場面かんもく相談室「いちりづか」ブログ 「話せるようになる」ための500の方法

場面かんもく相談室「いちりづか」ブログ 「話せるようになる」ための500の方法

場面緘黙専門の相談室「いちりづか」です!
場面緘黙の症状は適切な対応によって治すことができます。
必要なのは「一人ひとりに合った効果のある方法」を考えること。
何歳からでも大丈夫!園や学校、職場で「話せるようになる」ための方法を一緒に考えてみませんか?

大人が「なぜ勉強するのか」説明出来なければ、

子どもに勉強をさせることはできないと思う。

 

ここまで「いい休み方」について説明してきました。

学校を休んでも、家で目標をもって好きなことをするのが大事。

でもできれば勉強もしてほしいですね。

 

 家で勉強ができないのは「目的が曖昧だから」 

家で勉強は、とてもお勧めの過ごし方です。

 

でも子どもに「勉強でもしたら?」と言っても「やだ」と言われてしまいます。

「学校を休むなら、せめて勉強だけでも」という考え方ではあまり上手くいきません。

  

上手くいかない理由は「目的が曖昧だから」

 

子どもに「何のために勉強するのか分からない」と言われることがあります。

「何のために勉強するのか」は、とても答えるのが難しい問題です。

大人でも答えるのが難しいというのが、「目的」が曖昧な証拠です。

 

目的の分からないことは、誰だってやりたくありません。

「勉強でもしたら?」はまさにその典型

 

 「目標」や「目的」が大事 

ここでもお勧めなのは、「目標」や「目的」を考えることです。

 

勉強するためにまず、「目標」や「目的」を明確に設定してみましょう。

・目標を明確にする:英検合格、○○の資格をとる、○年生の漢字を全部覚える、など

・目的を明確にする:高校受験のため、海外留学のため、将来の夢を達成するため、など

 

「何となく」学校の勉強をするのではなく、目標や目的をもって勉強するのが有効です。

 

目標や目的が明確になれば、何の勉強をどのようにしたらよいかも自然と導き出されます

「1日1ページドリルをする」みたいな目的の分からない勉強とは異なるものになるはずです。

 

 学校以外の教育の場に行く場合 

学校以外の教育の場(教育支援センター、適応指導教室やフリースクールなど)もあります。

 

※教育支援センターとフリースクールは目的も位置づけも全く異なるので本来は一緒にすべきではないかもしれません。ただ「学校を休む代わりに行く、教育の場」という点では共通しているのでここではまとめて扱います。

 

「教育支援センターも行きたくないけど、学校よりはマシだから行く」という子もいます。

それが「いい休み方」になっているかはよく考える必要があると思います。

③の記事で書いたように、プラスマイナスどちらが大きいか、考えてみましょう。

 

もちろん教育支援センターやフリースクールに通うことがプラスになることもあります。

それを左右するのは、やはり「目標」や「目的」です。

 

なぜ教育支援センターやフリースクールに行くのか。

行った先には何があるのか。

学校復帰を目指すのか、学習面のフォローか、日中の居場所か。

 

「学校に行けない代わりに行く」以外の答えが明確に用意できるように考えてみましょう。

「学校に行けないから休む」のではなく、

攻めの姿勢で休む!

 

今回はいよいよ、どうすれば「いい休み方」になるかについて考えていきます。

 

と言っても、「これこそがいい休み方だ」というものがある訳ではありません。

「いい休み方」にするための基本的な考え方について、考察していきましょう。

 

 まずは心と体の元気を蓄える 

前回の記事で書きましたが、まずは「心と体の元気を蓄える」ことが必須です。

 

とにかく「しっかり休む」こと。

マイナスの状態から、とりあえず「0」付近まで持っていきましょう。

 

ここから先はそれができた後の話です。

ひとまずしっかり休んで、心と体の元気を蓄えたあとは、どうしたらよいでしょう。

 

 「目標」や「目的」を考える 

「いい休み方」になるかどうかは「目標」や「目的」があるかが重要です。

 

目標と目的はよく似たことばですが、まぁあまり難しく考えなくても結構です。

「何のためにやるのか」や「ゴール」を明確にしましょうね、ということです。

目標や目的が明確なら、だいたい何をやったってプラスになります。

 

なお、この目的には「予防的に休む」も含まれます。

「毎日行くと大変だから、疲れ切る前に予防的に休む」

これも立派な休む目的です。

 

 「ちゃんとやる」こと 

次に「ちゃんとやる」ことが大切です。

休むために、息抜きをしたり、ダラダラやるのもダメではないです。

でも「いい休み方」にするなら、ちゃんとやること。

 

そのためには、行き当たりばったりや自己流ではなく、基礎基本からしっかり学ぶことが大切

そして継続すること。

これができれば「いい休み方」になります。

 

