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人材活用ノウハウBOOK〜人事コンサルタント、社会保険労務士の知恵袋

人事コンサルタント/特定社会保険労務士が、日々の業務から得たノウハウやお役立ち情報、日々のニュースを人事屋目線で切ったコラムをお伝えします。

働き方改革の背景にあるのが、長時間労働問題です。

 

大手広告代理店でおこった悲惨な事件が、この議論を大きく進めることになったのは皆様もご存知の通り。

 

長時間労働がもたらす問題の最大のものが心身の健康に与える悪影響です。

特に近年大きいのがこころの健康の問題。

 

もっとも、身体の健康とこころの健康はコインの表裏のようなものなので、切り離して考えない方がいいと思いますが。

 

長時間労働のもたらすもうひとつの問題は、生産性の低下。

労働時間が長くなれば当然疲労が蓄積し、効率が下がってきます。

注意力も落ち、ミスも増え、さらに効率が低下します。

 

とは言っても、仕事を終わらせないといけない…こんな嘆きが聞こえてきそうですね。

確かにそうなのです。

私もいやというほど経験しています。

 

・本当にその仕事は今日中に終わらせないといけないのか。

・業務量は適正か。

・業務に求める品質は適正か。過剰品質になっていないか。

・業務はすべて必須のものなのか。

・業務の効率性はどうか。手待ち時間、ボトルネックは生じていないか。

 

こうしたことを考えないといけないのですが、考える余裕さえない、あるいは、つべこべ考えず言われたことをやれという企業体質になっているといったことも少なくないようです。

議論が本格化するとともに早くも迷走の兆しを見せている働き方改革法案ですが、そもそもなぜ働き方改革なのでしょうか?

今更かもしれませんが、ここを改めて考えてみたいと思います。

 

◆法律だけの問題ではない

 

「法で定められているから(定められそうだから)」というだけでこの問題をとらえないようにしましょう。

 

法が制定されたり、法が改正されるのは、現実社会の必要性があるからです。

法はむしろ「後追い」です。

 

働き方改革の場合も、それを推進しなくてはならない必要性があったからです。

 

特にこの問題は、会社の人材活用・労務管理全般にかかわります。

法案に盛り込まれていることにとどまらず、「これからの人材活用をどうしていくか」という目線で考えるのがいいですね。

 

◆働き方改革を進める理由

 

これにはさまざまなものがあげられていますが、整理すると次の2つになります。

 

・長時間労働解消、時短

・競争力向上

 

この2つ、一見すると並び立たないもののように見えますね。

「トレードオフ」というやつです。

 

働く時間が短くなってしまうとその分アウトプットが減ってしまい、競争力がなくなってしまうということです。

 

しかし、必ずしもそうではないようです。

労働時間が長くなると、どうしても効率が落ち、ミスが出ます。

健康も害します。

当然、その分アウトプットは減ります。

 

とはいっても、何もしないまま働く時間だけ短くすれば、アウトプットが減ることも事実でしょう。

 

生産性向上策やムダな業務の廃止、人事評価基準の見直しといった施策が同時に必要ですね。

 

 

これからの働き方に対応した人事・賃金制度では、「職務」や職務を通じて果たすべき「役割」がキーワードになります。

「同一労働同一賃金」を考えると、より一層そのことがいえます。

 

職務がキーワードになるということは---

 

・会社にはどんな仕事があるのか

・その仕事はどんな内容で、どんな目的があるのか

・その仕事をこなすためにはどんな能力や知識、経験を必要とするのか

・その仕事は全体の仕事の中でどのぐらいのレベルになるのか

 

---こうしたことを明確にし、それを元に賃金などを決めるということです。

 

また、「役割」とは、仕事をこなすことによってその人はどんな価値を会社にもたらしているのかということです。

 

これらを明確にしておかないと、賃金決定はどうしても曖昧になります。

 

「職務に対応」というと、まず浮かぶのが職務給です。

職務給の解説はまた別の機会に譲りますが、簡単にいうと、社員が担当している仕事(職務)の価値に応じて賃金を決めるという制度です。

 

ただし、ここで私は、「これからは職務給でいくべき」と主張したいわけではありません。

職能給(社員の能力に応じて賃金を決めるやり方)もありです。

 

「職能」とは「職務遂行能力」の略称です。

つまり、職能給とか能力給といっても、その裏付けになるのは「職務」なのです。

 

よく「職能給は基準が曖昧で年功的になってしまう」という意見を聞きますが、それは職務の裏付けなく職能給をつくってしまっているからです。

 

職能給にするか、職務・役割給にするかは、人材マネジメントの主眼を育成におくか、会社への貢献度や成果におくかによります。

そしてそれは、社員のレベル(新人レベルかベテラン・管理職レベルか、など)に依存するはずです。