技術士に求められる資質能力(⑦技術者倫理) | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

「技術者倫理」

 

これは、文科省技術士分科会が提唱した「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の一つです。

「技術士に求められる資質能力」にご覧になりたい方は、こちら をクリックしてください。

 

 

それでは、「技術士に求められる資質能力」に記されている技術士倫理の内容を見てみましょう。

以下のとおりです。

 

(1)業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。

(2)業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。

(3)業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。

 

「技術士に求められる資質能力」の技術者倫理の内容は、「技術士倫理要領」を抜粋したものです。

「技術士倫理要領」を見てみましょう。は以下のとおりです。

 

①(公衆の利益の優先) 技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

②(持続可能性の確保) 技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

③(有能性の重視) 技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

④(真実性の確保) 技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

⑤(公正かつ誠実な履行) 技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

⑥(秘密の保持) 技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

⑦(信用の保持) 技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

⑧(相互の協力) 技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

⑨(法規の遵守等) 技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

⑩(継続研鑚) 技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

 

(1)を見てみます。これは「技術士倫理要領」の①公衆の利益の優先、②持続可能性の確保、⑦信用の保持の内容です。

(2)は⑨法規の遵守等の内容です。

(3)は③の有能性の確保の内容です。

 

「技術士に求められる資質能力」として、重要視されているのは、上記、①、②、③、⑦、⑨です。

ところがです。

「技術士に求められる資質能力」には、「技術士倫理要領」に書かれていないフレーズがあります。

それは、何か?

(1)の前半部分で、以下のフレーズです。

 

「社会、文化及び環境に対する影響を予見し」

 

多くの技術は、不確実なリスクが潜在したいます。技術者は、これを予見し、安全対策を施すす責任があるわけです。

 

技術士の使命は、科学技術の向上と国民経済の発展です。技術士法の第1条に定められているとおりです。

人類は、経済の発展という目的を達成するため、多くのことを犠牲にしています。最たるものが、環境破壊や健康被害です。

こうした過ちを繰り返さないため、技術者は、社会や環境に対する影響を予見する能力を磨く必要があるわけです。

「これをやるとどうなるか」と想像する習慣、「ちらっとよぎった嫌な予感」を放置しない習慣が必要です。

 

それから、「技術士に求められる資質能力」の技術者倫理と、技術士倫理要領を見比べてみると、

技術士倫理要領には記載されているのに、「技術士に求められる資質能力」には記載のないものがあります。

 

例えば、⑥秘密の保持⑩継続研鑚です。

これらが「技術士に求められる資質能力」に記載されていないのは、技術士法上の義務・責務だからです。

45条と47条の2に定めがあります。

 

第四十五条  技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。

第四十七条の二  技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。

 

技術士であるからには、当然、技術士法を遵守することになります。

このため、⑥秘密の保持、⑩継続研鑚については、「技術士に求められる資質能力」で再掲するほどのこともないのかもしれません。

その一方で、①公衆の利益の優先、⑦信用の保持については、44条、45条の2に定めがあるのに、わざわざ「技術士に求められる資質能力」で再掲されています。

 

第四十四条  技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

第四十五条の二  技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たつては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。

 

わざわざ再掲するわけです。

①公衆の利益の優先、⑦信用の保持というのは、技術士にとって極めて重要であること意味します。

 

技術士試験では、口頭試験において、技術士倫理について質問がありました。

しかし、平成31年度の技術士試験からは、筆記試験の中で、こうしたことを問うような設問が作られています。

つまり、筆記試験合格者だけではなく、全てのエンジニアが、公共の安全、環境の保全、信用の保持を熟慮することが求められているわけです。

このため、受験生は、「技術士に求められる資質能力」「技術士倫理要領」「技術士法」を読み込んで、自分なりの考えをもつことが重要になると思います。

これらのことを確認しておいてください。

 

 

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