 お勧めは「好きなことをする」 

「いい休み方」で私が一番お勧めなのは、「好きなことをする」です。

まずは何でもいいので、好きなことをしましょう。

 

ただし次の2つを意識して下さい。

 

「目標や目的を明確にする」

「ちゃんとやる」

 

ダラダラやるのだとただの時間つぶしになってしまいます。

目標や目的を持てちゃんとやれば、世界が変わります。

 

 「いい休み方をするぞ!」と決めて、攻めの姿勢で休む 

ここまでのことがしっかり理解できていれば、「いい休み方」ができると思います。

 

それはもう「学校に行けないから、欠席する」のではありません。

目的をもって、堂々と「いい休み方」を選択するということです。

 

これができれば、学校に行きづらい状態でも緘黙症状を改善させることは可能です。

「いい休み方」を構成する2つの要素:

「元気になる」+「できることを増やす」

 

学校に行きづらくなってしまった場面緘黙の子にとって大切な「いい休み方」。

今回は「いい休み方」を分解して、2つの側面から考えていきましょう。

 

 プラス・マイナスで考える 

相談を受けるときによく「○○はした方がいいですか?」というタイプの質問を受けます。

 

学校を休ませてもいいのか。

運動会は見学させていいのか。

学校まで親が付き添って行っていいのか。

判断が求められる場面は多いですね。

 

そういう時に私がいつも考えるのは「総合的に考えてプラスが大きいのはどちらか」

 

例えば不登校の子でよくやる「夕方学校にプリントをもらいに行く」

これは「いい休み方(過ごし方)」でしょうか?


夕方学校に行って担任と会うだけでも「今日は学校に行けた」という達成感になる子もいます。

「夕方学校に行かないといけない」と思うだけで一日中暗い気持ちで過ごす子もいます。

 

判断の基準は「総合的に考えてプラスが大きいか」

プラスが大きければやればいいし、マイナスが大きければやらなければいい。

 

 「いい休み方」の2つの要素 

「いい休み方」についても「総合的に考えてプラスを大きくする休み方」と考えてみましょう。

 

「マイナスを減らす」「プラスを増やす」の2つの要素に分けて考えることができます。

 

 

「マイナスを減らす」のは、心と体の元気を蓄える休み方です。 

本来の意味での「休む」ですね。

これにはとにかく「しっかり休む」こと。

 

このテーマの①の記事にも書いたように、「心と体の元気が消耗する休み方」もあります。

「学校を休んでいるのに、心身は休まらない」にならないように気をつけましょう。

 

「プラスを増やす」のは、できることを増やしていく休み方

せっかく学校を休んでいる訳ですから、それを有効に活かしましょう。

 

これはもう色々なやり方が考えられます。

語学や資格の勉強でも、趣味でも何かの練習でも構いません。

もちろんここには「緘黙症状の改善」「学校に行くための取り組み」も入ります。

 

 しっかり休んでから、レベルアップ 

マイナスを減らすのとプラスを増やすのと、先に行うのはどちらでしょう。

 

「プラスを増やす」ができるためには、心と体の元気が必要です。

ですので最優先で行うのは「マイナスを減らす」こと

  

これら2つの関係は、ドラゴンクエストで言うとこうなります。

1)心と体の元気を蓄える:「ホイミ(回復呪文)」や「宿屋で休む」

2)できることを増やす:「レベル上げ」や「アイテム収集」

 

レベルアップを目指す前に、しっかり休んで体力を回復しましょう。

 

 総合的に見てプラスなら、学校を休んでもいいのでは? 

「学校を休む」(2つ目の意味)のは普通、「マイナス」のことだと思われがちです。

 

ですが、しっかり休んで心と体の元気を蓄えるのは本当に大事なこと

心も体も疲れ切っているのに無理して学校に行ってもマイナスなだけ。

休んだ方がプラスになることもあります。

 

さらに休み方によっては、学校ではできないことをしてレベルアップすることもできます。

毎日頑張って学校に行くより、「総合的に見るとプラス」にできることだってあります。

 

「無理して学校に行かないで、休んだ方がかえってよかった」

そんな風に言えるのが「いい休み方」です。

 

「学校を休んでディズニー」だって、総合的に見てプラスが大きければいいんだと思いますよ。

最初の練習で担任の先生に声が出せれば、

場面緘黙が治る日も遠くないと思う

 

4月になって今年度の「話す練習」の計画を相談した子から、最初の練習の報告がありました。

放課後に担任の先生に練習の時間を作ってもらって、教科書の音読ができたそうです。

こういう報告があるのは嬉しいですね。

 

この子の話す練習の目標は「1学期のうちに担任の先生と1:1で話せるようになること」

この調子なら1学期の途中で目標達成できそうです。

連休前にここまでできたのは素晴らしいですね。

 

まだまだ先は長いですが、この子の場面緘黙が治る日は遠くないなと思いました

小6の1年間かけて話す練習を進め、

中学進学時に「話せる」状態を目指す!

