってこいの本です。
 そこに伝奇小説の一章がありまして、そこでなんとなくタイトルを
覚えていて引っ張ってきました。

 武田信玄配下の武将、土屋庄三郎が、花見の折に真っ赤に染めあげた布
を手に入れます。
 この布は、人血によって染めた布だと告げられた土屋庄三郎、、。
土屋庄三郎は、失踪中である父と叔父を探すたびに出るのですが。

 とにかく、作中のイメージというか、想像力の幅がハンパじゃない。
 伝奇ものってそういうものだけれど、荒唐無稽とか、
そんな言葉はうっちゃって思いつくまま、イメージの広がるままに
面白さだけを追求したこれぞ伝奇ものとう作品に仕上がっています。
 纐纈城は、ともかく、富士教団、造顔術、差別表現ぎりぎりの
(多分、現在ならアウト)とある病の患者集団が武田家の屋敷を襲う場面といい、
そこまで書いちゃっていいのと、読む側がひくぐらいです。
 ここまで鮮烈な印象を読み手に与えるのも こいつは、いいやつ、悪いやつと
敵味方で分けて描いてあるというより
善も悪も一体となったカオスのまま描かれているからだとも思いました。

 しかも、本書未完。
ここで終わっちゃうのというところで終わっています。
たぶん、シリーズというか、このまま続けて書いていくつもりだったんだと思います。
 日本には、伝奇ものというジャンルが近代文学の成立とともにしっかりあったのだと
(本書、執筆は大正時代)
思い知らされる一冊です。

英雄たちの朝

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)/ジョー・ウォルトン

¥1,218
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「英雄たちの朝」
ジョー・ウォルトン・著/茂木健・訳
東京創元社・出版

『すごいおもしろかった、傑作です。』

 本書、三部作で出来上がるファージング・シリーズの第一作です。
もうすでに、2010年の年間ランキングなどにランキング
(三冊でシリーズごと入っているっているランキングもある)
しているので、期待していたのですが、
結果から書くと、すごい面白かった。

 ファージングシリーズとは、
第二次世界大戦中、英国とナチスの和平が成立した世界を描いていて、
この和平を主導した保守系の派閥をファージングセットといいます。
 本書では、第一作ということで、設定紹介も兼ね、このファージングセットと
呼ばれる政治家たちの間でおきた殺人事件をミステリ風に描いています。
殺人事件としては、館の中の閉鎖状況でおきた事件で
英国の古きよきクリスティあたりのミステリを濃厚に匂わせます。
 今までも、似たような英国を舞台にした歴史改変ものはありました。
ちょっと違うけど、レン・ディトンの「SS-GB」もそうだし、イアン・R・マクラウドの
「夏の涯ての島」なんてほとんど、この設定でした。
(ちなみに、この二冊どっちもオススメ)
本書内の事件はユダヤ人がらみの政治犯をにおわせる手口に
事件解決のため館にやってくる刑事とその部下のコンビ。
この辺まで読んで、歴史改変物を舞台にしてミステリを描くタイプなんだなぁと
思ったわけですが、
(ミステリとしてもこれはこれでおもしろい)
後半、歴史改変ものプラス、
ミステリなんて容易な枠組みはぶっ飛んで、
著者の恐るべきたくらみが読者を待っています。
 ネタバレになるので書けないのがくやしいぐらいなのですが
歴史改変ものならではの壮大なSF的仕掛けといいますか、エンタメ小説としての
緊張感とあふれるエンディングが待っています。
 
 主人公、ヒロインを絶妙なところに配置しているし、
(ユダヤ人青年と結婚する、この派閥の政治家の娘さん)
この三部作ではこの刑事が狂言回しで三部作すべてに登場するそうです。

 著者のジョー・ウォルトンは、
竜の世界を独特に描いた「アゴールニンズ」
(その後、「ドラゴンがいっぱい」文庫化で改題)
で一応チェックしていたんですが、
もう一つピンと来なかったので、スルーしていたのですが、
 要注意の作家ですね、、。

 やや時代を経た次作が楽しみです。

明けまして、おめでとうございます。

$個人的読書-2011


明けまして、おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。