H30年度の技術士二次試験で実際に出題された試験問題の解答例を作成しました。
上下水道部門の上水道及び工業用水道に関するもので、今回は【Ⅱ-2-2】。
官民連携に関する問題です。
これからの口頭試験対策、来年に向けての勉強等の参考にしてください。
【問題】
【Ⅱ-2-2】
水道事業者等は、水道法の改正に向けた取組等や各種手引き等の整備により、民間事業者のノウハウを活用する様々な民間的経営手法を採用できるようになった。このような状況を踏まえ、以下の問に答えよ。
(1)民間的経営手法の導入が推奨される背景と具体的な手法について列挙せよ。
(2)(1)で挙げた手法から1つ選んで説明し、それを導入した際に期待される効果を述べよ。
(3)(2)の業務を実際に進める際の留意点について述べよ。
【解答作成に必要な情報】
1 民間的経営手法が注目されている背景
少子高齢化社会、人口減少社会が到来し、水需要の増大、料金収入の確保が期待できない。
その一方で、施設の老朽化、大規模災害の発生、地球温暖化等、支出の負担が増大する要素は増えている。さらに、団塊世代の退職に伴う技術力低下等、水道事業を維持する上で、様々な課題が存在する。
これら課題を解消するためには、経営基盤を強化する必要があり、この対策として、行政と民間の長所を活かして効率的な施設利用や事業活動を行う民間的経営手法が注目されている。
2 具体的な民間的経営手法
民間的経営手法は、以下のようなものがある。
①個別委託
水道施設の保守点検、補修、メーター検針、清掃等の業務を個別で委託する。水道法上の責任は水道事業者等が負う。
②第三者委託
浄水場の運転管理等を包括的に委託する。委託した範囲については、受託者が水道法上の責任を負い、水道事業体者等は責任が免除される。受託に伴い、技術管理者設置、立入検査対応、給水停止等を担う。
③DBO
契約した業者が施設の設計、建設、運転管理、維持管理(保守点検・修繕・補修等)までを包括的に実施する。
④PFI
DBOの内容に加え、資金調達までを業者が行う。※水道事業者等は企業債を発行しないですむ。
⑤コンセッション
地方公共団体が水道資産を所有し、業者が経営を行う。施設の運転管理、維持管理、料金徴収、料金設定まで全て業者が行う。
3 PFI導入による効果
法律の整備が進んでいるPFIについて詳述する。
・一つの業者が、施設全体を長期管理するため、民間ノウハウが有効活用され、自社製品の使用・備蓄によるコスト縮減、事故対策の向上が可能になる。
・性能発注により、競争による民間事業者のインセンティブの向上が期待できる。
・民間事業者が資金調達をするため、水道事業者等にとっては、財政支出の平準化が期待できる。
・浄水場の更新にあわせて、PFIを実施することにより、PFIの発注範囲は、水運用の効率化を実現できることを期待して、浄水場の設計・建設・運転管理・維持管理に加え、取水場、配水池、ポンプ所の運転管理・維持管理を含めるのが有効である。
・施設完成後の施設管理を第三者委託で実施することにより、設計、建設、維持管理までを民間事業者が責任を持って実施することになる。
4 技術的提案の実行時の留意点
・現状での水道施設の状態、維持管理レベル、経営状態を把握し、課題を抽出し、各課題について目標となる対応レベル、対応期間を見極め、自らの組織が取り組むべきかどうか評価を行った上で、PFIの発注範囲を決定する必要がある。
・対応レベルについては、ガイドラインの業務指標を設けるべきである。
・対応期間については、長い方が効果を期待できるが、請負者の倒産リスクを考慮すると長すぎるのは適切ではない。機械・電気・計装設備の耐用年数が30年程度以内になることを踏まえ、対応期間は10~30年程度にすることが有効である。
・参画する民間事業者が存在しない場合がある。
・委託した業務に関する技術は、水道事業者等に蓄積されないため、技術継承に関する取組が必要になる。
・導入検討から契約まで期間を要すため、施設の老朽化が進む前に取り組む必要がある。
【ちょっと解説】
問題文にある「民間的経営手法」ですが、これは官民連携と同じ意味です。
総務省のHPに平成27年に作成された『地方公営企業における民間的経営手法等の先進的取組を事例集』、『水道事業における民間的経営手法の導入に関する調査研究報告書』が公表されています。
これを見ると、民間的経営手法とは、従来型業務委託、PFI、第三者委託、指定管理者、独立行政法人について説明されています。
ただし、問題文にも書いてあるとおり、水道法の改正に向けた取組を考慮した解答にする必要があるため、これらに加えて、コンセッションに関する記述が必要になります。
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