こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はNew England Journal of Medicineで、ついに出たという感じのALLに対するブリナツモマブ追加を評価した第Ⅲ相試験をご紹介いたします。
Blinatumomab for MRD-Negative Acute Lymphoblastic Leukemia in Adults
Litzow MR et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2312948
【背景】
多くのB細胞性前駆急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)成人患者は、多剤併用化学療法により微小残存病変(MRD)陰性の完全寛解を達成しても再発する。再発難治性およびMRD陽性BCP-ALLに対して承認されている二重特異性抗体であるブリナツモマブを追加することにより、MRD陰性寛解の患者に効果を発揮するかもしれない。
【方法】
今回の第Ⅲ相試験において、30歳から70歳のBCR::ABL1陰性BCP-ALLで、寛解導入および強化療法後にMRD陰性の寛解(フローサイトメトリーでの評価で、骨髄中に白血病細胞が0.01%未満と定義)を達成した患者を、4サイクルの地固め化学療法に追加して4サイクルのブリナツモマブを行う群と、4サイクルの地固め化学療法のみ行う群とにランダム化割り付けした。主要評価項目は全生存で、無再発生存が副次評価項目である。
【結果】
データおよび安全性評価委員会が3回目の中間解析の結果をレビューし、結果の報告が推奨された。血算が完全に回復した、もしくはしなかった完全寛解が、参加した488人のうち395人で観察された(81%)。MRD陰性を達成した224人の患者のうち、112人がそれぞれの群に割り付けられた。両群の患者特性は均等であった。
フォローアップ期間中央値43カ月の時点で、全生存に関して化学療法のみの群と比較しブリナツモマブ群の優越性が観察された(3年間:85% vs 68%;死亡に関するハザード比 0.41;95% CI 0.23-0.73;P=0.002)。3年間の無再発生存率はブリナツモマブ群で80%、化学療法のみの群で64%だった(再発もしくは死亡に関するハザード比 0.53;95% CI 0.53;95% CI 0.32-0.87)。化学療法のみの群と比較して、ブリナツモマブ群で神経精神的イベントの報告率が高かった。
【結論】
BCP-ALLでMRD陰性の寛解が得られた成人患者において、地固め療法にブリナツモマブを追加することで有意に全生存を改善した。
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成人ALLに対する同種造血幹細胞移植の位置づけは近年大きな過渡期を迎えており、特にフィラデルフィア染色体陽性のALLにおいてはチロシンキナーゼ阻害剤とブリナツモマブの併用で、もうupfrontでの移植はいらないかも・・・(未確定)?というところまで来ています。チロシンキナーゼ阻害剤の対象とならないフィラデルフィア染色体陰性BCP-ALLはまだ難しい部分が多く、年齢にもよりますが、小児共通プロトコールによる強力化学療法の導入でMRDの状態によっては移植をしなくともよいかもしれない患者群が次第に分かりつつあります。
とは言ってもMRD陰性でも再発することはあり、そんな中で今回の試験では、寛解導入および強化療法後にMRD陰性を達成した、場合によっては移植をしなくともよいかもしれない患者群ですら、ブリナツモマブが全生存に優越性をもたらしたというところに大きな威力を感じます。久しぶりにALLの標準治療を塗り替える歴史的な論文だと思います!
おまけ
昨日の記事のイカを、美味しい天ぷらにしてもらいました!