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蟻の兵隊 日本兵2600人山西省残留の真相

蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相 (新潮文庫)/池谷 薫
¥460
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「蟻の兵隊 日本兵2600人山西省残留の真相」
池谷薫・著
新潮社・出版/新潮文庫


『日本兵山東省残留の真相』


 これ、元々、著者池谷薫の同名のドキュメント映画だったそうですが、
上映会を見た、新潮社編集部が監督へ直接執筆を依頼。
 そして、書き起こされたのが、本書。
 映画は見ていませんが、読んでみました。


 敗戦後も中国大陸に残り、中共軍戦った、日本兵の問題を扱った
ノンフィクションです。
 ドイツのように、日本は首相官邸まで攻め込まれて降伏したわけではなく、
本土以外でもけっこう勢力を維持したまま降伏しました。
 で、近隣に米軍がおらずどこに降伏すればいいのかという問題に直面した
部隊もけっこういました。
 中国大陸にで戦っていた部隊もほとんどがそうです。
 
 この山東省残留問題は、問題がいくつもからまっています。
山東省の軍閥、閻錫山が山東省だけで独立しようと画策し
戦犯になりそうな指導部を利用して日本の勢力を巧みに取り込んだこと。
 陸軍が、軍隊内部の微妙な人間関係を利用して、
残留が日本のためになることを説いたこと。
 軍隊指導者が当時の軍事状況、戦闘の趨勢を誤ったこともそうですが、
中共軍との戦闘後条約違反を片手に、日本の当局が軍事恩給を与えなかったこと。etc。

 本書は、丁寧にそれらのの問題を浮かび上がらせて読者に示しています。
 一番怒りを感じるのは、やはり、日本軍内の指導者たちですね。
自分たちが戦犯になりそうなことにおびえ、それと引き換えに自分の部下をさしだし、
しかも、戦闘が始まると、自分が矢面に立つと問題が生じると
下級幹部にだけ戦闘を任せ。
 そして、あげくに、日本本土に逃げ帰っています。
とある参謀はかなりおびえながら帰国したそうですが、、。


 一言。国が崩壊した、敗戦直後の混乱期にあったといいわけはできますが、
これは大問題です。 
 こういうノンフィクションはもっと書かれてもいいです。

水神

水神(上)/帚木 蓬生
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水神(下)/帚木 蓬生
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「水神」
帚木蓬生・著
新潮社・出版


『本当の住民のための公共工事』


 帚木蓬生さんも、名前だけ知っていて、ずっとなにか読みたいと
思っていました。
 今回、初読みです。
  
 下川博の「弩」のときもこれ、カムイ伝です。
って書いたけど、本書こそ、まさ江戸時代のリアルな農民の姿
を描いた、カムイ伝です。
 九州のとある農村の農業用水のための堰建設を
描いた時代小説です。


 最初の圧倒的な迫力で読者に迫ってくるのは、
当時の困窮する農民たちの姿。
 よく水飲み百姓といいますがまさに、それで、
みんな食事の前に、食欲を抑えるため、水を飲んでいます。
 裏山で取れるものもリアルに生きるために必要なものであり、
ここに、エコなんて思想はありません。
 とにかく、この農民とその庄屋たちの姿がとても真に迫っていてリアル。
 この後、農業用水に困窮する五つの庄屋が中心となり、
筑後川に農業用水のための堰を建設するのですが、
 なんと、費用は、庄屋の実費。測量や計画に藩は参画するも
すべての費用は庄屋たちがまかないます。でこの建設が失敗しても
庄屋の全責任で、建設中傍らには、磔の台まで設営される始末です。
 まさに、自分たちのための公共工事なわけです。

 早い話、苦労話みたいな小説で多少、予定調和な面もあり
読み終わるとよかった、よかったみたいな感じになり
もうひとひねりあってもよかったかなとも思います。
 しかし、これだけ、普通の人々がリアルに困窮する姿、
そして、その苦労が成功物語として、
自分たちの生活の向上、または、自己実現に
つながっていくさまをストレートに描かれると圧倒されて、
感服せざるをえません。
 
 

犯罪小説家

犯罪小説家 (ヴィレッジブックス)/グレッグ ・ハーウィッツ
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「犯罪小説家」
グレッグ・ハーウィッツ・著/金子浩・訳
ヴィレッジブックス・出版


