一葉です。いつもありがとうございます。(。-人-。)
このお話は魔人sei様のリク罠№160 をお題としてスタートさせた現代設定パラレル蓮キョの本編に織り込むことが出来なかったお話です。
蓮くんsideでお届けいたします。
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本編を含む前話はこちら↓
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恋する生徒会長・番外編2
■ 彙類の友 ■
「 お前と二人でこの部屋に入るのは久しぶりだな 」
高校卒業を間近に控えたある日、しばらくぶりに入った社さんの部屋は俺の記憶のそれとほぼ変わりが無かった。
社さんと二人で部屋にいると中三だった頃の一年間を思い出す。
あの頃にはもう、社さんが俺の近くに居るのはごく当たり前の日常となっていた。
アメリカから引っ越して来た俺たち一家が、日本で言うところの向こう三軒両隣…の言葉に従い挨拶をしに行った隣接地の一軒家が社さんの家だった。
「 敦賀と申します。妻と、それから息子の蓮です。どうぞよろしくお願いします 」
俺の本名は敦賀蓮だが、父親はクー・ヒズリというペンネームでフリーのジャーナリストをしていた。
一口でジャーナリストと言っても様々な種類があり、俺の父親は経済論に特化したジャーナリストだった。
ちなみにこれは余談だが、俺の父親が俺の母親と出会ったのは仕事の都合でアメリカに居た時だったらしく、父は母を口説き落とすためにアメリカに住居まで構えた情熱の男で、その話を聞いてから何故か社さんは俺の父親を深く尊敬するようになっていた。
「 ああ、うちにも同じ年ぐらいの息子がいますよ。ゆっきー。倖一 」
「 なに?……うわ…… 」
初対面のこのとき、社さんは俺を見るなりひどく迷惑そうに顔をしかめたらしい。
それに対して俺はと言えば、日本に来られたことが嬉しくて、社さんの反応が一体どういう意味か分からずただキョトンとしていたとか。
とか…というのは、なにぶんにもそれは4~5歳頃の事なので、正直あまり良く覚えていないのだ。
社さんのご両親は幼稚園を経営していた。
更に言うとLME高等学校で現在理事長を務めているローリィ宝田氏と社さんのご両親はそれなりに親しい間柄で、加えてローリィ宝田氏はかなりの資産家ということもあり、経済ジャーナリストをしていた父と顔見知りだった。
そんな背景もあり、俺の父と社さんの父親は出逢ってすぐに意気投合。
仕事の都合で家を空けなければならないことが多かった俺の父親は、アシスタントの母を連れて日本を離脱することもしばしばで、俺はと言えば社さんのご両親が経営していた幼稚園に入園させてもらったばかりでなく、父母が不在の時は社さん宅に寝泊まりをさせてもらうような環境で、幼少期のほぼを社さんと一緒に過ごしたと言っても決して過言ではなかった。
日本の小学校には、3年ほど通ったと思う。
「 社くぅん 」
「 なに? 」
「 ねぇ、ねぇ。聞きたいことがあるんだけど、私たちより一コ下の敦賀くんって社くんちのお隣に住んでいるって本当? 」
「 ……本当だけど 」
「 きゃー!!やっぱりそうだったじゃない! 」
「 良かった!社くんがクライメイトで私たち超ラッキー! 」
「 ラッキー?なにが? 」
「 あ、あのね、二人って仲が良いんでしょ?敦賀くんが社くんの家に良く泊まりに行くらしいって噂を聞いたの。
ねぇ、私たちも一緒に帰ってもいい?そこで私たちに敦賀くんを紹介してくれないかなぁ? 」
「 紹介?どうして? 」
「 どうして…って。お友達になりたいからなんだけど。だって仲が良いんでしょ? 」
「 俺が蓮と仲が良いからってどうして君たちに紹介しないといけないの?
