26日の事である。
時には食べてみたくなるのが、私に取って缶詰がある。こんなに小さくて中味は大丈夫かと思える焼き鳥。鮪フレーク。それより倍位は大き。この日の晩酌は、私には考えられない程遅く、7時半過ぎとなっていた。
ずっと焼酎で、たまにビールがあったり、日本酒があったり、ワインがあったりする。最近メインの焼酎がウイスキーのソーダ割りに替わっていたが、不意にマッコリが飲みたくなった。炭酸のマッコリは好きではないのでジンロのマッコリを買った。乳酸菌が入っているので、キムチやヨーグルトを飲み始めている私には、それらが摂れなくても、マッコリで代用できると理由付けをした。
度数は6度位だから高くはなく、1合は入るグラスでぐいっと飲める。あては、先ず鮪フレーク。ああ、何度か食べたあの甘辛い味。美味いとは思っていなかったが、不味いものでもないけれど、味は忘れていた。兎に角、久々のマッコリが美味い。それから、焼き鳥。これは、時には食べたくなる味が脳裏に残っていて、少しずつ抓む。もっと大きい缶があるようだが、まだお目にかかった事がない。かき込んで口に入れたい欲望が目覚める。この缶では、欲求不満になりそうだ。
鯨焼肉の缶詰はきっと美味いと思うから、これは次に置いておこう。一度に3つも食べるなんて、先ず勿体ない。韓国海苔もある事だし、今日の所は止めておこう。と気持ち良く飲んでいると急に時間に気付いた。7時50分になっていた。ネオワイズ彗星が見られると、どれだけ心が踊っていた事だろう。ほろ酔いで、残りはそこに置いて外に出た。
雲の間に10秒ほど見えた、確かに彗星だと確信を持っていた何日か前のあれはいったい何だったのか。そう思えた理由は、伝えられている彗星の軌道から90度以上左側だった事だったからだ。あれが彗星だったとはもはや自信がない。あんなに明るく大きく見えたのに。嫌な疑問が残る。
それから、雨の日もこの時間になると雨だけは降らなかったが、全面雲に覆われたり星が1つしか見えない位雲が多かったりして、彗星を探すのは断念する事があった。8時前から9時までの間に見えると言うのも、なんだかなあ。
それで外に出ると星が沢山見えるではないか。だが、相変わらず大きな雲は、所々を覆っていた。これなら見えるかも知れない。そう思って、門の一番上の石段に立って見ていたが、右手に街燈がありそれが眩しくて、その辺りは空がはっきりは見えない。手を翳すと途端にそらの周りがよく見える。雲も多くてがっかりはするけれど。
家の中に戻って、新聞紙1日分を持って出た。いつか時間内に見えるだろうと思い、石段に新聞紙を敷いて座った。だが、木の葉が街灯を隠してくれず、眩い位だった。座って、手を翳して、情報で知ってはいる軌道と、この前見た90度左側とを首を動かしながら見た。前兆も全くない。8時は過ぎた。10分位だろうか。もう1度部屋に戻って携帯を持って出た。これで時間が分かる。
三日月が出ていたが、ここからは目の前にも家があり、月は見えなかった。これは好都合だ。
もっと広い方がいいと思い、門を出るとすぐ前の家の塀を背にして、今度は自分の家が見える方に向かって立った。左に見えるようになった街燈の光は増して眩く、両方の手を代わる代わる街灯を遮るように上げた。ずっと上げてはいられないが、時々上げると、その度に空は暗いなりにはっきりした。
言われている軌道の方と、この前彗星だと勝手に確信した方を、交互に眺め返していた。よく見える筈の北斗七星は見えない。ずっと立っていた。8時30分を過ぎた。もうここまで来たら9時まで立っている覚悟が定まった。
おっ?! と思ったが、それは飛行機だった。車が1台、私の前を通り過ぎた。その前に1度自分の家に戻っていた車だ。暫くしてだから、私に気付いていた筈だ。彗星の事を知らなければ、よその家の前に立って空を見つめている人間をおかしく思わない者はいない。そんな疑心から、私の前を通り過ぎたかも知れない。本当は、こんな姿、人に見せたい訳がない。毎日こんな事をしていたら、何と思われるか知れたものではない。けれど、何日か続くかも知れない私の未来像だ。流星群が近付いたり、惑星が地球に大接近したりするとまた見たくなるし。
