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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBlood Advancesからで、メトホルミン使用と骨髄増殖性腫瘍の関連を検証した論文になります。

 

Metformin use and risk of myeloproliferative neoplasms: a Danish population–based case-control study

Kristensen DT et al, Blood Adv 2024, doi: 10.1182/bloodadvances.2023012266

 

【要旨】

過去の研究では、メトホルミンが血糖を下げる特性だけでなく有益な効果、特に抗腫瘍およびがん予防薬剤としての潜在性を有する点が示唆されてきた。本研究では、メトホルミン使用と骨髄増殖性腫瘍(MPN)のリスクの関係について検証することを目的とした。

 

我々はデンマークのレジストリを使用して、住民を対象とした症例対照研究を実施した。2010年から2018年の間にMPNと診断された症例が同定され、MPN診断前のメトホルミン使用が確かめられた。MPN症例のうちでのメトホルミン使用と、デンマークの一般集団から抽出した年齢および性別をマッチさせた対照群を比較し、メトホルミン使用とMPNリスクの間の関連に対する年齢および性別で調整されたオッズ比(ORs)と、fully adjusted ORs(aOR)を推定した。

 

本研究には3816人の患者と19080人の対照が含まれた。全体で、患者の7.0%と対照の8.2%がメトホルミン使用歴ありと分類され、MPNに対するORは0.84(95% CI 0.73-0.96)、aORは0.70(95% CI 0.61-0.81)だった。長期間(5年以上)のメトホルミン使用はより頻度が低く、患者の1.1%および対照の2.0%で、結果としてORは0.57(95% CI 0.42-0.79)、aORは0.45(95% CI 0.33-063)となった。累積治療期間を解析すると用量反応関係が観察され、これは性別、年齢とMPNサブタイプで層別化しても一貫していた。

 

結論として、メトホルミン使用は有意にMPN診断のオッズ比の低下と関連し、メトホルミンのがん予防効果の潜在性を示している。後方視的デザインのため、因果関係については推論出来ない。

 

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メトホルミンは2型糖尿病で最もよく使われる薬剤の一つですが、固形がんリスクや死亡率を下げるとするメタ解析があるのだそうです。ただし、研究間で結果が一致しないなどがあり、まだ確定したという訳ではありません。血液腫瘍ではほとんどエビデンスがないとのことで、今回デンマークからメトホルミン使用とMPNリスクを検討した論文が出ました。これによると、メトホルミン使用歴がある人、また使用期間が長い人でMPN発症に対するオッズ比が低かったという結果でした。この結果は特に真性多血症と本態性血小板血症で顕著でした。

 

後方視的な観察研究なので、これで直ちにメトホルミンがMPN予防効果を有するとは言えないところに注意が必要です。そもそも糖尿病にならないほうがいいし、なったとしてもメトホルミンを使うまでにならないほうがいいのは明らかです。低血糖発作などの害もありますので、安易にメトホルミンに飛びつかないようご注意願います。

 

おまけ

 

 

歓送迎会で食した、マルゲリータピザです!