そもそも友人っていうのは個人個人で自然とそうなっていくものであって、紹介されて仲良くなるようなものじゃないと俺は思う。蓮にだって選ぶ権利があるんだ。少なくとも君たちに蓮を紹介する気が俺には全くないから断る 」
「 ……っ!?!? 」
「 言っておくけど、蓮の見てくれだけでアイツに近づこうとするのは面倒だからやめて 」
実は俺たち一家が母親の母国であるアメリカから父親の母国である日本に引っ越してきたのは、俺が米国で何度も誘拐されそうになったからだった。
ただ、その時の俺は父親の仕事の影響で、その子供である俺が狙われているのだと思っていた節があって、だから日本にくれば安心安全に暮らせるものだと信じていた。
社さんはその辺の事情を大人たちから聞いていたのかも知れない。
けれどその時はまだ、俺には社さんに守られているという自覚は全く無かった。
日本も決して安全な国じゃないと俺が知ったのは小学生になって2~3年ほど過ぎた頃。
その時のこともやはりはっきりとは覚えてなくて。
ただ、泣きじゃくっていた俺を助けに来てくれたのは自分の父親ではなく、一つ年上の社さんだった。
「 蓮!!良かった、見つけた 」
「 ……っ……っ………どう、して…… 」
「 お前が帰ってこないからだろ!こんな事になったら困るから、だから一緒に帰ろうって言ったのにどうして一人で帰るんだ! 」
父親にはいつも社さんに迷惑をかけるなと言われていて、だから年下の俺が一緒にいたら社さんが困ると思ってのことだった。
結局それで一番迷惑をかけてしまった訳だけど。
こういう時、犯人はいつも女性で
だけど俺は自分の父から、男は女性に優しくするものだと教えられていたこともあって自分がどうしたらいいのか判断するのが難しかった。
社さんはそんな俺を根気強く導いてくれた、ただ一人の人だった。
「 う…… 」
「 だから、だから言っただろ、自覚しろって!もっと周りを見ろって!じゃないともっと怖い事がいつか起こるかも知れないんだぞ、蓮!! 」
「 …ごめんなさい……ゆっきーくん…… 」
それまで俺は、社さんの父親がそう呼んでいたのを聞いて、俺も社さんをゆっきーくんと呼んでいた。
社さんもそれで返事をしてくれていたし、嫌だと言ったことも無かった。
だけどこの出来事から、俺は社さんを社さんと呼ぶようになった。
たった一つしか違わないけど
社さんは俺にとって父親の様でもあり、兄の様でもあり
無二の親友の様でもあり、神様のような人だった。
俺が困っている時はさりげなく手を差し伸べ、どんな時も助けに来てくれる彼はヒーローのような人だった。
だから自然と俺の中で、社さんにだけは決して逆らうまいとする俺が生まれたのだろうと思う。
尤も、この直後に俺の母方の祖父母がこの話を聞いて体調を崩し、そのまま具合が悪くなってしまったこともあって、俺たち一家は再び米国に戻った。
その頃には俺も自覚が出来始めていて、アメリカに行ってすぐ父も通っていた護身術の道場へ通うようになり、また他にもいくつか通って身体を鍛え始めたことも手伝って危機的状況に陥る事はなくなっていた。
だが相変わらず女性からはしつこく付きまとわれることが多く、それは年を追うごとに苛烈に変化。
社さんが居ない米国の暮らしは息苦しくて仕方が無くて、日本に対する俺の想いも徐々に強くなってゆき、そしてある日、俺は日本に戻りたいと父に懇願したのだ。
「 いいぞ。数字で結果を残したらな 」
日本でもやっていけるだけの学力を数字で示せ。
俺に出した父の課題はそれだった。
もちろん死ぬ気で勉強して相応の学力を身に付けた。
父親から許可が下りた時はこれで少しはマシに暮らせると喜んだ。
再び日本の地に降り立つことが出来たのは中学二年の秋。
社さんと再会した時の喜びは忘れられない。ただ、社さんは俺の顔を見るなり迷惑そうな顔をしたけど……。
受験を控えた社さん宅にお世話になる訳にもいかなくて、保証人を社さんの両親にお願いし、俺は父親が購入してくれたマンションに一人で入居した。
余談だけど、社さんがLMEを受験すると決めたのは、社さんが尊敬している俺の父親がLME高等学校の卒業生だったかららしい。
そこが男子校だと知った俺は、自分も来年そこを受験しようと思った。
社さんは早々に推薦を取り付け、試験を受ければほぼ入学は確定状態。
なのにその受験の日、予期せぬ事が起こってしまった。
いつもは逃げおおせていたのに、その日に限って俺は女の子の集団に捉まってしまったのだ。
運の悪いことにそのとき俺は、社さんに激励のメールを送信しようとしていた最中で、何かの弾みで中途半端に送られたメッセージを受け取った社さんはそれだけで何かがあったと気が付いたのだろう。
俺の事なんて放っておけばいいのに。
もう子供の頃とは違うのに。
社さんは自分の受験を放り投げ、あの時と同じように俺を探しに来てくれたのだ。
自力で逃げ出した俺と鉢合わせた社さんはひどく青い顔をしていた。
「 お前な!!俺の寿命を縮める気か?!