45分になった。もう忍耐比べだった。後15分。後10分。その時私の突っ立っていた体がよろけた。自由が利かなくなっていた。固まったまますぐ後ろの溝に落ちるかと思った。ひっくり返って頭でも打つかも知れなかった。咄嗟に塀がある事を思い出し、体を捩って塀に手を当てた。辛うじて転ぶのを避ける事が出来た。これだけの時間で体が動かなくなるなんて、初めての体験だった。病院のベッドで動けなくなるだろう事と繋がった。後5分。後2分。9時が目の前だった。飛行機は、あれから3機見た。今はただ空しかった。でも、マッコリが待っていた。
いつか見られる日もあるだろう。そんな達観、嘘だと思った。それは、悔しさの裏返しでしかなかった。お前はそれでいいのか。これを見逃すと、5,000年以上経たないとみられないのだぞ。
27日は、近くのドラッグストアかスーパーマーケットに行って、そこから全天を見回して見てやろう。方位磁石も持って行こう。そう思った。
何で毎日悪天候が続くのだろう。そう思うのも、それは私の戯言にしか過ぎない。以下に今一度、自分にも興味のある人達にも分かり易く、可能な限りシンプルに整理してみたい。宇宙ショーはまだ終わっていないから。
〇 日没から9時までに見られる。時間的には、よく分からないが、兵庫の日の入りは今日(27日)は7時6分と言う。もう少し後から9時頃まで、にしておこうか。
〇 西の空。北斗七星(大熊座)を見付ける。柄杓の水を飲む方の少し下の方から見られる。
〇 月あかりが邪魔になるかも知れない。この彗星は5等星前後でやや暗く小さい。
〇 時間と見える場所(北斗七星)は大体同じで、ただ毎日5度ずつ上に見られるようになる。
〇 8月7日まで見られると言う。4日は満月。いつか晴れると信じている。
● 地球も彗星も自転しているから、時間が正確には分からない。他の情報では、彗星は段々光が薄くなり、7月末では5~6等星に落ちると言うから、私は7月の31日で、観察は終えようと思っている。8月以降は肉眼では見えなくなると予測しての話だ。7月29日30日31日に賭けるしかない。
● 位置や時間は○に挙げた事を信じるしかないが、他の情報の言葉を書いてみる。【7月31日は、午前8時前後に北東の地平線から現れて午後11時前後に北西の地平線へ沈む】
なので、日没後30分頃から9時までは、上の○に書いてあるように観察をすれば、明るい町中ではなく暗い場所で、5~6等星位で見えるのではないかと期待している。●は29日に追加。
〇 町明かりより暗い所の方がよく見えるのは当たり前だが、天文台で観測させて貰えたらなあ。
これ位の情報しかないけれど、何とか見られるのではないだろうか。
メダカの卵を手で抓んでは別の小さな容器に移していたが、26日に5mm位の稚魚が1匹孵っていた。ほんとに見え難いが、動きはいい。後沢山卵は溜まっているが、まだ2匹目が生まれて来ない。2日間はまだ体に養分が残っているので、3日目から細かい餌を耳かきより小さなもので掬って、与えようと思っている。
27日の今日、11時に胃部の尿素呼気試験の結果を聞きに行った。
内科の診察室に入ると担当医から、
「お久し振りです。成功しました」
との言葉を貰った。
「そうですか。よかった」
と、言った。
「0.5だから、殆どピロリ菌は死んでいます。胃がんのリスクは3分の1か又は2分の1になりました。でも、2年に1度は胃カメラを飲んで下さい」
と言われた。安堵したため、あの時の苦しみを忘れていた。まあいいか。2年後だし。そう言って、どちらの顔も笑みを浮かべて、その場を去った。1次では失敗でどうなるものかと思っていたが、2次除菌では成功した。3次があるとしたら、それは保険が効かない。
家に帰り、小さな容器を覗いて見たが、まだ他は孵っていなかった。今日条件が良かったら、ドラッグストアーかスーパーに行って、観察を続けようと思った。変な人と思われない為にも。いやいや、スーパーは10時まで開いている。お客さんに見つかったらまた変だと思われるかも知れない。場所は、人目を避けられる場所の方がいいのかもなあ。