「おはよう」でも「こんにちは」でもない‥



わたしが道行く人に言っていた言葉は、

「バ〜〜カ」



われながら情けないが、それが事実だ。



他にも,わたしは家ではしゃべったが、外に行くと一切しゃべらなかった。



何を聞かれても黙っている。



いつしかわたしは周りの人から「おバカな子」と思われるようになった。



今,考えると「場面緘黙」だったのだと思う。



母に、「そんなわたしを見てお母さんもおバカな子って思わなかったの?」と聞いてみた。



「思わなかったわよ。

だって、ゆうちゃんは家ではしゃべっていたもの」

それが,母の答えだった。



その後,母は付け加えた。



「でも、お母さん以外の人は、皆んなゆうちゃんのこと、しやべらないし、おバカな子と思っていたみたいだけどね」



母は、その辺のところはあんまり気にしていなかったようで、ニコニコしながらその話をしてくれた。



なんせ,周りにはあんまり子どもはいなかったし,他の子と比較して落ち込むことはなかったのだろう。



父は,朝早くに出かけて、夜遅くに帰るという生活をずっと続けていたが、日曜日には、わたしにブランコを作ってくれたり、庭に池を作ったりした。



その当時の家には、けっこう庭に池があって,金魚や鯉が泳いでいた。



わたしもうっすらとその池のことを覚えている。



しかし、その池のために,わたしに異変が起こった。



続く‥