いい加減、彼女でも作れよ!そうすればこんな事も起きなくなるから!! 」
いつの間に設定されていたのか、俺の居場所を携帯でサーチした社さんが腰に手を当て説教をたれる。
そのとき俺はこう思った。
いっそこの人が異性だったら間違いなく、俺は社さんと付き合っただろうにと。
「 くそ!もうお前の事が心配過ぎるわ。
いっそ来年受験にするか! 」
「 は? 」
社さんはあらゆる切り替えが案外早い。
そしてどこか動じない所があった。
こうと決めたら決して譲ろうとしない頑固な一面が彼にはあった。
「 社さん、冗談ですよね?今日の推薦入試がダメになってもまだ一般入試があるじゃないですか。社さんだったらそれだってLMEに入学できるでしょう? 」
「 そう。ハッキリ言って俺は受験さえ出来ればLMEに入学できる。だから良いんだ。来年でも 」
「 なに言ってるんですか! 」
来年じゃ一般入試でしか受験できないじゃないですかって言おうとしたけど、既に今日という受験日をフイにしているのだ。
どちらにせよ社さんはもう一般でしか受験できない。
そんなこと、社さんだってとっくに知っているのだ。だからって一年遅らせるなんて…と俺は顔を曇らせたが、腹が決まったからなのか彼は妙にさっぱりとしていた。
「 俺のことはいいよ。そんな事より蓮 」
「 そんなこと?! 」
「 お前、まだ日本の授業にあんまり慣れていないだろ?優秀な家庭教師がいたら有難いと思わないか?それで来年、俺とLMEを受験するってどうだ? 」
「 ……っ?! 」
「 お前に勉強を教える傍らで俺は受験勉強が出来る。二人揃ってwin-winになって良いアイディアだと思わないか? 」
「 それのどこが…… 」
win-winなんですか…とはもうツッコめなかった。
なんて豪快な考えた方をするんだ。
本当に、俺は社さんほどイイ男に出会ったことが無いですよ。
「 俺、社さんが女性だったら絶対社さんと付き合ったのに… 」
「 残念。俺とお前は彙類だから無理だ 」
「 イルイ? 」
「 帰国子女には難しいか。そういうのも勉強しないとな、蓮! 」
結局そのあと本当に、社さんは一年をかけてじっくり俺の勉強をみてくれて、共にLME高等学校を受験し、二人揃って無事入学。そして三年間を共に過ごした。
そんなことがあったから、こうして社さんと二人で部屋にいると、中学三年の一年間を思い出す。
社さんはいつでも根気よく俺に付き合ってくれていた。
「 社さんは子供の頃からとにかく面倒見が良かったですよね 」
「 んー?そうだったか? 」
「 自覚、無いんですか 」
「 自覚っていうか……。そうだな。蓮、英語にcoolってあるだろ 」
「 cool?ええ、ありますね。それが? 」
「 それ、日本人の耳にはクーに聞こえるんだよ。知ってたか? 」
「 え?……そんなの意識したことありませんでしたけど。それが? 」
「 クールってさ、カッコいいって意味だろ。
俺、お前の父親がクー・ヒズリですって自己紹介したとき、自分のことをカッコいいヒズリですって名乗ったんだと思ってお前の父親、カッコいいって思ったんだよ 」
「 は???? 」
社さんのご両親が経営していた幼稚園では、英語の学び時間が割とあった。
お手本お願いとか言われて、俺は色々な単語をとにかく喋らされたのだ。
「 まさか、たったそれだけのことで俺の父親を尊敬していたんですか?今までずっと??? 」
「 なんでだよ、いけないのか、それが理由じゃ。
お前のこともさ、カッコイイ男の息子だから俺が守らないとって、使命に燃えていたんだぜ、俺。自分もクールな男になりたくてさ 」
嘘だろ?たったそれだけの理由で?