『ノンストップ系』


 著者のグレッグ・ハーウィッツって
同じ版元で「ER襲撃」とか、「処刑者たち」とか書いていた人です。
読んでないけど、知識だけ入れてました。
 本書、同名の題名で雫井さんの作品があったりありがちな
テーマというか、タイトルですが、どうでしょう。


 主人公の、作家アンドリューは、血まみれで殺された元婚約者の横で
発見される。しかし、彼は、病気で心神喪失のため当時の記憶がまったくない。
 裁判では、無罪となったアンドリュー。
しかし、自身では一切納得がいかず、独自の調査をはじめる。

 作家主人公ということで、自省的にねちねち書いていると思いきや、
そういう面もあるんだけど、
 本書、ジェット・コースター系です。
 章末には、必ずなにか"惹き"があり、どんどん読者を引っ張っていきます。
 それに、作家としての描写、書きのほうのテクニックも相当。
しかも、ストーリーテラーで話は、どんどん進んでいき読者に息もつかせません。
 読者にページを繰らせるというのなら、一級の書き手でしょう。
 しかし、なにかが足りない、、。重厚感というか、重さというか、
狙いや仕掛けが多少、浅いというか、、、。
 設定もショッキングさを煽る昨今のミステリの最先端をいっている感じで
ちょっとあざとい気がします。
 また、プロの書評子が指摘していた、仕掛けで使用される
某薬品で意識を失わせてというのも、そんな薬効はなく、無理筋です。
 
 ただ、ページターナーなのは、確か。
 このレベルになると、もう好みかもしれないけど、
悪くないんだけど、なにかが足りない感じです。
 話の中に入り込み、没頭して読めるミステリをお探しの方は
オススメ。

HB(ホワイトベース)ア・バオア・クーに強行着陸

GUNDAM A (ガンダムエース) 2010年 11月号 [雑誌]/著者不明
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 ちょっとご無沙汰のGUNDAM A

先月号から、読むの復帰したんだけど、安彦さんの

連載は休止でインタビューだったので、レビューは

パスしました。

 まぁ、連載より、インタビューのほうが、含蓄はあるんだけどね。

ギレンの演説についてが面白かったです。


 読んでみたら、知らない間えらい進んでいる、、。

セイラさんは、アルテイシアとして、捕虜になっているし(自分で投降したの?)

でも、こっちのほうが、最後のシャアとアムロの肉弾戦に出会うところ

説得感がある。 

 ホワイトベースはア・バオア・クーに突っ込んでるし、

キシリアは、衝撃の一発を。


 やたら、めったグフが活躍していた近藤和久さんの

ミリタリーチックな連載が終わったと思ったら、

「ジオンの再興2」がはじまっていた。

モーフィー時計の午前零時

モーフィー時計の午前零時/ジーン ウルフ他
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「モーフィー時計の午前零時」
ジーン・ウルフ他著/若島正・編訳
国書刊行会・出版


『チェス小説アンソロジー』


 いやぁ、これ、よかったです。
 マイナー本だけど、レベルの高い本を出す国書刊行会ならではという感じです。
 若島正、自ら選んだ日本独自のアンソロジーです。
 チェスに関する短編集ということだけど、チェスの事まったくわかっていなくても
十分楽しめます。
(実際私も、駒の動きはともかく、アンパッサンとキャスリングがよくわからない)
 将棋の西洋版、なにやら、読み合いの頭脳ゲームやっているんだなぁよという
認識でOKです。


 チェスの短編集といっても、幻想小説風なのから、SFっぽい作品。
実際のチャンピオンマッチを描いたノンフィクション、純然たるミステリ作品
 青春小説風、涙ちょちょぎれのハートウォーミングな作品まで
最後は、作家創作による将棋で言うところの詰め将棋(プロブレムといいます)まで
まさに、端から端までそろっています。
 途中、ウッディ・アレンとあって、映画監督との同姓同名の作家か、
と思っていたら、本人じゃないですか!!。
 映画同様、どこか饒舌で誤解から生じる失笑苦笑気味の笑いの作品を書いています。

 どれがいいというより、全体的にすべてにレベルが高い。
 その中でも、印象に残ったのは、
著者名で一番に載っている、ジーン・ウルフの書いたのと
(ウルフ、相変わらず小説的予定調和からは外しまくっていますが、)
人間の微妙な機微を描いた「マスターヤコブセン」かな、、。
でも、本当に選りすぐりの作品集で、すべてよかったです。

