ans005_017 もうカニは食わない | ぼくは占い師じゃない

ぼくは占い師じゃない

易経という中国の古典、ウラナイの書を
使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう!
というただそれだけのブログ……
だったんですが、
最近はまた淡々と経文に向かっております。

ミケ様

急に秋になりました。
お元気でお過ごしのことと思います。
にゃんこ先生です。

   ☆

季節(あるいは歴史)は繰り返す……

っていうけど、それって本当でしょうか?

バリアントの流れの一種である十二消長卦を見ると、確かに季節は繰り返しているように見えます。

ある年の「臨(1月)」は、来年になっても「臨」です。

だけどね。

それはあくまで、大成卦という記号上の話です。
記号と生(き)の現実をごっちゃにしちゃあ、いけません。冬は冬でも、その年の冬は、一回こっきりじゃないでしょうか?

   ☆

ある年の冬のことです。

施設にいるオヤジにカニ缶を持って行ったら、オヤジは存外に喜んで、来年はボイルしたカニの脚をホールで食べたいなあ、というので、よ〜し、わかった!と約束しました。

次の年の冬。

デパ地下でボイルしたカニの脚を買って準備万端です(高いんだなこれが)。
と、元旦に施設から電話が入りました。オヤジが暮れから飯を食わなくなった、ということでした。

イモートとオフクロを連れて施設に急ぎます。

オフクロが、買うといたカニどないすんねん?とかいうので、

「どうせなんも食えねーんだから、そんなもんおいてけや!」

と言ってしまいました。

これがまずかった。

オヤジのヤツ、施設から病院に搬送される時に、にゃんこ先生の顔みて、

「カ、カニは……?」

なんて言いクサんねん。

ほかのことはぜ〜んぶ、忘れてるくせにさ。

急いで来たから持ってきてないって言ったら、ため息をつくように一言。

「おまえは役にたたんなァ」

こちとら施設だの病院だの全部手配して、毎週毎週、日曜日をつぶして施設がよいしてんのに!

カニごときで、役立たず呼ばわりされるとは、どーゆーこっちゃ!

ぶっちゃけハラもたったけど、結局オヤジはそのまま2週間ほどで他界しました。

カニの脚をホールで口にすることもなく。

さらに次の年の冬。

カニを持って行こうにも、オヤジはもういません。

残ったのはカニにまつわる後悔だけでした。

飯食えなくなったと言っても、一口くらいなら、大好きなカニを口にできたかもしれなかったのです。

   ☆

さて。

この3つの冬(1月)は、同じ冬でしょうか。
でも十二消長卦で観るなら同じ「臨」です。

システムの利用者は記号としては同じ「臨」から、3つの状況を読みとらなければならなりません。

ムチャでしょうか。

いいえ。

それがそうでもありません。

   ☆

「ひとつのもの」は全体であり、個の経験はこの全体にチャージされます。

これが「記憶」で特定の個別的存在の経験がチャージされると「ひとつのもの」はチャージ前の「ひとつのもの」とは「別の」『ひとつのもの』になります。
このプロセスが持続していきます。
この持続を「記憶」と言っています。
一般に脳の中に格納されていると思われているデータのことをいっているわけではありません。
「ひとつのもの」に貢がれる「資産」のことです。

事象・イベント・経験は「すべて」一期一会です。

あらゆることは一回こっきりで、不可逆に進行していきます。物質界の掟(ルール)ですね。

ですがこの掟、因果関係というのは、不変の真理などではなく、実は幻想(マーヤー)、概念の一種だと……にゃんこ先生はとらえています。

そういう意味では因果関係に立脚する占術を含む「予測」というのは実は原理的には成り立ちません。

人間という個別的存在(複合体・システム)は、どうも、同時に「すべて」がそこにある「ひとつのもの」の「記憶」全部にアクセスできる機能があるようなんです。そしてその千差万別の不可逆的プロセスの中に、共通のパターンを見いだすことができます。

見いだされた共通パターンをあらわす記号の一種が、占術一般のシンボル・セットなのではないでしょうか。
この記号の集まりが「ひとつのもの」をとらえる目の粗い「網」です(「ans005_001宇宙をぼくの手の上に」参照)。
「網」というのは方便なんですが、人間の認識はこの「網」のように働きます。
これらのシンボル・セットは予測というよりも、方便的にではあるけれども「ひとつのもの」をとらえるためにあるのではないかと。

「網」の働きによって見いだされる共通のパターンは、時にシンクロニシティ、あるいはゲシュタルトと呼ばれます。

極端にいえば「季節」というのも「星座」と同じで、そうして見いだされたパターンに対応した多義的な意味を持つ記号、つまりシンボルなんじゃないでしょうか。「星座」や「季節」の考案者(?)には、そういう意識はなかったかもしれませんが。

易を含む、占術に使われるシンボルを創ったものたちはその逆で、パターン(統計ではありません。直観で得られるパターン)を記録し、意図的に(ワザと)それらと対応をとって、シンボルを、システムをデザインしていったんだと思います。

銀河ツールは占術ではないけれど、特にそれらのパターンを意識して創られたものだと思います。
だから銀河ツールを使うとシンクロが起きるというのはある意味当たり前ともいえます。
パターンをとらえやすくする仕組みが、これでもか!とちりばめられているからです。

   ☆

さて。

あれ以来にゃんこ先生はカニは一生食わないと誓いました。もっともアレルギーで甲殻類はNGなんですがね。

食いたくもねえや。
カニなんて。

ケッ。
((c)椎名誠)


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