★International news of last week(先週の国際ニュース8月19日号)
↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 8月12-18日
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◆ウクライナ、ロシア越境攻撃拡大、戦争の行方に影響? ☆
・ウクライナによるロシア西部クルクス州への越境攻撃が拡大している。
・ウクライナは15日、82の集落を制圧したと発表した。住民20万人以上が避難した模様。
・越境攻撃には英国が供与した戦車「チャレンジャー2」などが使われた。
・ウクライナは演習を装って軍を動かすなど極秘裏に作戦を展開。奇襲作戦を成功させた。
・ロシアは反テロ作戦と銘打って撃退に動く。東部戦線などから一部部隊が移動した模様。
・ウクライナには、今後の停戦交渉をにらみ有利な条件を整える狙いがあるとみられる。
・東部戦線からのロシア軍の移動や、国内の士気を高める狙いもある。
・ただ、他の地域の兵力を削減することにもなり、越境攻撃は賭けでもある。
・ロシアの領土に一時的にせよ外国部隊が入るのは第2次大戦後初めて。
・非核保有国による核保有国への越境攻撃も初で、核抑止議論に一石を与える。
・越境攻撃の行方は不透明だが、ウクライナ戦争にとって1つの節目になる可能性もある。
◆タイで政局、首相失職、タクシン氏次女後継、軍の意向か?(14-16日)☆
・憲法裁判所は14日セター首相に解職命令を下した。
・4月の内閣改造人事(ピチット首相府相任命)が憲法の倫理基準に違反するとした。
・憲法裁は軍の影響下にある。裁判官は2014年クーデター後に軍事政権が指名した。
・セター氏はタクシン元首相影響下で最大与党の「タイ貢献党」所属。
・親軍派を含む11党の軍民連立政権首相に昨年9月に就任していた。
・国会は16日、タクシン氏次女のペートンタン氏を首相に選んだ。連立政権を維持した。
・動きの背景には不明点が残るが、軍による貢献党へのけん制との見方がある。
・憲法裁は7日には民主派の最大野党「前進党」に解党命令を下している。
・タイの政治は過去30年あまり、与野党対立や軍事クーデターで揺れてきた。
・政治的不安が常態化し、外国からの投資の停滞など経済への悪影響も懸念される。
◆米司法省がグーグル分割検討 ☆
・米司法省がグーグルの分割を含む独占是正策を検討している。米メディアが報じた。
・司法省は2020年にグーグルの検索事業などが独禁法違反と提訴。
・米連邦地裁は5日独占を認める判決を下し、問題解決策が次の焦点になっている。
・司法省はスマホOSのアンドロイドや検索ソフトクロームの事業売却などを検討する。
・ただし、グーグルは独禁法裁判そのものの判決を不服として控訴。決着に時間がかかる。
・ネットは製造業と違い事業ごとに収益を得る訳でない。分割効果に対する意見も割れる。
・巨大IT事業の規制に関し節目となる出来事であることは間違いない。
★ガザでの死者4万人超、停戦交渉調整、イランの報復注目 ☆
・ガザ戦争開始以来のパレスチナ人の死者が4万人を超えた。ガザ保険省が15日発表。
・開戦のガザの推定人口は220万人で、約2%に相当する。イスラエルの死者は1200人。
・ガザではイスラエル軍による攻撃が続き、深刻な人道危機が続く。
・停戦を巡る協議はカタールのドーハやカイロで続く。先行きは不透明。
・ハマス最高指導者暗殺を受け、イランはイスラエルの報復を宣言するが、実施はまだだ。
◆インドネシア、首都移転動き出す
・インドネシアは独立記念日の式典をカリマンタン(ボルネオ)島の新首都ヌサンタラで行った。
・初の政府行事で、首都機能移転の第1歩になる。
・新首都中心部には大統領宮殿や大統領府、官庁の建物などがほぼ完成。
・年内には6000人の公務員や家族が新首都に移る予定だ。
・新首都移転はジョコ大統領の最優先課題の1つで、ジャカルタへの1極集中是正を狙う。
・10月に就任するプラボウォ次期大統領も政策継続を表明している。
・同国は2045年の完成を目指す。ただ民間の投資は必ずしも予定通りに進んでいない。
◎寸評:of the Week
【ウクライナの越境攻撃の波紋】
ウクライナがロシアへの越境攻撃を拡大し、波紋を広げている。ウクライナ東部の戦線でロシアの攻撃が続いている時に、同国北部からロシアのクルクス州に侵入した狙いは何か。戦争全体に与える影響は?(→国際ニュースを切る)
◎国際ニュースを切る
◆ウクライナの越境攻撃の波紋
ウクライナがロシアへの越境攻撃を拡大し、波紋を広げている。ウクライナ東部の戦線でロシアの攻撃が続いている時に、越境攻撃した狙いは何か。戦争全体に与える影響は?