終着駅 トルストイ最後の旅

終着駅―トルストイ最後の旅 (新潮文庫)/ジェイ パリーニ
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「終着駅 トルストイ最後の旅」
ジェイ・パリーニ・著/篠田綾子・訳
新潮社・出版/新潮文庫


『トルストイの死の謎』


 本書、元々90年代に晶文社から出ていたものを、
映画公開を期に新潮社から文庫化されました。
 トルストイに対する予備知識ゼロで本書を読んでみました。
(もちろん、トルストイの作品も読んだことない)


 ロシアの文豪トルストイ、1910年に名もない小さな駅の駅舎で
その最後を迎えます。文豪の晩年の日々とその死の謎に迫った少説。

 トルストイって、まったく知りませんでしたが、苦学した庶民でしかも赤貧で
評価が上がったのは、死後でなんていう、日本の文士チックなイメージがあったのですが、
実際は、真逆。
 伯爵家に生まれた貴族で、名だたる文学作品を書いた後、しっかりとした評価を得た後も
長く生き、豪邸の元、お弟子さんから秘書、妻女に囲まれて、
晩年も(はたから見れば)悠々自適に暮らしていました。
早い話、いと"やんごとなききわ"なんです。
 その関係者がたくさん、記録を残しているのもトルストイの特徴の一つだとか。
 本書は、その膨大な資料を屈指し、供に暮らした人々の手記という形で
複雑な視点を書き分け、小説として再構成したのが、本書の特徴の一つ。
 トルストイ本人は、その手紙、と自身の作品によって、
手記という形では、その高弟と、晩年は口述筆記の相手だった三女、
もちろん妻、侍医、秘書などで構成されています。
 この視点の変化が本書の読みどころの一つでか各人からみた、
トルストイが万華鏡のように変化するのが、キーポイントでしょう。
 文豪という評価を除けば、本書、貴族を描いた大家族ものみたいな感じで、
なんか、人間模様が家族としてありのままぶつかり、あんまり高宗な感じがしません。
 死の謎も、ミステリみたいに謎をきわだたせてわかりやすく書いているわけでなく
全体を読んで読んで人間関係から、ぼんやりわかる感じです。
 キャラとして、印象に残るのは、やっぱり世界三大悪妻に数えあげられる妻ソフィア。
 強烈にこの性格のこの部分がダメと、そんなに悪い人じゃないんですが、とにかく、
すべてが、過剰。全体としての印象が、悪妻といわれるのもさもありなんです。
 自分の版権は、民衆にあるとしたトルストイと作品の版権を争います。
しかし、妻ソフィア、本文中にはないのですが、版権もすべてほしいわけでなく、
「アンナカレーニナ」までのが、欲しいと、、。
(あんたの説教なんてだれが読みたいのとまで言ってたとか)
 過剰なまでに、いや、しっかりと、旦那の作品の文学的価値まで見抜いております。

 映画ですが、この妻ソフィアを(やっぱりここの関係が一番メインになると思う)
ヘレン・ミレンが演じているとか、、、。
 ヒステリックにいろいろ言う姿が予想できます。
 
 大家族物って書きましたが、トルストイの文豪(やっぱりセレブ)の
内幕ものという面でも興味がつきませんでした。

十字軍物語1売り出し。

十字軍物語 1/塩野 七生
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 いつもの、大型書店巡礼の旅。

出てた、、。平積みだった。塩野さんの「十字軍物語」一巻目。

 やっぱり塩野さんだと、○○物語となるんですね、。

表紙の騎士、かっこいいです。



復讐するは我にあり 改定新版

復讐するは我にあり (文春文庫)/佐木 隆三
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「復讐するは我にあり 改訂新版」
佐木隆三・著
文藝春秋・出版/文春文庫


『静かでなんともいえない大きな感動』


 本書、ずーっとすごいノンフィクションだと思っていたのですが、
今回初めて手にして、解ったのですが、
第74回直木賞受賞から解るとおり、本書、フィクションです。

 昭和30年代に起きた、日本を縦断しながら、詐欺と殺人を繰り返した西口事件
を榎津巌という名前に改めて、書かれています。
 著者自身が、榎木津の内面に入れなかったと巻末に書いているとおり
榎津の内面には、一切触れず、その関係者の生々しい証言を捜査員が
辿るように構成されています。
 つまり、あくまでも、読者は、榎津の考えがまったく解らないのです。
 これが、否応なき恐怖感と不気味さをかもし出します。
 生々しいと書きましたが、一般的な事実だけ記す
ノンフィクションとして削ぎ落とした文体というのでなく、
著者は、周辺の証言にこそ、人生があり、そこに文学性があるとばかりに
一言一句まで再現していて、半端でない生々しさです。
 ここに、前代未聞の犯罪とごく普通の生活の接点がおきまた、
読者の恐怖感をあおっているかのようです。

