前回の続き。

持ち帰った駅弁その他のレビューである。

 

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常陸牛豪快すき焼き重ね盛り弁当 (水戸駅) (2,450円) 【しまだフーズ】

昨年の「常陸牛ロースステーキとローストビーフ贅沢盛り弁当」→昨年記事)と同様の容器だが、今回はすき焼き弁当である。

すき焼き弁当というと数知れないが、本品はしっかりとした肉厚の牛肉が、所狭しと幾重にも折り重なり、まさしく"重ね盛り"の名にふさわしい。

そして何よりも、半熟玉子が添えられているのが素晴らしい。

玉子焼きではもはやすき焼きとはいえず、さりとて生玉子はというと、衛生管理上からも又、割れてしまうリスクからも、駅弁の添え物としては不向きであろう。

中を取って半熟とし、ビニール袋で保護する念の入れよう。

やはりドロリとした玉子あってこその、すき焼きだと思うのである。

 

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まるごと飛騨牛べんとう (高山駅) (2,300円) 【金亀館】

飛騨牛を擁する高山駅弁も、牛肉弁当のバリエーションは豊富だが、その中にあって本品は今回"推し"とされている駅弁で、御覧の通りローストビーフ及び焼肉のせ白飯、ローストビーフ握り寿司と、多彩な肉料理の盛合せとなっている。

先に取り上げた「飛騨牛ステーキ弁当」に比べると、牛肉のレアさ加減は低く、同じピンク色でも、こちらのほうがやや熱が通っている印象。

ローストビーフ丼部分は甘辛のドロッとしたタレをかけ、握り寿司のほうは岩塩をまぶして味わう趣向である。

岩塩は、この寿司の量には多すぎ。写真の量でも塩辛くなってしまった。

ローストビーフの側は、このピンク色でも、血の滴る肉汁がご飯に残り、肉好きにとっては堪らない。焼肉の甘辛さが更に味のバリエーションを増す。

付け合わせの野菜は、椎茸、竹の子、それにこの調整元らしく山クラゲも健在。

 

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常陸牛 至福のランプステーキ弁当 (水戸駅) (2,200円) 【しまだフーズ】

御覧の通り一面肉、肉、肉…の贅沢駅弁。

しかも全てがピンク色が美しいレアなランプステーキだ。

具材を全て取り除き、下のご飯だけをレンジで温める。

 

些か悪趣味だが、白飯だけの写真を載せる。

本品も血の滴る肉汁がしっかりご飯についている。

上記「まるごと飛騨牛べんとう」よりも幾分サラリとした甘辛ステーキソースをかけると、淵はステーキ、中身は半生のロースステーキの風味が、幾ら冷めているとはいえじゅわっと口腔中に広がり、幸せな気分に浸れる。

付け合わせの玉子は、ちゃんとした半熟ゆで玉子で、この調整元らしく偽卵ではないのが嬉しい。

栗は甘露煮なので最後まで取って置き、デザートとして味わうのがよかろう。

 

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大名道中駕籠かしわ (折尾駅) (1,400円)

随分久しぶりに復活した駅弁。

後述の「かしわめし」の、言うなればおかずマシマシバージョン。

名前が示すように、大名の駕籠をイメージした二段重ねのお重となっており、箸箱までちゃんと黒塗り漆調の箱に入っているのが芸が細かい。

白身魚のフライを中心に、煮野菜、青菜のおひたし、唐揚、漬物等、おかずは多彩。

下のお重のかしわめしに敷き詰められたかしわ(鶏肉)、錦糸玉子、刻み海苔だけでも、十分完結するのだが、言うなれば親子丼を揚げ物盛合せおかずで食べるような贅沢気分である。

西の駅弁らしく、この弁当の玉子焼きも、大嫌いな砂糖入りではなく、甘くないとまではいかないが、ほんのり甘い程度に留まっているのが有難い。

 

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焼きのどぐろと炙りサーモン丼 (新津駅) (1,600円) 【神尾弁当部】

かつて実演ブースに毎回欠かさず来ていた「のどぐろとサーモンといくらの弁当」と同じ調整元による駅弁。容器も同じ八角形。

だがかつてのようなご飯が山と盛られ、おかずが盛り上がってはいない。

その辺りが昨今の物価高の反映ゆえなのか。

かつての「のどぐろサーモン」とどうしても比べてしまうが、まずサーモンが半生ではなく炙ったものになり、イクラではなく身欠き鰊が入っている。

のどぐろは相変わらず小ぶりだ。

もう忘れ去られつつあるが、金沢出身という馬面出っ歯の某男子庭球選手が、無責任にも「のどぐろ大好き!」発言をしやがったせいで、のどぐろ人気が広まり、それ以来「のどぐろサーモン」ののどぐろが目に見えて小ぶりで貧弱になった。

 

色々文句がましいことは言ったが、付け合わせの海老しんじょうが美味。

今回の中では数少ない、食指を動かされた魚系弁当。

 

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松阪名物黒毛和牛モー太郎弁当 (松阪駅) (1,700円)

駅弁の値上ラッシュの波はここにも如実な影響を及ぼし、とうとう本品は1,700円になってしまった。

ちょっと前は1,500円弱だったのにねぇ。

この値段はもう"アラ2,000円"の領分と言うことができ、高くなったなぁ…と感じる。

 

