前回の続き。
・阿波尾鶏弁当(高松駅) (1,350円)
嘗て存在した徳島駅弁が、調製元を変えての再発売かと思ったら、違っていた。
よく似た名前だが、徳島駅弁は「阿波地鶏弁当」。鶏の照焼きメインの全くの別物であった。
さて本品。
鶏もも照焼、鶏むね塩焼がゴロゴロ。
味付けご飯に錦糸玉子、山菜煮が乗せられたものがベースで、松山の「醤油めし」を思わせる。
付け合わせは椎茸煮、人参煮。アクセントにさつま芋の糖蜜煮。
鶏もも照焼は焦げ目のついた鶏皮付で食欲をそそる。
全体的にサッパリとした味わいの鶏弁当。
高松駅弁だが、製造は岡山の業者。
監修の栗尾商店とは、さつま芋菓子を手がける徳島の和菓子屋である。
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・江ノ島電鉄タンコロ (鎌倉駅) (1,780円)
「タンコロ」とは江ノ電100形電車の愛称で、1980年に運行終了した最後まで残った2輌が単行(1両編成)で運転されていたことに因んでいる。現在も動態保存され、イベント走行することもある。
ご覧のようにかなり本格的な、同形車輌を象った陶製容器の中には、酢飯の上に江ノ島らしく、しらす干し、まぐろフレークのほぐし身が散らされた酢飯をメインに、玉子焼、帆立煮、かまぼこが添えられている。
容器の半分強ほどしかご飯が入っておらず、見掛け倒しかと思いきや、底深いため、意外とご飯の量が多い。
酢飯と相俟って、サッパリ風味の素朴な味わい、
半分以上は容器代だろうが、思った以上に食べ応えがあった。
“タンコロ容器”の前後で行先表示板が「鎌倉」、「藤沢」と作り分けられているところが意外と芸が細かい。
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・うえのあなごめし(宮島口駅) (2,700円)
第60回記念大会だった昨年、久しぶりに実演販売が復活したが、続く今回も後半の目玉として実演販売が実現した。
穴子弁当は数あれど、本品こそ穴子弁当の紛れもない王者であろう。
ずらりと並んだ焼き穴子の切身は一口大で食べやすく、タレのしみ込んだ白飯と実によく合う。
端に添えられた2種類の漬物で時々箸休めを挟みつつ、穴子ご飯を次から次へと口に放り込む。
鰻とはひと味違った香ばしい焼き穴の風味が堪らない。
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・肉のさとう (東京/吉祥寺)各種
元祖丸メンチカツ(350円/個)
激うまコロッケ(230円/個)
吉祥寺名物の食べ物は数あれど、この「元祖丸メンチカツ」も間違いなくその一つであろう。
商店街角地の店に並ぶ長蛇の列は、それに止まらず、道を隔てた向こう側に更に延々と列が続く。その様子は昔から人目を引く。
あまりに列が長いので、近くを通っても毎度敬遠していたが、昨年この催しに出店しているのを見つけ、しかもさほどの列でなく、これなら…と初めて並んだのが最初。
今回、そのリピートである。
肉汁がじゅわっと染み出し、刻み玉ねぎの甘みが絶妙のコンビネーションを生み出す看板商品のメンチカツに対し、コロッケはじゃがいもが目一杯詰まった素朴な味わいで、好対照をなす。
両者ともカリッと揚げられた衣がサクサクと香ばしく、厚さは薄いがしっかりと弾力性がある。
コロッケやメンチカツは、齧り付いたり、ナイフを入れたりすると、ついふにゃっと形崩れしがちだが、この店のものはそうなりにくい。具がしっかりと詰まっていることと、円形なのが奏功しているのだろうか。
「何にしましょうか?」と客に声を掛けるのは、ご主人か?