なんていうか本当に……この人はもう……。
「 ……くっ…。確かに、俺の中で社さんはクール・ガイですよ 」
「 お前みたいな奴に言われたくないわ!! 」
高校卒業を間近に控えたある日、久しぶりに入った社さんの部屋は俺の記憶の中のそれとほぼ変わりが無かった。
そして社さんは相変わらず
俺の中で最高にイイ男だった。
END
彙類(いるい)…同類。彙は仲間という意味。
関係ないですけどPCの漢字変換にこれが無いのは如何なものかと私は思う。そういうの、本当に多すぎ!!
入れたかったのに盛り込める場所が無かったので欄外におまけ↓
■ バースディの裏話 ■
「 そういやもうすぐ冬休みだけどお前はどうするんだ?蓮 」
「 あ、俺、冬休みはキョーコとちょっと用事があって… 」
俺が彼女のことをキョーコと呼ぶようになってから、それを聞くたびに社さんは目を細めてニヤリと笑うようになっていた。そして最近では更にこんなセリフが続くのが常になっていた。
「 あー、もう本当にいい子だよな、キョーコちゃんは。
自分の誕生日には自分を名前で呼んで欲しい…なんてお前におねだりして終わりにしたくせに、お前の誕生日にはちゃーんと手作り品をプレゼントしちゃうんだから。あーあー、健気だなぁ、いい子だなぁ、さすがだなぁ。人を見る目があったな、俺ぇ 」
「 おっ…俺だってですね!! 」
「 そうだよなー。安上がりに済ませちゃったんだよなー。甲斐性の無い男だよな、蓮くんはー 」
「 だってそれは、キョーコが何も欲しくないって言うから…… 」
「 言うからって本当に名前を呼ぶだけで済ませちゃったんだろ?そういうの、彼氏としては失格だと俺は思うぞ~? 」
「 ちが……。ちゃんと二人でクリスマスだってしましたよ!一晩一緒に居て欲しいっていうから、キョーコのバースディを祝いながら… 」
「 キョーコちゃんが作ってくれたクリスマスディナーで、材料費だけお前が払ったやつな。ま、二人が倖せならそれでいいとは思うけどさ、クリスマスプレゼントぐらい用意しておくべきじゃなかったのか~? 」
「 だから俺だってですね!! 」
ちゃんと考えているから冬休みにキョーコと約束をしたんです!…と言おうとして俺は口をつぐんだ。
どうせ社さんには一番に報告することになるのだ。
それを実行する前からアレコレ言われたくはない。
だからもう少し黙っていてもバチは当たらないはずなのだ。
~END~
本編からおまけ及び番外編に移行したとき、実はクリスマスを境に蓮君の呼び方が最上さんからキョーコに変わっているのですが、少なくともそれを指摘して下さったお嬢様が皆無だったので敢えてお届けしてみました。
でもきっと、一人ぐらい気付いて黙っていたお嬢様がいらっしゃったわよね。
⇒恋する生徒会長番外編2・彙類の友◇拍手
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※落ちてしまった設定を含んだラストはこちらです。番外編3⇒「恋する前の生徒会長」
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