ちょっと開くのが面倒なボール紙の覆いをどうにか外すと、つぶらな瞳の黒い牛さんの、意外にリアルなお目目が何だか潤んで見える。

更に蓋を開けると、お馴染み「ふるさと」のメロディ。

「♪う~さ~ぎ~ お~いし か~の~や~ま~」

何とも長閑な電子音が却って間抜けである。

さて味わうとしましょうか。

脂身の十分絡んだ牛焼肉は、シンプルな甘辛味だが、これを食べると「旨味は脂味」とかつて豪語した「元祖デブ屋」の石ちゃん氏を思い出す。

付け合わせの紅生姜の酸っぱ辛さがともすると単調になりがちな牛脂の味を引き締めてくれる。

切干大根、柴漬けといったシンプルかつ少量の付け合わせも、立派な箸休めとなる。

 

レンジで温める前に蓋の裏から取り外した件の音響装置だが、キッチンに放置しておくと、ちょっと灯りを付ける度に、「♪う~さ~ぎ~ お~いし…」と間抜けなメロディを奏で、それが何度も続くといい加減うんざりして密閉し、最後はゴミ箱行きとなるのである。

そんな時、いつも脳内で繰り返されるのは、「ふるさと」ではなく「ドナドナ」のメロディなのである。

 

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十和田バラ焼き重 (新青森駅) (1,200円)

昨年食べてみて美味かったので、輸送コーナーに売れ残っていたのを衝動買い。

「バラ焼き」とは、十和田地方のご当地グルメで、大量のタマネギとバラ肉を醤油ベースの甘辛いタレでからめ、鉄板で焼き締めたものだという。

カラフルな掛け紙を外してみると、去年のものとは異なり、通常の蓋を開ける方式に構造が変わってしまっていることに気づく。

前回は、蓋の横方向に切れ込みが多数入り、それをスルスルと風呂の蓋のように巻き取って開けるという独特な方式であった。

 

↓(参考) 昨年版の画像。

 

大量のタマネギとあるように、元より本品の牛肉の量は少ない。

牛肉ぎっしりだった上述の「モー太郎…」とは対照的だが、牛肉とタマネギの相性の良さをつくづく感じる。

煮込みではなく炒めてあるのもワイルドで、牛弁にしては珍しい存在。

一切れだけ乗ったさやいんげんは彩り要因か?

付け合わせはわさび菜醤油漬けがメインで、バラ焼きの甘ったるい脂の味を上手く中和してくれる。

但し、東日本の弁当らしく、玉子焼きは砂糖たっぷりでガッツリ甘い。

 

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かしわめし (折尾駅) (920円)

上述の「大名道中駕籠かしわ」同様、随分久しぶりに整理券方式で復活。

紐で十文字にかがられた造りからして、歴史ある名物駅弁の風格有。

伝統の経木の容器が嬉しいが、以前は本体のかしわめし部分は直接経木の容器に盛り付けられてはいなかったか?

蓋の上に、おいしい食べ方の説明書が入れられており、それによると、今や半透明の薄いプラスティックトレイに敷き詰められた「かしわめし」部分全体をラップで覆い、レンジで1分半温めるとある。

やや熱すぎるかな…と思うほど温まった。

かつての経木に直接盛られた状態だと、日が経つと淵のご飯がカピカピになり、とてもこうは行かなかったが、反面経木の良い香りがご飯に移り、それが味わいでもあった。

経木の味わいはなくなったが、ふんわり温かい食感はプラトレイ方式に分がある。

この辺りは好みが分かれることだろう。

 

かしわめしは全体的にほの甘い優しい味わい。

付け合わせの奈良漬け、昆布の佃煮の、それぞれ異なる辛みが良いアクセントとなる。

甘いうぐいす豆は、私の場合、おかずとしてではなく、デザートとして最後の楽しみに取っておくのが常。

 

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最後は甘いもの。

 

萩の月 (5個入 ; 1,031円) 【菓匠三全】

これも結構な頻度で買っている。

言わずと知れた仙台の超有名銘菓である。

この催しに出品されるのは簡易包装版なので、あの着物の優雅なお姉さんの化粧箱に個々に入ってはいない。

全国に"亜流"あれど、やはり本品に優るものなし。

少しザラッとした舌触りの濃厚な玉子風味のカスタードクリームが一大特徴。

周囲を覆うスポンジはふんわりと柔らかく、手に持っただけでホロホロと崩れるほど。

 

前にも記したが、幼少期は、まさにこの玉子風味濃厚なカスタードが嫌いであった。子供の頃、本品を食べる機会があったとしたら、もしかすると私の「萩の月」に対する印象は大きく変わっていたかもしれない。

幸いなことに、かつての元関西人だった私のもとに、「萩の月」も、その類似品も回ってくることはなかった。

 

かつて「萩の調」というチョコレートバージョンがあり、お取り寄せで食べたことがあるが、ふわふわ食感は同じながら、本品のような濃厚な玉子風味はチョコレート風味に取って代わられており、オリジナルには到底及ばない印象を持った。

 

これにて1/11の回は終了。

次回へ続く。