▼極秘裏に作戦
ウクライナの攻撃は6日に始まった。数千人規模の兵力が同国北部からロシア西部のクルクス州に越境し、次々と集落を落とした。ウクライナによれば、15日までに82の集落を制圧した。ロシアの住民20万人以上が避難した模様だ。攻撃にはNATO加盟国である英国が供与した戦車「チャレンジャー2」などが使われた。
ウクライナは演習を装って軍を動かすなど極秘裏に作戦を展開。奇襲作戦を成功させた
事前には米国にも通知してなかったと報道される。ロシアは虚を突かれる形で、ウクライナ軍の一方的な侵入が成功した。
▼越境攻撃の狙い
ウクライナ戦争は全体的には膠着状態にあるが、局所的にみればウクライナ東部の戦線でロシア軍による攻撃が続く。ウクライナ軍が防戦に回っている。そんな状況にありながら、ウクライナが越境攻撃を仕掛けた理由はどこにあるのか。メディアや専門家コメントでは、おおむね3つくらいの説明がある。
第1は、東部戦線などからロシア軍の兵力を移動させようという狙い。実際、東部戦線から一部部隊が移動し始めたという情報もある。ただ、どの程度の規模の軍が動くかなど不明な点も多い。
第2は今後の停戦交渉をにらみ有利な条件を整える狙い。11月の米大統領選でトランプ氏が当選すれば、停戦圧力が強まるという見方がある。その際にロシア領内に占領地域があれば、ロシアによるウクライナ領内の占領地との交換の材料になり、交渉カードの1つになる。
▼大きな賭け
第3に兵士や国民の士気を高める狙いだ。2023年6月からのウクライナの反攻が失敗に終わった後、ウクライナは防衛に回る局面にある。日々のニュースも攻撃より守勢の動きが多かった。今回の越境攻撃は久しぶりに攻勢のニュースで、士気は実際、高まっている。
ただ、越境攻撃は他の地域の兵力を削減することにもなる。その意味で今回の攻撃は、ウクライナにとって大きな賭けともいえる。
▼核抑止論に一石
ロシアの領土に一時的にせよ外国部隊が入るのは第2次大戦後初めて。ロシアはクルクス州と隣接するベルゴロド州にも非常事態を発令した。ロシアの社会に与える影響がどれくらい広がるか注目されるところだ。
非核保有国による核保有国への越境攻撃も初めて。従来の核抑止議論であまり議論されなかった事態だ。核抑止論に一石を与える。
今回の攻撃には英国の戦車などが使われた。越境攻撃はこれまで、ロシアからの(戦術核を含む)本格攻撃の引き金になりかねないと見られてきたが、そうではなかった。次のレッドゾーンはどこか、不透明だ。
越境攻撃はウクライナ戦争の行方はもちろん、ロシアと西側の安全保障関係にとっても影響を及ぼしている。ただ、実情や背景にまだ分からない点が多いことにも留意が必要だ。
◎今週の注目(8月19-25日&当面の注目)
・米民主党大会委が19-22日にシカゴで開かれる。ハリス大統領候補がどんなメッセージを打ち出すか。
・ウクライナ戦争はウクライナによるロシアへの越境攻撃で新たな動きが出てくる可能性がある。
・中東ではガザ停戦交渉の行方や、イランやレバノンのヒズボラによるイスラエルへの報復攻撃の方法やタイミングなどが当面の焦点。
・世界の金融政策のトップが集まる米ジャクソンホール会議が22-24日開かれる。