第7章 韓国ドラマ映画
66. 王の預言書 흥부 2018
韓国映画は多く制作されますが、全部日本で公開される訳では無く、DVDでリリースされる事も多いのですが探すのに隘路が付き纏います。
特に題名がガラッと変わってしまうケースが有りお手上げです(笑)。
昔ばなしとして日本でも有名な、朝鮮を代表する童話とも言える小説「フンブ興夫伝」をアレンジして映画化した事を知って居たのですが、
「こんなお伽噺を題材にした映画なんて日本に来る訳無いか?」と
ハナから投げて居たのですが、たまたまドラマ雑誌を見るとフンブ伝をモチーフにしたと解説が有りました。
そして検索すると、何とAmazonプライム・ビデオで無料視聴出来ます(!)。
時間を見て随時チェックする必要が有りますね。
ブログ執筆やFacebookの管理で忙しくて、作品を探すヒマも無いのですが、たまには探す必要有りと思い知らされました。
時間が無いとは言えブログ執筆の為、映画と史劇ドラマ検索に血まなこになって居ますから(笑)、見つけようとする執念だけは旺盛です。
そう考えるとプラマイ(➕–)ゼロと言えるかも知れませんね(笑)。
と言う事で早速観ましたのでレビュー開始です(笑)。
まずはあらすじを。
韓国文学の原点を成す一冊と称される古典的名作「フンブ伝」をもとに、動乱の時代を駆け抜けた人々の闘いを壮大なスケールで映画化した歴史群像劇。
王朝の実権をめぐる派閥争いで国政が乱れ、重税にあえぐ民衆が国への不満を募らせていた時代。
官能小説家のフンブは、幼い頃に生き別れた兄の消息を知っているという男ヒョクに会いに行く。
ヒョクは高貴な家の出身でありながら貧しい民のために尽力する立派な人物だが、彼の兄である王朝高官ハンニは権力を振りかざす野心家だった。
兄弟でありながら対照的な2人に着想を得たフンブは、彼らを主人公にして、悪政の世を風刺する小説「フンブ伝」を書き上げる。
この小説で瞬く間に民衆の心をつかんだフンブは、国の未来を左右する陰謀の渦に巻き込まれていく。
主演は「ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」のチョンウ。
共演に本作が遺作となったキム・ジュヒョク、「王の男」のチョン・ジニョン、「哭声 コクソン」のチョン・ウヒ。監督は「アトリエの春、昼下がりの裸婦」のチョ・グニョン。
(引用 映画.com)
見るとこの映画は日本でもロードショー上映されて居ました。
あらすじにも有りましたが、キム・ジュヒョクが本作撮影後、交通事故で亡くなってしまい、遺作となりました。
「ホジュン」のリメイク版など多くの作品に
登場して居たので夫婦して驚きました。
ご冥福をお祈りしたいと思います。
映画は予想と違い少々暗めの調子で始まりました。
何となく「フンブ伝」と言うとブラックコメディ–を想像してしまうので意外では有りました。
でも考えるとフンブ伝が兄弟間の身分の格差問題を描いているので基本シリアスな問題に行き着くのでしょうが、それにしても想像より暗いです。
韓国の副題を見ると「글로 세상을 바꾼 자」と有りました。
「文章で世の中を変えた者」と言った意味です。
ここで念の為、フンブ伝のあらすじを。
ちなみに『フンブとノルブ』や『燕の恩返し』と名付けられる事も多いお話です。
忠清・全羅・慶尚三道の間に悪しき兄ノルブと、丸く心優しい弟フンブが住んでいました。
ノルブは、親の遺産を独り占めしてフンブを追い出しました。
妻と沢山の子と一緒に家を追い出されたフンブは、仕方なく丘に穴蔵を掘って食べる物も無く暮らしました。
ある日はノルブの家に米を恵んでもらいに行きますが、鞭だけ打たれて戻って来ました。
いくつか物売りを尽くしてみても、食べて生きる道が有りません。
人の代わりに鞭を打たれる「鞭の代わり打たれ売り」もしましたが、上手く行きません。
ある年の春、燕(ツバメ)が巣を作りましたが、子燕一羽が地面に落ちて足を骨折しました。
フンブが哀れんで足を繋いでやると飛び立てました。
そして、その翌年の春に戻って来るとき、瓢(ひさご=ひょうたんパク朴)の種を咥えて来ました。
