マスクは綿パンの後ろのポケットに入れた。財布は持った。買うのはCD-Rと振りかけだから、財布の中のジャラ銭だけで十分だ。それでもと思い、1,000円札を1枚入れた。

 

雨は止んだのだろう。降っていなかった。傘は持たなかった。途中で私専用の袋を忘れたのに気付いた。ヤマダ電機で袋に入れて貰おう。袋代の3円は仕方がない。すると、雲の水滴が重くなって、ぽつぽつと落ち始めた。急には大降りにならないだろう。

 

先ず、予定外のキリン堂に寄った。何を買う訳でもない。マスクのコーナーをいつも覗いて見るので、入って行った。すると、50枚入りの箱が、最近は20箱位置いてあり、人も素通りする位だった。同じ箱が積まれている。ちょっと前までだったら、少々高くても買っていただろう。今は、大体50枚で2,400円位で売られている。流石に1枚50円前後になるマスクは、買う気にならない。いつか20円か10円になったら買おうと、値段の下がるのを見ていたのだ。

 

所がどっこい。今日のキリン堂には、箱入りのマスクはごっそりなかった。店で聞く訳にも行かず、訝しがりながら店を出た。娘がちょっと前に50枚1,000円で売っていたよと言った事があった。20円位にまでだったら下がるだろうと、今でも思っている。

 

すぐにヤマダ電機に入り、エスカレーターに乗った。いつも置いてある場所がCD-Rに限って大きなテレビがずらっと並んだ端っこにあって、暫く店内を回ってしまう羽目になる。

 

ちょっとだけ高いCD-Rを手に持ち、会計へと向かった。すぐその近くに、種類の違うマスクの箱がそれこそ20箱位積まれていた。1,500円と書いた箱を見ると、「3D立体不織布マスク50枚入り」と印刷されていた。以前来た時には、買うのが勿体ない値段の高さだった事を覚えている。

 

これなら税込みで1枚約33円になる。だったら、買って置いて悪い筈もないと直感した。手に持ったCD-Rを元の場所に置いて、もっと安いのに替えた。マスクもレジに持って行き、どうして安いのかを聞いた。はっきり耳に入らなかったが、ヤマダ電機の何か特別の日で、値段を下げているとの事だった。今週一杯はこの値段だと言う。商売も上手いのだろうが、普段は税別で2,980円だと箱に書いてある。これが税別1,500円なのだから、私は即買いを決めた。

 

CD-Rとマスクと袋で2,445円だ。何とかあるだろうと思い、先ず1,000円札を出し、後は500円、100円、50円、10円硬貨を財布から出して行った。瞬間不安が訪れた。最後に5円が3枚と1円が2枚だけになった。足りるか足らないか。そこが大問題だった。だが、2円を残して、何とか間に合ったのだ。

 

けれど、振りかけは無理だった。大して高くはないから、CD-Rだけ買っていたら楽勝だったのだ。この振りかけに最近嵌まってしまったのだった。まあ華々しいネームとレイアウトだ。場所も様々に、文字の大小も色まで違う。「カリカリ」「赤しそ」「梅」「夏の暑さに」「ソフトタイプ」。他にも「今だけ10%増量」「夏の塩分補給におにぎりにも」「クエン酸550mg配合」、ご丁寧に「調理イメージ」とあり、ご飯に振りかけの写真が写っている。「楠 大森屋 OHMORIYA」と、一番大事な事も書いてあるのだ。どう読んだらいいのか。

 

ご飯にかけて食べると、その美味さは私には永遠のヴィーナスだ。おにぎりにして食べるともっと美味い。だが、今は諦めるしかないが、マスクがこのレベルで買えたのは、まあまの満足度だった。

 

ヤマダ電機を出ると、ザーザー振りだ。じっとしていても仕方がない。オーストラリア人は傘など差さないと聞く。私は、初めて雨の中に突進した。どんどん濡れて行くが、CD-Rとマスクだけは濡らす訳には行かず、しっかり抱えて、ゆっくり歩いた。走っても一緒だ。帰って風呂に入ればいい。

 

雨に濡れるのが大嫌いだった私が、自ら濡れながら歩いている。マスクを買って、もう店をマスクの為に覗く事がなくなったから、1つ、思いが飛んで行ったからかも知れなかった。

 

熊本県南部に豪雨をもたらした梅雨前線は北上して、川の氾濫や浸水を引き起こした。新聞は「九州全域に豪雨」と伝え、福岡・佐賀・長崎に特別警報と書いていた。死者も出た。私は自らずぶ濡れになったのだからそんな事は何でもない。九州で起きた豪雨や濁流は道に溢れ家庭の部屋の中にまで容赦なく侵入する。そして、人の命をも奪って行くのだ。「雨」はここまで大きな災害を残して非常にも行ってしまうのだ。自分がそんな目に遭っていたらどうだろう。そう思うだけで、九州の災害は痛ましい。いつも思う、そこまで行かないで、と。今は、言葉がない。