 

 新しい環境で「話せる子」になる 

 

小学校高学年の子の相談で多いのは、「中学校で話せる」ことを目指すケースです。

というより、小学校高学年の子の相談なら必然的に「中学で話す」が視野に入ります。

 

小学校で「話せない子」になってしまうと、話したくても話せない状態が続きやすいです。

こういう場合に有効なのは環境を変えること

 

中学受験等で周りが「知らない人」だけになれば、話せる可能性が高まります。

この方法で場面緘黙を治せるケースはかなり多いです。

 

 成功させる可能性を高めるための準備 

この方法で心配なのは、「もし上手くいかなかったら」


もちろん「環境を変えること」だけで治るほど、甘くはありません。

(それだけで治ることもありますが)

 

「本人が中学で話すと言っているから」と、何も準備をしないのは絶対にお勧めしません

中学進学は1回だけのチャンスです。

ここで失敗したら「中学3年間も場面緘黙」になってしまうかもしれません。

 

このチャンスを成功させるように、できるだけ準備を重ねていきましょう。

 

私がお勧めする準備は3つ。


1.本人が「ここなら話せそう」という学校をしっかり選ぶこと

2.受験勉強

3.「初対面の人と話せる」ようになっておくこと
 

 どんな学校を選んだらいいの? 

緘黙症状の改善に向いている学校はどんな学校でしょうか。

 

中高一貫?カトリック系?小規模校?進学校?通信制?

これはよく聞かれる質問です。

 

正解は「本人次第」です。

その学校を見学したり、相談に行ってみたりしてください。

そして本人が「ここなら話せるかも」と思える学校を選ぶことが最も大事です。

 

「相談にいったら感触がよかった」

「教頭先生が丁寧に対応してくれた」

「場面緘黙の子のことをよく分かっている感じだった」

といった、感覚的な要素が大事だと私は思っています。

そのためにも何校か見学に行くことをお勧めします。

 

そして「受験勉強」。

当たり前ですがこれはとても大事です。

希望する中学校に行けなかったら元も子もありません。

 

 学区外の中学校にも行ける 

田舎で中学受験の選択肢がない、などのケースもあります。

こういうときは「学区外の公立中学校」という方法もあります。

 

「学区外の公立中学校に行けるの?」と思う方もいるかもしれませんね。


「学区」というのは市町村の教育委員会が便宜的に定めているものです。

ただし絶対的なものではなく、ほとんどの場合いくつかの事情による「例外」を認めています

詳しくは地域によってルールが異なりますが、正攻法で交渉できることは多いです。

(正攻法で上手く行かない場合の裏ワザもありますが、ここには書きません)

 

例えば東京都新宿区の場合、病気やいじめ、家庭の事情など9種類の事由が設けられています。

指定校変更について(新宿区内からの学区外就学)

緘黙症状の改善も事由として十分成り立ちますので、手順を踏めば認められます。

おそらく全国どこの市町村でも同じだと思います。
 

コストもあまりかからないので、ケースによってはかなりお勧めの方法です。

 

 同じ小学校から進学する子がいないか心配 

せっかく中学受験しても、「同じ小学校から行く子がいたら」というのは心配ですね。

これは何人行くかなどの条件で変わってきますが、基本的には大丈夫です。

 

10人程度までだったら、中学校にお願いして「違うクラス」にしてもらえばいいのです。

もし中学校が6クラスあれば、同じ小学校の10人と違うクラスにするのは簡単なことです。

(もう少し多かったらまた事情が違ってきますが、それは割とレアなケースでしょう)

 

「私立中学校にそんなことお願いできるの?」と思いますか?

ここは伝家の宝刀、「合理的配慮」があるので全く問題ありません。

(合理的配慮についてはこちらをご覧下さい:外部のページです)

 

 「初対面の人と話せるようになっておく」 

緘黙症状の改善という視点からは、ここが最も大事です。

せっかく環境を変えてスタートしても、そこで話せるようにならなければ意味がありません。

 

4月に中学校生活が始まって最初の「自己紹介」で声がだせること

ここに目標を定め、しっかり練習していきましょう。

 

できれば小学6年生の1年間をかけて、しっかり計画を立てて練習していくのがお勧めです。

 

前に同じような趣旨でこんな記事を書きました。

中学進学を「ギャンブルにしない」

これは本当に大事です。

 

他にもまだまだできることはあります。

たしかに小6が「最も場面緘黙を治しやすい年齢」かもしれない。

そんな風に思いませんか?