海 (新潮文庫)/小川 洋子
¥380
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【あらすじ】



恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る“鳴鱗琴”について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。


【感想】


七編ともすべて、なにか喪失が漂う悲しい雰囲気を漂わせているのに、文章はとても優しいタッチで書かれていて、短編という短い中でも、話も人物も生き生きとしている気がした。特に僕は「ひよこトラック」が気に入った。言葉を交わさずとも意思の疎通ができる、おおよそ人生が交わることのなかった二人の描写は、へたな恋愛小説よりずっといい。素直に、面白かった。