【質問】
小学5年生の緘黙症状のある子の保護者からの質問です。
4月に考えていただいた練習メニューで、1学期のうちに何度か先生と練習しました。
放課後、教室で教科書の音読を担任の先生に聞いてもらう練習にとりくみました。
これまで学校では一言も話せなかったが、はじめて先生に声を出せたときは感激しました。
ただ2学期になってなかなか練習の機会が作ってもらえません。
行事などもあってお忙しいとは思うのですが、せっかく成果が出ているのに残念です。
私も連絡帳などで何度かお願いしたりはしましたが、これ以上は心苦しくてお願いできません。
今は何もできていなくて焦る気持ちでいっぱいです。
お店で声を出す練習などをさせた方がいいのかもしれないですが、本人が嫌がります。
どうしたらよいでしょうか…。

【回答】
まずは「なぜ練習の機会が作れないのか」を明らかにしましょう。
聞きづらかったら担任以外に聞いてみても構いません。
「先生が練習に協力してくれない」は、実はとてもよく聞く「場面緘黙あるある」です。
緘黙症状の改善は学校でないと行うことができません。
ですが肝心の先生に協力してもらえないと、先に進めなくなってしまいます。
こういう場合の解決方法は、大きく分けて2つあります。
「先生に協力してもらう方法を考える」か「練習の計画を変えるか」です。
「お店で声を出す練習」は後者にあたりますね。
安易に計画を変更しても、上手くいかないことが多い
とは言え、安易に練習方法を変更するのはお勧めできません。
この練習方法は年度の初めに本人と一緒に時間をかけて考えたものです。
もし方法を変えるなら、改めて本人と相談しながらしっかりと計画を立て直す必要があります。
思い付きで「お店で声を出す練習」などをさせようと思っても、上手くいかないと思います。
また、そもそも「担任の先生と話せるようになる」は緘黙症状の改善には不可欠な要素です。
機会が作れないからといって他の場面で練習をしても、学校で話せるようにはなりません。
ですので、計画変更の前にまずは担任に協力してもらう余地がないか考えるのがお勧めです。
練習の機会を作れない理由はなぜか?を明らかにする
そもそも、なぜ先生は練習の機会が作れなくなってしまったのでしょうか。
担任の先生が練習の機会を作れない理由には、色々なものが考えられます。
・担任が忙しくて時間がとれない
・担任がうっかりして忘れてしまっている
・担任が練習のステップアップの方法が分からない
・担任がもう練習は必要がない(このくらいで十分だ)と思っている
・「個別の対応」に関して何らかのストップが校長や学年主任などからかかっている など
これらの理由は、どれも十分あり得ます。
同じような質問や相談を受けることはとても多いですが、上記のどれのパターンもありました。
そして、機会が作れない理由によって対応の仕方は大きく変わってきます。
例えば「練習の方法が分からない」だったら、練習の方法を明確にすれば解決します。
その場合は具体的な練習のステップアップの方法を考えて、担任に教えてあげればいいのです。
「担任が必要ないと思っている」場合は、練習の必要性を認識してもらわなければなりません。
まだまだ緘黙症状は治っていないので、本人が困っているということを伝えましょう。
もちろん状況によっては、どうしても担任が練習の時間を作れないこともあります。
その場合は担任以外にターゲットを変える必要があるでしょう。
このように練習の機会が作れない理由によって対応が異なります。
ですのでまずはそれを明らかにしましょう。
担任に聞きづらければ、他の窓口に相談してみる
では、練習の機会が作れない理由を聞くにはどうしたらよいでしょうか。
これまで「連絡帳などで何度かお願い」してきたとあります。
これは先生と話したわけではない、ということでしょうか?
連絡帳だと一方向になってしまうこともあるので、まずは直接聞いてみることがお勧めです。
電話でもいいですし個別懇談などでも構いませんので、聞けそうなら聞いてみてください。
とは言え、これまで何度かお願いしてきたのを、改めて聞くのは聞きづらいかもしれません。
こういう場合には、担任以外の窓口を通じて聞いてみるのがお勧めです。
・スクールカウンセラーに相談する
・特別支援教育コーディネーターに相談する
・養護教諭に相談する
・その他の校内の先生に相談する
・教育委員会の窓口(教育相談所等)に相談する など
学校で困ったことがあったときの相談先は、担任の先生だけではありません。
必ず複数の相談先が用意されていますので、どこに相談しても全然問題ありません。
相談しやすそうなところに相談してみましょう。
担任以外に相談する際に気を付けること
担任以外に相談する際に気を付けてほしいことが2つあります。
気を付けること①「クレーム」にならないようにする
相談の目的は批判やクレームではありません。
もし担任の先生との関係が悪くなってしまうと、練習自体が難しくなってしまいます。
あくまで「困っているので相談したい」という姿勢で話すようにしてください。
気を付けること②話を聞いてもらって終わり、にならないようにする
スクールカウンセラー等に相談した際「話を聞いてもらっただけ」になることがよくあります。
これでは全く意味がありませんので、具体的な解決策につなげることを意識しましょう。
今回の場合は、「練習の機会を作れない理由はなぜか?」を明らかにすることが目的です。
何らかの方法で担任に確認してもらい、その結果がどうだったのかを教えてもらいましょう。
もちろん、直接担任に練習への協力を促してもらえそうなら、それでも結構です。
こういった方法で、まずは担任との練習が継続できないか検討してみてください。