フンブはその種を植え、秋に大きな瓢(ひさご)を多く収穫しましたが、その中から金銀財宝が沢山出て大金持ちになりました。
ノルブがこのニュースを聞いて多くの燕の子の足をわざと折って飛ばしました。
翌年の春に多くの燕が瓢の種をもたらしたのでノルブは多く種を植え、多くの瓢を収穫しましたが、その中にはいろいろな種類のひどいもの、中には糞尿の類いまで出て家の中に入り込み滅んでしまいました。
結末は2つ有り、洪水で家と共に流れ行方不明になってしまったと言う結末と、グリム童話の様に恐ろしい結末は教育に悪いと言わんばかりに
フンブが家を失ったニュースを聞いてノルブに富を与え住まわせ、その後ノルブも償い善良な人に改心して兄弟が和解した類いの結末が用意されて居ます。
ここまで書いて私は、まぁ人間そんなに簡単に変われる物では有りませんから、ノルブがもし助けられたとしてもフンブを逆恨みして復讐を図り、財産を横取りして殺害する『その後のサスペンス』を想像してしまいます(笑)。
逆にそんなお話を作れば毎度の「韓ドラ」風で執拗な史劇?(刺激)が作れると思いますが、ポンジュノ監督辺りにでもお願いしましょうか?(笑)
この映画には朝鮮王朝で史上最年少の7歳にて即位した第24代王の憲宗(1827~1849)が史劇で初めて登場します。
ついでに言えば純祖(つまりはイサンこと正祖の息子)の嫡男、容姿淡麗、名君間違い無しと称賛されたモノの若く夭折してしまった孝明世子ヒョミョンセジャもお化け?で登場します。
憲宗は太妃の垂簾聴政や安東金氏と豊穣趙氏一族が権力争いを繰り広げ、勢道政治で民の生活は日増しに疲弊した治世に何ら手を打てず若くして亡くなった、影の薄い王です。
史劇で初めて彼を登場させたのは、その時代の矛盾を自由に描く為だと思われ、無気力で臣下から圧迫を受けて居る若き王をチョンヘインが好演して居ます。
映画はこの歴史時代に想像力を加え、200年前にも民衆の大きな力が発揮された事を描こうとした映画の様です。
映画の時代背景である1811年頃は平安道農民戦争(洪景来の乱)が起き、カトリックが流入、宣教師が処断されるなど、民心が揺れる条件は十分でした。
映画はその反乱から始まった人物たちの数奇な運命が古典小説「フンブ伝」を作らせたと言う仮定に則(のっと)り進行します。
フンブ伝の作者がフンブ自分で、 小説の中の話は他の兄弟のお話と言う設定は捻(ひね)って居ます。捻り過ぎかもです(笑)。
兄のハンニは有力な勢道政治家、弟ジョヒョクは民と民乱軍のパトロンと言う設定に少々ムリが有りました。
無理矢理、政治的現実を持ち込み、いとも容易く悪事を起こすとは?
ここで大事なキーワードとして、以前ワンポイントコラムにも書きましたが預言書
「チョンガムロク鄭鑑録」が登場します。
だから「王の預言書」と言う題名なんですね。
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映画はこの預言書「鄭鑑録」が民心を鷲掴みし、広く流布して行く過程が丁寧に描かれて居ます。
また小説が民心をたぶらかすとして、朝鮮王朝時代全般を通して儒家から指弾されましたが、その理由が理解出来る様な文学の影響力も描かれて居ます。
1番の見どころは広大クァンデたちが繰り広げる政府批判の仮面劇などの大道芸です。
パワフルでダイナミックな大道芸の魅力の一端を見せてくれる所が映画のチャームポイントです。
しかし、それ以外には結末も含め首を傾げる展開が多く、突拍子の無いストーリーなど全般的に纏まりの無い映画でした。
Amazon プライムで無料視聴出来ますので、ヒマな時間と無駄なお金が有る人以外にはお勧めしません(笑)。
現にキムジュヒョクの遺作と言う話題性にも関わらず、累積観客数は386,990人、売上3,159,060,400ウォン(日本円の1/9)と奮いませんでした。
何度も言いますが、当時の雰囲気と言うか空気感と憲宗の姿を見られる事だけがプラスポイントです。
私の様に色んな作品のレビューを書きたい人間向きだと言えるかも知れません(笑)。
<参考文献>
나무위키
Daum영화
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