‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

3歳だというのに、ある日わたしは母に宣言した。

 

 

「ゆうちゃん、一人で寝る。

一人でお風呂に入る」

 

 

もう一度、書くが、

 

 

3

 

 

しかし、母は、すんなりそれを受け入れた。

 

 

もちろん、お風呂に関しては、注意を払ったに違いない。

 

 

なぜなら、わたしはこうして生きている。

 

 

母のすごいところは、その後もわたしは偉そうに宣言するのだが、その一つ一つを受け入れてくれたことだ。

 

 

しかし、母はちょっとした失敗をした。

 

 

本当は失敗と表現することではないのだが,母自身がそんなふうに感じるできごとだった。

 

 

多分,幼稚園に行く前のことだと思う。

 

 

わたしは1から10まで数えることができなかった。

 

 

2歳くらいでも10まで数えることはできる。

 

 

それなのにわたしは数えることができなかったので,さすがの母も少々焦ったのだと思う。

 

 

2年保育だったが,

「なんとか幼稚園に行くまでに10まで数えられるようにしたい」それが母の願いだった。

 

 

そして,1から10までのおけいこが始まった。

 

 

母が言うには、6か7まで数えると必ず1に戻ってしまう。

 

 

8.9.10を聞くことはできなかった。

 

 

それでもあきらめず,母はそれを続けた。

 

 

しかし,ある日わたしは母に言った。

 

 

「ゆうちゃん、もう数えない」

 

 

母は、血の気が引いた。

 

 

「この子に、してはいけないことをしてしまった」

 

 

そのとき,そんなふうに思った。

 

 

無理やりやらせることはしてはいけないと思った母は、その後,わたしに何かを無理強いすることはなかった。