公益とはどんな意味か? | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●公益とは

公益とは、公共の利益を短縮したものです。

公共とは、社会一般のという意味です。

もう少しザックリと説明すると、「みんなの」という意味です。

公共の反対語は、私有です。

というわけで、公益とは、「みんなの利益」という意味になります。

 

公益というフレーズを使った言葉としては、公益法人というのがあります。

公益法人は、学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業を営む組織です。

公益法人認定法というものがあります。この法律に基づいて設立されたのが公益法人です。

公益法人ですが、ざっくりとした意味としては、「みんなのための組織」です。

例えば、日本サッカー協会、日本水道協会等が公益法人です。

これらは、サッカーや水道に係る人の集まりです。

相応の利益をあげています。

ただし、営利企業と異なり、サッカーや水道を普及・向上させることで、国民生活を豊かにすることを目的としています。

そういう意味で、「みんなのための組織」になるわけです。

 

●公共の福祉とは

公益と似たような言葉として、公共の福祉という言葉があります。

この言葉は、憲法で複数回、使用されています。

まずは、第22条。条文は以下とおりです。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 

例えば、行政による道路整備や土地区画整備は公益のために行います。

こうした事業の推進により、住民は立ち退きを強いられことがあります。

これは、居住の自由を侵害する行為です。

しかしながら、憲法22条において、公共の福祉に反しない限り、居住の自由を有するという定めがあります。

このため、立ち退き

つまり、私たちの居住の自由よりも、公共の利益が優先されるわけです。

この条文において、公共の福祉は、公益という意味合いで使いわれています。

 

次に、第13条です。以下の通りです。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

この条文は、日本国民の自由と権利は尊重されることを謳ったものです。

ただし、条件があります。

公共の福祉に反しない限りです。

誰かの自由と権利を侵害しない範囲で、保障されているという意味です。

例えば、言論の自由は尊重されます。

ただし、何を言ってもいいというわけではありません。

誰かを誹謗中傷するようなことを言ってはいけません。

それは、誰かの人権を侵害することになるからです。

この条文における公共の福祉は、公益という意味ではないです。

自分以外の人の自由と権利の保護という意味になると思います。

 

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

この条文は、日本国民の自由と権利は、二度と国家権力に奪われてはならないことを謳ったものです。

戦前日本は、政府と軍人によって支配されていました。

このため、国民の財産は、政府と軍人の都合で、没収されていましたし、言論の自由もはく奪されていました。

こうした事態に陥らないよう、国民はしっかりとしなければならないわけです。

同時に、国民は、自由と権利を濫用してはならないことを謳っています。

例えば、自らの自由と権利を主張して、誰かの財産を奪ってはいけませんし、誰かが発言する権利を奪ってはいけません。

そんなことをしたら、戦前日本の国家権力と同じことをすることになります。

そういうことにならないよう、自由と権利を行使するのであれば、秩序維持のために行使するべきです。

この条文における公共の福祉は、秩序維持という意味になると思います。

自分以外の人の自由と権利の保護という意味でも大丈夫だと思います。

 

このように、公共の福祉には、いろいろな意味があります。

総じて、自分以外の人の自由と権利の保護 という意味で良いと思います。

 

●技術士法における公益

公益は、技術士法でも登場します。

第45条の2です。以下のとおりです。

 

第四十五条の二 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たつては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。

 

3義務2責務ですね。

この条文の場合、公益の前段で、公益の具体例が示されています。

「公共の安全と環境の保全」です。

このまま文字通りにとると、公益とは、「公共の安全と環境の保全」という意味になります。

しかしながら、公益を、「公共の安全と環境の保全」という意味に直訳すると、問題が発生します。

それは何か?

この法律は、努力義務に関するものです。

努めればいいだけです。

では、業務を遂行するにあたって、公共の安全と環境の保全を害してもいいのでしょうか?

いいわけありません。

公共の安全と環境の保全は、努力義務ではなく、義務です。

この条文は、公益を害することのないよう努めなければならない となっています。

公益を害さないことが努力義務になっています。

そうなのであれば、公益を、厳格に捉えすぎない方がいいです。

技術士は、依頼主のために業務を遂行することが第一目的です。

依頼主の利益を確保するとともに、公益を確保するべきです。


例えば、業務遂行に当たっては、依頼主のためにコスト縮減を図ったプランを提案する必要があります。制限なく財源を投入して完全なる安全性とCO2排出ゼロを実現できるわけではありませ?。適切な安全性と地球環境保全に配慮したプランを提案するべきです。

この条文は努力義務ですから、そういう意味になるわけです。


そう考えると、公益は、社会一般(みんな)の利益という、抽象的な意味に留めた方がよくなります。口頭試験では、「公益とは、公共の安全や環境の保全など、社会一般の利益」と回答しても良いですが、上述のことを覚えておいて下さい。


 

 

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