【問題12】
水道施設の運転に伴うエネルギー消費が地球環境に及ぼす影響を考慮して、①技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析し、②最重要と考える課題を1つ挙げ,それに対する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策を述べよ。
【解答作成のコンセプト】
1 水道における地球環境に関する課題
地球温暖化は、海水面の上昇、豪雨や渇水の頻発等を招くことになり、甚大な影響を及ぼすことになる。水道事業は施設型産業であり、大量のエネルギーを消費している。このため地球温暖化抑制に関する課題に取り組む必要がある。
(1)省エネルギーの推進
温室効果ガスの排出を抑制するため、省エネルギーに取り組む必要がある。高効率機器の導入、運転管理・維持管理の効率化、排熱利用等を行う必要がある。
(2)再生可能エネルギー導入
施設の運転にはエネルギーが不可欠であることから、クリーンエネルギーの使用が有効である。施設用地を利用した太陽光発電、管路や管渠を使った小水力発電、風力発電等の導入を行う必要がある。
(3)省資源の推進
事業運営に伴う資源の使用は環境負荷の増大につながる。このため、リデュース、リユース、リサイクルを推進し、浄水場や終末処分場における薬品注入量の抑制、汚泥の減量化や有効利用、施設の長寿命化等に取り組む必要がある。
(4)温室効果ガスの吸収等
二酸化炭素等の温室効果ガスを吸収するため、水源涵養林の取得、施設の緑化、グリーン購入等を行う。
2 最重要課題に関する解決策
上記の課題のうち、省エネルギーの推進は、地球温暖化防止として効果が高い。また、老朽化が進む水道施設の更新にあわせて実施することができるため最重要と位置づけた。
課題解決策は、以下のとおりであり、エネルギー消費量(原単位)や再生利用エネルギー利用率等の数値目標を設定した上で、実施することが重要である。
(1)ポンプ・管路
①台数制御システム、インバーター等の導入
②ポンプのインペラーカット(効率改造)、高効率ポンプ、高効率電動機の導入
③高効率の変圧器の導入
④流量の平準化による管路抵抗の軽減
⑤漏水防止対策の推進(管路更新、漏水調査、漏水修理)
⑥配水管の残存水圧の有効利用(受水槽を廃止して直結、加圧ポンプの導入)
⑦エネルギー効率の高い浄水場、配水池の系統への切替
(2)薬品注入・凝集沈澱ろ過・排水処理
⑧攪拌機、掻寄機、脱水機、薬液ポンプ等において上記①〜③等の対策を実施
⑨急速ろ過池、膜ろ過、粒状活性炭層等の洗浄頻度、時間等の見直しによる効率化
⑩薬品注入の最適化(凝集剤、pH調整剤、消毒剤、粉末活性炭等)
(3)照明・空調・衛生設備
⑪LEDの設置
⑫照明対象範囲の細分化、高反射率板の設置
⑭高効率空調機、ヒートポンプの採用
3 解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策
地球温暖化防止対策は、相反する要求事項が含まれている。必要性、経済性を優先して脆弱な施設を整備すれば機能性、安全性が損なれる。こうしたリスクの隠ぺい、偽装により、二次災害が発生する可能性がある。また、設計段階では適切な技術であっても、新たな調査、知見により、地球環境、人体への影響が発覚する場合もある。
こうしたリスクを踏まえ、複数の選択肢を検討し、最適な解決策を提案する。さらに、PDCAサイクルにより改善する。技術者が公共の福祉の確保、法令遵守、継続研鑽を実践できるよう、指導・教育体制を確保する。
多く費用と期間を要することから、広域連携や官民連携を推進し、合理的な対応策を講じることも重要である。
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