プール/松久淳+田中渉
¥1,155
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【あらすじ】


七通の手紙が彼女のもとに届いた。差出人はすべて不明。

手紙は決まって、縦書きの便せんに水性のボールペンで書かれ、最後のページがきれいに一部切り取られていた。

やがて、八通目の手紙が託された。

そして、それが最後の手紙だった。

80年代前半・長野。90年代後半・東京、そしてアメリカ西部。

ふたつの時代が出会い、そして、今、静かに響きあう。

『天国の本屋』シリーズの著者が描く、絶対零度の最新恋愛小説。



【感想】


中学生のときに読んで、とってもとっても印象に残った作品だった。プールっていうタイトルだからかもしれない。それだけじゃないと思うけど、僕の中でこの作品は全体的に青みがかかっていて、クールで、ひんやりしている感じがする。読み終えたとき、本を読んではじめて寂寥感というのを感じた。感動ではない。寂寥だ。寂しくなった。大切な人に会いたくなった。

今読み返すと、文章的に少しダサさが窺えるが、当時はそれでも深く自分の心が吸い込まれた作品だった。心を吸い込むような作品。これは一種の催眠術だと思う。だから、読み終わってそれが解き放たれると、もっと読みたかたと寂しくなるんだ。




BASARA (1) (小学館文庫)/田村 由美
¥580
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【あらすじ】



文明が滅びて数百年、暴君に支配されたこの国に生を受けた双子、タタラと更紗。

“運命の子供”が駆け抜ける、衝撃のジパング伝説!


【感想】


久っっっしぶりに少女マンガ読んだ。これは……とても一言じゃ語りつくせない壮大さがある。なめてたぜ、少女マンガ。文明が滅びた未来の物語を読んでいるはずなのに、まるで異世界に放り出されたような衝撃。いい意味でね。やっぱり漫画だけあって、復讐相手が互いに好き同士だったなんてあまりにもできすぎている設定だけど、でも、そんな安っぽい設定をしていても、この物語はそれで成立してしまっているからすごい。これから、これをきっかけに漫画に手を出していこうかな。




海 (新潮文庫)/小川 洋子
¥380
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【あらすじ】



恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る“鳴鱗琴”について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。


【感想】


七編ともすべて、なにか喪失が漂う悲しい雰囲気を漂わせているのに、文章はとても優しいタッチで書かれていて、短編という短い中でも、話も人物も生き生きとしている気がした。特に僕は「ひよこトラック」が気に入った。言葉を交わさずとも意思の疎通ができる、おおよそ人生が交わることのなかった二人の描写は、へたな恋愛小説よりずっといい。素直に、面白かった。




夜の寝覚め (集英社文庫)/小池 真理子
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【あらすじ】


結婚10年目、小夜子は初めて恋を知った。

それから15年。夫の友人との秘密の恋が、結ばれることもないまま終ろうとしている。

行き着く果ての見えない愛を描く「たんぽぽ」。

真夜中に父と睦み合う叔母の姿を目撃して30年。

秘めたる思いを胸に抱いたまま、今、その叔母の命が尽きようとしている。

表題作「夜の寝覚め」。

人生の残り時間を数えはじめる季節を迎えた6人の女たち。寄る辺なき恋の短編集。


【感想】


大人の女性だからこそ書ける、大人の恋愛事情が満載。どれもが涙が溢れそうなほど、純粋で、描写も美しい。不倫を純愛に変える髙樹のぶ子さんとはまた違う、独特な世界観を読ませてくれた。

僕が一番好きなのは、死にたがりの主人公が色んな男と寝てきたときに、ふとした瞬間に出会った画家に恋をする「旅の続き」と、夫と離れて姉の嫁ぎ先に転がり込んだ先で出会った青年と恋に落ちる「雪の残り香」が面白かったかな。




臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)/小林 泰三
¥700
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【あらすじ】


彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。

興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。

彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているという。

彷徨い人はこの怪しげな「臓物の物語」をきこうとするが…。

グロテスクな序章を幕開けに、ホラー短編の名手が、恐怖と混沌の髄を、あらゆる部位から描いた、9つの暗黒物語。



【感想】


全部で九つの短編が集められた一冊。物語の関連性はなくてちょっと残念だったけど、ひとつひとつの物語はとても面白かった。

「透明女」はグロテスク満点。食事中に読んでてはじめて僕に吐き気を催させた一冊。結構態勢ついてるつもりだったんだけどなあ。

「ホロ」は幽霊たちの話。あんまり面白くなかったかな。

「少女、あるいは自動人形」短い話のわりにはよく展開ができた話。

「攫われて」も短い話なのに面白さ満点。グロさは少なく、少女たちの葛藤や友情話にハラハラさせられた。

「釣り人」は宇宙人の存在の有無を問う話で、登場人物はたった二人なのに、奥が深い作品だと思った。

「SRP」は長い物語で壮大に仕上げているわりには、なんとなーく内容が薄っぺらい感じかなー

「十番星」ラストが衝撃。

「造られしもの」はちょっと孤独な話。こういうの好き。

「悪魔の不在証明」は今までのと違ってちょっと現実的な話。これはちょと難しかったけど、面白かった。