こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はBlood Advancesに面白い論文が載っていたのでご紹介します。何かと話題になりがちなビタミンDの関連論文です。
Tadmor T et al, Blood Adv 2024, doi: 10.1182/bloodadvances.2023011458
【要旨】
慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、ビタミンDが低値であると初回治療までの期間(TTFT)が短く、全生存の不良と関連する。しかし、ビタミンD補充がCLL患者の臨床経過に影響を与えるかどうかは未解決の問題である。今回の研究では、無症状のCLLで、経過観察されている患者の大規模コホートにおいて、ビタミンD補充もしくはそのアナログがTTFTと無治療生存(TFS)に臨床的利益を有するかを後方視的に探索することを目的とした。
研究に加えられた3474人の患者の内、931人(26.8%)がビタミンDもしくはそのアナログを最低6カ月投与されていた。ビタミンD補充は、若年コホート(65歳以下)で統計学的に有意なTTFT延長と関連し、全年齢でTFS延長と関連した(P = 0.004)。ビタミンDが投与されていない患者群でのTFS中央値は84カ月で、一方ビタミンDを投与されていた患者群でTFSは169カ月に延長した。
結論として、我々の長期間の後方視的研究により、経過観察しているCLL患者において、ビタミンD投与はTFSの延長(全年齢)と若年患者(65歳以下)でTTFT延長と有意に関連した。結果を正当化するため、前向き臨床試験が必要である。
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ビタミンD関連の論文も、以前にいくつかご紹介しています。
後方視的解析ですが、慢性リンパ性白血病患者でビタミンD補充を受けた群が化学療法開始時期などを遅らせることが出来たという論文です。上述の記事のように、色々ながんでビタミンDと発がんとの関連が指摘されているものの、これが原因なのか結果なのかが難しいところです。現時点では前向き試験で有望な結果は出ておらず(悪性リンパ腫でも先行研究がありますが、ポジティブな結果は出ていません)、ビタミンDを補充した方がよいとはまだ言えない点に注意が必要です。今後の研究に期待します!
おまけ
先日の歓送迎会で食したイカの刺身です(ビタミンDが多いわけではない)