第3章 地理-32.韓国での山火事
韓国では最近、山火事の報道が連日ニュースを騒がせて居ます。
ニュース特集で 30分以上もの時間を割き連日報道しており、その危険性の程が伺い知れます。
3月から乾燥した天気が続き、春の山火事が全国にわたって同時多発的に急増し、被害面積も増加して居るとの事。
4月1日までに山火事発生件数と被害面積はコロナ19が真っ盛りだった去る2021年の年間山火事件数と面積をすでに越えたとの報道が有りました。
現在韓国政府は、警戒レベルを非常に危険な段階で有る3段階に引き上げました。
未だ鎮火出来ず格闘して居る山火事が十数カ所だと言います。
4月3日、韓国の森林庁がリアルタイムで発表する山火事発生の現状を見ると、去る1週間の間、全国的に山火事件件数は計44件、山火事被害面積は合計54.85キロ平方メートルにも達しました。
今回は今や日本も含め世界的にも大きな社会問題化して居る、この山火事の問題について見たいと思います。
KBSニュースを見ると、韓国で今年の山火事は2月に110件、3月に222件で山火事が例年に比べて異例的に急増しました。
今年4月2日まで山火事の原因を見ると、入山者の失火40件、ごみ焼却52件、タバコの失火22件、住宅火災21件、不明・農産物焼却などが245件となって居ます。
韓国ではコロナ時の2021年、春の山火事が集中する時期(4月1日~20日)でも山火事発生件数は計55件、11.85㏊にとどまりました。
しかし昨年2022年、年間の山火事は計756件、被害面積は2万4797.16㏊と、過去10年(2013~2022)の年間平均発生件数536件、被害面積は3559.6㏊と言うデータに比べても突出した数値になりました。
山火事の発生には季節的な特徴があります。
山火事の約7割が冬から春(1月~5月)にかけて集中して発生します。
これは、
❶冬に森林内に落ち葉が積もって燃えやすい状態になっている事や、
❷春には風が強い事、
❸特に風が山を超えると乾燥した状態になるといった自然条件が重なる事、
❹また春先は、行楽や山菜採りのために山に入る人が増加するほか、
❺農作業に由来する枯草焼きなどが山林に飛び火することも原因となっています。
❻他にも異常気象などで高温の日が増えている事が原因に挙げられる模様です。
地球温暖化に伴う最近の気候変動がここでも大きな影を投げ掛けて居ます。
昨今韓国では、近年稀に見る深刻な干ばつが起こって居ます。
現在ラニーニャにより南部地方に乾燥注意報が発令されて居ますが、昨年の南部地方の干ばつ日数は281.3日と1973年の気象観測以来最長を記録、降水量が平年の66%水準に留まっています。
現在、この地域のダムの水位が23.7%台まで下がり、非常に危険な水域に陥って居ます。
この様な干ばつも山火事の起こりやすい条件になって居ると思われます。
上に見られる様に、韓国での山火事の原因は、不注意による火災が3万279件で、全体の火災の半分以上(55.6%)を占めて居ますが、不注意の中ではタバコの吸殻が1万458件で最も多く、ゴミ焼却が4350件で後に続きました。
コレはまさに人災とも言えるでしょう。
この様に、山火事の原因として入山者の失火が最も大きいとの事で、山に行く時は失火に充分気をつける必要が有ると言えます。
湿度が高い日本では他人事の様に思われましたが、調べると日本でも年間で1,000件以上の森林火災が発生しているとの事。
最近5年間(平成28年~令和2年)の平均で1年間に約1.3千件発生し、焼損面積は約6百ヘクタール、損害額は約3.5億円と有り、平均すると1日に約4件、約2ヘクタールの森林が燃える火災が発生し、1,600万円の損害が生じている計算になります。
日本で発生する林野火災のうち原因が明らかな物について見ると
❶たき火が31.4%で最も多く、
❷次いで火入れ
❸放火(疑い含む)
❹タバコとなっています。
この様に日本での林野火災も、その多くが人間の不注意などによるものとなっており、欧米の様に落雷など自然現象によるものは稀です。
日本で都会に暮らす分にはさほどピンと来ませんが、日本でも山火事の被害はこの様に大きいと言えます。
昨今の山火事は韓国や日本特有の現象では無く、現在世界的な流れだと言います。
昨年ヨーロッパやアフリカ、アメリカなどで強力な爆炎や干ばつが続いた後、真夏でも大型山火事が発生する事例が大幅に増加して居ます。
特に昨年、アメリカのカルフォルニア火災がニュースを騒がせましたが、イギリスのヨークシャー地方での大型火災、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州での大型火災など世界各地でも枚挙にいとまが有りません。
特に最近の特徴としては、気候変動によって春以外の他の季節にも山火事の危険が大きくなって居る事が挙げられます。
昨今の大型の山火事で、韓国では被害が大きく増加して居ます。
❶まず生態学的側面では植物・野生動物の生息地が破壊され、土壌の栄養物質などの被害が生じて居ます。
酸性雨と大気汚染が増加し二酸化炭素排出量の増加による気候変動も招きます。
韓国では大気汚染による健康被害が社会問題化して居ますが、それら被害を加速化させると言えるでしょう。
❷第二に、経済的側面で山火事で国立公園が破壊されるなど国家的な損失が広がり、産業が乱れ、輸送妨害によって経済的損失が発生して居ます。
やっとの事植林した森林が失われ、木材や家畜、農産物などの所得損失も膨大で、多くの住民たちの家屋が焼失し彼らの生活が脅かされて居ます。
❸第三に、社会的側面では貴重な観光資源が減少し、住民の健康・安全にも多くの影響を与えて居ます。
特に面積が少なく、人口密度の高い韓国では山火事が直接住民の被害に繋がり、生活の危機に繋がりますので、被害が甚大です。
韓国の山火事の消火の80%以上は山林庁のヘリコプターが担当します。
山林庁には全国11の森林航空管理所に森林火災用ヘリコプター45機が有り、この内3000L以上の水を入れる事が出来るヘリコプターは33台です。
ヘリは昼間にしか出動出来ず、夜間は燃えるに任せるしか無く、山林火災消火に隘路を抱えて居ます。
現在、韓国の森林庁では村単位で「焼却山火のない緑のまちづくりキャンペーン」を行い、焼却禁止放送など予防活動を積極的に推進して居ますが、最大の原因で有る入山者のタバコや失火など「人災」を少しでも減らしてもらいたいと切に思います。
<参考文献>
[날씨학개론] 1년 산불의 60%가까이 발생하는 봄철 산불, 원인은?
林野庁 日本では山火事はどの位発生しているの?
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