 本書、陰惨な事件がつづられていき、意外なことに、
とある小学生の女子が機転を利かしたことにより榎津は逮捕されます。
 この後、裁判、刑の執行まで描かれるのですが、
 ラストがすごい。
 ネタバレで書けないのですが、これを更生というのか、
どんな人間にもある人の善の部分というのか、
私には、わかりませんが、なんともいえない、静かで大きな感動がありました。
 感動という言葉が適切なのかさえわかりません。
 しかし、心がものすごく揺り動かされたのは、確か。
 いや、榎津の鼻歌の秘密を知れば誰もが感動するはず。
 これは、刑罰で人の命がくっきりとなったからこそ、出たものかもしれません。
 また、本書、フィクションとして再構成された作家が持ち得るべき
テクニックだということもわかります。
 しかし、それにしてもこの心を揺り動かすラストはなんだ、、。
 
 


この本がおもしろそうだ、、。

 この本が、面白そうだ、、。


アルバトロスは羽ばたかない/七河 迦南

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 鮎川哲也賞受賞後、第一作だそうだ!!。

どんな作品かわかんないけど、。

 後、マルドゥック・スクランブルが、映画化されます。

それを、契機に新装版で出るそうな、、、

ちょっと構想的には、破綻しているけど、すごいテンションで

ラストまでぐいぐい持っていく作品なので、

一応、オススメ。

 雑誌「ユリイカ」でも、別冊特集で冲方丁の特集ですから、

いま、一番のりにのっている作家かもしれません。


リンカーン弁護士

リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)/マイクル・コナリー
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リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)/マイクル・コナリー
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「リンカーン弁護士」

マイクル・コナリー・著/

講談社・出版/講談社文庫


『めちゃくちゃ面白い』


 避けているわけじゃないけど、

もうコナリーが、うまいのは知っているよ、、と。

ついつい先送りになってしまう、マイクルコナリーですが、。


 私は、あんまりハードボイルドが得意分野でなく、

コナリーの忠実な読者ではありません。

 シリーズを順を追ってというより、

プロットでこれ面白そうと思ったのを拾い読みしている感じ。

 本書は、コナリーが、異分野に挑戦というか、

リーガルサスペンスを!?ということで、興味を持ち読んでみました。


 読んだら、あなた、、。

めちゃくちゃおもしろいじゃないですか、、。

コナリーは、一作ごとに面白くなっていると解説にも書かれていますが、

 緊張感といい、リサーチの度合いといい、ストーリーテリングといい、

まさに、一級品です。

 主人公のミック・ハーラーは、犯罪の町、LAで活躍する刑事弁護士です。

  高級車リンカーンを事務所代わりにどんな遠距離でも、訪問すると、

銘打って活躍しています。とはいうもの、犯罪者は、社会の底辺の人が主、

収支はカツカツです。

 金持ちのボンボンが、女性への暴行容疑をかけられ、これは、(フランチャイズ)金づるに

なりそうだと、弁護を引き受けるのですが、、、、。

 自分なりに、一線を引いているものの、けっこういいすスーツを着た、

ぎりぎり悪徳弁護士みたいな感じです。

 自分で自分のことをロード・オブ・セインツまさに、ストリートで生活する人々の

天使だといっています。

 しかし、彼は、夜の女性には、とびきり優しかったり、早い話、

リーガルサスペンスといっても、早い話、コナリーが書くわけで、

半分ぐらい厳しい状況で、優しさを持ちながらタフに生きる男を描く、

ハードボイルドなわけです。

 本書の場合、このリーガルっぽい展開と、HBの割合が

絶妙で、とてもいいです。

 コナリー、ボッシュを描いていた当初から、コインの裏表としての

ミック・ハーラーの構想はあったそうですが、とにかく、

 このハーラーの人物造型もいいし、なにより、海外ミステリとして

素晴らしい出来です。

 久しぶりに、海外ミステリを十二分に堪能しました。


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