前に並んでいたおじさんが、"昔銀座にお店があった頃からコロッケが一番好きだ"と言って、コロッケだけ買って行ったが、店の方は"従業員にはコロッケが一番人気なんですよ"と返していた。
銀座にも出店していたことがあったのか…。
最近では、リニューアルなった池袋西武の地下に常設店ができた模様。
焼豚切落し(750円)
綺麗に切り揃えられたチャーシューのパックもあるが、廉価版の切落としが好みである。
たっぷりとパックに盛られた焼豚は、しっかりとした噛みごたえと、脂身の柔らかさ、甘みが感じられ、甘辛のドロリとしたタレをかけると実に旨い。
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続いて甘いもの。
・からいも団子・ あん入/あんなし
(味のくらや/宮崎県)(各1個160円)
ここ数年、毎年食べている。
「からいも」とはサツマイモのこと。つきたてのお餅にからいもを混ぜ、砂糖を混ぜ、きな粉をまぶしたものを「ねりくり」というらしい。更に粒あんをくるんだものを「からいも団子」というそうだ。
店頭では「あん入り/あんなし」と区分けし、分かりやすくしているが、本来の意味からすると、「あん入り = からいも団子」、「あんなし = ねりくり」ということになる。
細長く伸ばされたほうが「あんなし」である。
粒あんは甘さを抑えた上品な味。
サツマイモが入っているため、冷やしても固まりにくく、冷蔵保存で10日ほど持つとのこと。
きな粉がたっぷりまぶされ、余るほどなのも、きな粉好きとしては嬉しい。
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・栗好き(福田屋 熊本和栗庵)(6個入/1,360円)
熊本県産の和栗、砂糖、水飴のみからなるシンプルな栗の和菓子。
フォークを入れるとほろりと崩れ、口に入れると優しい仄かな甘みが広がる。
岐阜県の栗きんとんをさっぱりと食べやすく、より廉価に仕上げたような一品。
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これにて今回購入した全ての品々をご紹介した。
冒頭で触れたように、「あれもいらない」「これもいらない」と、全くやる気がなかった割には、結局30食以上の弁当を食べている。
半数以上が既に食べたことのある品で、お気に入りが定まりつつあるのを感じる。逆に言うと、既存のお気に入りを押しのけたり、塗り替えたりできる新たな品の出現が少ないとも言える。
今回も、今まで当たり前のように毎度食してきた品々の多くが姿を消した。
華やかで客でごった返すこのイベントに身を置くと想像し難いことだが、廃業、倒産、撤退と、駅弁を巡る環境は決して明るくない。
長崎の鯨カツ弁当、飛騨牛弁当、岩手短角牛弁当などが姿を消した。
又、米飯メインの駅弁にとり、昨年のコメ不足、米価の高騰は、死活問題といえる大打撃である。
コメに限らず、食品の相次ぐ値上げは未だに留まるところを知らない。
嘗ては2,000円以内というのが、価格設定上の上限だったように感じるが、今やチラシの表を彩る目玉商品は、軒並み2,000円超えはおろか、2,000円台後半が当たり前となりつつある。
ラーメンやかき氷が当然のように1,000円を超え、アイスやジュースが200円に迫ろうかという時代にあっては致し方ないのかも知れないが、こうなってくると駅弁もちょっとした高級品である。
その高級品を求め、長蛇の列をなす客たちは、それへの出費ができる、まだ恵まれた方だと言えるのかもしれない。
とはいえ、連日、売り切れリストを見ていると、時間を置かずして完売の報があるのは、今や数少なくなった1,000円を切る廉価な駅弁たちである。
既にご紹介した秩父の弁当などを食べるにつけ、高級食材を使い、毎度贅と工夫を凝らした、しかし年々価格がエスカレートする実演ブースの看板商品たちのあり方は、本当に客のニーズに合っているのだろうかと疑問を抱かざるを得ない。
こんなことを書くのは興醒めで顰蹙を買うのかもしれないが、2,000円台はたくなら、焼肉食べ放題、すき焼きしゃぶしゃぶ食べ放題にもう少しで手が届く。弁当に絞ったとしても、料亭や仕出し弁当だって大抵のものは食べられる。
会場ならではの熱気、雰囲気、限定商法に煽られ、財布のヒモが緩んでいるだけかもしれない。
コロナ禍以降、食品の宅配サービスが広まり、有名店のメニューがテイクアウトで楽しめる機会が増えた。
「うまいもの」コーナーで、そうした店をもっと呼んできたら、集客アップにつながるかもしれない。しかし、地方物産展の側面もある中、そんな方向に舵を切ると、東京近辺に偏り、極論すればそこらのフードコートと変わりないものになりかねない。
過去幾度も"締め"で繰り返していることだが、既に築50年を越える京王百貨店新宿店を含む、一帯の再開発構想が何年も前から報じられている。
お隣の小田急百貨店は建て替え真っ最中だが、劇的に姿を変えるであろう小田急新宿駅に対し、元のように小田急百貨店が偉容をそのまま取り戻すとは考え難い。
恐らくは規模を縮小し、超高層オフィスビルの一部として入居する程度であろう。
それが終わると京王百貨店の番になる。
そうなった時、このイベントはどうなるのだろうか。
輸送コーナーには朝から依然として長蛇の列ができ、一部の品には異常とさえいえる人気が集中する。
しかし、明らかに以前に比べると、実演ブースの混雑具合が減っているように思われる。客の立場としては有難い話だが、相次ぐ値上げ、エスカレートする高級志向と、庶民の生活感覚との間に、ますますずれが起こってきているのではないか。
そんなことを思ってしまう。
…と今回も小難しく、どうしようもないことを書いた。
来場者たちの財布の紐を緩めさせ、わーっ、買いたい!食べたい!と思わせてくれるような、新たな魅力的な食品と巡り会えることを期待してやまない。













































