私の生活は、ちょっと楽しい。
「いよぅ、おはようお嬢さん! 相変わらずベッピンさんだねぇ! 今日はどこへ出
エディ・マーフィ演じるアクセル・フォーリー刑事のように、やたらと高いテンシ
「遊びに行けるわけないでしょ、仕事よ仕事。はい、サッサと走った走った」
「オーノー、つれない返事だねぇ。空はこんなに青くて道路は広々と伸び開けてるっ
「あーはいはい」
エンジンを始動させ、走り出す。
「前方よし、左右よし。ヒュー、いい風だ。たまんないね! おっと、そこのマダム
車を降りるまで、おしゃべりはひっきりなしに続く。もちろん、私が黙っていても
「今日もお仕事頑張ってちょーだいよ。じゃあね!」
会社に着くころには、彼のおかげですっかりテンションが上がっている。
「ちょっと、遅いー! 早く水持ってきてくれないと、干からびちゃうじゃないっ!
会社に着いた私が、まず最初に顔を合わせるのが彼女だ。
「一晩中、私をここに立たせておいて、水も飲ませないなんて、普通なら拷問よ、拷
「はいはいゴメンねー。お水ですよー。タップリ飲んでくださいねー」
幼児をあやすような口調で水を注いでやる。彼女は職場の玄関口に置いてある観葉
「あ、ありがとう。私はここから動けないけど、今日もいっぱい……炭酸ガス、吸収
「ふふふ、よろしくね」
「……」
一見、寡黙なふりを装ってる応接室の薄型テレビ。
実はこいつが、一番の曲者なのだ。
情報通で世界経済から国際情勢、事件・事故、果てはお笑い芸人やグラビアアイド
化学ぞうきんで表面に付いたホコリを拭いてやる。
「ねえ。『ツンデレ観葉植物とハイテンションハイブリッド車の異種恋愛』なんて、
「……広い世界にはさまざまな好みがあるし、さまざまなジャンルがある。私にとっ
「世界の情報に通じてるアンタには、そうかもしれないけどさ。ちょっとした新ジャ
車「オレは確かに排気ガスで地球を汚してるかもしれない。でも、最新技術で開発さ
植物「だから何だって言うの!? どんなに少なくっても、排気ガスが私の葉を汚す
車「確かにそうかもしれない。だけど、このエンジンのおかげで、オレはキミの足に
テレビ「ふっ、所詮ガソリン頼りの貴様に何ができる。さあ、私の前にひざまずきた
「……って、アンタ割り込んでくるの!? 三角関係!?」
「いいではないか。むしろ、同じ屋内設置物として、私のほうが彼女にはふさわしい
「なるほど……。アイディアとしては、悪くないかもしれない。でもアンタはどうも
テレビ「ふふふ……。車よ、貴様はそこでおとなしくしているんだな。分かっている
車「オイオイ卑怯にもほどがあるってもんじゃねーかい? こっちが文字通り身を削
植物「やめて! 私のために争わないで! 私はただ……みんなと仲良くしたいだけ
テレビ「それは、エゴというものだ」
車「エコのための闘いが、エゴにつながるなんて、皮肉な話じゃねーの?」
「ってコラコラ、誰がうまいこと言えと……」
「あのー、応接室の掃除、終わった?」
「あひゃいい!?」
唐突に後ろから声がかかり、私は奇声を上げて振り返った。
応接室の入り口に、化学ぞうきんを持った同僚の女性社員があきれ顔で立っていた
「独り言ばかり言ってないで、ちゃんと仕事してね?」
「は、はい……」
顔を真っ赤にして、小声で謝る。これまで脳内でにぎやかにしゃべり続けていたテ
私の生活は、ちょっと楽しい。
しかし、人に見られるのは、とても恥ずかしい……。
本作は某コミュニティサイト内で投稿されたお題をもとに執筆したものです。
本作のお題は「観葉植物、薄型テレビ、ハイブリッド車」でした。